第4回日本集団災害医療研究会・抄録集1


第4回日本集団災害医療研究会・抄録集
(一般演題F)


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会告プログラム
  抄録集:一般演題A
   〃 :ワークショップシンポジウム

F-31 看護基礎教育における災害救護訓練の有効性

○小原真理子(日本赤十字武蔵野短期大学)


はじめに
 本学は、平成9年から厚生省・保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則の一部改正を機 に、看護学のなかに必須科目として災害救護論を設置した。その意図は、赤十字理念の具現化としての災害看護、災害看護の見直しに対する社会的ニーズ、国際化に伴う人造りのニーズの3つの視点からなる。災害救護論学習は 1)赤十字における国内救護活動 2)災害と国際協力 3)災害看護の特殊性と基本 4)災害現場で役立つ自己管理 5)赤十字救急法 の5つに大きく分類される。授業時間は60時間、2単位となっている。
 今年10月、8月、授業の一環として、本学の学生が日本赤十字社主催大規模地震災害救護訓練に参加した。一人一人がボランティア応急救護者の役割と傷病者の役割双方を体験した、今回、訓練の実際と、終了後、学生にアンケートした結果から、救護訓練の有効性等について考察した。

1. 方法
 救護訓練に参加した2年生85名、1年性3名を対象に実施した3種類のアンケート( 1)訓練全体に関し 2)応急救護者の役割を通して 3)傷病者の役割を通して)を通して、学生の学びや感想、訓練への提言等から、看護基礎教育における災害救護訓練の有効性等について考察した。

2. 結果
 訓練全体に関するアンケート:回答率88.4%(78名回答)、1)訓練を通じての満足度 (5段階評価)では4以上と答えた者78.2%、2)訓練を通して学んだ主な事(自由記載)は、冷静に行動する28.2%、自分の知識・技術の不足18.1%等であった。3)救護班と救護ボランティアの連携(自由記載)については、医療救護班がもっとボランティアに指示すべき17.8%、それぞれの役割を認識すべき13.3%等であった。当日は他のアンケート結果も報告する。

3. 考察
 学内の授業だけでは習得できない、模擬患者に迫真の演技とメーキャップを施し、臨場感溢れる災害救護場面の中で、応急救護者と傷病者双方を体験した学びが確認された。


F-32 日本赤十字看護基礎教育における災害看護学についての検討

○尾山とし子(日本赤十字武蔵野短期大学)


1. はじめに
 日本赤十字社(以下、日赤)看護基礎教育の目標の1つとして「赤十字の基本原則を理解し、看護や災害救護に活用する基礎的能力を培う」があげられている。事実、日赤は今日まで数多くの人材を育て、国内外での災害救護活動を展開してきた。しかし、金井・山本ら(1997)が提言しているように、日赤の教育に携わっている我々が看護基礎教育の中の災害看護の意義を明らかにし、その体系化に努力してきたかについては疑問が残る。また、赤十字の理念を最も反映できうる災害救護活動がその性格上、1回性に とどまり、多くの経験の蓄積を系統的に研究していない現状がある。
 そこで、今回、金井・山本らの提言をもとに日赤災害看護学の確立へ向けての足がかりとするための意識調査をしたので報告する。

2. 方法
 日赤の看護教育機関の災害看護の授業坦当者または、教務部長40名と日赤での救護活動経験者60名(国内:40名、国外:20名)に金井・山本らの提言論文を送付し、それについての意見・感想の自由記述を求め分類した。

3. 結果
 日赤看護基礎教育のカリキュラム構成に関するもの、看護基礎教育と卒後教育とのつながりや継続性に関するもの、看護基礎教育における災害看護の位置づけ、到達目標に関するものなどに分類された。

4. 考察
 阪神淡路大震災を契機に、看護界では災害看護学の確立の動きが始まっている。日赤は長い歴史の中で数多くの災害救護活動を手掛け、パイオニアとしての役割を担ってきた。今あらためて日赤看護基礎教育の中に、災害看護をどのように意義づけて具体的な教育を展開していくのかが問われている。日赤災害看護学の目的・内容・方法論を理解構成していくところから始めなくてはならないことが検討課題となった。


F-33病院内災害における患者避難誘導時のリーダーの役割

○近藤美知子、玉谷あき子(横須賀共済病院)


【目的】入院患者避難誘導時のリーダーの役割について検討し、災害救護訓練中の問題と今後の課題を明らかにすることを目的とした。

【方法】病院内災害を伴った地震災害の想定で救護訓練を行い、入院患者避難誘導時におけるリーダーの役割について検討した。訓練想定は地震による病院4箇所の倒壊で、階段を利用した模擬患者の避難という設定であった。リーダーには事前に訓練内容の計画書提示し、参加者はリーダーの指示により行動する こととした。実施者と観察者が 避難誘導時の説明、患者の安全を考えた行動 避難中の患者への声かけ 今後の課題の4点について評価した。

【結果】避難誘導時の患者への説明はできていたが、避難中は患者の安全を考えた行動に気をとられ、患者の年齢等を考慮した声かけが不足しているという傾向がみられた。また、看護婦間の声かけや役割確認 と協力の不足等が明らかになった。更に、リーダーは冷静な判断と行動がとれることや、次ぎの行動への適切な指示の必要性を指摘していた。


