性能評価試験項目

受験申請資格(4)装置の精度管理
-装置の精度管理に関する性能評価試験項目-

 

1.均一ファントムによるSNR測定試験

1)標準的なNEMA法で測定する。

2)ファントムについて
・頭部:最小寸法は撮像面内で直径10cmの円または保証範囲の85%のうち大きい方を満たすもの。
・体幹部:最小寸法は撮像面内で直径20cmの円または補償範囲の85%のうち大きい方を満たすもの。
・T1値<1200ms、T2値>50ms
・頭部と体幹部の2種類の大きさのファントムを使用すること。

3)撮像条件
・ファントムの安定化を図る。
・ファントムはアイソセンターに置かれたRF受信コイルの中心に配置する。
・室温およびファントム温度は22±4℃。
・Spin echo(SE)法が望ましいが、必ずしもこの限りではない。
・TR≧3×T1、TEは一般的に臨床に使用される範囲。
・シングルスライスで、撮像面はAxial。
・FOVは面内においてRFコイルの最大径の110%を超えないこと。
・スライス厚≦10mm
・表面コイルは使用できない。
・Parallel imagingを使用してはいけない。
・ROIは画像断面の75%は少なくとも囲むこと。

4)測定結果の基になった数値と計算式を記載する。また、その数値が何を表しているのかも示す。

5)差分(subtraction)ができない装置は簡易法を用いても構わない。

[参考]
○National Electric Manufacturers Association:Determination of signal-noise ratio (SNR) in diagnostic magnetic resonance images,NEMA Standard Publication,MS1(2008)
○宮地利明 編:標準MRIの評価と解析.32-40,オーム社,2012

[補足]
NEMA法とは異なりますが、頭部用コイルとして表面コイルを使用する場合は、以下を参照してください。
表面コイルを使用する場合とParallel imagingを用いる場合におけるSNR評価法
表面コイルを用いる場合には、感度補正フィルタ処理の有無により、信号値と雑音値のどちらかが不均一分布となる。また、Parallel imagingではこれらに加えて、geometry factorにより不均一雑音となりSNR分布の位置依存性が生じる1)。そのため、ROIの位置と大きさに問題が生じる。そこで今井ら2)が提唱した差分マップ法を参照して頂きたい。
また、上記プログラムは日本放射線技術学会画像部会のホームページよりダウンロード可能である。

1)宮地利明,今井 広,小倉明夫,他.Parallel MRIにおける画像SNR評価法の問題点
2)今井 広,宮地利明,小倉明夫, 他.差分マップ法および連続撮像法によるParallel MRI画像のSNR測定.日放技学誌 64(8):930-936,2008

2.均一性試験

1)標準的なNEMA法に準じて測定を行い、不均一度を算出する。

2)ファントムについて
・頭部:最小寸法は撮像面内で直径10cmの円または保証範囲の85%のうち大きい方を満たすもの。
・体幹部:最小寸法は撮像面内で直径20cmの円または補償範囲の85%のうち大きい方を満たすもの。
・T1値<1200ms、T2値>50ms
・頭部と体幹部の2種類の大きさのファントムを使用すること。

3)撮像条件
・ファントムの安定化を図る。
・撮像断面はファントム中心を含む3断面(axial、coronal、sagittal)。
・ファントムはRF受信コイルの中心に配置する。
・室温およびファントム温度は22±4℃。
・TR≧5×T1、TEは一般的に臨床に使用される範囲。
・FOVは面内においてRFコイルの最大径の110%を超えないこと。
・SE法(first echo)を用いる。
・スライス厚≦10mm
・マトリクスサイズは128×128以上を用いる。
・画像フィルタは使用しない。
・SNRを測定して十分なSNRを担保すること。
・ROIは画像断面の75%は少なくとも囲むこと。
・表面コイルは使用できない。
・Parallel imagingを使用してはいけない。

