平成30年度「若手支援技術講習会」を終えて
実行委員長 大島正伸
平成30年9月6日〜8日のスケジュールで、八ヶ岳山麓の蓼科高原にて、先端モデル動物支援プラットフォームが主催する若手支援技術講習会を開催しました。
今年の講習会には、全国の大学や研究機関に所属する大学院生や博士研究員、若手教員などを中心に、90余名の若手研究者が参加しました。がん研究領域からの参加者が半数以上でしたが、神経、発生、ゲノムなど、幅広い分野からの参加者数も例年以上に多く、広くライフサイエンス領域から若手研究者が集まったのが特長的でした。下記に、今年の講習会の様子について紹介します。
柳井秀元先生 (東京大学) |
相賀裕美子先生 (国立遺伝学研究所) |
柴田龍弘先生 (東京大学・国立がん研究センター) |
尾藤晴彦先生 (東京大学) |
石川冬木先生 (京都大学) |
宮川剛先生 (藤田保健衛生大学) |
豊國伸哉先生 (名古屋大学) |
室井誠先生 (理化学研究所) |
荒木喜美先生 (熊本大学) |
中杤昌弘先生 (名古屋大学) |
講習会では、最先端の研究内容に触れてもらう目的で、各領域で活躍されている研究者の先生方にそれぞれの研究領域のイントロダクションから、最新の研究成果まで「サイエンスレクチャー」シリーズとして発表して頂きました。柳井秀元先生(東京大学)からはとてもわかりやすく自然免疫反応のしくみについて紹介して頂き、相賀裕美子先生(国立遺伝学研究所)はマウスモデルにこだわって明らかにして来た形態形成に関する研究成果を講演されました。柴田龍弘先生(東京大学・国立がん研究センター)にはゲノム研究が次々と明らかにする、がんの発生や悪性化に関する最先端の成果を紹介して頂き、尾藤晴彦先生(東京大学)は、光刺激による神経細胞応答に関する新しいコンセプトについて講演されました。特別講演として、石川冬木先生(京都大学)から、がん細胞が弱いストレスにどのように応答しながら悪性化するのかという、新しい視点からのがん悪性化機構について興味深い研究内容が紹介されました。講師の先生方には、各自の研究歴や研究に対する思いなど、若手に向けたメッセージを込めてお話し頂き、限られた時間でしたが若手からも活発に質問が出て、参加者の皆さんには大変刺激になったシリーズだったと思います。あらためまして、講師の先生方に感謝致します。
技術講習会と冠している本会では、その名の通り、動物モデル技術支援で提供する研究手法やその応用方法などについて、各支援班の代表の先生方が「ワークショップ」シリーズとして紹介しています。今年は、生理機能解析支援からは宮川剛先生(藤田保健衛生大学)よりマウスモデルを使った行動研究の手法や、得られた最新の成果について、炎症と行動パターンについてなど、興味深い話がありました。病理形態解析支援の豊國伸哉先生(名古屋大学)からも、病理形態解析の話だけでなく、 “鉄”とがんの密接な関係について興味深い話が紹介され、分子プロファイリング支援からは室井誠先生(理化学研究所)にプロテオームプロファイリングによる薬剤標的解析の技術について丁寧に解説して頂きました。昨年好評だったモデル動物作製支援の荒木喜美先生(熊本大学)には、今年も夕食の後にサロン形式でたっぷり時間を使って、マウスモデルを作製あるいは使用するときに、必ず肝に命じておくこと(とても重要!)についてお話しいただきました。また、中栃昌弘先生(名古屋大学)から、大規模データ解析による疾患発症研究のアプローチについて紹介して頂き、参加者の皆さんには新しい技術を知る有益な機会になったと思います。若手の皆さんには、ぜひ今回紹介された技術支援を積極的に利用して、研究に役立てて行って欲しいと思います。
さて、講習会のもう一つの大事な柱は、若手参加者全員による研究発表会です。26名が口演し、68名がポスター発表をしました。昨年から、ポスターで発表する皆さんにもじっくりと議論ができるように、ポスターセッションは12名前後のグループを作って、シニア研究者2名も加わり、お互いのポスター発表を聞いて議論する機会を設けました。2時間の予定時間を過ぎてもほとんどのグループでは質疑が継続し、活発な研究交流の機会となりました。一方の口演発表では、制限時間の中で、若手の皆さんが簡潔にかつ的確に自分の研究をまとめて発表し、質疑応答もとても活発に行われたのが印象的でした。この機会が、若手の皆さんにとっていい研究交流の場となり、研究ネットワーク構築の一助となれば、講習会を開催した実行委員としてはとても嬉しい限りです。
がん研究領域の若手が集う「蓼科の若手講習会」の流れを汲み、新たな装いでライフサイエンス領域の若手育成を目的とした「先端モデル動物支援・若手支援技術講習会」がスタートして早くも3回目となりました。プログラム内容を毎年見直して、よりよい講習会作りを実行委員の先生方と目指していますが、年々参加申し込み数が増加し、参加者の研究領域も学際的な広がりを見せており、少しずつですが目的に向かって講習会も成長しているのではないかと思います。今後とも皆様方のご支援を賜ることができますよう、よろしくお願い致します。
大島正伸実行委員長 (金沢大学) |
高田昌彦先生 (京都大学) |
清宮啓之先生 (がん研究会 がん化学療法センター) |
中村卓郎 広報・企画担当 (がん研究会 がん研究所) |
平成30年10月末日
受賞者
会場の様子
【参加者の声】
- 若手に向けたセミナーになっており理解しやすかった
- 同世代・先輩方のレベルの高い研究にふれたり、将来について語り合ったりすることで、大きな刺激を受けた。各分野のトップレベルのシニアの先生方と交流する機会もあり、とても有意義だった。
- 現在第一線でご活躍されている先生方のこれまでのご苦労された話、紆余曲折のお話を聞けたのが、とても勉強になりました。
- 自分の分野外の研究者へわかりやすく発表することを意識した解説を聞く機会が今までなかったので、とてもモチベーションが上がりました
- 異分野のSL・WSであっても、プレゼンテーションが面白く又は分かりやすくとても楽しめました
- 同じくらいの年代の方のレベルの高い研究内容に触れ合うことによって、今後の自分の実験にたいする姿勢が変わりました
- 現在多大なる業績をのこされている方がどんな研究人生を歩まれたのかを知ることができ、今後自分の人生を考える際の糧となりました
- 自分が知っている分野以外の先生方の話を聞け、また自身の研究にも応用できるかもしれないと思えました。また現状、自身に足りない部分の再確認することができとても良かったです
【グループディスカッション】
- 自身の研究を「よりわかりやすく、伝えることができる」ための、良いトレーニングになった
- ポスター発表機会が多くあり、多くの方とdiscussionできて有用であった
- 小グループでdiscussionできるのがよかった。質問しやすく、内容もより理解できた
- 今までの学会と異なり、自分の研究領域以外の方からも質問を頂く事ができ、異なる視点から再検討することができた
- 他分野の方からのご質問されることで、自分では考えられない視点に気付くことができ、良い刺激をもらえた
- 多様なバックグラウンドの先生方から、多様な質問、ご指摘をもらえるのが良かった。
- 普段の学会よりもさらに近い距離感でシニアの先生方と話すことが出来てよかった。
- 若手の先生方やベテランの先生方から貴重な意見をいただけるすばらしい機会になった
- 比較的少ない人数で蜜なディスカッションができた
- 学会とは異なる雰囲気で質問しやすかった