脳外科医 澤村豊のホームページ

様々な脳腫瘍や脳神経の病気について説明しています。

障害者年金の受け取り方

身体障害はわかりやすいのですが,高次脳機能障害はわかりにくいです

障害者年金をもらうということは,身体の障害あるいは精神の障害のために,働いてお金を稼げないという事実があり,それを証明しなければなりません

身体の障害:体の麻痺などの障害はみればわかるので,すぐに認めてもらえます。
精神の障害:でも高次脳機能障害などの認知機能障害で就労ができない場合は,認定してもらうのが難しいと言えます。私は何度も申請書を書いていますが,なぜ働けないかを証明しなければならない難しい書類で,過去の記録なども必用となり,困ってしまうことも多いです。

後遺症で働けない時には,20歳を過ぎると年金を受け取ることができます

小児期に脳腫瘍になると知的障害(認知機能障害,高次脳機能障害,知能低下,精神障害)が後遺症として残ってしまって,働いて自活することができないことがあります。そのような時には,20歳を過ぎると障害者年金の支給を申請することができます。

 まずどこに行くか

まずは最寄りの役所(市区町村の年金や福祉の窓口)にいって,障害者年金の申請ができないか尋ねて,可能性があれば申請書類を手に入れます。診て下さっている医師に申請書類を書いていただいて提出します。障害者年金の支給決定を行なうのは社会保険庁ですから,書類審査の結果で支給されることも不支給となることもあります。

 障害の認定日は

小児脳腫瘍の場合は,20歳の誕生日が障害認定日となります。基本的には,国民年金の障害基礎年金ですが,20歳になる前から脳腫瘍による障害があったことを証明するために医療機関(脳腫瘍を治療した病院)の証明が必用です。また,現時点での障害を書いていただかなければなりませんから,現在も医療機関にかかっていないと障害年金は受けられません。療育手帳(知的障害者の手帳)があると障害年金の申請をしやすいのですが,ある程度の重い障害でなければなりません。上記は20歳からの障害社年金を受け取るために必用なことです。でも大事なことは,25歳くらいになってたとえ過去の記録がなくても,療育手帳がなくても,現在の障害がしっかり証明できれば申請はできます

検査結果の保存と診断書

脳腫瘍の治療後には,心理テスト、認知機能検査、高次脳機能検査などを行うはずなので,その記録をしっかり保存しておきます。20歳を過ぎてから障害のために働けないと判断した時には,経過観察をしてくださっているお医者さんにまず相談しましょう。21歳を過ぎてからは20歳まで遡って障害年金を受け取ることができます(遡及請求)。例えば,24歳で申請が通れば,20歳から24歳までの分も支給されるので,かなりまとまった金額になります。そのためには,20歳時点での障害がどの程度であったかという診断書(記載が難しい書式)が必用になるのですが,これがとても面倒で,20歳時の記録をきちんと保存して下さっている主治医の先生がいないと難しいです。申請書類を提出して3ヶ月から1年近く経過してから障害年金の受給に関する通知が届くそうです。 

38歳になってから申請したケースです

39歳の時に障害年金がようやくもらえるようになって,お礼の手紙を私に送って下さいました。

1979年,7歳の時に髄芽腫になり,全脳に35グレイの放射線治療を受けました。小学校と中学校は普通に卒業して高校へ入学しました。でも,高校を中退して働くようになって,職場を転々としました。どこでも真面目に働いたのですが,すぐに解雇になってしまいました。一桁の計算が難しくて,短期記憶が悪いです。
私がこの患者さんに初めてお会いしたのは,彼女が38歳の時でした。70歳を超えるご両親と同居しておられて扶養家族,社会保障の手当は全く無しという状態でした。お父さんの年金で生活していたのですが,お父さんは病気でした。髄芽腫の治療で使用された全脳照射の影響であったことはすぐに解ったので,精神科の先生にお願いして診断書を書いていただいて,障害者年金を申請しました。

この患者さんの教えて下さったことは,脳に対する放射線治療の影響は,何年もかかってゆっくり出現するということです。退院した時に大丈夫だからといって,将来は解りませんでした。

でも,こういう患者さんの経験が積み重なり,現在では小児の脳への放射線治療は大きく見直されて,低減されてきています。

 

 

 

 

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