雑誌「臨床血液」に掲載された記事
「当院におけるbendamustine,rituximab併用療法の後方視的検討」ご丁寧にタイトルにも「後方視的」とあり、抄録でも本文でも「後方視」の研究デザインと書いている。
内容を見ると、解析して報告している情報から判断すると、デザインとしてはコホート研究のデザインといえる。観察研究のデザインとしてみると、前向き研究=コホート研究、後方視的(後ろ向き)研究=症例対照研究というのが一つの考え方としてある。少なくとも詳しい説明なしいに、前向き・後ろ向きを言うのは好ましくない。この「後方視的に解析した」というのはデザインのことを言っているのではなく、情報の収集の方法でしかないように思われる。タイトルに書くのならデザインを書くことが求められているのであって、情報収集の方法はその次だろう。また、どのように情報を集めても、前向きでも、後ろ向きでも解析されることがある。
この記事は、内容がしっかりしているにもかかわらず、このタイトルやデザインの書き方が問題で、これを記事にして掲載しているということは学会雑誌もちゃんと知識のある人がレビューしているわけではないという事になる。この記事は某大学からの報告だけれども、その大学もきちんと研究デザインをわかった人がこうした解析に参加していないという事が解る。
一方で内容がきちんとわかるように書かれているから、デザインの表記が誤りであることが解るという側面もある、つまりあと一息というところまで来ている、内容の良い研究でもある。だからこそ惜しい。
学会誌の編集責任者である先生には某大在籍中にいろいろ面でお世話になっていて、臨床的にも研究面でも本当に尊敬できる人だというのを重々承知しているんだけど、この雑誌がこのデザインの基本的なことをきちんと書ける様になってというのは大変残念な事だ。
お世話になっております。
後方視的、という表現がこの論文では別に間違っていないように思えました。
「後ろ向きコホート研究」というものが存在するのと同じように、この研究も「後方視的」と言っているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。