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遺伝性パラガングリオーマ・褐色細胞腫症候群
(Hereditary Paraganglioma-Pheochromocytoma Syndromes)

Gene Reviews著者: Tobi Else, MD, Samantha Greenberg, MS, MPH, CGC, and Lauren Fishbein, MD, PhD, MTR
日本語訳者: 與那嶺 正人/竹越 一博(筑波大学医学医療系 臨床検査医学/スポーツ医学)

Gene Reviews 最終更新日: 2018.10.4  日本語訳最終更新日: 2020.7.15

原文: Hereditary Paraganglioma-Pheochromocytoma Syndrome


要約

疾患の特徴 

遺伝性パラガングリオーマ・褐色細胞腫(PGL/PCC)症候群は、パラガングリオーマ(傍脊椎軸に沿って対称に頭蓋骨底から骨盤まで発生する神経内分泌組織から生じる腫瘍)と褐色細胞腫(副腎髄質に限局されるパラガングリオーマ)を特徴としている。交感神経由来のパラガングリオーマはカテコールアミンを過剰産生するが、副交感神経由来のパラガングリオーマは非産生性であることが多い。副腎外副交感神経由来のパラガングリオーマは主に頭蓋底、頸部(頭頚部PGL[HNPGL])、および縦隔上部にみられる。これらのおよそ95%はカテコールアミン非産生性である。対照的に、副腎外交感神経由来パラガングリオーマの発生部位は通常縦隔下部、腹部、および骨盤に限局しており、カテコールアミンを過剰産生する。副腎髄質から発生する褐色細胞腫は一般的にカテコールアミンを過剰に産生している。PGL/PCCの症状は、腫瘍占拠(mass effect)もしくはカテコールアミン過剰産生(持続性または発作性の血圧上昇、頭痛、一時的な大量発汗、激しい動悸、蒼白、心配あるいは不安感など)のいずれかに起因する。悪性化のリスクは褐色細胞腫よりも副腎外交感神経性パラガングリオーマで高い。

診断・検査 

パラガングリオーマまたは褐色細胞腫の診断を受けた患者は、遺伝性PGL / PCC症候群の可能性を疑う必要がある。遺伝性PGL/PCC症候群の診断は、多発性、多巣性、再発性、または若年発症、そして家族歴のあるパラガングリオーマまたは褐色細胞腫がある患者で強く疑われる。 遺伝性の診断は発端者において、分子遺伝学的検査でMAXSDHASDHAF2SDHBSDHCSDHD、またはTMEM127のヘテロ接合性の胚細胞変異を同定することにより確立される。

臨床的マネジメント

症状に対する治療:
カテコールアミン産生性腫瘍に対しては、αアドレナリン受容体遮断薬によりカテコールアミンの過剰産生を阻害し、その後に外科的治療を行う。カテコールアミン非産生性腫瘍については、外科的手技の利点とリスクを詳細に分析した上でのみ外科的切除を検討する必要がある。HNPGLのすべての患者は、外科的切除の前にカテコールアミン過剰について評価する必要がある。もしカテコールアミン過剰産生である場合、HNPGL以外にPGL / PCCを有している可能性がある。 注意深い待機療法または放射線療法は、HNPGLの治療オプションの一つです。 SDHB病原性多様体を有することが知られている個人で特定されたPGL / PCCは、転移性疾患のリスクが高いため、待機療法または放射線療法よりも外科的切除の方が利益を得る可能性がある。

SDHBキャリアにおける二次性合併症の予防:
定期検査による早期検出および腫瘍切除により、腫瘍占拠(mass effect)、カテコールアミン過剰産生、および悪性化に関連する合併症の予防あるいは最小化が可能になることがある。

定期検査 :
遺伝性PGL/PCC症候群発症リスクがある人に対しては毎年、生化学的検査を行いPGL/PCCの自他覚的症状を確認し、隔年の全身MRI検査を6~8歳から開始する必要がある。また原因不明の胃腸症状のある場合は、消化管間質腫瘍の内視鏡評価を検討する。

回避すべき薬剤や環境:
データは非常に限られているが、低酸素状態(高地での生活、喫煙など)は、腫瘍の発生率を高め、腫瘍の成長を促進する可能性がある.

リスクのある血縁者の検査:
既知のMAXSDHASDHAF2SDHBSDHCSDHD、またはTMEM127病原性多様体を持つ個人の第1度近親者は、分子遺伝学的検査を受けるべきである。これにより遺伝的状態を明らかとなり、診断の確実性が向上するとともに、病原性バリアントを遺伝していない人にかかる検査費用削減につながる。

遺伝カウンセリング 

遺伝性PGL/PCC症候群は常染色体優性形式で遺伝する。SDHDの病原性バリアントは、片親起源効果を示し、一般に、変異が父親から遺伝した場合にのみ疾患の原因となる。 SDHAF2(PGL2)およびMAXの病原性バリアントが、SDHD病原性バリアントと同様な片親起源効果の遺伝形式を示唆している。遺伝性PGL / PCC症候群の発端者は、親から病原性多様体を受け継いでいるか、まれにde novo病原性多様体を持っている可能性がある。de novo病原性多様体を有する個人の割合は不明である。遺伝性PGL / PCC症候群の原因となる病原性多様体をもつ患者の子は、病原性多様体を遺伝する確率が50%です。SDHDの病原性多様体を母親から受け継いだ場合は、疾患を発症するリスクは非常に低いですが、その発症リスク無視できるほど低くはありません。父親からSDHDの病原性多様体を受け継ぐ個人は、PGL / PCCを発現するリスクが高い。罹患した家族で病原性多様体が同定されている場合、リスクが高い妊娠の出生前検査と着床前遺伝子検査が可能である。


診断

褐色細胞腫とパラガングリオーマに関する内分泌学会のガイドライン[Lenders ら 2014]およびがん素因に関する米国医学遺伝学ガイドライン[Hampel ら 2015]は、パラガングリオーマまたは褐色細胞腫(PGL / PCC)のすべての個人に、病原遺伝子の分子遺伝学的検査を行うことを推奨している。

遺伝性PGL/PCCを示唆する所見

遺伝性パラガングリオーマ-褐色細胞腫(PGL / PCC)症候群は、パラガングリオーマまたは褐色細胞腫のある個人、特に以下の所見を有する個人で疑われる必要がある[Young 2011、Lenders ら 2014]:

  • 以下のような腫瘍:
    • 多発性(すなわち、複数のパラガングリオーマや両側性褐色細胞腫など)
    • 多巣性(パラガングリオーマと褐色細胞腫の両方が同時多発性または異時多発性に発生など) 
    • 再発
    • 若年発症(年齢<45歳)
    • 副腎外
    • 悪性
  • パラガングリオーマや褐色細胞腫の家族歴あるいは原因不明の突然死の家族歴
    注:遺伝性PGL / PCC症候群の多くの人は、頭蓋底または首、胸部、腹部、副腎、または骨盤に孤立性腫瘍を示し、パラガングリオーマまたは褐色細胞腫の家族歴がない場合がある。

臨床的特徴

  • カテコールアミン過剰に伴う徴候と自覚症状(例:血圧の持続的または発作性の上昇、頭痛、動悸、不整脈、大量の発汗、心配または不安感、および非古典的な徴候と症状として蒼白、悪心・嘔吐および 血糖コントロールの突然の変化など)
  • 症状は、体位の変化、腹腔内圧の上昇、薬剤(メトクロプラミドなど)、麻酔導入、運動、排尿などによって誘発される
  • 触知可能な腹部腫瘤
  • 頭蓋底または頸部の腫瘤の増大
  • 頭頸部領域の脳神経(VII、IX、X、XI)と交感神経の侵害(例:嗄声、嚥下障害、軟口蓋麻痺、Horner症候群)
  • 耳鳴り

検査所見

血漿および/または24時間尿中のメタネフリンおよび/またはカテコールアミンの上昇として、以下のいずれかが含まれる:

  • エピネフリン(アドレナリン)およびその主な代謝産物であるメタネフリン
  • ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)およびその主な代謝産物であるノルメタネフリン
  • ドーパミンおよびその主な代謝産物である3-メトキシチラミン

カテコールアミン産生性腫瘍が疑われる場合は、カテコールアミン過剰産生について血中および/または24時間尿中メタネフリン分画およびカテコールアミンを評価する。

注:(1)カテコールアミンの測定よりも感度が高いため、血中または尿中メタネフリン分画の測定が好ましい[Young 2011]。(2)血中ノルメタネフリン分画が基準値の4倍以下の増加の場合は、24時間尿中メタネフリン分画の追跡検査により偽陽性を軽減できることがある[Algeciras-Schimnichら 2008]。(3)ノルエピネフリン過剰産生がほとんどないエピネフリンの分泌は、副腎褐色細胞腫を示唆しており、これは多発性内分泌腫瘍2型に関連している可能性がある[Young 2011]。


確定診断

遺伝性PGL / PCCの診断は、多発性、多巣性、再発性、または早期発症のパラガングリオーマまたは褐色細胞腫および/またはパラガングリオーマまたは褐色細胞腫の家族歴がある患者で強く疑われるべきである。

