大会長挨拶
この度、2023年(令和5年)6月30日、7月1日の会期にて、神戸の地におきまして第28回日本緩和医療学会学術大会を開催させていただきます栄誉を賜り、皆さまにこころより感謝申し上げます。
新型コロナウイルス感染症、ロシアのウクライナ侵攻など、世の中を揺るがす大きな事件が今なお続く状態の中、 この文章をしたためておりますが、まずは、病にかかられた、そして被害にあわれた多くの方々に対し、こころ よりお見舞い申し上げます。一日も早くいずれも収束し、安心に暮らせる日々が訪れることをお祈りすると同時に、自分に何かできることはないかと考えずにいられません。
現在、緩和ケアは、がん疾患だけでなくあらゆる重い病をかかえた患者さんやご家族などにその適応を広げています。一方で、まだまだ不十分である、必要なところに届いていないという声もしばしば耳にします。現場では多くの医療者がそれぞれの最善を尽くして医療・ケアに携わっています。一体、何が必要で、何が足りないのでしょうか。
日本はどんどんと世界に先駆けて高齢社会となってきています。多くの方々が医療・ケアや社会の進歩に伴い、長く社会で暮らすようになってきています。当然、病気を抱えながら生きる方々もどんどんと増えています。この社会の中で、私たち緩和ケアに携わる医療福祉関係者には、いったい何が求められているのでしょうか。また何ができるのでしょうか。
本大会では、「こえを聴き、希望を支え、そして、つなげる」をテーマとさせていただきました。
このことばをテーマとした理由は、患者さんやご家族などを含めた大切な方々の、もちろん言葉としての声もそうですが、声なき声も含めたあらゆるこえを聴き、そのお一人一人の様々な想いや気持ちのこもった希望を支えることこそが、緩和ケアの原点だからです。そして、それをどの場面でも、それは病院であってもご自宅であっても、治療の場面であっても、療養や生活の場面であっても、患者さん、ご家族など、医療福祉関係者、すべてがつながっていく、そしてあらゆるところであらゆる人々がすきまなくそのこえや希望をつなげていくことこそが、患者さんやご家族などのQOLを向上していくという、緩和ケアの究極の目的を表しているからです。
この究極の目的を果たすために、私たちは日々悩み、苦しみつつも緩和ケアを実践しています。実践する上で大きなよりどころとなるのは、臨床疑問から発した多くの研究とそれによって構築されたエビデンスです。
本大会では、現時点では、現地開催とコロナ禍で培ったオンライン開催のよいところを生かして開催したいと考えています。是非、神戸の地で新たな出会いに感動し、再会を歓び、そして、前に進んだその先で緩和ケアをより深く知りさらに深く学びあう、熱い2日間を過ごしませんか。
私たち関係者一同、皆さまをおもてなしできるよう、精いっぱいご準備いたします。
緩和ケアがもっと広く、もっとたくさん、もっと手厚く、多くの方々に広がり浸透し届くことを、こころより祈っております。みなさまがお一人でも多くの仲間と一緒にご参加くださることを、お待ち申し上げております。
第28回日本緩和医療学会学術大会
大会長 下山 理史
愛知県がんセンター 緩和ケアセンター/緩和ケア部