第四回オートプシー・イメージング学会学術総会 報告

日本大学医学部 社会医学講座法医学部門 内ヶ崎西作

2004年に発足し,放医研で第1回目(演題数11)が開催されたAi学会も,帝京大溝口病院での第2回目(演題数14),つくばメディカルセンターでの第3回目(演題数9),そして今回の日大医学部で第4回目(演題数9)を迎えました。前日には雨が降り,また開催日の2月10日は日本病理学会関東支部学術集会と重なり参加人数が心配されましたが,当日はとてもよい天候となり,北は北海道から南は九州まで,当日入会者を含めて70名の参加者を迎えて,会場となった第2臨床講堂で熱い議論が交されました。昨年から法医学会での生涯学習単位に認められたこともあってか,法医学関係者の参加も目立ちました。

会長の根本則道先生(日大医学部病理学教授)の開会の挨拶の後に,塩谷清司先生(つくばメディカルセンター放射線科)の座長により,第一部「Aiの現状と方向性」と題したセッションが行われました。江澤英史先生(放医研病理)からAiを含む世界の死体への画像診断の応用の流れや日本におけるAi普及に関する問題,つくばメディカルセンター(坂本奈美子先生・早川秀幸先生)から救急医学-放射線部-剖検センターの絶妙なネットワークによる症例提示2題,桂 義久先生(横浜中央病院病理)から5例の自験例のまとめが提示されました。コーヒーブレークの後,内ヶ崎の座長により,「既存システムにおける,新しいAiの展開」と題した第二部のセッションが行われ,松野義晴先生(千葉大学環境生命医学)から学生の解剖実習へのCT画像応用の可能性について,内ヶ崎(日大医学部法医学)から内視鏡画像応用と医療関連死例への応用に関する可能性と問題点について,長谷川 剛先生(自治医大医療安全対策部)から,地域の中核病院におけるCPA-OA症例に対する画像診断応用の有用性について,山本正二先生(千葉大学放射線科)から3D動画供覧による病理解剖への解剖前撮影画像の有用性について,岩瀬博太郎先生(千葉大学法医学)からCT車導入による司法解剖前のCT画像診断の応用例が提示されました。再度コーヒーブレークで気分を一新した後,東京農工大の清水昭伸先生による特別講演(座長:根本先生)が行われました。清水先生は,撮影されたCT画像に自動的に病変個所を示して画像診断を支援する医療用CADの開発プロジェクトに携わっており,その開発裏話と死体用CAD開発に対する抱負をお話して下さいました。その後,会全体に対するフリーディスカッションが行われ,夏期症例検討会の案内が桂 義久先生よりあり,閉会となりました。

今回の学術集会を通じて,Aiという概念を含む「死体に対する画像診断」が人の死をめぐる諸問題の解決に大きな役割を果たすことが,改めて,そして更に一歩進んで明らかにされたと感じられました。加えて,その有用性に関する認知度の急激な広まりにも驚きを感じました。しかし実際のAi導入に際しては,個々の病院内で様々な壁があることも事実として捉えねばなりません。加えて,大きな期待とともに「Ai」が受入れられた場合には別の問題も生じることが予想されます。フリーディスカッションの中でも,「陽性所見があるときにはよいが,なかった場合はどうするか。ないときこそ慎重になるべきだ。」という意見が出され,「Ai」という言葉だけが独り歩きしつつある現状に警鐘が鳴らされました。ちょうど今年は理事改選の年でもあり,理事会・総会で4人の新理事を加えた人事が承認されました。新たなスタートを切ったAi学会がこれらの問題をどう舵取りをしていくのか期待が持たれました。

会の準備・開催に関しては,会長の根本先生,運営実行委員長の桂 義久先生,そして学会本部には大変ご心配をおかけしました。また当日運営にお手伝いいただいた皆様,そして参加された会員の皆様にも手が行き届かずにご迷惑をおかけしたことと存じます。この場を借りてお詫びを申し上げるとともに,様々なご協力をいただいたことにお礼を申し上げます。