FDA COVID-19流行下での治験の実施に係るガイダンスを公開

FDAはCOVID-19流行下でのガイダンスを公開

対象

治験依頼者・治験責任医師・IRB

公開日時

2020年3月18日

背景

新型コロナウイルスCOVID-19による感染症が蔓延しつつある。

コロナウイルスに試験施設の人員の感染や被験者の感染などが発生した場合、試験施設の閉鎖、移動制限、治験薬のためのサプライチェーンの障害などが生じうる。このような場合には、プロトコールの変更は避けられない。

COVID-19による影響は、試験中の疾患の特徴、試験デザイン、試験が実施されている地域など多数の要因によって起こりうる。

推奨事項

  • GCP順守を維持し、臨床試験の完全性を損なうリスクを最小化しながら試験参加者の安全性を確保すること

実施中の試験

代替プロセスの実施は可能な限りプロトコールと一致しているべきであり、治験依頼者及び治験責任医師は、実施した不測の措置の理由を文書化すべきである。治験依頼者及び治験責任医師は、COVID-19に関連した制限が、どのように試験実施の変更とその変更の期間につながったのかを文書化し、どの試験参加者が影響を受けたのか、どのように影響を受けたのかを示すべきである。

試験の評価については、電話連絡やバーチャルな訪問などで代替できる方法により実施、また、もはや治験薬や試験サイトにアクセスする必要のない参加者には追加の安全性モニタリングを実施すること

試験の受診スケジュールの変更、欠席、または患者の中止は、情報の欠落につながる可能性がある(例えば、プロトコールで指定された手技の場合)。症例報告書には、欠落したプロトコール指定情報(例えば、COVID-19による試験受診の欠席や試験中止など)のCOVID-19との関係を含め、欠落したデータの根拠を説明する具体的な情報を記載することが重要であろう。臨床試験報告書にまとめられたこの情報は、治験依頼者及びFDAにとって有用である。

臨床現場での予定された診察に大きな影響が出る場合、通常、自己投与で配布されているような特定の治験薬は、代替の安全な投与方法を利用することが可能であるかもしれない。通常、医療環境で投与される他の治験薬については、代替投与(例えば、訓練を受けているが研究者以外 の職員による訪問看護や代替施設など)の計画についてFDAの審査部門に相談することが推奨される。いずれの場合も、治験薬の説明責任を維持するための既存の規制要件は依然として残っており、これに対処し、文書化すべきである。

有効性評価については、可能であれば、バーチャル評価の利用、評価の遅延、研究特異的検体の代替採取等、有効性評価のプロト コルの変更について、適切な審査部門との協議を行うことを推奨する。有効性評価項目が収集されなかった個別の事例については、有効性評価を取得できなかった理由を文書化する(例:COVID-19 によ る具体的な制限事項を明らかにし、プロトコールで指定された評価を実施できなかった理由を明らかにする)。

開始前の試験

治験依頼者、治験責任医師、及び IRB は、試験実施施設における COVID-19 対照措置の結果として試験が中断される可能性がある場合に、試験参加者を保護し、 試験の実施を管理するために使用するアプローチを記述するための方針と手順の確立と実施、又は既存の方針と 手順の改訂を検討すべきである。方針と手順の変更は、インフォームド・コンセントのプロセス、試験の訪問と手順、データ収集、試験のモニ タリング、有害事象の報告、及び渡航制限、検疫措置、または COVID-19 疾病そのものに起因する治験責任医師、治験実施施設のスタッフ、及び/またはモニターの変更への影響に 対処しうるが、これらに限定されるものではない。方針と手順は、COVID-19の管理と管理のために適用される(地域または国の)方針に準拠しているべきである。上記の変更の性質に応じて、適用される規則の下でプロトコルの修正が要求されることがあります。

以上は一部抜粋の情報です。詳細はオリジナルをご参照ください。

ガイダンス(オリジナル)

EMAも治験依頼者向けガイダンスを3月20日付で公開

PMDAも関連のQAを3月30日付で公開

各施設での対応状況(5月14日付)

class-oembed.php is deprecated since version 5.3.0

class-oembed.php is deprecated since version 5.3.0! Use wp-includes/class-wp-oembed.php instead. in ….

WordPressをアップデートしてからずっとこのエラーが出続けていて、よくわからないまま放置していたのですが、このフレーズでGoogle 検索すると私のページがトップに出てくるようになってしまいました。エラーメッセージを見ると推奨しないだけで、リスクがあるとか、使えないとかいう訳でもないようです。

そもそも、こういうエラーメッセージをページの最上部に表示するのは不自然です。と思ってみていたら、どうやらデバッグモードになっているらしいことがわかりました。なんでそうなっているのかわかりませんが。とりあえず、インストールの時に設定した wp-config.php のなかの

define(‘….’, ‘….’)