遺伝性PGL / PCC症候群の診断は、発端者において表1に記載されている遺伝子の1つにヘテロ接合性の胚細胞変異を同定することによって確立される。

分子遺伝学的検査

遺伝性PGL / PCC症候群の診断には、マルチ遺伝子パネル検査と(特定の状況での)単一遺伝子検査に分類される

MAXSDHASDHAF2SDHBSDHCSDHD、およびTMEM127を含むマルチ遺伝子パネルとその他の対象遺伝子(鑑別診断を参照)は、最も合理的なコストで病態の遺伝的原因を同定する可能性が高い.
その一方で、重要性が不明なバリアントや、基礎となる表現型を説明しない遺伝子の病原性バリアントを同定することがあるという制限を有する.
注:(1)パネルに含まれる遺伝子および各遺伝子に使用されるテストの診断感度は、研究機関によって異なり、時間とともに変化する可能性がある。 (2)一部のマルチ遺伝子パネルには、GeneReviewで記載されていない遺伝子が含まれる場合がある。(3) 検査室によっては、パネルのオプションとして、臨床医が指定した遺伝子を含む、検査室で設計したカスタムパネルおよび/または表現型に焦点を当てたカスタムエクソーム解析が含まれている場合がある。(4) パネルで使用される方法には、配列解析、欠失/重複解析、および/または他の非配列ベースの検査が含まれる。この疾患では、欠失/重複解析を含むマルチ遺伝子パネルが推奨される(1参照)。

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単一遺伝子検査

マルチ遺伝子パネル検査の費用対効果や遺伝性PGL/PCC症候群における表現型の重複を考慮すると、単一遺伝子検査は一般的には使用されません。しかし、状況によっては、単一遺伝子検査を利用した方が費用対効果が高い場合もある。臨床的特徴に基づいて優先順位の高い遺伝子検査を単一遺伝子検査として施行することがある。

  • 副腎外腫瘍を有する単発性の場合[Amar ら 2007]や悪性腫瘍を有する患者の場合のSDHB遺伝子検査
  • 非分泌性(副交感神経)または分泌性(交感神経)頭頸部パラガングリオーマ(HNPGL)患者におけるSDHD遺伝子検査
  • 既知の家族性病原性バリアントを標的とした遺伝子検査

表1. 遺伝性パラガングリオーマ-褐色細胞腫症候群で使用される分子遺伝学的検査

変異遺伝子1,2 当該遺伝子の変異に起因する遺伝性PGL/PCCの割合 検査によって当該遺伝子の病原性変異が見つかる割合
配列解析4 遺伝子標的欠失・重複解析5
MAX ~16 >95%7 発端者2例8
SDHA 0.6%-3%6,9 ~100%10 報告なし
SDHAF2 <0.1%6 ~100%11 報告なし
SDHB 10%-25%12
12%-20% of HNPGL13
24%-44% of chest, abdomen, pelvic PGL/PCC14
~85%-95%12,13,14 ~5%-15%15
SDHC 2%-8%12,14 ~85%12,16 ~15%17,18
SDHD ~8%-9%12
~40%-50% of HNPGL13
~15% of chest, abdomen, pelvic PGL/PCC14
~95%12,13,14 ~5%17
TMEM127 ~2%6 ~100%19 報告なし
不明20

  1. 遺伝子はアルファベット順に記載されている。
  2. 染色体座とタンパク質については、表Aの遺伝子とデータベースを参照してください。
  3. この遺伝子で検出された対立遺伝子変異の情報については、「分子遺伝学」を参照。
  4. 配列解析は、良性、良性の可能性が高い、意義不明、病原性の可能性が高い、または病原性のあるバリアントを検出する。病原性バリアントには、小さな遺伝子内欠失/挿入、ミスセンス、ナンセンス、スプライス部位のバリアントが含まれる可能性があり、通常、エクソンまたは全遺伝子の欠失/重複は検出されない。配列解析結果を解釈する際に考慮すべき事項については、こちらをご覧ください。
  5. 遺伝子標的欠失/重複解析は、遺伝子内欠失または重複を検出する。使用する方法としては、定量PCR、ロングレンジPCR、マルチプレックスライゲーション依存性プローブ増幅法(MLPA)、単一エクソン欠失や重複を検出するように設計された遺伝子標的マイクロアレイなどがある。疑似遺伝子のため、多くの研究室ではSDHA欠失/重複解析を行っていない。
  6. Bausch ら [2017]
  7. Comino-Méndezら[2011]、Burnichonら[2012]、Rattenberryら[2013]。
  8. Burnichonら[2012]により報告されたMAX遺伝子全ての欠失;Korpershoekら[2016]により報告された複合再配列
  9. Burnichonら[2009]、Korpershoekら[2011]、Buffetら[2012]。
  10. Welanderら[2013]、Caseyら[2017]、van der Tuinら[2018]。
  11. Hao ら [2009]、Kunst ら [2011]、Piccini ら [2012]、Currás-Freixes ら [2015]、Zhu ら [2015]、Bausch ら[2017]。
  12. Andrews ら [2018
  13. Baysalら[2002]、Burnichonら[2009]。
  14. Amarら[2005]、Burnichonら[2009]。
  15. シングルエクソン(最も一般的にはエクソン1)、マルチエクソン、および全遺伝子欠失が報告されている[Cascón ら.2006、Burnichon ら.2009、Neumann ら.2009、Solis ら.2009、Buffet ら.2012、Rattenberry ら.2013]。
  16. Schiaviら[2005]、Peczkowskaら[2008]、Neumannら[2009]、Elseら[2014]。
  17. Baysalら[2004]、Burnichonら[2009]、Neumannら[2009]、Hoekstraら[2017]。
  18. Qin ら [2010]、Yao ら [2010]、Neumann ら [2011]、Qin ら [2014]。
  19. KIF1BEGLN1(旧名PHD2)、MDH2EPAS1、およびFHは、遺伝性PGL/PCCと関連していることが報告されている;それらの臨床的意義はまだ不明である。

腫瘍免疫組織化学

遺伝性PGL/PCC症候群の胚細胞の分子遺伝学的検査が容易に利用できない場合、免疫組織化学的腫瘍分析の結果は、原因となる生殖細胞病原性バリアントの存在を示唆している可能性がある。ミトコンドリア呼吸鎖複合体2のいずれかの構成要素が完全に不活性化されると、複合体全体が不安定になり、SDHBサブユニットが分解されると予想される。したがって、SDHASDHBSDHC、またはSDHDの完全な不活性化がある場合、SDHBの免疫組織化学は陰性である。その結果、腫瘍組織におけるSDHBに対する陰性染色は、SDHASDHBSDHC、またはSDHDにおける生殖細胞性病原性バリアントが正常対立遺伝子の不活性化を伴う場合に起こるとされている;すなわち、SDHB免疫染色が陰性であると、SDHサブユニットのいずれかの生殖細胞性病原性バリアントの存在を示唆している可能性がある[van Nederveen ら 2009、Gill ら 2010、Pai ら 2014、Udager ら 2018]。SDHAの生殖細胞病原性バリアントは、SDHBの染色陰性に加えて、SDHAに対する染色も陰性化する[Korpershoek ら 2011, Papathomas ら 2015]。

これらの理由から、家族性および明らかに散発性のPGL/PCC患者において、分子遺伝学的検査の指針としてSDHBの免疫組織染色を推奨する声もあるが、現在のところ、いくつかの不一致例が報告されているため、分子遺伝学的検査の指針として免疫組織染色を日常的に使用することを提唱するには、エビデンスが不十分である。また、VHLの病原性バリアントもSDHBの免疫組織染色結果の解釈を困難にしているように思われる。したがって、SDHB免疫組織染色の解釈にはまだいくつかの課題があり、また、この検査法は広く利用できるものではないため、PGL/PCC腫瘍組織に対して日常的に行うべきかどうかは議論がある。


臨床的特徴

臨床像

遺伝性パラガングリオーマ/褐色細胞腫(PGL/PCC)症候群を有する患者では、腫瘍は傍神経節内(頭蓋骨の基部から骨盤までの傍脊椎軸に沿って分布する神経堤細胞の集合体)および一部の内臓部位に発生する。2017年世界保健機関(WHO)の内分泌腫瘍分類では、パラガングリオーマ/褐色細胞腫を部位および(直接的または間接的に)分泌状態によって分類している[Lloyd ら 2017]。

パラガングリオーマ(傍神経節腫瘍)は、頭蓋骨基部の優勢な位置から骨盤にかけて傍椎体軸に沿って分布する神経内分泌組織(傍神経節)から生じる。

頭頸部パラガングリオーマ(HNPGL)および上縦隔のパラガングリオーマは、主に副交感神経系に関連しており、基本的にはカテコールアミンまたは他のホルモンを分泌しない。HNPGLの約5%がカテコールアミンを分泌する。頭頸部のまれな分泌性腫瘍は、頸動脈体腫瘍のサブセットであるか、頸部交感神経連鎖から生じるかのいずれかである。ほとんどのHNPGLは転移しないとされているが、多くの例外がある。HNPGLの臨床的な合併症は、基本的には腫瘍占拠(mass effect)によるものである:

  • 頚動脈小体のパラガングリオーマは、しばしば無症候性で、増大した側方上頸部腫瘤で発見される。(頸動脈小体は、頸動脈の分岐部またはその近傍、ほぼ第4頸椎の高さにある側方上頸部に位置する)。患者は、腫瘤の占拠により頭蓋神経および交感神経鎖の圧迫が生じ、結果として神経障害が生じることがある。診察すると腫瘤は垂直に(水平にではなく)固定されている;雑音および/またはスリルが存在することがある。
  • 迷走神経節パラガングリオーマは、頸動脈体傍パラガングリオーマに類似した病態を呈する。徴候や症状として、頸部腫瘤、嗄声、咽頭閉塞感、嚥下障害、発声困難感(発声の障害)、疼痛、咳嗽および誤嚥が含まれる。発声困難感は、咽頭内や声帯や舌に関わる神経を腫瘤が圧排することに起因することがある。
  • 頸部リンパ節性パラガングリオーマは、拍動性耳鳴り、難聴、およびその他の下部脳神経異常を呈することがある。耳鏡検査で鼓膜の後ろに青色の脈動性の腫瘤が肉眼的に確認できることがある [Gujrathi & Donald 2005]。