4)測定方法を図示し、評価結果を求めるための数値を図中に直接書き込む。

5)測定結果を求める計算式を添えて、評価結果を表示する。

[補足]
NEMA法とは異なりますが、頭部用コイルとして表面コイルを使用する場合は、感度補正フィルタ処理を行ってください。

[参考]
○National Electric Manufacturers Association:Determination of image uniformity in diagnostic magnetic resonance images,NEMA Standard Publication,MS3(2008)
○宮地利明 編:標準MRIの評価と解析.40-43,オーム社,2012

3.スライス厚測定試験

1)標準的なNEMA法に準じて、ウェッジ法を用いて測定を行う。

2)2枚の楔型三角錐が交叉したスライス厚測定用ファントムの使用が望ましい。

3)撮像条件
・SE法を用い、マルチスライスで撮像を行う。
・マルチスライスで少なくとも3スライスは撮像を行い、スライス間距離が予想される半値幅の2倍以上であること。
・TR≧3×T1、スライス厚とTEは一般的に臨床に使用される範囲。
・十分なSNRを担保すること。

4)測定に際しコンピュータソフトを使用してもいいが、結果は正方眼紙1枚に測定方法とともに、得た数値の根拠となる計算式を表示する。

5)楔形三角錐がひとつしかない場合や、当該ファントムを持ち合わせていない場合は、ファントムを作成もしくは独自な方法で求めてもよい。独自な方法を用いる場合は、信頼度を記す。

[参考]
○National Electric Manufacturers Association:Determination of slice thickness in diagnostic magnetic resonance images,NEMA Standard Publication,MS5(2010)
○宮地利明 編:標準MRIの評価と解析.44-47,オーム社,2012

4.T1値,T2値測定試験

1)適当な溶液(例:ガドリニウム希釈溶液など)を作成して測定対象物質を作成し、ファントムの安定化を図った後に撮像を行う。

2)装置に組み込まれた簡易法によらず複数の信号強度点から求める。

3)T1値T2値を求めるための根拠となった計測結果表と片対数グラフおよびそのグラフからの読み取り値からT1値T2値を求めるための数値と計算式を示す。

※ 片対数グラフの取扱と、グラフの傾きを測定する場所に注意する。

[参考]
○笠井俊文,土`井司 編:MR撮像技術学 改訂2版.191-195,オーム社,2008
○宮地利明 編:標準MRIの評価と解析.102-111,オーム社,2012

-装置性能評価試験の提出時の注意-

(1)上記4項目について、実際の装置で測定したデータ,結果,考察をレポート形式で提出する。

(2)それぞれA4サイズの用紙1枚ずつに計算結果ならびに模式図を書く。

(3)ただし、項目3は正方眼紙が1枚、項目4は片対数グラフ用紙2枚と計算用A4版用紙1枚となり、合計6枚(6枚以上になっても構いません)を性能評価試験毎にpdfファイルを作成し、受験申請時にweb上で登録する。最初のページの最上段に、施設名、氏名、使用装置名(メーカー名も)を記載する。

(5)それぞれの試験において、使用機材(使用コイルとファントム、ファントムは形状やサイズも)と撮像条件を記載する。また、項目1と2では、使用したファントムの内容液も記載する。

(6)同一施設で複数名申請する場合は、
  項目1:スキャンするスライス厚を変える。
  項目2:撮像条件を変える。
  項目3:スライス厚を変える。
  項目4:対象とする試料の溶液濃度を変える。
などの対策を行って同じデータを使用しない。

(7)結果、考察などは簡潔に記載してください。

(8)記載方法ならびに評価試験の内容についての質問には一切答えられません。

-装置性能評価試験の審査基準-

(1)測定法を理解しているか。

(2)正しい測定法が実施されているか。

(3)評価結果の根拠となるデータがもれなく記載されているか。

(4)結果を得るためのグラフが軸名や単位も含めて記載されているか。

(5)評価を求めるための計算式や単位が記載されているか。

(6)第三者が同じ試験を追試できる情報が記載されているか。

(7)評価試験に不備があった場合には、認定試験を受験することができません。

その際には、申請書類をお返しいたしますので、次年度申請時に参考にして下さい。