が連続する箇所の最下部に以下を追記しました。

define( ‘WP_DISABLE_FATAL_ERROR_HANDLER’, false );   // 5.2 and later
define( ‘WP_DEBUG’, false );

とりあえず、これでうっとうしかったメッセージは見えなくなりました。(2行目はもともと書き込まれていたので追記でもないか?)

とりあえず、めでたし!

CDCのサーベイランスアルゴリズム

CDC(Centers for Disease Control and Prevention)

最近安倍総理大臣もこの言葉を覚えた模様で「日本版CDC」をというような使い方がなされています。業界の人にとっては、ガイドラインを出しているのでその周辺でお目にかかることが多いのではないかと思います。私は、1995年公開の映画「アウトブレイク」で初めて耳にしました。1999年に留学したFDAとは、同じHHSの下部組織、つまりFDAとCDCは組織図上は横並びでした。CDCはどういった仕事をしているのでしょうか?業務は多岐にわたります。CDCの仕事を身近に感じたのは、1999年留学した年に、テレビで「鳥の死骸から西ナイルウイルスが検出された」という発表でした。米国には鳥の死骸のウイルス検査をしている行政機関があることに驚きました。その後ニューヨークでは夜間にヘリコプターで住宅街に殺虫剤をまくというプロジェクトが放送されていました。夜間に殺虫剤をまくので窓を閉めて寝るようにという放送がされていました。テレビの放送によると、「人体には無害な殺虫剤をまくが、念のため窓を閉めておくように」という事でした。

次に私が目にしたのは、FDAのCBERと共同してワクチンの副反応を集めて集計している業務です。パピローマウイルスワクチン、いわゆる「子宮頸がんワクチン」を知り合いたちと集計したのを覚えています。当時日本では上市前でしたが、すでに上市されていた米国のデータではStill病のような副反応が報告されているという内容でした。

サーベイランスのアルゴリズム

そして今回の新型コロナウイルス肺炎の騒ぎで、伝染病のサーベイランスと結果次第では早めの対応を日本でもできるようにという事で、「日本版CDC」をという議論が出てきているのだろうと思います。ただ、良く判らないのがその機能を担う機関が日本に全くないのかというとそういう訳でもないように思います。それは、さておき感染症のサーベイランスはどんな風にデータを評価しているのか少し調べてみました。Getting started with outbreak detection (アウトブレイクを検出することから始めよう)という論文によるとCDC algorithmという手法があります。新たに発症した症例数を週ごとに集計して、過去の発症例数と比較して変動の範囲を超えて感染者が増加した場合に、そのシグナルを検出する手法です。どんなふうになるのか、論理的な事や数式が出てきて良く判らなくなるよりは、実際のCOVID-19の日本のデータ(3月10日までの集計)を流し込んでどういったアウトプットが得られるのか、ながめてみることにしました。

とりあえず結果です

図はFarringtonアルゴリズムの出力です。四角い柱で1日ごとの度数が表示されています。右端のピークが3月6日。初めのアラートが1月28日(3例報告の日)。

Rplot

実は、CDCが感染の流行をモニターしているアルゴリズムは週ごとのデータしか解析しないということで、今回のような短期のデータを日ごとで集計しようとするとエラーになりました。そこで教科書にCDCのアルゴリズムと列挙されていましたもう一つのアルゴリズム Farringtonのアルゴリズムで集計してみました。とりあえず、過去50日分の報告件数から、変動の範囲内なのか流行の兆しなのかを計算しているようです。この手法は、日ごろから散発的に報告があるような疾患で、急に増えて流行の兆しではないかというのを早期に発見する目的で使用するのに適している様で、COVID-19の様に全く新しい疾患に対しては、この手法は向いていないように思いました。残念。

A statistical algorithm for the early detection of outbreaks of infectious disease, Farrington, C.P.,Andrews, N.J, Beale A.D. and Catchpole, M.A. (1996), J. R. Statist. Soc. A, 159, 547-563.

https://www.jstor.org/stable/2983331?seq=1


library(“surveillance”)
library(readxl)

X0020_STS <- read_excel(“COVID_STS.xlsx”)

CovidDisProg <- create.disProg(week = X0020_STS$week,
observed = X0020_STS$observed,
state = X0020_STS$state,
start = c(2018, 1),
freq=365,
epochAsDate=TRUE)

#Do surveillance for the last 50 days.
n <- length(CovidDisProg$observed)
#Set control parameters.
control <- list(b=2,w=3,range=(n-50):n,reweight=TRUE, verbose=FALSE,alpha=0.01)
res <- algo.farrington(CovidDisProg,control=control)
#Plot the result.
plot(res,disease=”COVID-19″,method=”Farrington”)