下縦隔、腹部および骨盤のパラガングリオーマは、典型的に交感神経系と関連しており、通常はカテコールアミンを分泌する。脊椎傍軸に沿って(副腎にはない)位置する交感神経パラガングリオーマは、"副腎外交感神経パラガングリオーマ"と呼ばれる。副腎外交感神経系パラガングリオーマは悪性化する可能性が高い [Ayala-Ramirezら 2011]。

褐色細胞腫は、副腎髄質に限局したカテコールアミン分泌性パラガングリオーマである。褐色細胞腫では悪性化する可能性は低いが、実際に悪性化する例がある(遺伝子型-遺伝子型相関を参照のこと)。褐色細胞腫は副腎クロマフィン腫瘍としても知られている。

注:"クロマフィン細胞/腫瘍 "は、場所にかかわらず、あらゆる交感神経(カテコールアミン分泌)神経内分泌細胞/腫瘍を指す別の用語である。「クロマフィン」とは、細胞/腫瘍に含まれるカテコールアミンがクロム塩(例:重クロム酸カリウム)によって酸化・重合された結果生じる茶黒色調を指す。

パラガングリオーマおよび褐色細胞腫の徴候および症状は、遺伝性のPGL/PCC症候群を有する個体および孤発性(すなわち、遺伝性ではない)腫瘍を有する個体において類似しており、最も頻繁に以下の4つの臨床的病態で医学的に注意する必要がある

  • カテコールアミン過剰産生に伴う自他覚的症状、これには血圧および脈拍の一時的または持続的な上昇、頭痛、動悸(自覚的な一時的な、強制的な、しばしば急速な心拍)、不整脈、過度の発汗、顔面蒼白、不安感、および不安が含まれる。悪心、嘔吐、疲労、血糖コントロールの急激な変化、および体重減少も見られる。発作性症状は、体位の変化、腹腔内圧の上昇、薬剤(例、メトクロプラミド)、麻酔導入、運動で誘発される.膀胱パラガングリオーマの患者では排尿よって症状が誘発されることもある.また膀胱パラガングリオーマの患者では、無痛性血尿を伴うこともある。
  • 腫瘍(特にHNPGL)の圧排(mass effect)に関連する徴候および症状、頭頸部の頭蓋神経(例えば、VII、IX、X、XI)および交感神経を障害し、嗄声、嚥下障害、軟口蓋麻痺、Horner症候群、および/または耳鳴りとして現れる
  • 他の理由で行われたMRI/CTで偶発的に発見された腫瘤
  • リスクのある親族のスクリーニング

PGL/PCCの兆候 

PGL/PCCから分泌されるカテコールアミンおよびメタネフリンは、以下のいずれかである。

  • エピネフリン(アドレナリン)およびその主な代謝産物であるメタネフリン
  • ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)およびその主な代謝産物であるノルメタネフリン
  • ドーパミンおよびその主な代謝産物である3-メトキシチラミン

血漿クロモグラニンAは、カテコールアミンではなく、PGL/PCCからしばしば分泌される別の物質であり、診断に有用な場合もある。しかし、他の多くの病状(例、肝臓および腎臓病;IBSおよび結腸癌などの消化管疾患;他の悪性腫瘍)および薬剤(例、プロトンポンプ阻害剤)が血漿クロモグラニンAレベルを上昇させる可能性があるため、その特異度が高い検査項目ではない.

PGL/PCCの画像学的特徴 

遺伝性PGL/PCC症候群の患者は、腫瘍の局在性を画像診断で評価すべきである。胸郭、腹部、骨盤の空間分解能が優れていることから、MRIよりもCTが選択されることが多い。MRIは、妊婦のように放射線被曝を制限しなければならない人、生化学的に無症候性のPGL/PCC患者や既知の生殖細胞病原体バリアントを有する無症状の人に対しての生涯にわたるスクリーニングには、より良い選択肢である。

  • パラガングリオーマは、頭蓋骨基部から骨盤までの傍脊椎軸に沿って、傍大動脈交感神経鎖および他のいくつかの内臓部位を含めて、どこでも同定されうる。腫瘍の好発部位は、腎血管の近傍およびZuckerkandl器官(下腸間膜動脈および大動脈分岐部の起源付近のクロマフィン組織)である。あまり一般的ではないが、膀胱壁にも発生する。
  • PGL/PCC腫瘍は通常、MRIT2強調画像で高い信号強度を示し、in phaseからout phaseにかけて信号強度の低下がなく、褐色細胞腫と良性の副腎皮質腺腫とを区別するのに有用である。CT検査では、PGL/PCCは、嚢胞性領域を有する不均一な外観、非造影CTにおけるCT値が低くない(密度、Hounsfield units >10)、造影CTでの血管の増加、および造影のウォッシュアウトが緩徐であることを特徴とする。
  • 複数の腫瘍が存在することがある。
  • 遺伝性PGL/PCC症候群患者の診断およびモニタリングには、陽性腫瘍を標的とした全身MRIを用いることが妥当な方法である。この方法は、T2強調MRIの高感度を利用しながら、CTスキャンに伴う放射線被曝を最小限に抑えることができる。
  • デジタルサブトラクション血管造影(DSA)は小さなパラガングリオーマの検出に感度が高く、診断を確定的にする。術前の塞栓術や頸動脈閉塞術を行う場合にはDSAは必須である。

良性と悪性のPGL/PCCの鑑別

良性と悪性PGL/PCCを区別するための信頼できる病理学的研究はない。さらに、PGL/PCCの生検は、侵襲的であり高血圧クリーゼや出血、および腫瘍細胞の播種を促進するリスクを伴うため禁忌である[Vanderveen ら 2009]。生検したとしても、原発性腫瘍の病理学的検討では転移性疾患の発生を確実に予測することができない[Wu ら 2009]。

「悪性」は、他の部位へのPGL/PCC転移の存在として定義され、最も一般的な転移部位は骨、肺、肝臓、リンパ節である。実際、2017年のWHOでは、定義の混乱を避けるために、「悪性褐色細胞腫」という用語を「転移性褐色細胞腫」に置き換えている。転移を確認した時点で初めて悪性と診断せざるを得ないため、これらの腫瘍の自然経過に関する現在の理解にバイアスが生じている可能性がある。

転移していないPGL/PCCについては、手術で治癒が見込まれる。しかしながら、いったん転移が生じると治癒はなく、5年生存率は50%~69%である[Hescot ら 2013、Asai ら 2017、Fishbein ら 2017、Hamidi ら 2017]。

転移を検出するためには、以下のようなレントゲン検査を用いることができる。

  • 68-Ga-DOTATATE PETは、特に転移性疾患を有する個人において、ソマトスタチン受容体陽性疾患を検出するためのより感度の高いモダリティである[Janssen ら 2015、Chang ら 2016、Janssen ら 2016]。
  • 123I-メタイオドベンジルグアニジンMIBGシンチグラフィは、カテコールアミンアナログ放射性同位体の腫瘍取り込みを測定する技術である。MIBGはCTやMRIよりも局在の特異度が高いが、感度は低い。MIBGは、CTまたはMRIで検出された腫瘤のさらなる特徴を明らかにし、病変部位の追加検査を行うために使用され、I-131 MIBGによる治療が考慮されている転移性疾患の患者に使用される 。
  • オクトレオチドシンチグラフィは、ソマトスタチンアナログ放射性同位元素の腫瘍への取り込みを測定する技術であり、MIBG陰性腫瘍の中にはオクトレオチドシンチグラフィで陽性となるものもあるため、MIBGシンチグラフィに加えて使用されることがある。しかし、MIBGシンチグラフィと比べて感度はかなり低い。68-Ga-DOTATATATE PET CTよりは感度が高いため、利用可能な場合は代用される。
  • 2-デオキシ-2-(18F)-フルオロ-D-グルコース位置発光断層撮影(FDG-PET、またはその他の画像化化合物を使用したPETも、転移性疾患の検出に有用である。

遺伝性PGL/PCC症候群における機能性画像診断の使用のための決定アルゴリズムが、最近、内分泌学会の臨床実践ガイドラインで提案された。Lendersら[2014]、図2(全文)を参照のこと。

その他の腫瘍

  • 消化管間質腫瘍(GIST

PGLに関連するGIST (カーニー・ストラタキス症候群;OMIM 606864)の大部分は、SDHAまたはSDHCの生殖細胞病原性バリアントを有する個体で発生する。GISTを有する小児は、成人の場合よりもPGL/PCC感受性遺伝子の生殖細胞病原性バリアントを有する可能性が高い。遺伝性PGL/PCC症候群に関連するGISTのほとんどは胃に発生し、多巣性であることが多い(≻40%)。

  • 肺軟骨腫は、GISTおよびパラガングリオーマとともに発生することがある(カーニーの三徴;OMIM 604287)。これは、主に若い女性が罹患する極めてまれな疾患である。後に副腎皮質腺腫および食道平滑筋腫が本症と関連していることが示された[Stratakis 2009]。カーニーは、罹患者の78%が3つの古典的腫瘍のうち2つを有し、22%が3つの腫瘍すべてを有していたことを発見した[Carney 1999]。カーニーの三徴はほとんどの場合遺伝しないが、少なくとも一部の患者(~10%)ではSDHx遺伝子に生殖細胞性の病原性バリアントを有する[Boikos ら 2016]。生殖細胞性病原性バリアントを持たない一部の患者では、SDHx遺伝子のメチル化パターンの体細胞性変化がGIST腫瘍に見られることがある[Boikos らl 2016]。
  • 腎明細胞がんは、遺伝性PCC/PGL症候群の腫瘍スペクトルの一部であり、特にSDHBおよびSDHDの病原性バリアントを有する個体では[Ricketts ら 2010]。SDHBの病原性バリアントを有する個人の腎腫瘍発症の生涯リスクは4.7%であるのに対し、一般集団では1.7%である[Andrews ら 2018]。
  • SDHx胚細胞変異を有する症例において、甲状腺乳頭がん、下垂体腺腫、神経内分泌腫瘍を含むその他の腫瘍が報告されている。しかしながら、これらの腫瘍を発症するリスクが増加するかどうかの評価は確立されていない。

