WHO 2021 脳腫瘍 グレード:悪性度を 1, 2, 3, 4で表現します
グレード WHO 2021 grade
主として組織学的なグレードです、治療の難しさや治りやすさなど臨床的な経過と必ずしも一致しません。悪性度はグレード1から4まであると理解した方がいいでしょう。だいたいにおいて、グレード1は、完治が期待できるものです。
2016年まではローマ数字 Roman numecals I, II, III, IVで記載されましたが,2021年からはアラビア数字 Arabic numerals 1, 2, 3, 4で記載することになりました。
グレード1 (ほとんどの脳腫瘍はこれグレード 1)
ゆっくり大きくなるもしくは大きくならないこともある腫瘍です。見つかってもほっておく、もしくは、外科手術で摘出すると治ってしまうものです。「良性」の髄膜腫,下垂体腺腫,神経鞘腫です。グリオーマでは、小脳の毛様細胞性星細胞腫などがこれにあたります。
グレード2
臨床的に良性と言えないものが多いです。組織学的には良性に見えて,何年もかかってゆっくり大きくなります。でも,脳組織の中にしみ込むように発育する性質を持ちます。完全摘出ができないことが多いために手術後に再発してしまうこともあります。5年以上は生存できるであろうという予想がたつ腫瘍です。まれに悪性化してグレード3とか4に変わります。異型性髄膜腫 atypical meningioma,びまん性星細胞腫,乏突起膠腫などです。でも,結局は再発再燃を繰り返して腫瘍死することがありますから,グレード2の脳腫瘍の多くはすでにガンと考えなければなりません。
グレード3
組織学的に悪性腫瘍の性質を示します。核異型や分裂像や旺盛な増殖能を示すものです。手術で取り切れることはほとんどありませんから,患者さんは摘出手術後あるいは生検術後に放射線や化学療法を受ける必要があります。平均的に治療後3年くらいは生存できるとされるものです。退形成性星細胞腫や退形成性乏突起膠腫がこの代表です。でもグレード3では確率は高くはなくても10年以上の長期生存が期待できます。
グレード4
とても悪性度の高い組織像をもつものです。組織の中に壊死がみられてMIB-1などで示される増殖能力が極めて高くて,早く大きくなります。脳の中にも広範囲に腫瘍細胞が広がります(浸潤や髄液播種)。有効な治療をほどこさないと短い間に命をなくしてしまいます。ですから,治療開始を急ぐ必要があるものです。膠芽腫がグレード4の代表ですが,生存期間の中央値は2年弱と考えなければなりません。でも一方で,髄芽腫はグレード4なのですが5年生存は70%くらいが期待できますし,完全に治ってしまう患児も多いです。松果体芽腫は治療が難しくて長期生存率はとても低いです。グレード4でも治療の有効性が期待できるものとできないものでは,予後が全く違います。
WHO グレード 2021年 改変があった主なもののみ
- Astrocytoma, IDH-mutant 2, 3, 4
- Oligodendroglioma, IDH-mutant, and 1p/19q-codeleted 2, 3
- Glioblastoma, IDH-wildtype 4
- Diffuse astrocytoma, MYB– or MYBL1-altered 1
- Polymorphous low-grade neuroepithelial tumor of the young 1
- Diffuse hemispheric glioma, H3 G34-mutant 4
- Pleomorphic xanthoastrocytoma 2, 3
- Multinodular and vacuolating neuronal tumor 1
- Supratentorial ependymoma 2, 3
- Posterior fossa ependymoma 2, 3
- Myxopapillary ependymoma 2
- Meningioma 1, 2, 3
- Solitary fibrous tumor 1, 2, 3
The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: a summary. Neuro Oncol 2021
WHO グレード 2016年 主たるものすべて
下の表は2016年のグレードです,クリックすると拡大できます。上にないものは下の表でみてください。