脳腫瘍の在宅療養,緩和ケア,訪問看護
緩和ケアについて
- 緩和ケアは、がんによる身体的・精神的な苦痛、不快感などを和らげる目的で実施しまする治療のことです
- 痛み、苦痛、不眠、食欲不振、鬱っぽい、不安、自分を責める気持ちなどの症状を和らげます
- 家族の方からのご相談にも応じます
- 緩和ケアは、治療の初期段階から積極的治療と並行して開始していくのが一般的です
- 緩和ケアは、担当医により行われますが、場合によって、緩和ケアの専門医を紹介される可能性があります
- 痛みは鎮痛剤でコントロールすることが多いですが、鎮痛剤は「くせ」になることはありません。心配しないで内服しましょう
- 鎮痛剤が効きにくくなったら、お薬の飲み方を変えたり、お薬の種類を変えたりしていきます
- 緩和ケアを専門に行う病院に入院することもできます
在宅療養を送る場合の手続きや制度など
- 担当医から許可が出た場合、「在宅療養」というご自宅での療養生活を選択することが可能です
- 在宅療養を送ることを選んだ場合、病院の相談員さん、ケースワーカーさん、がん相談窓口スタッフさんなどと話し合いながら、必要な手続きを進めて行きます
- 介護保険が使える場合では申請手続きのご案内があります
- 介護保険が適用されない場合,医療保険 (通常利用している健康保険)で、手続きを進めていきます
- 在宅療養中でも担当医に定期的に受診しますが、身体が思うように動かなくなってきたり、病院が遠方にあったりして、通院が大変になってくるかも知れません
- 自宅に診察に来てくれる「訪問診療」の医師の診察を頼むことができます
- 「主治医」と「訪問診療」の医師が連携を取り、2人体制で診療を続けていくことができます
- 在宅療養中、体調の変化や病状の変化、自宅での介護方法、療養生活の送り方などについて質問、疑問が出てくることがあります
- 訪問診療医師に問い合わせすることもできますが、療養生活について詳細に質問したり介護方法についてアドバイスを受けたりするために「訪問看護」のご利用を検討していただくと良いかもしれません
訪問看護とは?
- 看護師がご利用者様のご自宅に訪問し、ご利用者様の病気や障がいに応じた看護サービスを行うことです
- 主治医の指示の元で、医療的な処置も行います
- ご自宅で最期を迎えたいというご希望があれば、ご利用者様・ご家族様のご希望をお伺いしながら、その希望に沿ったサービスを行います
訪問看護で行えることとバイタルサインの測定
- 体温、血圧、脈拍、酸素飽和度(パルスオキシメーター使用)、呼吸数の測定
- 腸蠕動音の聴取 (胃腸の調子を見る指標のひとつです)
- 呼吸音の聴診
- 触診 (腹部など)
- 身体の清潔を保つためのお手伝い、アドバイス:入浴やシャワー浴、足浴、清拭、洗髪、おむつ交換、更衣、口腔ケア、髭剃り、爪切りなどの実施やお手伝い
- 皮膚状態の観察、保湿などの皮膚のケア、床ずれの防止のケア、アドバイス
- 療養生活の相談とアドバイス
- 介護の仕方、食事・水分の取り方、便秘や下痢の対処方法などについてのアドバイス
- リハビリテーション
- 点滴、注射、浣腸などの医療処置
- 在宅酸素療法、人工呼吸器などの管理
- 痛みの軽減や服薬管理
- 痛みをコントロールするための点滴の管理、鎮痛剤の使い方についてのアドバイス
- 緊急時の対応
- 主治医、ケアマネジャー、薬剤師、歯科医師等と連携をします
どういう人が訪問看護を受けられるの?
訪問看護を必要とする方は、どなたでも受けられます
訪問看護を利用するにはどんな手続きが必要なの?