# sts.cdc <- algo.cdc(CovidDisProg, control = control)
# <<<error>>> algo.cdc only works for weekly data.
# plot(sts.cdc, legend.opts=NULL)


使用した集計済ファイル

https://gis.jag-japan.com/covid19jp/?fbclid=IwAR3FWAcLkQvXDTUUMtNwm7qRFhplIxSREML5m-rrPXWzfz7IxVANOBdSeSY

KRAS.G12C ミュータント分子と阻害薬の構造

はじめに

KRASは悪性疾患でしばしば変異するがん遺伝子で、腫瘍でのシグナル伝達分子をコードします。その変異分子は以前より報告されていましたし、阻害薬の開発が試みられていましたがなかなかうまくいかなかったという事で、Undruggable KRASとも呼ばれていました。先日の飲み会で、とある先生が、このKRAS分子変異であるG12C(12番目のGlyがCysに変わる変異)に対する阻害薬が有望そうだというような話をされていました。酔っていたので詳しいことは覚えていませんが、とりあえず調べてみるとAmgen社から有望そうな阻害薬AMG510が臨床開発に進んでいるというようなことが解りました。1

この阻害薬の興味深い点は、変異することでCysアミノ酸残基ができるため、この性質を利用してS-Sジスルフィド結合をもたらすような最適化がなされている事です。どういう事かというと、他のATPに似た分子が水素結合での緩い結合を複数形成して結合部位に固定されているのに対して、ジスルフィド結合という共有結合で結合部位に結合されています。共有結合は水素結合より強い(外すのに大きなエネルギーが必要)ですので、水素結合を利用した阻害薬より強力な阻害作用が期待できそうです。それが、変異分子に特異的に作用するという点が味噌です。

また、アロステリック酵素という事で阻害薬が結合すると、分子全体の構造が大きく影響を受けるようです。ということで、その変化をとりあえず見てみます。

方法

だいたい前出の記事と同じ方法でモデルを作成しました。元になる構造は次のもので、P68Xには阻害薬が12番目のシステインに共有結合していました。また、野生型の構造では1番目がMet(合成の際の翻訳開始コドンがATGなのでMetになってしまうが成熟タンパクではなくなることが多い)になっていたので、問題のG12Cの場所は13番目と1個分ナンバーがずれてました。

1. 野生型ヒトKRAS :PDB エントリ 5O2S2

2. 変異KRAS.G12C: PDB エントリ 6P8X3

結果

野生型

wild-type

G12C

G12C

上記を重ねあわせた物

full

slabモードで野生型

wild-type_slab

slabモードで変異型

G12C_slab

slabモードで重ねあわせた物

slab

References

1.
AMG 510 First to Inhibit “Undruggable” KRAS. Cancer Discov. 2019;9(8):988-989. [PubMed]
2.
Guillard S, Kolasinska-Zwierz P, Debreczeni J, et al. Structural and functional characterization of a DARPin which inhibits Ras nucleotide exchange. Nat Commun. 2017;8:16111. [PubMed]
3.
Shin Y, Jeong J, Wurz R, et al. Discovery of <i>N</i>-(1-Acryloylazetidin-3-yl)-2-(1<i>H</i>-indol-1-yl)acetamides as Covalent Inhibitors of KRAS<sup>G12C</sup>. ACS Med Chem Lett. 2019;10(9):1302-1308. [PubMed]

COVID-19 の原因病原体であるコロナウイルスSARS-CoV-2のタンパク質の構造

COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2のMproというタンパク質の構造がPDBに公開されていました。エントリは6LU7。PDBの解説の書き方からすると、このウイルスのタンパク質で他にも構造が決定されている分子があるけれども、(無料で無条件に)公開されているのはこれだけだという様に取れます*1。新しいものを発見したとして、その知財を囲い込んで自分達の金儲けにするというのは20世紀的なアメリカンドリームであって、ものが不足していた頃の考え方で時代遅れでないかと。発見したもので社会の様々な問題を解決したり、世の中を良くする様にというような考え方が広がらないかなぁ。それはさておき、タンパク質の発現にバキュロと昆虫細胞を使った系が多い中、このタンパク質は私が慣れ親しんだBL21(DE3)で発現しています。公開されたものを見てみましょう。(レンダリングは私がしましたが、構造はPDB 6LU7を使用しています)

*1 その後多くの構造が公開されています。ACE2とウイルスのタンパク質の結合についてを別記事に追加しました。(2020.04.11)

SARS-CoV-2コロナウイルス3CLヒドロラーゼ(Mpro)のタンパク質で、登録された構造全体(1分子分)を表示しています。Mpro(白)以外にオリゴペプチド様の阻害薬(薄紫)が一緒に含まれています。