生存期間 病期分類された腫瘍を標的とした治療法により、転移があっても20年以上生存している罹患者も存在する[Fishbein ら 2017, Hamidi ら 2017]。

遺伝子型と表現型の関連

MAXSDHASDHAF2SDHBSDHCSDHD、およびTMEM127病原性バリアントを有する者は、褐色細胞腫および/または傍神経組織内のパラガングリオーマを発症しうる。関与する遺伝子と腫瘍の局在との関連性は、検査、監視、および場合によっては推奨される治療の指針として参考にすることができる(表2も参照のこと)。

MAX MAXの胚細胞変異は、PCCとの関連で最も一般的に報告されている。数例で、追加のPGLを有していた者もいたが、そのような者はすべて過去にPCCを発症していた[Comino-Méndez ら 2011、Burnichon ら 2012、Bausch ら 2017]。

SDHA PCCおよびPGL(交感神経および副交感神経)を有する個体において、SDHA胚細胞変異の病原性バリアントが同定されている [Burnichon ら 2010, Korpershoek ら 2011, Bausch ら 2017]。

SDHAF2 SDHAF2におけるは胚細胞変異の病原性バリアントはHNPGLとの関連でのみ認められている[Hao ら 2009、Bayley ら 2010、Kunst ら 2011、Piccini ら 2012、Currás-Freixes ら 2015、Zhu ら 2015、Bausch ら 2017]。

SDHB SDHBにおける胚細胞の病原性バリアントは、一般に、他のSDHx遺伝子における病原性バリアントよりも高い罹患率および死亡率と関連している[Ricketts ら 2010, Andrews ら 2018]。これらの遺伝子は、転移のリスクが高い副腎外交感神経節パラガングリオーマと強く関連しており、頻度は低いが、PCCおよび副交感神経性PGLと強く関連している[Andrews ら 2018]。転移性副腎外交感神経節パラガングリオーマを有する患者の最大50%は、生殖細胞性SDHB病原性バリアントを有している[Fishbein ら 2013]。

SDHC 胚細胞のSDHC病原性バリアントは、主に(ただし、排他的ではなく)HNPGLと関連しているようである。しかしながら、SDHC関連腫瘍の最大10%が胸腔で観察される[Peczkowskaら2008、Elseら2014]。

SDHD SDHDの病原性バリアントは主にHNPGLと関連しているが、副腎外PGLおよびPCCは実際に生じる[Rickettsら2010年、Andrewsら2018年]。胚細胞性SDHD病原性バリアントを有する患者は、孤発性腫瘍を有する患者またはSDHBの胚細胞性病原性バリアントを有する患者よりも多巣性を呈する可能性が高い[Boedeker ら 2005]。

TMEM127 胚細胞型TMEM127病原性バリアントは副腎PCCと関連しているが、HNPGLおよび副腎外PGLと関連することもある [Neumann ら 2011]。腎細胞癌とも関連している[Qin ら 2014]。

2.  遺伝的病因によるPGL/PCCの臨床的特徴の鑑別

変異遺伝子 鑑別に役立つ臨床所見1
PGL vs PCC 両側性PCCまたは多発性 PGL 生化学的特徴 悪性のリスク MOI
MAX PCC ~60% 両側性 混合 25% おそらく父系2
SDHA PGL, PCC 単発 混合 AD
SDHAF23 PGL (頭蓋底&頸部) ~90% 多発性 不明 父系2
SDHB PGL ~20% 多発性 ノルエピネフリン/
ノルメタネフリン
34%-97% AD
SDHC PGL ~20% 多発性 ノルエピネフリン/
ノルメタネフリン
AD
SDHD PGL (頭蓋底&頸部) ~50% 多発性 ノルエピネフリン/
ノルメタネフリン
しばしば非産生
<5% 父系4
TMEM127 PCC, 稀に PGL ~25% 両側性 混合 AD

AD = autosomal dominant (常染色体優性); MOI = mode of inheritance(遺伝形式)

  1. 一般的にみられる所見、例外あり。
  2. 遺伝の様式は父系である可能性が高いが、家系が示された報告数がわずかしかない。
  3. 表現型は数家系しか報告されていないため、十分に記述されていない。
    4
  4. 母系遺伝の報告はほとんどされていない。

遺伝子型と表現型の関連

遺伝子型と表現型の一貫した関連性は確認されていません。

浸透率

年齢に関連した浸透率

浸透率の推定値は様々である(表3参照)。浸透率は当初かなり高いと考えられていたが、発端者からのバイアスが少ない大規模な研究では、浸透率がかなり低いことが示唆されている。MAX、SDHAF2、または TMEM127 病原性バリアントについては、現時点で信頼できる浸透率データがない。

表3. SDHBとSDHD病原性バリアントの推定年齢関連性浸透度(訳注:SDHA、SDHC含む)

変異遺伝子 年齢(歳) 非発端者における PGL/PCC の浸透率 発端者と非発端者におけるPGL/PCCの浸透率 参考文献
SDHA 70 10% 50% van der Tuin ら [2018]
SDHB 60 21.8%-26.4% 23.9%-57.6% Jochmanova ら [2017], Andrews ら [2018]
SDHC 60 25%1 NR Andrews ら [2018]
SDHD 60 43.2% NR Andrews ら [2018]

NR = not reported(報告なし)

  1. この推定値は、実臨床に基づく予想よりも高い。

命名法

遺伝性PGL/PCC症候群は、褐色細胞腫との関連が発見される前に、最初は遺伝性パラガングリオーマ症候群と呼ばれていた。遺伝性頭頸部パラガングリオーマは、家族性グロムス腫瘍および家族性非クロマフィンパラガングリオーマとも呼ばれてきた。当初、これらの症候群はPGL1-5と番号が付けられていた。しかし、遺伝的根拠が明らかになった現在では、関連する遺伝子を参照することが最も合理的である;例、SDHB関連遺伝性PGL/PCC症候群など.

カーニー・ストラタキス症候群症候群(OMIM 606864)およびカーニーの三徴(OMIM 604287)は、大部分が分子遺伝学的命名法の使用に先行する歴史的な用語であり、臨床的特徴を有するもののSDHxの生殖細胞病原性バリアントを伴わない患者に対して使用する方がよい。

褐色細胞腫は、特殊な傍神経節である副腎髄質の腫瘍である。パラガングリオーマは、体の至るところに存在する傍神経節組織から生じる.その多くは、頭頸部パラガングリオーマ(HNPGL;例えば、頸動脈小体腫瘍、頸静脈グロムス腫瘍、鼓室糸球腫瘍、迷走神経節腫瘍)、胸部パラガングリオーマ、大動脈または傍神経交感神経鎖に関連する傍神経節由来パラガングリオーマ、または腹部パラガングリオーマ(例えば、Zuckerkandlの臓器、傍副腎、膀胱壁)である。「クロマフィン(クロム親和性)」腫瘍という用語は、大部分が歴史的なものであり、カテコールアミンと反応するクロム塩による陽性染色を指す。したがって、ほとんどの副交感神経腫瘍は非分泌性であるのに対して、基本的にはカテコールアミンのみを分泌する腫瘍である褐色細胞腫および交感神経パラガングリオーマなどが真のクロマフィン腫瘍である。

有病率

遺伝性PGL/PCC症候群の有病率は正確には明らかになっていない。褐色細胞腫の発生率は約0.6:10万/年とされている[Berends ら 2018]。全褐色細胞腫の約25%は遺伝子変異を保有する患者に発生する。パラガングリオーマの発生率は低いが、褐色細胞腫より遺伝的素因と関連性が高い。全体では、PGL/PCCの約35~40%が遺伝子変異を有する。


遺伝的に関連のある(対立遺伝子)疾患

SDHA

両アレルSDHA病原性バリアントは、遅発性の視神経萎縮症およびリー症候群(mtDNAバリアントによるリー症候群の考察については、ミトコンドリア障害の概要を参照)や、早期発症の進行性脳症を特徴とする神経変性疾患と関連している。


鑑別診断

遺伝性PGL/PCC症候群の鑑別診断には、散発性PCCおよびPGL、またはPCCまたはPGLの発症の素因となるその他の症候群が含まれる。

散発性褐色細胞腫 すべてのPCCの発生率は~0.6/100,000人であり、75%は散発性(遺伝的素因とは関連しない)と考えられている。

散発性パラガングリオーマ 散発性パラガングリオーマの発生率は不明である。散発性PCCよりも頻度は低いと考えられている;しかしながら、遺伝性素因との関連はPCCよりも高い。

褐色細胞腫(PCC)および/またはパラガングリオーマ(PGL)のリスク増加に関連するいくつかの遺伝性疾患(表4を参照)は、遺伝性PGL/PCC症候群の患者にはみられない付随的な臨床的特徴を有する。

表 4.  遺伝性PGL/PCCの鑑別診断で考慮すべき疾患

疾患名 変異遺伝子 MOI 鑑別診断障害の臨床的特徴1
遺伝性PGL/PCCとの共通点 遺伝性PGL/PCCとの相違点
神経線維腫症1型 NF1 AD
  • エピネフリンおよび/またはノルエピネフリン産生するPCC
  • PGL は稀
  • カフェオレ斑
  • 腋窩・鼠径部そばかす
  • 神経線維腫
Von Hippel-Lindau disease
フォン・ヒッペル・リンドウ病
VHL AD
  • ノルエピネフリン/ノルメタネフリンを産生するPCC
  •  PGLは頻度が低い
  • 血管芽細胞腫
  •  腎嚢胞、膵嚢胞、精巣上体嚢胞、広靭帯嚢胞
  • 腎細胞がん
  • 膵臓神経内分泌腫瘍
多発性内分泌腫瘍症2型 RET AD
  • エピネフリン/メタネフリンおよび/またはノルエピネフリン/ノルメタネフリンを分泌するPCC
  • PGLは稀
MEN2A:
  • 甲状腺髄様癌
  • 副甲状腺機能亢進症
MEN2B:
  • 粘膜神経腫
  • 神経節神経腫症
  • 細身の体形
  • 関節弛緩症
  • 骨格奇形
多血症・パラガングリオーマ・ソマトスタチノーマ症候群 EPAS1 脚注2参照 PGL
  • 主に女性に多い
  • 多血症
  • ソマトスタチン産生腫瘍

