脳神経外科での脊椎手術

脳神経外科で脊椎の手術をするということ

脳神経外科で脊椎の手術をするということは、まだ、あまり一般には認知されていないかもしれません。 しかし、これは実は日本に特有のことで、世界的にみれば、脊椎の手術は、脳神経外科で行われる手術の半分以上を占めています。

脳神経外科という言葉は、英語のNeurosurgeryを翻訳したものですが、Neuroは、神経、 Surgeryは、外科という意味ですから、本来は、神経外科と訳すべき言葉です。従って、 脳神経外科の本来の領域は、神経に関する外科一般、すなわち、脳だけに限らず、脊髄や、末梢神経に関 する手術も、すべて脳神経外科の守備範囲だということになります。実際に、中国や韓国では、Neurosurgeryは、 神経外科と翻訳され、したがって、その守備範囲も、脊髄や末梢神経を含むことが当然のこととされています。 欧米でも、それが当然のことであり、脳神経外科で多くの脊椎手術が行われていることは、先に述べた通りです。 日本だけが、「脳神経外科は、脳だけが守備範囲」のような形になっているのは、数奇な歴史上の産物といえますが、 残念なことともいえるかもしれません。

しかし、最近では、脳神経外科でも脊椎手術を専門とする医師が増えており、多くの脊椎手術が行われています。 本来の姿に戻りつつあるといえますが、まだまだ一般に認知されているとはいいがたいのが現状です。

脳神経外科での脊椎手術の特徴

脳神経外科での脊椎手術の特徴は、なんといっても、手術用の顕微鏡を使った、顕微鏡手術であるということです。 我々は、脳の手術で、顕微鏡を使った、ていねいでデリケートな手術を行っています。その同じ技術を使って、 脊椎・脊髄の手術を行うことができます。顕微鏡で手術を行うということは、病変が拡大されるというだけでなく、 明るいライトで術野を照らし、脊髄や神経、血管などのデリケートな組織を、はっきりと見ながら手術をする ことができます。これによって、裸眼で手術をすることに比べて、はるかに安全な手術ができます。

また、顕微鏡手術は、内視鏡手術と似ていますが、実際にはずいぶん違った手術です。顕微鏡では、両眼で術野を見ることができ、 それによって、術野の3次元的な奥行きをはっきりと把握することができます。これに比べて、内視鏡では、 内視鏡を映し出すテレビモニターを見ながら手術をすることになり、奥行きの把握という点では、大きく不利になります。 一長一短はありますので、一概にどちらがよいと決めつけることはできませんが、少なくとも顕微鏡の方がより安全ではないか と考えています。

どんな病気の手術が行われているか?

脳神経外科では、ほぼすべての脊椎・脊髄疾患の治療が可能です。ただし、実際に手術を受けられる際には、 日本脊髄外科学会で認定された、指導医(または認定医) に相談されることをお勧めします。

疾患の種類としては、以下にお示しするようなものが網羅されます。

  • 頚椎症・頸椎後縦靭帯骨化症
  • 頸椎椎間板ヘルニア
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 脊髄腫瘍
    • 硬膜内髄外腫瘍(髄膜腫、神経鞘腫、等)
    • 髄内腫瘍(星細胞腫、上衣腫、血管芽腫、等)
  • 血管障害
    • 硬膜動静脈瘻
    • 動静脈奇形
それぞれの疾患ごとの詳しい解説は、それぞれのページをご覧ください。