Covid2019A

阻害薬付近が見えやすいように薄切り(Slab)にしてみます。

Covid2019C

両分子間で水素結合がありそうなところを見やすい表示にしてみました。ちゃんとはまり込んでいるような感じになっています。

Covid2019B

PDB newsによると、「PDBアーカイブのエントリーと比較すると、少なくとも90%の配列相同性を持つ蛋白質が95件のPDBエントリーで同定されました。さらに、これらの関連蛋白質構造には、約30個の異なる低分子阻害薬が含まれており、新薬の発見に役立つ可能性があります。」とのこと。それらの阻害薬は治療薬の開発の出発点になるかもしれません。

誰が科学を殺すのか

なかなか衝撃的なタイトルの書籍で、興味深く読ませていただきました。サブタイトルが示す【科学技術立国「崩壊」の衝撃】が示すような現象の、部分部分はこれまでも少なからず報道されていましたが、新しい情報を入れつつ、踏み込んだ取材がなされていました。私の見方では、どこかの誰か個人が悪さを働いているというよりは、日本国民の全体のムードというか、時代の空気に流されていくことで、こういう状況になってきているのだろうなと思いました。

身近な例でも

この書籍の主題とは別に、身近なところでは環境が厳しくなってきています。具体的にどういう集計なのか、わかりませんが10分の1というのが実態を反映している数字であれば、相当にゆゆしき状況です。

image

法改正で良くなるか?

Japanese Cancer Trial Network (JCTN)ではホームページで法改正への提言を訴えています。臨床研究法の制定には、一部の研究者らの不正がきっかけとなった側面があり、(元)研究者らが他研究者らの首を絞めている構図だったりします。科学コミュニティで、プロフェッショナルとしての自浄作用がうまく機能しなかったがために、法律で締め上げられたりするわけです。

それはさておき

私自身がかつて、観察研究のページで描いた内容もあっという間に時代遅れな感じになってしまいましたので、少し補足を。

QAの改訂1

QAの改訂で変わった点ですが、旧問51では、「診療の一環として」行えば、visitや検査の回数が増えても、通常行わないような検査であっても「観察研究」にできるように読めました。この旧問51に相当する新問1-11では、そのような読み方ができない形に改められました。(図は旧新の順です)

image

image

 

QAの改訂2

QAの改訂で旧問59に相当する新問1-12, 1-13ではおなじみ「軽微な侵襲」という言葉が消えました。「軽微な侵襲」も、施設によっては柔軟すぎる運用をやっていたのではないかという懸念もあり厳しくしたのか?とも勘ぐってしまいます。治験のバイオマーカー研究では、普通の感覚では軽微とは言い難い検体採取が必要で、かといって、観察研究としてやるとの治験や特定臨床研究にするのとでは手間が大いに変わります。(だからと言って適当でいいはずもなく)(図は順に旧新)

visitについては、負担が少ないのであればちょっと多めになる程度なら観察研究として実施できるようです。

image

image

image

バイオマーカー研究の位置づけ

2019.3.31版の事例集では、治験に付随するバイオマーカーの研究は「医薬品の安全性有効性をみる」わけではないので観察研究で良いということになったようです。

image

チェックリスト

この辺りをまとめたホームページでは、チェックリストが提供されています。

image

 

とりあえず、アップデートはこの辺で

新型コロナウイルス

2020年1月24日付のNew Engl J Med誌には新型コロナウイルスに関連した記事が複数123掲載されています。無料で読めるようになっていますので、購読契約された職場でなくても読めます。(職場で購読契約しているovidはリアルタイムで読めなくて、少し遅れて全文を見ることができるようになります)スタンリーパールマン(真珠男?)さんの論説2からの情報を中心に、少し整理してみました。

新型コロナウイルスの名前

2019-nCoVと暫定的に命名された。

2019-nCoVが見つかった場所

中国武漢のシーフード市場、生鮮食品市場(wet market)にさらされているヒトに見つかった。

2019-nCoVについて

人から人への感染

当初の報告では人から人への感染は「ない」あるいは「限定的」とみられていたが、1/24/2020現在では人から人への感染は発生しているとされている。かつて流行したSARS-CoVやMERS-CoVのアウトブレイクと同様に重症の呼吸器感染症を引き起こす。1/24/2020現在、800を超える症例が報告されていて、感染した人のうち死亡した者の割合は3%と報告されている。(https://promedmail.org/)

ゲノム配列

同誌のZhu et alが報告した通り3、2019-nCoVのゲノム配列が決定されている。SARS-CoVの配列と75-80%が共通で、いくつかのコウモリコロナウイルスと密接に関連している。初代ヒト気道上皮細胞を用いて培養することができる。培養法は、治療法を開発するための基礎研究に使用できるかもしれない。たとえば、迅速診断法の開発を通して、市場・野生の動物や人での感染者の割合を評価して対策を検討することが可能となる。また、治療薬・ワクチン・動物モデルの開発を促進できる。