F-34 病院内施設被害における新生児の避難誘導の安全確保

○玉谷あき子、近藤美知子(横須賀共済病院)


[目的]周産期センターでの新生児の避難経路と搬送方法について検討し、避難誘導時の問題と今後の課題を明らかにする。

[方法]病院内施設被害を伴った地震災害の想定で災害救護訓練を行ない、新生児の避難誘導について検討した。訓練は、地震により周産期センターが倒壊し、新生児の模擬人形10名を避難させる想定であった。避難経路は、新生児室に直結しているエレベーター脇の外の非常梯子を使用して避難し、搬送は、模 擬褥婦と看護婦各々が防災ズキンに包んだ新生児を抱いて避難する。参加者7名と観察者1名にアンケート調査を行ない、 避難経路は適切であったか 避難時に困難・危険を感じた点はあったか 自分達が考えている避難誘導はできたか 今後の課題の4点について評価した。

[結果]避難経路は、外に通じる窓枠が高く、非常梯子は垂直で間隔が大きいため、児を抱いての搬送は転落等の危険があり、看護婦の身体に固定できる紐類の必要性を実感している。また、新生児の識別が解 りにくい点が指摘された。自分達が考えている避難誘導ができた看護婦は6名であり、病棟用マニュアルに沿って実施したという意見であった。

[結論]避難経路として活用できるための補助具の準備と少ない人数でより安全な避難を考える時、応援者にも理解できる新生児のベッドネームプレートの表示とカンガルー袋洋の搬送用具の準備は早急に解決 すべき課題と考える。?


F-35 防災訓練における現状分析と検討

○石井美恵子、嶋田幸子、熊谷 謙、浅利 靖、若林靖久、新藤正輝、相馬一亥、大和田隆(北里大学)


 【目的】1)年1回実施しているシナリオに基づく防災訓練の意義、成果の検証。2)現状の問題点の明確化と医師、看護婦の実践能力の評価。3)教育、訓練方法の検討

 【方法】1)事前に防火訓練のテーマ、目的だけを連絡して抜き打ち訓練とした。2)地震直後、火災生という例年同様の状況設定とした。3)テーマ「First actionを考える」ー自分は何をしなければならないかー4)管理課防災坦当職員が訓練の評価を行った。

 【結果】指揮系統、情報伝達が混乱した結果、初期消火の遅れ、避難させる患者の優先順位の決定が困難、消火、避難に当たらず非常持ち出し物品を準備するリーダー看護婦のパターン化した行動などが見られた。また、消火設備、避難路、院内防災センターへの緊急用直接回線など基本的な知識の不足など多くの問題が明確になった。

 【考察および結論】シナリオによる防災訓練は、画一的な行動パターンを認識させるだけで、臨機応変に判断し行動することが要求される災害時の訓練には効果がないと言える。また、新採用時の防災に関す るオリエンテーションについて記憶している医師、看護婦は少なく、現状では災害発生時、 混乱を来たし被害の拡大、二次災害の発生が危惧される。
 その後の当救命救急センターにおける防災に関する教育、訓練についても言及する。


わが国の災害医療のあけぼの

坂本重太郎(日本外交協会理事長、前駐スペイン大使)


1. 経緯
 (1)当時のインドシナ情勢
     カンボジア難民のタイへの流入
 (2)国際世論とわが国の立場
     緒方貞子ミッションの派遣
 (3)救急医療チームの派遣と医療基地建設
     官民協力

2. 問題点
 (1)登録制度に関する閣議了解
     その後うまくいかず
 (2)欧米諸国に比し依然出遅れ
 (3)救急医療チームからPKOへ
     一般人の関心弱まる?

3. 今後の施策
 (1)要請ベースへの反省
     登録制を含め欧米の制度から一層の学習を
 (2)体制確立のために一層の努力を
     医学界の協力と
     政府の決断の迅速化を


航空機による患者搬送ー固定翼機か回転翼機かー

滝口雅博(弘前大学)


 航空機による患者搬送は歴史的に考察すると、戦争時の負傷者の後方への搬送にその端を発している。その始まりは、1870年にフランス革命時の熱気球による負傷者搬送に始まる。やがて1903年に飛行機が発明されると、飛行機の時代が到来し、1915年には飛行機による負傷兵の後方への搬送が行われ、これ が欧米各国はもとより、我国においても軍により大規模に行われた。そして飛行機による患者搬送は現在でも軍、民に係るず通常的に行われている。一方1941年に実用ヘリコプターが発明されると、これも戦 争で局地的な短距離のいわゆる救難救護搬送に利用されるようになり、ヴェトナム戦争では組織的な運用がなされ、これを手本にして西ドイツで民間患者救護搬送が行われ、現在のヘリコプターによる救急患者搬送の手本になった。

 これらの2種類の航空機が救急救護に使用されるに際しては当然各々長所短所を有しており、本セミナーではこの点を明確に示してその利用方法を解説したいと考えている。

 また、現在はこの2つの特徴を兼ね備えたVTOL機の開発・実用化も進んでおり、2000年には実用化され、今後の航空機による局地的な救急救護搬送にエポックメーキングな事が生ずるかも知れない。この事についても述べてみたいと考えている。