第10回オートプシー・イメージング学会学術集会 開催記

平成25年2月9日千葉大学西千葉校舎内けやき会館大ホールにて「死因究明関連法への取り組み:Aiの果たすべき役割」というテーマで、26の演題数、172名(一般163名、学生大学院生5名、メディア4名)の参加を得て第10回学術大会を無事開催されました。参加された会員の皆様には心より御礼申し上げます。大会長より謹んでご報告させていただきます。

1.オートプシー・イメージング学会総会

山本理事長より活動報告、収支決算報告、次年度活動計画、予算案、並びに次期大会長の提案に対し、満場一致で承認された。本大会テーマに関する事項として、内閣府からパブリックコメントの募集がされているので会員からも意見を寄せるように要請があった。

2.学術研究発表

これまでは10演題程度だったので午後から開催していましたが、今回は26演題になったので急遽、午前9時開始に変更しました。遠来の演者には前日からの宿泊を余儀なくされたと思います。ご迷惑おかけいたしました。また、今回は発表者ご自身のPCを持参いただき、スライド操作をお願いして効率的な運用を図りました。演者の皆様のご協力に対しお礼申し上げます。今回の研究発表は下記の演題群に分けました。例年以上に参加者が多いため全員の演者に質問があり、時間延長が気になりましたが、スムーズに進行していただきました座長の先生にお礼申し上げます。

  • 第1部「新たな取り組み」(7演題)座長:法木左近先生、高野英行先生
  • 第2部「画像診断・解剖所見」(7演題)座長:桂義久先生、兵頭秀樹先生
  • 第3部「画像診断(造影CT,MRI)」(5演題)座長:塩谷清司先生、高橋直也先生
  • 第4部「Ai実施施設からの報告」(7演題)座長:兼児敏浩先生、飯野守男先生

放射線科医、法医学者、病理医、救急医をはじめ様々な分野からAiの有用性や新たな可能性について熱心に討論していただきました。特筆すべきはAiの最前線で日夜、奮闘している診療放射線技師から10演題のエントリーがありました。診療放射線技師の立場での大会長としては今後の診療放射線技師の活躍に大きな希望を託したいと思います。それぞれの演題の内容については抄録をご一読いただければ幸いです。

3.画像診断ワークショップ

特別企画として札幌医科大学法医学講座兵頭秀樹先生と新潟市民病院放射線診断科高橋直也先生により「画像ワークショップ」を開催していただきました。出席者全員にアンサーパッド1)を配布してそれぞれの設問に答えるという方法で、画像解剖、死後画像の特徴的所見などについて詳細に解説をおこなっていただき、会場で死後画像の読影体験されたことは日常業務に役立つので非常に有意義でした。

今後、このような手法でのアドオンセミナーの企画が望まれるところです。もし可能であれば,本学会ホームページで公開して欲しいものです。

4.パネルディスカッション

Aiを取り巻く昨今の状況として死因究明2法案の成立という法的環境の整備に伴い死因究明に対する社会的関心が高まり、「死因究明関連法への取り組み:Aiの果たすべき役割」という大会テーマを設定し、基調講演には弁護士の木ノ本直樹先生にご講演をいただき法曹界における最前線での話題提供として死因究明関連法におけるAiの位置づけとAi実施した結果に対する情報公開の問題点など指摘された。Aiに精通するそれぞれの分野から7名によるパネルディスカッションを行いました2)3)4)

1)画像診断医の立場から塩谷清司先生(筑波メディカルセンター病院放射線科)
2)法医学の立場から飯野守男先生(大阪大学大学院医学系研究科法医学教室)
3)病理医の立場から桂義久先生(社会保険横浜中央病院病理診断科)
4)救急医の立場から伊藤憲佐先生(亀田総合病院救急科)
5)医療安全の立場から長谷川剛先生(自治医科大学医療安全部)
6)診療放射線技師の立場から若松修先生(NTT東日本 関東病院)
7)第三者機関の立場から山本正二先生(財団法人Ai情報センター)