SARS-CoV, MERS-CoVで学んだことから

SARS-CoVのヒト気道上皮の受容体はACE2とされている。SARSの時の様にヒトACE2への結合の強い変異を2019-nCoVが獲得しヒト宿主への適応力を高める可能性が指摘されている。このヒト宿主への適応状況を広範囲にモニターする必要がある。

MERS-CoVはラクダから人へ感染し、SARS-CoVは生鮮市場の動物から人へ感染したとされているが、2019-nCoVはコウモリのコロナウイルスとの類似性が高いことから、コウモリがウイルスの主要な貯蔵所である可能性が高い。コウモリから中間ホストを介して感染するのか、コウモリから直接人に感染するかを明らかにすることは人畜共通感染の対策を策定する際に有用である。

References

1.
Munster V, Koopmans M, van D, van R, de W. A Novel Coronavirus Emerging in China – Key Questions for Impact Assessment. N Engl J Med. January 2020. [PubMed]
2.
Perlman S. Another Decade, Another Coronavirus. N Engl J Med. January 2020. [PubMed]
3.
Zhu N, Zhang D, Wang W, et al. A Novel Coronavirus from Patients with Pneumonia in China, 2019. N Engl J Med. January 2020. [PubMed]

「月の光」冨田勲 SACDハイブリッドCDからのデータの抽出

故冨田勲先生からファンへの挑戦だ!

シンセサイザーで有名な冨田勲先生の初めてのシンセサイザーのアルバム「月の光」。アルバムのライナーノートによるとオリジナルのLPが作成されたのが1972年。このブログを書いているのが2020年だからおおよそ50年前。1972年当時私は小学生。そのLPを私が初めて耳にしたのは中学生。当時は同じサークルの先輩からLPを借りて、コンパクトカセットテープに私的にコピーして聴いていました。時代は移り変わってLPはCDへ、カセットテープはMDへ、そして、2020年現在媒体はソリッドメモリーへ主役の座を引き継いでいます。(初代iPodが500円玉の様なハードディスクにデータを記録していたので、ハードドライブも一時的に主役だったか?)1990年に仕事を始めてから医局の将棋の駒のような転勤生活で、大学卒業から現住所まで15回の引っ越し。その過程でカセットテープとかLPとか、忙しさに追われて聴かなくなったソフトの大部分を処分してしまっていました。

年齢を重ねて少し仕事が落ち着いてきて、時間に余裕が出てきた頃から、昔聴いた演奏のリバイバルCDを見つけて聴いたり、若いころに聴いた曲で新しい演奏を探して聴いたりするようになりました。冨田勲先生の作品もCD化されたのをいくつか持っていて、iPodに転送して聴いていました。先日たまたま家のオーディオシステムで聴こうと、その中の一つの円盤をCDプレーヤーに入れてみたところ、「SACD」の表示がでました。アルバム「月の光」CD版はスーパーオーディオCDだったのです。(iPodへ転送できるのは普通のオーディオCD(CD-DA)ですが。)それで、ライナーノートのさらに後ろの方を読み直してみると、このアルバムにはCD-DAとSACDの他にもパソコンで読みだせるAACフォーマットの音声データとして、バイノーラル録音したオーディオファイルを収録していると書かれています。その記述を素直に読むと、誰でもパソコンのCDドライブにディスクを入れたら、オーディオファイルがあって、それをコピーして聴けますよ、と理解できます。でも、実際はここからが大変でした。「リッピングして聴いて良いとは太っ腹」と思ったのも一瞬で、吹っ飛び「これはファンへの挑戦だ!」になりました。そんなこんなで、そのプロセスを備忘録として書き残そうと思った次第です。

パソコンのDVDドライブに「月の光」ディスクを入れると

まずは、素直にPCのDVDドライブにディスクを入れてみました。パソコンからファイルとして見ようとしたところ、CD-DAのオーディオディスクとしては認識されるのですが、パソコンで読みだせる音声データがあるようには見えません。冨田勲先生は以前「バミューダトライアングル」というアルバムの中にデータを音声にエンコードして、音楽の中に混ぜ込んで、コンピューターでデコードして謎を解いてみよ、というような実験もしていました。今はA面B面それぞれにメッセージがあって、次のような物でした。

Side A

THIS IS THE BERMUDA TRIANGLE, OVER. SLOW DOWN. TARGET 50 MILES OFF
SOUTH FLORIDA, A GIANT PYRAMID AT OCEAN BOTTOM.

Side B

THIS IS THE BERMUDA TRIANGLE, OVER. LOOK OUT! THE CYLINDRICAL OBJECT
JUST LIKE THE ONE EXPLODED OVER SIBERIA AND CRASHED INTO TUNGUSKA IN 1908,
HAS JUST COME INTO THE SOLAR SYSTEM.

