第5回 Ai学会夏期症例検討会

第5回夏期症例検討会も無事終了することができましたので、簡単にご報告致します。

参加者

総数:44名

科別内訳: 放射線科医16名(36%)、法医学7名(16%)、病理学6名(14%)、
放射線技師4名(9%)、内科医2名(5%)、救命救急センター医1名(2%)、
整形外科医1名(2%)、事務局1名 (2%)、医学部学生1名(2%)、その他5名(11%)
地域別内訳: 北海道1名、東北1名、関東甲信越33名(75%)、中部4名(9%)、
中国1名、九州1名、不明3

症例

1. 自宅孤独死の一例(宮崎大学 放射線科 新川慶明先生)

40歳代 男性、アルコール依存症、肝硬変、2型糖尿病 毎日デイケア利用、アパートの階段で転倒して後頭部挫傷、友人が発見して救急隊を要請したが本人は拒否。2日後、デイケアに来所しないので看護士が自宅訪問。居間であおむけの状態で死亡していた。近医でCT検査後に本学法医学教室で承諾解剖となった。CT所見:左後頭骨骨折、右前頭葉脳挫傷、顔面骨骨折、左上腕骨骨折、気管気管支内液体など所見。解剖では死因 として脳挫傷と診断された。外傷性くも膜下出血も認められた。

discussion: 気管気管支内に血液成分を含むniveauがあり、胃内の大量出血や大動脈の高度虚脱がみられることから失血死も十分考えられる。食道~胃の静脈瘤の有無などミクロでも精査する必要がある。脳挫傷か出血か、CTでも剖検でも死因の確定はできなかった。

2. 死後造影CTの有用性(千葉大学附属病院 放射線科 山本正ニ先生)

N病院での施行例の紹介:心臓マッサージを加えた死後造影CT検査の有用性

60歳代 女性:ホームヘルパーさんが呼吸苦を訴えて死亡。急性肺血 栓塞栓症が死因と考えられたが、単純CTでは指摘困難であったが 造影死後CTを行ない診断できた。ヨード造影剤100mlを 1.5ml/sec.でCV カテーテルから注入、心マッサージ100 回、400回施行。最後の肺CTで肺にすりガラス状陰影が出 現した。

50歳代 女性:2日前に階段転倒し意識消失した。心臓痛で救急車搬送 されたがCPAとなった。造影剤を同様に注入して、心臓マッサージ 200回、200回を行ない、2回CTを撮像した。CVカ テーテルを介して注入。

3. 3例のAi経験例(千葉県がんセンター 画像診断部 高野英行先生)

#1: 入院中、朝死亡していた(右大腿骨術後)。死後単純CTで肺 血栓塞栓症が確認された。剖検なし。

#2: 前立腺癌術後例で局所出血疑いで救急車搬送中に死亡した。死後単純CTで右房からIVCにかけても血栓。window幅を狭めて観察すると血栓を見つけやすい。剖検なし。

#3: 50歳代 女性。膵腫瘍手術前日に死亡。Aiでは、左心房内血栓、誤嚥性肺炎、胆道チューブステントを挿入していたので同部からの出血のないことを証明できたのでご家族の納得が得られた。頑固な便秘。麻痺性イレウスの可能性は? 死因の特定困難。

4. 死後造影CTの有用性と相談症例(独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 救命救急センター 阪本奈美子先生)

死後造影CTの成功例と不成功例の紹介(末梢ルートからの造影22Gでも可能、造影剤40ml + 生食60ml 、3ml/sec.) 91歳代 男性 蘇生後脳症、NOMI疑い。成功例
78歳 男性 肺気腫、胃切後。不成功例
相談症例:80歳代 男性 朝 車内にいるのをお嫁さんが発見。 CPAであった。Aiでは、血性心嚢液、著明な前縦隔血腫あり、上行大動脈解離か?外傷受傷か? 監察医務院に行ったので剖検したかどうか不明。

いずれも、興味深い症例のご呈示をいただきました。心臓マッサージによる死後造影CTの今後の検討が期待されました。
以上、簡単ですがご報告に替えさせていただきます。有り難うございました。

日大 医学部 放射線医学系
高橋元一郎、古橋 哲、 横浜中央病院 病理科 桂 義久