「妊婦の冷え症と異常分娩との因果効果の推定」
アンメットメディカルニーズの解明-

JSPS 科研費22592525の助成を受けて行った研究です。

研究の概要:

 わが国では、女性一人当たりの出産回数は1 回と少なく、異常分娩へのリスク回避は重要です。したがって、分娩時のリスク検証は喫緊の課題です。冷え症は早産等の原因といわれ、一部の施設では冷え予防の指導を積極的に行っています。しかしその根拠は経験知であり、冷え症が分娩にもたらす影響を科学的根拠に基づいて証明した研究はありません。

 本研究の目的は、妊婦の冷え症と、異常分娩(早産・前期破水・微弱陣痛・遷延分娩・弛緩出血)の発生率との因果効果を推定することにあります。そして、妊婦の冷え症が、重要視されているにもかかわらず、未だ満たされない医療分野であること(アンメット・メディカル・ニーズ)の解明をすると同時にEBM を確立し、周産期医療の質向上の一助とすることであります。

 

目的

着想に至った経緯

 古来より、日本では安産祈願などの儀式的な理由の他に、保温の目的で腹帯を着用する風習がありました。このように、感覚的に冷えは妊婦にとって問題であると捕えていました。昨今でも、女性の50%以上が冷え症であるといわれるほど(寺澤,1987;坂口,2001;三浦,2001)、社会一般で冷えは深刻な問題であると認識されています。妊婦においても、助産施設等では冷え予防のケアや指導が積極的に行われており、冷え症はマイナートラブルのみならず、早産や微弱陣痛など様々な異常の誘引であると考えられています。

 このように重点化されている冷え症でありますが、この見解は、経験知ならびに実践知からくるものであり、そこに科学的根拠はありません。さらに、周産期医療全般においては、冷え症の認識は薄く、特に早産等の分娩時の異常への影響があるという問題意識は乏しいです。また教育の分野においても、助産施設等の臨床現場で冷え症へのケアが積極的に行われているにもかかわらず、教科書には冷え症についても記載が無いという一貫性に欠けた状態です。つまり冷え症は、未だ満たされない(未開発の)医療上の問題の一端でありながら、その実態は不明確であり、本研究の必要性は大きいと考えました。以上が、着想に至った経緯です。

 

研究期間に何をどこまで明らかにするか

 日本人妊婦を対象に、冷え症の分娩時への影響を分析し、冷え症と異常分娩(早産、前期破水微弱陣痛、遷延分娩、弛緩出血)との因果効果の推定を行います。

 因果効果とは、独立変数と従属変数の両方に影響を与える交格因子の影響を除去した場合の独立変数による従属変数への効果のことであります。したがって、本研究では、傾向スコア(Prpensity Score)を用いて交格因子のコントロールを行い、その影響を調整して、冷え症による異常分娩への効果を分析します。

研究プログラム

プログラムの概要

プログラムの概要

基盤となる先行研究

 

研究結果

現在、以下の学術誌に投稿中です。採択され次第UPします。

パンフレット&ポスター

見逃さないで!お腹の冷え!~手足の冷え(冷え症)と、お腹の冷えの関係~ 冷え症とお産-冷え症だと、お産に影響があるの?-  知っていますか? 冷え症とお産の異常との関係