- 以下の窓口に相談しましょう。
- 受診している医療機関
- お近くの訪問看護ステーション
- お住いの地域を管轄する地域包括支援センター
- 市区町村の介護保険や障がい福祉の担当窓口など
がん治療中の生活について
- 痛み止めは、痛くなり始めた時点で早めに内服しましょう。
- お薬が効き始めるまで時間がかかるため痛くなってから飲むと、効きが悪いと感じることが多いです
- 疲れた時は休むなど、無理をしないようにしましょう。
- 歩けなくなってきた場合、無理に歩き転倒して外傷や打撲・骨折をしてしまい、治療を要する方が少なくありません。
- 身体の状況に応じて、福祉用具を自宅にレンタルし、生活しやすいよう環境を整えていくことができます。
- 手すり、介護用ベッド、ポータブルトイレ、介護用シャワー椅子、歩行器、車椅子などの整備をします
- 眠れない時や、気分が落ち込む時などは、医師・看護師に相談しましょう
代替治療と民間療法
- 標準治療とは現時点で最も治療効果が高いと考えられる科学的根拠に基づいた治療法です
- 主治医は、その時点で最良と思われる、科学的根拠がある治療を実施しています
- 代替治療や民間療法とは,それ以外の治療法を言います
- 友人知人親族から「この先生の、この治療法がよい」「この食べ物ががんにいいらしい」などのアドバイスを貰うことがあります
- でも本当にその治療法や食べ物に効果があるのか分からないので、お気遣いはありがたくいただくこととして、主治医と相談して決めた治療を優先しましょう
- よく分からないことに飛びつかないで,主治医や看護師に相談しましょう
- 「自由診療」や、「民間療法」の宣伝を目にすることがあるかも知れません
- 「自由診療」とは,この病院でしか実施していない、特別で、治療効果が高いと謳われているとても高額な治療法などで,健康保険が効かず全て自己負担となります
- がんの自由診療は、科学的根拠がないものが多いので、自由診療や民間療法を考える前に、必ず主治医に相談しましょう
- 効果がほとんどない自由診療に大金を費やし、元々やっていた治療の治療費が出せなくなってしまった方もいます
- 高額な代替療法を受けるために自宅を売却してしまって,残された家族が生活できなくなったケースもあります
がん闘病中の食生活について
- 何を食べるとがんが悪化する、何を食べるとがんが良くなる、などはありません。
- 食生活を極端に制限する必要はありません
- 食べたいものを食べていただいて、かまいません
- 療養生活を送るうち、食欲が落ちてくることがあります
- 食事を摂らなくなると、水分摂取も一緒に減り、脱水(水分不足)で動けなくなって入院に至る方が少なくありません
- 水分(水、お茶、スポーツドリンクなど)を、食欲がなくても1日1~2リットルは摂るようにしましょう
- 食欲がない時は、口当たりのいい飲み込みやすい食品が、比較的食べやすいです
- アイスクリーム、プリン、ヨーグルト、卵豆腐、飲むゼリーなどがよいでしょう
- 食べたくない時は、無理に食べる必要はありません
- 食べたいものを食べられるだけ食べる、食事の回数を多くして少しずつ食べるのがポイントです
- どうしても食欲が出ない場合は、担当医に相談の上、「経腸栄養剤」という栄養剤を処方してもらうこともできます
- 経腸栄養剤では,水分と栄養、カロリーが一度にとれます
- 薬が飲みにくい時は、お薬ゼリーなどを利用すると飲みやすくなります。
written by 竹本裕美
文献
ヨーロッパでの成人の悪性脳腫瘍の患者さんに対する緩和ケアを総括した論文です。認知機能に関して,転移性脳腫瘍の患者さんで海馬を避けた放射線治療を受けた方が認知機能低下が最後まで軽度であったそうです。グリオーマ患者さんのてんかんの抑制にはレベチラセタム(イーケプラ)が最も有効でした。患者さんの疲労感の寛解などに使用する薬剤に関する研究はなかったようです。患者さんのお世話をする caregiversへの助言などが記載されています。痛みや精神症状に関する早期の緩和ケアによる干渉の研究がまたれるとのことです。