AD =  常染色体優性(autosomal dominant); MOI = 遺伝形式(mode of inheritance); PCC = pheochromocytoma褐色細胞腫; PGL = パラガングリオーマ(paraganglioma)

  1. 一般的にみられる所見、例外あり。
  2. 現在までに報告された多血症-パラガングリオーマ -ソマトスタチノーマ症候群のすべての患者は、体細胞性モザイク病原性バリアント(すなわち、親から遺伝しない病原性バリアント)に起因する障害が生じている

管理

初期診断後の評価

遺伝性パラガングリオーマ・褐色細胞腫(PGL / PCC)症候群と診断された患者の疾患の部位や治療方針を確定するには、このセクションで要約されている項目の評価(診断に至る際に実行されていない場合)が推奨される。

PGL / PCCの専門医(多くの場合、内分泌専門医、腫瘍専門医、および/または臨床遺伝専門医)に患者を紹介する。 必要に応じて、他の専門分野や学際的ケア(ENT[訳注:耳鼻咽喉科]、循環器科、消化器科など)の関与を含める必要がある。 次に、PGL / PCCの専門知識を持つ専門医(多くの場合、内分泌専門医または内分泌専門医、腫瘍専門医)が評価を完了する(以下を参照)。 注:高血圧と頻脈は、治療開始前に管理する必要があるため、評価と治療を行うこと。

PGL/PCCが疑われる患者に対して(症状や生化学的所見を基に)

  • 腫瘍の局在を確定するには、断層像(MRI/CT)が好ましい撮像法である。疑われる腫瘍の位置により、CTまたはMRIが好ましい場合が異なる。HNPGLはしばしばMRI検査で、胸部PGLはCT検査で、腹部腫瘍はMRIまたはCT検査での撮像が最善である
  • ソマトスタチン受容体ベースの画像検査(例えば、68-Ga- DOTATATEPET CT)、またはあまり一般的でない他の機能撮影(例えば、FDG-PET、123I-MIBGなど)は、断層画像所見を機能性腫瘍と確認するのに役立つ

消化管間質腫瘍(GIST)が疑われる患者(症状に基づく)

遺伝性PGL/PCC関連の病原性バリアントのヘテロ接合体を保有する小児、青年または若年成人において、原因不明の消化管症状(例えば、腹痛、上部消化管出血、悪心、嘔吐、嚥下困難)を有するか、または原因不明の腸閉塞または貧血が認められた場合には、GISTの臨床的(内視鏡的なものを含む)評価を行う[Pasini ら 2008、Rednam ら 2017]。

リスクのある無症候性の患者に対して

  • 非放射性画像検査(例:全身MRI、2年ごとに実施)を活用し、分泌性および非分泌性のPGL/PCCおよびその他の関連腫瘍(例:腎細胞がん、GIST)の腫瘍スクリーニング
  • 機能的PGL/PCCをスクリーニングするための血漿遊離メタネフリン分画または24時間尿中メタネフリン分画(オプションでドパミンまたは3-メトキシチラミン)を含む生化学的評価

その他

臨床遺伝専門医および/または遺伝カウンセラーとの協議

症状に対する治療

PGL/PCCを発症した患者の管理のための臨床実践ガイドラインが公表されている[Lenders ら 2014](全文)。

遺伝性PGL/PCC症候群の患者における腫瘍の管理は散発性腫瘍の管理に類似している;しかしながら、遺伝性PGL/PCC症候群の患者は、散発性腫瘍の患者よりも多発性腫瘍および多巣性および/または悪性化する可能性が高い。

カテコールアミン産生性腫瘍では、外科的摘出に先立ってアドレナリン遮断薬を用いてカテコールアミン過剰を阻害し、カテコールアミン過剰による有害作用を抑制することに焦点を当てた治療が行われる[Lenders ら 2014]。

非分泌性HNPGLの場合、早期発見により、時宜にかなった治療(またはサーベイランス)の決定が可能となる。早期発見は手術の合併症を減らし、予後を改善すると考えられている[Rinaldo ら 2004, Gujrathi & Donald 2005]。しかし、注意深い待機療法や放射線療法は、多くの場合、同じように有益であるか、より良い選択肢である。ほとんどのHNPGLは非分泌性である。そのため、HNPGLを有するすべての患者は、外科的切除の前にカテコールアミン過剰の有無を評価すべきであり、もしカテコールアミン過剰が存在する場合には、原発性PGL/PCCの併存の可能性を検討する必要がある。

  • 頸動脈小体、鼓膜小体、および迷走神経節パラガングリオーマの場合、治療法には、待機療法、外科的切除、および放射線治療がある。治療選択は、腫瘍の範囲(例えば、Shamblin分類group Iおよびgroup IIの頸動脈小体腫瘍は手術の好適な候補である)、治療に関連するリスク(例えば、迷走神経節パラガングリオーマの切除は、ほぼ必ず同側の迷走神経および反回神経の喪失をもたらす)、および推定される悪性の可能性(例えば、SDHB関連腫瘍は、より積極的な治療を検討しうる)に基づいて行われるべきである。放射線治療も選択肢の一つであり、この集団では基礎となる遺伝的素因により二次的な悪性腫瘍の発生率が増加するという証拠は現在のところない [Taïeb ら 2014]。
  • 頸静脈パラガングリオーマの場合、小さな腫瘍は合併症や永久的な神経損傷を伴わずに切除できる可能性がある。しかしながら、より大きな腫瘍の切除は、しばしばCSF(脳脊髄液)漏出、髄膜炎、脳卒中、難聴、頭蓋神経麻痺、さらには死に至ることもある。そのため、症状に応じた手術で注意深く経過観察することが賢明な場合がある。放射線治療も考慮されうる[Taïeb ら 2014]。放射線治療が選択された場合、定位放射線照射も行われることがある[Taïeb ら 2014]
  • 非放射性画像検査(例:全身MRI、2年ごとに実施)を活用し、分泌性および非分泌性のPGL/PCCおよびその他の関連腫瘍(例:腎細胞がん、GIST)の腫瘍スクリーニング

褐色細胞腫に対しては、手術、(腹腔鏡下が望ましい)が治療選択肢である[Lenders ら 2014]

  • 術前処置 副腎褐色細胞腫からのカテコールアミン過剰の慢性および急性の作用は、術前に対処しなければならない。血圧をコントロールし、術中の高血圧クライシスを予防するためには、α-アドレナリン遮断薬が必要である。内分泌学会のガイドラインには投薬量のアルゴリズムを提示している[Lenders ら 2014]。
    • α-アドレナリン遮断薬(フェノキシベンザミンまたはプラゾシン/ドキサゾシン併用)を術前少なくとも7~10日から開始することで、血圧の正常化と体液量の増加を可能にすることが示されている。α遮断薬の投与量は、年齢ごとの収縮期血圧の下限に合わせて調整する。
    • 第二選択肢の治療として、カルシウム拮抗薬(アムロジピン、ニカルジピンなど)による血圧コントロールを行う[Lenders ら 2014] 
    • 体液量増加を目的として、高ナトリウム食と水分摂取が指示される。
    • 適切なα-アドレナリン遮断薬またはカルシウムチャネル遮断薬による血圧コントロールが達成されると、反射性頻脈をコントロールするためにβ-アドレナリン遮断薬の開始が必要となることがある。β-アドレナリン遮断薬の用量は、目標心拍数が80回/分(bpm)に合わせて調整される
  • 術後処置 術後約2~8週間後に、24時間尿中分画メタネフリンおよび/または血漿を含まないメタネフリンを測定すべきである。
    • 測定値が正常であれば、生化学的に機能性な褐色細胞腫またはパラガングリオーマの切除を達成したと考える
    • 測定値が上昇している場合は、切除されていない二次腫瘍および/または不顕性転移を疑うべきである

悪性パラガングリオーマまたは褐色細胞腫 治療法の選択肢として、交感神経系腫瘍患者においてはカテコールアミン過剰による血圧管理や症状軽減を目的としたα遮断薬の投与、腫瘤圧排(mass effect)やカテコールアミン過剰を軽減するためのデバルキング手術、特に骨転移に対する放射線療法、肝動注化学療法、全身化学療法(シクロホスファミド、ビンクリスチン、ダカルバジンなどの併用)、またはI-131 MIBG療法などがある。2018年8月には、MIBGの1つの形態であるAZEDRA®(ultratrace iobenguane I-131)が、手術不能および転移性PGL/PCCに対するFDAが初めて承認する全身療法となった[Noto ら 2018](参照:www.fda.gov)。

SDHB病原性バリアントを有するパラガングリオーマまたは褐色細胞腫の患者では、転移のリスクを考慮して、経過観察よりも外科的切除を優先する。副腎外交感神経系パラガングリオーマは転移しやすいため、迅速な切除が特に重要である。

二次性合併症の予防

定期検査および腫瘍の摘出による早期発見は、腫瘤占拠効果(mass effect)、カテコールアミン過剰、および転移性疾患の発症に関連する合併症を予防または最小化する可能性がある。

サーベイランス

遺伝性PGL/PCC症候群を有することが既知の患者および家族歴に基づいてリスクがあるにもかかわらず遺伝子検査を受けていない血縁者は、遺伝性PGL/PCC症候群の治療を専門とする医師または医療チームによる定期的な臨床モニタリングが必要である。モニタリングは、身体所見、システムレビュー(Review of systems;ROS)、生化学検査、断層画像検査に基づいて行う。

