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はじめに

グルコーストランスポーター1;GLUT1は、糖(グルコース)を脳に運ぶ役目を持つたんぱく質です。このたんぱく質は、脳と血液の間の壁である「血液脳関門」の中に多く存在しています。また、脳の中のいろいろな細胞にも見られます。

GLUT1欠損症という病気は、このGLUT1がうまく働かないことで起こります。この病気は、特定の遺伝子の変わった部分(変異)が原因で生まれます。この変異があると、糖が脳に十分に運ばれなくなり、脳のエネルギーが足りなくなってしまいます。その結果、知的な問題や、てんかん、体の動きに関する問題が起こることがあります。今のところ、日本だけでも60人以上の患者が確認されています。

この病気の治療として、特に「ケトン食療法」という特別な食事療法が取り入れられています。この食事は、糖の代わりに「ケトン体」という物質を脳に供給することで、脳のエネルギーを確保するものです。ただし、この食療法は、けいれんには効果的ですが、学習困難や心の問題、体の動きの問題などにはあまり効果が見られません。また、この食事を続けることによる心臓や脳の病気のリスクも考えられます。そして、この食療法は糖分の摂取を非常に厳しく制限するため、続けるのが大変で、途中でやめてしまう人も多いです。

GLUT1の患者様やその家族の方からは、新しい治療方法の希望もあることから、私達たちは、遺伝子治療によってこの病気の進行を止め、ケトン食療法の必要をなくすことを目指して、2013年から研究を進めてきました。そして、私達は、GLUT1欠損症に対する遺伝子治療の臨床試験を予定しています。