それぞれのパネリストから専門の立場での現状と取り組みについて発言があり、山本理事長からは「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」について(1)情報公開、(2)死亡診断書・死体検案書におけるAi実施の有無などの記載方法、(3)費用、(4)施設整備、(5)法令などに関する質問などについて2月16日までパブリックコメントに提出予定であると報告されました。会場から「警察依頼時での対応のあり方」について質問があり、警察依頼時の受け入れに関するルール作りの必要性について発言しました。

5.情報交換会

今回は10回目という記念すべき学術大会として初めて情報交換会を企画しました。人数が集まるか不安でしたが、学会場に隣接していましたので多くの会員の皆様にご参加いただきお礼申し上げます。特筆すべきは診療放射線技師を目指す学生や大学院生などの参加があったことである会員同士の親睦と情報交換の輪が広がり、自己紹介ではそれぞれの立場での取り組みや創設時の苦労話など色々なエピソードが披露されて、和やかなうちに歓談されていたので情報交換会を開催したのは有意義でした。

6.第10回学術大会後の動き

「死因究明関連法への取り組み:Aiの果たすべき役割」というテーマで開催してその後、どのような動きがあるのか今まで注視してきました。

オートプシー・イメージング学会では2月16日のパブリックコメントとして、死亡診断書(死体検案書)への死亡時画像診断の実施の有無など欄の明記、情報開示の必要性、検査などに係る費用負担の明示、人材育成、施設の選定及び遠隔読影ネットワークの整備、身元を明らかにするための措置としての死亡時画像診断の実施についてなどを提出した、また、Ai診断報告書、Aiチェックシートを設備して、オートプシー・イメージング学会ホームページ上で公開して、広く活用を促しています。

「死因究明等推進計画検討会」は平成24年10月から10回の検討会を重ね、平成25年6月「中間報告書」を公開しました5)。しかしながら、パネルディスカッションで議論されたように2年間の有限立法であり、死因究明の推進計画がどのように具現化されるのか、会員の皆様も今後の展開に注視しましょう。

第10回学術大会の研究発表を振り返ると、Aiが着実に普及していること実感するとともに、Aiの新たな課題と今後の展開に向けてどのように取り組むべきかを問いかける機会になったとのではないかと推察いたします。会員の皆様の今後のご活躍を期待致します。

最後になりますが、第10回学術大会を開催するにあたり法木副大会長、金山大会長補佐、梁川実行委員長はじめ実行委員、事務局、展示、協賛など関係各位のご協力に対し深甚よりお礼申し上げます。

オートプシー・イメンージング学会を育てるのは会員の皆様です。今後のご協力をお願いするとともに、第11回学術大会でお会い出来る事を祈念しつつ開催報告とさせていただきます。

大会長 純真学園大学保健医療学放射線技術科学科 阿部一之


会場(質疑応答) 会場(質疑応答)
画像ワークショップ1 画像ワークショップ2 画像ワークショップ
パネルディスカッション パネルディスカッション
基調講演講師・役員・実行委員会・事務局 基調講演講師・役員・実行委員会・事務局

参考:

  1. リアルタイム投票集計システム3eAnalyzer(木村情報技術株式会社:http://www.k-idea.jp/3e/analyzer/index.html)
  2. 「死因救命におけるAiの有用性、合理性を多方面から論考」Medical Tribune
    http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2013/M46130071/
  3. 「死因究明関連法、情報開示が担保されず」
    http://www.m3.com/iryoIshin/article/166075/
  4. 小林智哉:「第10回オートプシー・イメージング学会学術総会参加記」
    INNERVISION(28,4), 68-69,2013
  5. 死因究明等推進計画検討会中間報告書:平成25年6月 http://www8.cao.go.jp/kyuumei/investigative/tyuukannhoukoku.html