リスクのある患者に対して生化学的検査や画像検査をいつ、どのように、どのくらいの頻度で行うべきかについては明確なコンセンサスは得られていないが、生化学的検査や臨床所見を生涯にわたって毎年行うことを検討するのは妥当である。さらに、通常は頭蓋骨基部から骨盤までの画像診断を含め、すべてのリスクのある患者に対して横断的な画像診断が推奨されるべきである。しかし、スクリーニングの頻度と内容の決定は、基盤にある遺伝子変異と関連する浸透度を考慮すべきである。専門家ワーキンググループは最近、6~8歳でサーベイランスを開始することを推奨している[Rednam ら 2017]。Benn ら[2006]は、生涯にわたるスクリーニングを10歳から開始した場合、SDHDの病原性バリアントを有するすべての人とSDHBの病原性バリアントを有する人の96%に疾患が検出されると推定した。

モニタリングには以下の項目が含まれる。

  • 一年毎に機能性カテコールアミン産生腫瘍を検出するための血漿遊離メタネフリン、または24時間尿中メタネフリン分画の測定。ドパミンのみを産生する腫瘍を検出するためにドパミン(および/または3-メチオキシチラミン)も同様に測定できるが、ドパミンの測定はカテコールアミン検査の一部であり、カテコールアミンは偽陽性の割合が高くなりやすい。
  • 2年に1度、頭蓋骨基部から骨盤までの断層撮影[Fishbein & Nathanson 2012、Eijkelenkamp ら 2017、Rednam ら 2017]。これは、非分泌性のPGL/PCCだけでなく、腎細胞癌などの他の関連腫瘍を検出するために推奨される。全身MRIは専門施設では良い選択肢となっている[Jasperson ら 2014]。生涯のサーベイランスを必要とするこの集団において、不必要な放射線被曝を避けるために、可能な限り、放射線を含まない画像診断法(例えば、MRI)を優先すべきである。断層画像検査では、ほとんどのPCCおよびPGLだけでなく、腎細胞がんも検出される。68-Ga-DOTATATE PET CT、123I-MIBG、またはFDG-PETなどの機能的スキャンは、断層画像検査で観察される転移性疾患および腫瘍の機能性の有無を同定するのに有用であるが、特定の患者(例えば、転移性腫瘍が懸念される人)には控えておくべきである。画像検査の定期検査は、6~8歳から検討すべきである。しかしながら、リスク(例えば、小児の場合MRI撮影に麻酔を必要とするなど)と利点(腫瘍の発見)について家族と話し合うことが重要である。
  • 原因不明の消化管症状(例えば、腹痛、上部消化管出血、悪心、嘔吐、嚥下困難)を有するか、または原因不明の腸閉塞または貧血を認める患者(特に小児、青年、または若年成人)では、GISTの可能性を考慮し、内視鏡的評価(例えば、食道胃管内視鏡検査)を検討すべきである[Pasini ら 2008, Rednam ら 2017]。

避けるべき薬剤や環境

遺伝性PGL/PCC症候群の浸透率は、高地に住んでいる人や低酸素状態に慢性的にさらされている人で増加する可能性があるとした限定的なエビデンスがある [Astrom ら 2003]。しかし、この非常に限定的な報告に基づいて推奨することはできない。

慢性肺疾患を引き起こす喫煙行動は控えるべきである。

リスクのある血縁者の評価

罹患者にとっての年長および年少の疾患発症リスクのある未発症血縁者では評価が推奨される。発症リスクの高い血縁者において遺伝子変異の同定は診断の確実性を向上させる。病原性バリアントを保有していない場合には、スクリーニングにかかる費用を軽減できる。腫瘍の早期発見により、外科的切除が容易になり、関連する合併症を減らし、悪性転化または転移する前の腫瘍摘出につながる可能性がある。

評価には以下のようなものがある

  • 分子遺伝学的検査 病原性バリアントが既知の家系の場合は、6~8歳までに発端者の血縁者の遺伝子検査を行うべきである。
    注:SDHDおよびSDHAF2(およびMAXの場合もある)の病原性バリアントは、片親起源効果を示し、それらが父系に遺伝した場合にはほぼ例外なく疾患を引き起こす。しかし、片親起源効果の疑いの有無にかかわらず、徹底した家系図の確認とリスク評価を行ってから血縁者の定期検査の戦略を決定する必要がある。
  • スクリーニング 家系内の病原性バリアントが不明の場合、PGL/PCCのスクリーニングは、2人以上のPGL/PCC患者がいる家系で検討しうる。特筆すべきことに、PGL/PCCを発症した患者が2人以上いるにもかかわらず、病原性バリアントが見つからなかった非常に稀な家系も存在するということです。

遺伝子カウンセリングを目的としたリスクのある親族の検査に関連する問題については、「遺伝子カウンセリング」の項を参照のこと。

妊娠管理

妊娠中の遺伝性PGL / PCC症候群の診断と管理に関するコンセンサスの得られた管理ガイドラインは報告されていない。 妊娠中の高血圧には他にも一般的な原因(子癇前症など)があるため、妊婦においてPGL/PCCの存在を強く疑う指標が示されている。 分泌型PGL / PCCは妊娠中のいずれの時点においても発症する可能性が高く(妊娠高血圧腎症は妊娠第2期または第3期に生じるのが一般的であるのに対して)、体重増加、浮腫、タンパク尿、または血小板減少症を伴わない。 PGL / PCCを持つ患者は、動悸、発汗性顔面蒼白、起立性低血圧、および尿糖陽性を呈する可能性が高く、高血圧は一時的であることが多い。

遺伝性PGL/PCC症候群のすべての患者は、妊娠を計画する前に、または妊娠が判明したらすぐに、機能性のカテコールアミン産生腫瘍がないかどうかを評価すべきである。この評価は、24時間尿中のメタネフリンおよびカテコールアミン分画の測定、または血漿遊離メタネフリンの測定によって行うことができる。妊娠中の生化学的検査をフォローアップする頻度についてはコンセンサスはないが、第2期(手術を施行する際に好ましい時期)および分娩前に測定を考慮すべきである。CT検査では胎児の被ばくがあるため、ガドリニウムを投与しないMRI検査を腫瘍の局所同定の第一選択肢として使用すべきである。同様の理由で、放射性同位体画像検査は、妊娠後まで延期し、授乳していない乳婦に対して施行する。

これらの腫瘍に対しては手術が根本治療であり、適切なα-アドレナリン遮断薬と(必要に応じて)その後の高血圧クリーゼを防ぐためのβ-アドレナリン遮断薬の投与が必要である。フェノキシベンザミンは妊娠中にも使用可能なα遮断薬として選択される[Reisch ら 2006]。腹腔内に存在するPGL/PCCについては、腫瘍サイズが許容できれば腹腔鏡手術が理想的である。妊娠24週以降は、腫瘍へのアクセスに問題があるため、胎児が成熟するまで手術を延期することも考慮する(~34週)。このような状況では、選択的帝王切開と組み合わせた開腹手術が必要となることがある。経膣分娩で良好な結果が得られたのは、数人の患者のみである[Junglee ら 2007]。

妊娠中の薬の使用についての詳細は、MotherToBabyを参照のこと

研究中の治療

悪性PGL/PCCに対して、いくつかの治療法が研究中である。ペプチド受容体放射性核種治療(PRRT)を用いた予備的研究では、PGL/PCCにおける生存率の向上を示唆する臨床的および生化学的結果が示されている[Kong ら 2017]。さらに、カボザンチニブ等のチロシンキナーゼ阻害薬の研究が遂行中であり(参照: clinicaltrials.gov)、実際にスニチニブは無増悪生存期間の中程度の延長を示した[Ayala-Ramirez ら 2012]。北米と欧州では多くのオープンスタディが行われている。

米国ではClinicalTrials.gov、欧州ではEU臨床試験登録を検索して、幅広い疾患や病態を対象とした臨床試験の情報を入手することができる


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

遺伝性パラガングリオーマ-褐色細胞腫(PGL/PCC)症候群は常染色体優性遺伝の形式を示す。

SDHDSDHAF2、およびおそらくMAXにおける病原性バリアントは、片親起源効果を示し、それらが父系遺伝した場合にはほぼ例外なく疾患を発症する [Hensen ら 2004, Kunst ら 2011, Burnichon ら 2012, Hoekstra ら 2015]。SDHAF2およびMAX関連の遺伝性PGL/PCC症候群は稀であり、情報が限られていることに注意しなければならない;したがって、片親起源効果の疑いの有無にかかわらず、徹底した家系図の確認とリスク評価を行ってから血縁者の定期検査の戦略を決定する必要がある。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 伝性PGL/PCC症候群と診断された患者の多くは、片親からPGL/PCC関連の病原性バリアントを遺伝している。
  • まれに、遺伝性PGL/PCC症候群の発端者にのみ新規の(de novo)病原性バリアントを認め、本症を発症していることもある[Neumann ら 2004, Imamura ら 2016]。新規(de novo) 病原性バリアントが原因である症例の割合は不明である。
  • 発端者に明らかなde novo 病原性バリアントが同定された場合、両親にも、発端者の病原性バリアントの遺伝子検査が推奨される
  • もし、発端者の病原性バリアントがいずれの親の白血球のDNAから検出されない場合、考えられる可能性は2つある。1つは発端者の新規(de novo)病原性バリアント、または親の生殖細胞系列モザイク現象である。孤発例なら理論的には可能であるが、遺伝性PGL/PCC症候群の遺伝子には生殖細胞系列モザイク現象は報告されていない。しかし、孤発例の可能性は否定できない。
  • MAXSDHASDHAF2SDHBSDHCSDHD、およびTMEM127病原性バリアントの年齢に応じた浸透率と表現度の差異(variable expressivity)があることや、SDHDSDHAF2、およびおそらくMAX病原性バリアントに関連した片親起源効果があることで、これらの病原性バリアントを受け継いだ相当な数の患者が孤発例(すなわち、家族歴がないよう)として認識されることが予測される。したがって、一見すると家族歴がなくても、適切な臨床評価および/または分子遺伝学的検査が両親に対して実施されない限り、遺伝性でないと認定することはできない。

