第5回
2004年2月12日

三次元画像診断に応えるConformal Dissection Autopsy

千葉大学名誉教授
大藤 正雄

1970年代後半にリアルタイム超音波、X線CT、MRIなどの画像診断法が相次いで臨床応用されるようになり、医療の世界は大きな変貌を遂げることになった。それまで、視覚、触覚、聴覚を直接に駆使して認知していた病変を、ある媒体による画像を通して認知する時代になったのである。その結果、身体内部の異常が臨床症状を表わす以前に、癌とすれば早期に発見することができるようになった。これは、まさに近代technologyが医療にもたらした素晴らしい恩恵であるが、同時に医療に様々な問題を提起する結果となった。その一つとして、早期の病変であるほど微小かつ微細であり、正常と異常の境界域が複雑に入り組んで確定的判定を下すことに苦しむといったことがしばしばみられる。この難問を解決するには、画像所見と病理所見の対比を綿密に行い、判定基準を完成する以外に良い方法はないといえる。

これまでも画像所見と病理所見を対比し検討することは地道に行われ、大きな役割を果たしてきた。しかし、今の画像診断は二次元から三次元画像へと、その内容が大きく変わろうとしている。現在は二次元平行断層連続像の段階から三次元多方向断層像に基づいて診断する時代になってきている。今、最先端の癌治療法として推進されている重粒子線治療を例にとっても、癌病変の進展範囲を正確に立体診断できるとの前提の下に精細な照射条件が成り立っている。また肝臓移植での摘出肝の病理検索から、多数の肝癌病変が見落とされていることが明らかにされている。現在の二次元画像診断には限界があるということである。現代の新しい医療において、三次元多方向断層像あるいは立体透視像の助け無しにこの問題を解決できないことは明らかであり、三次元超音波によってそのことが明らかにされている。

病理学が従来の方式に従っていて、果たして現代の画像医学に応えることができるのであろうか。

このような三次元画像診断時代の病理学にあっては、手術標本あるいは剖検標本を立体的手法に基いて任意の方向から検索する“三次元立体解剖(conformal dissection)”の考え方が必要である。画像診断時代に応える病理学としてAutopsy imagingはまさにその端緒を切り開くものである。