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早期診断法

グルコーストランスポーター1欠損症の早期スクリーニング法の開発について

グルコーストランスポーター1欠損症(Glut1欠損症)と診断するには、特徴的な臨床所見、髄液糖/血糖比低下、遺伝子検査など総合的に検査を行い確定診断とするため、確定診断までに時間がかかることも多くみられます。慢性的な脳機能障害をきたす前に治療を開始するには、体への負担が少なく、かつ簡便なスクリーニング法が必要と考えました。そこで私達は、フローサイトメトリー法を用いて赤血球膜のGLUT1蛋白の発現を測定し、重症度を反映した機能評価法となりうるか研究を進めました。

方法としては、Glut1欠損症と遺伝子診断するか、臨床症状からGlut1欠損症を疑った患者から採取した約0.5ml血液から遠心分離した赤血球分画1μlを用いて、フローサイトメトリー法で赤血球膜のGLUT1発現量/構造変化を測定しました。フローサイトメトリー用試薬は、GLUT1の細胞膜外領域の立体構造を認識するHTLVの受容体結合ドメインに蛍光色素GFPを結合した、Glut1.RBD (METAFORA)を用いました。

結果ですが、健常者13名のGLUT1蛍光強度の平均96.5±0.61%に対し、Glut1欠損症患者13名のGLUT1蛍光強度は平均82.0±3.0%と有意に低下していました。臨床症状がGlut1欠損症に類似しているが遺伝子異常のなかった患者1名については蛍光強度の低下はみられませんでした。ケトン食開始前の知的障害の重症度で分類すると、軽度から中等度知的障害患者4名のGLUT1蛍光強度が82.2±4.7%、重度から最重度知的障害患者7名のGLUT1蛍光強度が77.5±3.6%と、健常者と比較し有意に低下していました(図は代表的なヒストグラム。より重症度が高いと、グラフが左方にシフトする)。これらの結果から、重症度の高いGlut1欠損症患者について、フローサイトメトリー法を用いて、髄液検査より負担が少なく、神経障害をきたさない早期に発見できる可能性があり、現在症例数を増やして検討を続けています。

参考文献