発端者の同胞

発端者の兄弟姉妹の発症リスクは、発端者の両親の遺伝背景によって異なる

  • 発端者の親が罹患している場合、または発端者に病原性バリアントが同定されている場合、発端者の同胞が病原性バリアントを受け継ぐリスクは50%である。
  • 発端者に見られる病原性バリアントがいずれの親の白血球DNAでも検出できない場合、理論的には親の生殖細胞モザイクの可能性があるため、同胞の発症リスクは1%と推定される[Rahbari ら 2016]。
  • 発端者で同定された病原性バリアントについて両親が検査を受けておらず、臨床的には罹患していない場合でも、親のヘテロ接合性変異や片親起源効果による(年齢調整)浸透率が低下している可能性もあるあるため、遺伝性PGL / PCC症候群のリスクがある。

発端者の子孫

遺伝性 PGL/PCC 症候群を持つ患者の子は、その病原性バリアントを受け継ぐ確率は50% である。

  • 父親から SDHD または SDHAF2 病原性バリアントを受け継ぐ人は、PGL および PCC を発現するリスクが高い
  • 母親からSDHDまたはSDHAF2の病原性バリアントを受け継いだ人は、基本的に病気を発症するリスクはない(ただし、その子孫に病原性バリアントを受け継ぐリスクは50%である)。しかし、下記のような例外もある。
    • Yeap ら [2011]は、病理学的に確認された褐色細胞腫を有する26歳の女性を同定したが、この女性は母親由来のSDHD病原性バリアントを有しており、また、右頸静脈グロムス腫瘍を有していた。
    • Bayley ら [2014]およびBurnichon ら[2017]もまた、母親由来のバリアントが原因のSDHD関連腫瘍の症例を同定した。
  • 同様の片親起源効果がMAXの病原性バリアントにも当てはまるかどうかは不明である。MAXの病原性バリアントで同定された患者数は限られているが、これまでのところ、母系アリルでMAXの病原性バリアントを受け継いだ患者において腫瘍形成は起きていない。

発端者の他の家族

その他の家族へのリスクは、親の遺伝的背景、および発端者との生物学的関係によって異なる。発端者の片親が罹患している場合は、家系分析によってリスクを決定し、家族性の病原性バリアントが既知の場合は、分子遺伝学的検査によってリスクを決定することができる。

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断および早期治療を目的としたリスクのある血縁者の評価に関しての情報については、「管理」,「リスクのある血縁者の検査」を参照のこと。

明らかなde novo病原性バリアントを持つ家族に対する配慮 遺伝性PGL/PCC症候群の発端者のいずれの親にも病原性バリアントが検出されない場合、または疾患の臨床的エビデンスがない場合、病原性バリアントは新規(de novo)である可能性が高い。しかし、考え得る非医学的説明として、非血縁父子関係や母子関係(例えば、生殖補助医療など)、あるいは明かされていない養子縁組などの可能性もある。

家族計画

  • 遺伝リスクの判定や、出生前検査の実施についての検討は妊娠前に行われるのが望ましい
  • 罹患者や遺伝リスクがある若年成人に対しては、遺伝カウンセリング(子への潜在的リスクや生殖医療の選択肢の検討を含む)の実施が望ましい

DNAバンクは、将来の使用する可能性を考慮して DNA(通常は白血球細胞から抽出)を保管する機関である。検査方法や遺伝子、対立遺伝子の変異、疾患に関する我々の理解が将来的に向上する可能性が高いため、罹患者の DNA バンクの提供を検討すべきである。

出生前検査と着床前遺伝子検査

PGL/PCC症候群関連の病原性バリアントが罹患した家族の一員で同定されると、PGL/PCC発症のリスクが高い妊娠について出生前検査や着床前遺伝子検査が可能になる。

特に早期診断ではなく妊娠中止を目的とした検査を検討している場合には、出生前検査の実施に関して、医療専門家と家族の間で、見解が異なることがある。ほとんどの医療施設では、出生前検査の実施は両親の選択にゆだねられているが、この問題についてはさらなる議論が必要である。


関連情報

GeneReviews のスタッフは、本疾患を持つ個人とその家族のために、下記のような疾患特異的なあるいは包括的な支援組織や登録簿を用意した。GeneReviewsは、他の組織が提供する情報について責任を負うものではない。選定基準については、こちら

  • My46 Trait Profile
    遺伝性パラガングリオーマ/褐色細胞腫症候群
  • Pheo Para Troopers
    データ収集、治療、および患者のケアにおける主要なイニシアチブを後援しながら、知識、共同体意識、および支援運動を通じて褐色細胞腫およびパラガングリオーマ患者に力を与え、サポートする。

9721 Whitley Park Place
Bethesda MD 20814
Eメール:info@pheoparatroopers.org 
www.pheoparatroopers.org

  • アメリカ聴覚研究財団(AHRF

8 South Michigan Avenue
Suite 1205
Chicago IL 60603-4539
電話: 312-726-9670
ファックス: 312-726-9695
Eメール: ahrf@american-hearing.org
パラガングリオーマ(グロムス腫瘍)


分子遺伝学

分子遺伝学およびOMIMの表の情報は、GeneReviewの他の記載情報とは異なる場合がある:表にはより新しい情報が含まれている場合がある。-ED

表A.遺伝性パラガングリオーマ-褐色細胞腫症候群 :遺伝子およびデータベース

遺伝子 染色体遺伝子座 タンパク質 遺伝子座特異的データべース HGMD ClinVar
MAX 14q23​.3 maxタンパク質 MAX @ LOVD MAX MAX
SDHA 5p15​.33 コハク酸脱水素酵素 [ユビキノン] フラボタンパク質サブユニット、ミトコンドリア TCA サイクル遺伝子変異データベース (SDHA) SDHA SDHA
SDHAF2 11q12​.2 コハク酸脱水素酵素集合因子2、ミトコンドリア SDHAF2 @ LOVD SDHAF2 SDHAF2
SDHB 1p36​.13 コハク酸脱水素酵素[ユビキノン] 鉄硫黄サブユニット、ミトコンドリア TCA サイクル遺伝子変異データベース (SDHB) SDHB SDHB
SDHC 1q23​.3 コハク酸脱水素酵素シトクロムb560サブユニット、ミトコンドリア TCA サイクル遺伝子変異データベース (SDHC) SDHC SDHC
SDHD 11q23​.1 コハク酸脱水素酵素[ユビキノン] シトクロムb 小サブユニット、ミトコンドリア TCA サイクル遺伝子変異データベース (SDHD) SDHD SDHD
TMEM127 2q11​.2 膜貫通型タンパク質127 TMEM127 遺伝子ホームページ-膜貫通型タンパク質 127 TMEM127 TMEM127

データは以下の標準編集から編集されている:遺伝子:HGNCより、染色体遺伝子座:OMIMより、タンパク質:UniProtより。データベースの記述について(遺伝子座特異的、HGMD、ClinVar)のリンクはここをクリック。

B. 遺伝性パラガングリオ腫-褐色細胞腫症候群のOMIMエントリ(OMIMで全文を見る)

115310 パラガングリオーマ4;PGL4
154950 MAXタンパク質;MAX
168000 パラガングリオーマ1;PGL1
171300 褐色細胞腫
185470 コハク酸脱水素酵素複合体、サブユニットB、鉄硫黄タンパク質;SDHB
600857 コハク酸脱水素酵素複合体、サブユニットA、フラボプロテイン;SDHA
601650 パラガングリオーマ2;PGL2
602413 コハク酸脱水素酵素複合体、サブユニットC、内在性膜タンパク質、15-KDa;SDHC
602690 コハク酸脱水素酵素複合体、 サブユニット D,、内在性膜タンパク質;SDHD
605373 パラガンギリオマス 3;PGL3
613019 コハク酸脱水素酵素複合体集合因子2;SDHAF2
613403 膜貫通タンパク質 127;TMEM127
614165 パラガングリオーマ5;PGL5

分子遺伝学的病原性

SDHASDHBSDHC、およびSDHDは、遺伝性PGL/PCC症候群の病原性となる4つの核内遺伝子である。これらの遺伝子は、ミトコンドリア酵素コハク酸脱水素酵素(SDH)の4つのサブユニットをコードしている。SDHは、クレブス回路においてコハク酸からフマル酸への変換を触媒し、電子伝達系の複合体IIとして機能している。5番目の核内遺伝子であるSDHAF2SDH5としても知られている)は、SDH複合体の安定化だけでなく、別のSDHサブユニットであるSDHAのフラビン化にも必要と想定されているタンパク質をコードしている。これら5つの遺伝子は、総称してSDHx遺伝子として知られている。

SDHASDHAF2SDHBSDHC、およびSDHDは、がん抑制遺伝子である。腫瘍細胞における体細胞性2ヒットバリアントは、総染色体再配列、組換え、一塩基変異、または対立遺伝子の不活性化をもたらすエピジェネティックな変化を包括する。

頭蓋骨基部および頸部パラガングリオーマ、交感神経副腎外パラガングリオーマ、および褐色細胞腫がすべてに共通して神経堤が起源であることは、この症候群を特徴づける。

SDHASDHBSDHCまたはSDHDの不活性化は、細胞内コハク酸濃度の上昇および/または活性酸素種の産生の増加に起因する擬似低酸素性細胞状態の発生を引き起こす可能性がある。細胞内のコハク酸の増加は、HIFプロリン水酸化酵素およびヒストンおよび/またはDNA脱メチル化酵素などの2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼを競合的に阻害する。これは、低酸素経路を刺激するHIF-1αの増加につながり、ハイパーメチル化[Pollardら2005、Letouzéら2013]などのエピジェネティックな修飾につながる。