あのバミューダトライアングルもバイノーラル録音したのを疑似的に2組のスピーカーで立体的に聴こえるような処理したバイノーラル(バイフォニック)処理されていたのを思い出しました。そうだ、この月の光も「これは何か特殊な方法でデータが埋め込まれているから、出来るものなら謎を解いてみよ」というようなメッセージに違いない。埋め込まれている音も、バイノーラルだと言っているし。またバミューダトライアングルみたいな実験をしているに違いない。確信しました。

AACデータの読み出しに苦労した記事がネットに少ない

私が苦労する問題はたいてい先人が解決していて、ネットに記事があるものなのですが、この件については、検索してもそれらしい記事に行き着きません。レイヤーノートの後ろの記述では次の通りです;「マイコンピュータ内のディスクの挿入されたドライブをダブルクリックして開き、ウインドウの中のオーディオファイルをダブルクリックしてください」。私のマイコンピュータ内のドライブにはオーディオファイルがありません。CDのレイヤーはパソコンで見えているはずなのにあるはずのファイルが見えない。ドライブが古いのでSACDのレイヤーのデータへアクセスできていないからかもしれません。

SACDのイメージをパソコンから見る方法が

ブルーレイプレーヤー(BDP-170)に入れたディスクをウインドウズからアクセスする方法がネットにありました。次の4段階に分けて手順があります。

  1. BDP-170側の準備
  2. USBメモリの準備
  3. パソコンの設定(我が家のはウインドウズ7)
  4. データへのアクセス

1. BDP-170側の準備

  • ホームメニュー
  • 本体設定
    • ワイヤレス設定(すでにワイヤレス接続している場合不要で次の「ネットワーク」へ)
      • 次画面へ
      • 現在のネットワークを解除します。続行しますか?<はい>
      • 接続したいネットワークを探して、適切なパスワードを入力する
      • 戻る
    • ネットワーク
      • IPアドレス設定
      • 次画面へ
      • IPアドレス自動取得<オフ>
      • IPアドレス欄に表示されているIPアドレスを記録する(’192.168.xx.xx’)
      • 戻る
    • 再生
      • ディスク自動再生<オフ>
      • ラストメモリー<オフ>

以上を設定したら電源をオフにする。USBメモリーが刺さっている場合は取り外す

2. USBメモリーの準備

  • USBメモリーはできるだけ専用の物にして余計なファイルを置かない
  • サイズはごく小さくて良い。(352kbのファイルが置ければ良さそう)
  • FAT32でフォーマットする。その際ドライブ名は8文字未満にする。(’rip’とかにしました)
  • SACD-extract-BDP160.zipを解凍するとできるAutoScriptフォルダを、USBメモリのルートディレクトリに置く
  • 電源の入っていないときにBDP-170に挿す

3. パソコンの設定

  • ‘C:’ 直下に’sacd’というディレクトリを作成する
  • sacd_extract_0.3.8_WIN32を解凍してできるsacd_extract.exeを’C:/sacd/’に置く
  • Windowsの’ネットワーク’から、BDP-170が見える事を確認する(BDP-170の電源が入っているときに確認)

4. データへのアクセス

  • 2で準備したUSBメモリがBDP-170に挿さっていることを確認
  •  BDP-170の電源を入れる
    • 起動時にUSBを認識している事やネットワークに接続していることを示すアイコンが現れる
    • 勝手にトレイがひらくことがある
  • PCではウインドウズ標準で入っているコマンドプロンプトを起動
  • 次のコマンドを入力
    • c:
    • cd /
    • cd sacd
    • sacd_extract -i 192.168.xx.xx:2002 -P -I
      (xx.xxの部分は上記BDP-170 側の準備で確認したIPアドレス)

10分ほどかかりまして、2.2Gbほどのサイズの一つのISOファイル(ディスクの.isoイメージ)ができました。イメージファイルをそのままDVDに焼くと、再生できない代物ができました。

コマンドの最後の部分を以下のようにしてみました。

    • sacd_extract -i 192.168.xx.xx:2002 -P -s

同じく10分ほどかかりまして、13のdsfファイル(曲数だけの数に分かれる)ができました。これをそのままDVDに焼くとDSDディスクになりますが、これもBDP-170では再生できません。

dsfファイルをAudioGateで.flacにコンバートして、できたflacファイルをUSBメモリーに入れるとBDP-170で再生できました。でも、AACファイルでもなければバイノーラルでもなさそうです。

これで抽出できるのは、SACDのオーディオファイルで、結局SACDのデータを吸い出した様です。この道筋は、それで貴重ですが今回の目的とはちょっと違います。

CD-Extraのフォーマットがカギか?

