脳外科医 澤村豊のホームページ

様々な脳腫瘍や脳神経の病気について説明しています。

小児への放射線治療

おおまかなこと
  • 年齢が低いほど放射線治療の副作用が強く出ます
  • 年齢と腫瘍の種類,場所によってさまざまな放射線治療の方法があります
  • 成人では1日線量2グレイが用いられることが多いのですが,小児では1.8グレイが一般的です
  • 1歳児ではほとんど放射線治療をしないのですが,緩和的な治療を選択する時に1回線量で1グレイという照射をおこなうこともあります

小児の全脳照射後に生じた脳萎縮(白質脳症)・ここをクリック

小児の脳は放射線治療でダメージを受けやすいです,同じ量の放射線をあてても予想外の結果が生じてしまうことがあります。

二次腫瘍・放射線誘発腫瘍:ここをクリック
secondary tumor, secondary cancer, radiation-induced tumor

放射線治療をしたために何年もあとになって腫瘍が発生することがあります。

小児への放射線治療後に生じた珍しい障害例はここをクリック

 

文献情報

原体照射や定位照射の方が,旧来の外照射より知能低下の程度が軽い

Jalali R, et al.: Efficacy of Stereotactic Conformal Radiotherapy vs Conventional Radiotherapy on Benign and Low-Grade Brain Tumors: A Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2017
インド・ムンバイからの報告です。2001年から12年にかけて行われた無作為試験の結果報告です。良性小児脳腫瘍(中央値13歳:3-25歳)200例が放射線 (54 Gy in 30 fractions over 6 weeks)で治療されました。原体照射/定位照射が104例,旧来の分割照射が96例です。FIQとPIQの低下率には有意差があり,FIQとPIQではdifference in slope 1.48と1.64の差があり,原体照射のほうが低下率が低かったとの結論です。わかりやすく言うと,放射線治療前に知能指数が100あったとして,旧来の方法では5年後に85まで下がったとすれば,原体照射なら92までの低下ですむということです。内分泌機能(ホルモン)の低下は,旧来の放射線治療では51%にでましたが,原体照射では31%でした。特に,9-17歳の年齢層で平均的なIQ値が保持されたそうです。5年全生存割合は,旧来の方法では91%,原体照射では86%でした。

放射線治療の晩期障害としての脳卒中の論文

Bowers DC et al.: Late-occurring stroke among long-term survivors of childhood leukemia and brain tumors: a report from the childhood cancer survivor study. J Clin Oncol 24: 5277-5282, 2006

  • 5年以上生存した脳腫瘍の子供1,871人の追跡調査です。治療されたときの平均年齢は7.7歳です。
  • 63名の生存者に脳卒中が生じました。
  • 治療後14年前後で脳血管障害が生じていますから,患者さんが22歳くらいの時です。
  • 治療後25年での危険率は5.58%とされています。
  • 正常対象とされた人と比べると29倍の危険率であったとのことです。
  • 脳腫瘍の治療で放射線治療を受けると20人に一人くらい若いときに脳卒中になるかもしれないということです。
  • 30グレイ以上の照射線量で後々の脳血管障害の危険率が増します。
  • 50グレイかかっていると相当に高い頻度になるとのことです。
  • 全脳脊髄照射をしていると3倍頻度が高くなります。
  • 脳腫瘍の再発があった子供に頻度が高くなるのは放射線量が多くなるからです。
  • アルキル化剤という化学療法を同時に使っていると頻度が高くなります。
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