PGL/PCCの腫瘍化におけるTMEM127MAXの役割については、あまり分かっていない。TMEM127は、mTOR経路の制御に関与する膜貫通タンパク質である。MAXは、MYCとヘテロ二量体を形成し、腫瘍化に関与する下流遺伝子の転写を制御する転写因子である。

MAX

遺伝子構造 MAXは5エクソンから成り、長さ2068-bpの転写物を産生する(参照配列NM_002382.3)。遺伝子およびタンパク質情報の詳細な要約については、表A、遺伝子を参照のこと。

病原性バリアント ミスセンス、ナンセンス、およびスプライシングのバリアントおよび遺伝子内欠失はすべて、遺伝性 PGL/PCC を有する患者において報告されている。

正常な遺伝子産物 MAXは160のアミノ酸から構成されるタンパク質をコードする。このアミノ酸から構成されるタンパク質は、細胞増殖、分化、およびアポトーシスを調節する基本的ヘリックス・ループ・ヘリックス・ロイシンジッパー(bHLHZ)転写因子のMYC-MAX-MXD1ネットワークの二量化構成要素である。

異常な遺伝子産物 MAXにおける病原性バリアントは、そのタンパク質産物の欠失または機能不全をもたらし、その結果、細胞増殖および細胞死に関与する多くの遺伝子が制御不能となる。

SDHA

遺伝子構造 SDHAは15個のエクソンで構成され、長さは約39kbである。2,390-bpの転写産物をコードする(参照配列 NM_004168.3)。遺伝子およびタンパク質情報の詳細な要約については、表A, 遺伝子を参照のこと。

病原性バリアント SDHAでは、複数のミスセンスおよびナンセンスの病原性バリアントが同定されている。SDHサブユニット遺伝子の良性および病原性バリアントのデータベースは、ライデン大学医療センターが保管している(表Aを参照)。

正常な遺伝子産物 SDHAは、コハク酸ユビキノン酸化還元酵素のフラボタンパク質サブユニットをコードする。

異常な遺伝子産物 SDHAの病原性バリアントは、影響を受けたサブユニットの損失または機能不全、またはSDHヘテロ4量体の重合がかなわず、コハク酸脱水素酵素の機能低下または機能不全となる。

SDHAF2

遺伝子構造 SDHAF2SDH5としても知られている)は4つのエクソンから構成され、501-bpの転写物を産生する(参照配列NM_017841.1)。遺伝子およびタンパク質情報の詳細な要約については、表A、遺伝子を参照のこと。

病原性バリアント 表5を参照のこと。van Baarsら[1982]によって記載されたオランダの家族からの罹患者は、SDHAF2のエクソン2において1塩基置換(c.232G>A)を有することが判明した。これは、タンパク質の保存領域においてp.Gly78Argの変異をもたらし、創始者バリアントであると考えられている[Hensen ら 2012]。注目すべきは、c.232G>C(p.Gly78Arg)も報告されていることである[Piccini ら 2012]。SDHAF2では、他にも機能喪失性バリアントが報告されている。

5. GeneReviewsで取り上げたSDHAF2バリアント

DNAヌクレオチド変化 予測タンパク質変化 参照配列
c.232G>A p.Gly78Arg NM_017841 .1
NP_060311 .1
c.232G>C p.Gly78Arg

表に示すバリアントは、著者によって提供されている。GeneReviewsスタッフは、バリアントの分類を独自に検証していない。
GeneReviews、ヒトゲノム変異学会の標準的な命名規則に従う(varnomen​.hgvs.org)。命名法の説明については、クイック リファレンスを参照。

正常な遺伝子産物 SDHAF2は、166個のアミノ酸残基からなるコハク酸脱水素酵素集合因子2をコードしている。

異常な遺伝子産物 SDHAF2タンパク質は、SDHAのフラビネーション、SDH複合体の安定性、ひいてはSDH酵素の機能に必要とされるようである。その証拠として、SDHAF2のエクソン2にあるc.232G>Aの病原性バリアントがこのタンパク質を不安定化させ、SDHAとの相互作用を損なうことが示唆されている。

SDHB

遺伝子構造 SDHBは8つのエキソンから成り、長さは約40kb。1,162-bp の転写産物をコードしている(参照配列NM_003000.2)。遺伝子とタンパク質情報の詳細な概要については、表A、遺伝子を参照のこと。

病原性バリアント 遺伝性PGL/PCC症候群に罹患した個体/家系において、ナンセンス、ミスセンス、スプライスサイトバリアント、遺伝子内欠失および挿入、および全遺伝子SDHB欠失が報告されている。SDHBについては、100以上の病原性バリアントが報告されている。SDHサブユニット遺伝子の良性および病原性バリアントのデータベースは、ライデン大学医療センターによって管理されている(表Aを参照)。SDHBのバリアントはエクソン1-7に顕著に認められる。
大規模なSDHB欠失が報告されており、最も多いのはSDHBエクソン1関係であるが、他のマルチエクソン欠失および全遺伝子欠失も報告されている[Cascón ら 2006, Burnichon ら 2009, Neumann ら 2009, Solis ら 2009, Buffet ら 2012, Rattenberry ら 2013]。

正常な遺伝子産物 SDHBは、コハク酸脱水素酵素(ユビキノン)鉄硫黄サブユニット、280アミノ酸タンパク質(参照配列NP_002991.2)をコードする。

異常な遺伝子産物 SDHBの病原性バリアントは、影響を受けたサブユニットの喪失または機能不全、またはSDHヘテロ4量体の重合がかなわず、コハク酸脱水素酵素の機能低下または機能不全となる。

SDHC

遺伝子構造 SDHCは6つのエクソンを持ち、長さは35kb以上である。2,858-bpの転写物をコードしている(参照配列 NM_003001.3)。遺伝子およびタンパク質情報の詳細な要約については、表A、遺伝子を参照のこと。

病原性バリアント 遺伝性PGL/PCC症候群に罹患した患者および家系において、ナンセンス、ミスセンス、スプライシング部位、調節領域、および全エクソン欠失のSDHC病原性バリアントが報告されている。

正常な遺伝子産物 SDHCはコハク酸脱水素酵素シトクロムb560サブユニット(169-アミノ酸タンパク質)をコードしている(参照配列NP_002992.1)。

異常な遺伝子産物 SDHCの病原性バリアントは、影響を受けたサブユニットの喪失または機能不全、またはSDHヘテロ4量体の重合がかなわず、コハク酸脱水素酵素の機能低下または機能不全となる。

SDHD

遺伝子構造 SDHDは4つのエクソンから構成され、1,313-bpの転写物を産生する(参照配列NM_003002.1)。遺伝子およびタンパク質情報の詳細な要約については、表A、遺伝子を参照のこと

病原性バリアント 遺伝性PGL/PCC症候群を持つ患者および家系において、ナンセンス、ミスセンス、スプライス部位の変異、遺伝子内挿入と欠失、および全遺伝子欠失がSDHDで報告されている。SDHDについて70を超える病原性バリアントが報告されている(表Aを参照)。SDHDの病原性バリアントは、遺伝子の4エクソン全体に分布している。
SDHサブユニット遺伝子の良性および病原性バリアントのデータベースは、ライデン大学医療センターによって保管されている(表Aを参照)。

正常な遺伝子産物 SDHDは、コハク酸脱水素酵素(ユビキノン)チトクロムb小サブユニット、159-アミノ酸タンパク質をコードする(参照配列NP_002993.1)。

異常な遺伝子産物 SDHDの病原性バリアントは、影響を受けたサブユニットの喪失または機能不全、またはSDHヘテロ4量体の重合がかなわず、コハク酸脱水素酵素の機能低下または機能不全となる。

TMEM127

遺伝子構造 TMEM127は4つのエクソンからなり、6,266-bpの転写物を産生する(参照配列NM_017849.3)。遺伝子およびタンパク質情報の詳細な要約については、表A、遺伝子を参照のこと。

病原性バリアント ミスセンス、ナンセンス、およびスプライシングバリアントおよび遺伝子内欠失はすべて、遺伝性 PGL/PCC を有する患者において報告されている。

正常な遺伝子産物 TMEM127は、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)関連のキナーゼファミリーのメンバーであるmTORC1を阻害により制御する238-アミノ酸タンパク質をコードしている。この制御は、細胞増殖、血管新生、細胞生存、タンパク質翻訳を促進する。

異常な遺伝子産物 TMEM127の病原性バリアントは、そのタンパク質産物の欠損または機能不全をもたらし、mTORC1のリン酸化促進を誘導し、細胞増殖に影響を与える。


更新履歴

  1. Gene Reviews著者: Salman Kimani, MBBS and William F Young, MD, MSc.
    日本語訳者: 竹越一博(筑波大学医学医療系臨床医学域スポーツ医学)
    AMED「医療現場でのゲノム情報の適切な開示のための体制整備に関する研究」班(研究開発代表者:小杉眞司)
    Gene Reviews 最終更新日: 2014.11.6. 日本語訳最終更新日:2018.9.9
  2. Gene Reviews著者: Tobi Else, MD, Samantha Greenberg, MS, MPH, CGC, and Lauren Fishbein, MD, PhD, MTR
    日本語訳者: 與那嶺 正人/竹越 一博(筑波大学医学医療系 臨床検査医学/スポーツ医学)
    Gene Reviews 最終更新日: 2018.10.4  日本語訳最終更新日: 2020.7.15(in present)

原文: Hereditary Paraganglioma-Pheochromocytoma Syndrome

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