CD-DAとパソコンデータが入っているフォーマットをCD-Extraと言うそうです。今回の問題を「CD-Extraが再生できない」ととらえると、同じ問題はいくつかの解決策がネットで示されていました。要約すると以下の様な内容。

  • ユーザーの問題(オーディオCDとして自動的に開いたら、エクスプローラ(あるいは「(マイ)コンピュータ」)で開こうとしていない)
  • QuickTimeがインストールされていない
  • 保存されているデータがMac/Windows機種特異的(互換性のないものを開こうとしているとか)
  • CD-ROMドライブ(DVDドライブ)のドライバが古い
  • ドライブが古くて、がマルチセッション対応でない
  • ディスクに傷や汚れがある
  • 常駐させている’AnyDVD’が悪さをしている。これを終了または無効にする。

私の場合はドライブが古かったことが問題の様です。M-Disk対応の比較的新しいドライブをつないだらマイコンピュータからディスクを開いた際にAACファイルが見えるようになりました。勝手に故人からの挑戦を受けて立っていたって、失礼しました。どうぞ安らかにお休みください 拝

治験薬服用後に飛び降り死

「治験薬服用後に飛び降り死 てんかん発作の薬、副作用か」

というタイトルで目を引くような一般向けのニュースがネットで流れていました。これは2019年7月頃に、治験症例で転帰死亡の副作用報告があったとして速報が流れていた件の調査結果報告書で、薬機発第1127020号として令和元年11月27日づけでPMDA藤原理事長名で厚生労働省宛に出された報告書が公開されたことを受けての記事でした。この治験薬の成分記号はE2082で、AMPA受容体阻害薬です。同様の作用機序を有する医薬品としてはペランパネル水和物が国内では製造販売承認されています。全く新しいこれまでに医薬品として使用されてきた歴史のないような作用機序のもの、という訳ではないようです。

治験に関係する仕事をしていますので、自分なりに少しまとめて勉強してみようという事で資料を集めてみました。

過去に治験で問題となった例

関連の業界では有名な治験での苦い経験としては、TGN-1412とBIA 10-2747の例があります。TGN-1412は、superagonistと呼ばれる高い活性が想定される抗体医薬品で、その治験ではサイトカインストームと呼ばれる病態を発生して健常被験者が死亡する恐れのある重篤な状態になりました。BIA 10-2747は、脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)阻害薬で、おそらく脳内カンナビノイドが蓄積することを介して健常被験者が死亡しました。いずれも有名な「事件」ですので、治験薬の名前で検索すれば様々な分析資料を容易に入手することができるでしょう。

今回のケースの臨床経過

ニュースでは簡単に電柱から飛び降りたとして報道されていました。これでは何が起きたのか良く判りません。報告書によると、退院した当日に治験施設を再受診する等の行動が記載されていて、被験者自身にはただ事ではない病態が発生しているという自覚があったように思われます。(以下はリンク先PDFから引用)

また、臨床経過と関連した記述を抜き出しますと次のようになります。

本被験者に発現したすべての有害事象は、治験責任医師により治験薬との関連ありと判断された。入院期間中に被験者から報告された有害事象のうち眠気、浮動性めまい及び悪心はいずれも発現したその日のうちに症状が消失し、当該事象に対し治験薬の投与中止や薬剤治療などの処置は必要としなかった。
Day 14の退院以降の経緯は以下のとおりであった。
・ 本被験者は、令和元年6月24日(Day 14)午前に治験実施計画の規定どおり退院したが、同日午後に規定外で自主的に来院(以下、「規定外来院」)し、令和元年6月22日(Day 12)から幻視・幻聴が発現していること及び令和元年6月23日(Day 13)から眠れていないことを訴えた。規定外来院時の治験責任医師による本被験者の診察において、入院期間中にこれらの症状を申告しなかった理由について、「病院では様々な音が不快で、早く家に帰りたかったため、入院期間中には症状を訴えなかった」と本被験者は説明した。
・ 治験責任医師は、規定外来院時に本被験者に心療内科の受診を勧めたが、被験者本人が心療内科の受診を希望しなかったこと、治験責任医師は入院や治験の検査によるストレスが症状の要因になっている可能性があると考えたことから、症状が続く場合は心療内科の受診を検討することを本被験者に伝達した。その上で、治験責任医師は、本被験者が幻視・幻聴について理路整然と説明する等、その言動に異常は認められないこと、眼振等の症状も認められなかったことから、有害事象の程度や状況に鑑みても入院を要する程度ではないと判断し、本被験者に翌日に医療従事者が連絡することや次回来院日を確認して、本被験者を帰宅させた。
・ 本被験者は令和元年6月25日(Day 15)の午前8時に電柱から飛び降り死亡したことが、6月26日(Day 16)午前に警察から治験実施医療機関に連絡され、治験実施医療機関から治験依頼者に報告された。当該事象は異常行動として報告された。警察による捜査の結果、本被験者の死亡は脳挫滅によるものであった。また、退院後に他の薬物を使用した形跡は発見されず、剖検時に採取された血液及び尿検体のいずれからも覚せい剤や睡眠薬等の異常行動を誘発すると考えられる薬物は検出されなかった。
・ 以上より、治験責任医師及び治験依頼者は、本被験者における死亡は異常行動によるものであり、治験薬との因果関係は否定できないと判断している。

