脳腫瘍と告げられて質問すること インフォームドコンセント
インフォームドコンセント
- 病気の説明をしっかり聞いてから提案された治療を了承することを,インフォームドコンセント (Informed Consent)といいます
- 業界用語では,頭文字をとって IC アイシーといいます
- 「これからアイシーする」とか間違った使われ方もしています
- かつてはドイツ語で,ムンテラといいました
インフォームドコンセントの正しい訳は,
「正しい情報を得た(伝えられた)上での合意」です
脳腫瘍と告げられて患者さんが聞いておくべきこと
脳腫瘍の説明を受けるときに主治医の先生に何を教えていただくか,患者さんが忘れがちなことに関して「カッコ」でくくったところを聞いて下さい
病名
- 脳腫瘍の病名は,腫瘍のできた「場所」と「病理診断名」の2種類で表現されます。例えば,小脳腫瘍は単に小脳という部位にできた腫瘍という意味です。小脳星細胞腫は小脳にできた星細胞腫という病理診断名です。治るかどうかはできた場所と病理診断の両方がわかって初めてはっきりします。
- 治療を決める前に「予想される脳腫瘍の病理組織診断名」を聞きます。例えば髄膜腫とかグリオーマとかいう病理診断名です。「腫瘍が悪性か良性か」などを表します。医師からは手術で取ってみなければ病理は解らないという説明もあるようですがある程度の予想はできるはずです。特に脳腫瘍に詳しい医師にはできます。
腫瘍の大きさと広がり
- 腫瘍の大きさ」は手術方法や手術のリスクに関連します。例えば下垂体腺腫で20 mmくらいならば鼻からの手術でできますし簡単です。でも45 mmを超えると開頭手術が必要になることがあります。
- 聴神経腫瘍は脳の外側にできて脳幹部を外から圧迫します。でも脳幹部神経膠腫は脳幹内部にしみ込むように広がります。両方とも同じような脳幹症状を出すのですが,「脳の外にあるか脳の内部にあるか」を聞きましょう。腫瘍のできた場所を腫瘍の発生部位と言います。脳内部のものの方が手術は危険です。
治療が必要かどうか
- 無症状の時や症状がとても軽い良性腫瘍は治療をしないで経過を見るという選択肢がありますので,「なぜ治療が必要なのか」理由をまずしっかり聞きましょう。
- 治療しなかった時には「どのような経過が予想されるか(予後)」も含めて聞いた方がいいでしょう。
もし悪性腫瘍が予想される場合
- 「放射線治療や化学療法(制がん剤)がかかっている病院でできるか」どうかを聞きます。できない場合には手術後に転院することになるから,手術の前からそれができる施設で治療を受けた方がいいです。
- 「予想される脳腫瘍のグレード」を聞きます。1から4まであります。1は手術で取れれば治ってしまう良性腫瘍です。2の場合は手術だけでは再発の危険性が高いものです。4は手術,放射線,制がん剤を使っても治る可能性はとても低いものです。
- 残念ながら悪性脳腫瘍にはどうしも助からないものもあります。特に高齢者の場合は手術などしないで緩和医療のみをするという選択肢もあります。「治療しないのとするのとどのくらい有意義に生活できる期間が延びるのか」を聞きます。
手術前の検査
- 特に動脈から「なぜカテーテルを入れる脳血管撮影 (DSA)をする必要があるのかどうか,しない場合には手術にどのような危険が増えるか」を聞きましょう。この検査は脳梗塞などの合併症の可能性もある侵襲的な検査ですから慎重にしますし,できればしないほうがいいでしょう。
- 入院前の外来でのPET(ペット)検査はお金がかかりますから,もし提案されたら「ペット検査をしてどのような利益があるか,つまり予想される結果で診断や治療が変わるかどうか」を聞きましょう。
手術を提案されたとき
- 手術をする先生「執刀医は誰か」を聞きましょう。執刀医を明らかにしなければならないことは法律で決まっています。
- 聞きにくいのですがここは勇気をだしてもう一つ,「同じような腫瘍の手術にどのくらいの経験があるか」を執刀医に尋ねましょう。自分や家族の命がかかっています。
手術前の説明
- わかりにくいのでしょうが「頭のどの場所を切って,どこから脳腫瘍を取るのか」を聞きましょう。
- その手術方法を選ぶ場合に「予想される可能性のある手術合併症(後遺症)」をしっかりと聞きます。
- とても重い後遺症が出そうなときには,「どのくらいの確率でつらい後遺症が出そうなのか」を必ず聞きます。例えば手術をすれば50%くらいの確率で半身マヒが出るのか,1%くらいの確率なのかでは手術を受ける覚悟が全く違ってきます。単に半身マヒになる可能性があるかもしれないという説明では足りないのでしょう。
予想される入院期間と費用
- 手術だけの場合
- 手術と放射線や制がん剤を使うことになる場合
- 脳腫瘍手術の時はたいていの場合は高額医療になりますから,高額医療費の「限度額適応認定証を受けてから入院する」と一定額以上の支払いが生じません。
- 仕事や学校がある患者さんは「いつ頃に仕事や学校に帰れるでしょうか」と聞いてみた方がいいです。