また、治験依頼者が把握していない情報をPMDAが入手したと思われる部分が次のように記載されていました。

本被験者の死亡後に本被験者の手記が自宅から発見された。手記はDay 14の夜からDay 15の朝までの間に記されたものと考えられ、筆跡は乱れ誤字も多く混乱した様子が伺われた。精神症状について以下の記述があった。
・ 治験薬の投与を受けるまではうつになったこともなく、精神症状はなかった。
・ 聞いたことのある音が脳内で複数重なり合う幻聴がある。
・ 他の形が漫画の一場面や絵画、キャラクターのロゴ等様々に見える。
・ 夜が来ても眠れない。体が眠っても意識が起きている感覚がある。
・ 次々と考えが浮かび上がり、思考が瞬時に入れ替わるなど頭が極めて冴える感覚がある。
・ 一方自分は支離滅裂であり、壊れている感覚がある。
・ 自分が障害者になってしまったと感じる。
・ 自分がなくなる恐怖がある。殺してほしい。
・ この状態なら自殺する。

わが身に降りかからないように

メディアはおそらくさまざまな「関係者」を「犯人」に仕立て上げようとするかもしれませんが、経過を読んでいる限り定められた手順を無視した危険なことをした人がいる訳ではありません。退院した当日午後に被験者が予定されたビジットでなく再受診した時の、治験責任医師の判断(入院させずに帰宅させた点、精神科を受診させなかった点等)は見解が分かれる部分かもしれませんが、報告書にはそれぞれ合理的な判断にいたる考え方が書かれており、現場の判断としては誤っていたとは言えないように思います。それではどうしたらよいのかが悩ましいところです。しばらくは報告書を読んで、どこを変えなければならないのか吟味する必要がありそうです。

クラスエフェクトかも

ちなみに、同じAMPA受容体阻害薬であるペランパネル水和物が上市されていて、副作用報告の対象になっています。BCPNNの結果見てみますと、攻撃性, 自殺企図, 激越, 傾眠,怒り, 易刺激性, 意識変容状態, 自殺既遂, 妄想, 骨折, 異常行動, 幻覚, 衝動行為等にシグナル(厳密には集計上のdisproportionality)が上位に見られます。今回の被験者の方が悩んだ症状とあい通じるものが並んでいます。クラスエフェクトである可能性も十分想定できます。

たまごぶらす in TheGLEE 2019

たまごぶらす in TheGLEE 2019

ライブハウスの印象

’たまごぶらす’の出演するライブに行ってきました。場所は神楽坂の TheGLEEというライブハウス。アコースティックな音を大切にしているという事で、ホール内は木目のデザインが上品なイメージを醸し出す小ぎれいな雰囲気の内装でした。今回は他ユニットとのジョイントライブで、’たまごぶらす’は最後でした。仕事が終わってホールに入るとフルート2本とピアノのユニットが最後の曲を演奏していました。

2組目の木管五重奏が始まる前の休憩の間に座席に案内されました。少し遅めに行ったという事でステージで言う上手側端の方の座席でした。流石に目の前のクラリネットの音ばかりが響く感じでしたが、このクラリネットの音が心地よくて’たまごぶらす’が始まる前から大満足です。吉田かなえさん、素晴らしい演奏ありがとうございます!

たまごぶらすの演奏

たまごぶらすの曲は以下の通りでした。お得意のレパートリーでしたが、それぞれ以前より一段とこなれてきて楽しめました。

  1. Jive For Five for Brass Quintet
    ポール・ネーゲル (Paul Nagle) 作曲
    https://youtu.be/kKSRRc_R8To
  2. 歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ
    ジャコモ・プッチーニ作曲
    https://youtu.be/rm4Vj1zp0Rw
  3. 大阪(なにわ)の新世界
    ドヴォルザーク Leo Wood 作曲
    高橋宏樹 編曲
    https://youtu.be/rnEgWeeFe64
  4. ウエストサイドストーリー
    レナード・バーンスタイン 作曲
    https://youtu.be/gwQLzL38UH8
  5. 嵐メドレー〜アンコール(勝手にシンドバット)
    https://youtu.be/puBcK9gIAfY

 

Translate »