会長挨拶

     寺嵜 亨
九州大学大学院理学研究院化学部門

 この度、ナノ学会会長を拝命いたしました。就任にあたり、ひと言ご挨拶申し上げます。

 ナノ学会は、1997年に設立された「超微粒子とクラスタ―懇談会」を前身とし、そのスコープを広げ発展的な改組を遂げる形で、2003年に発足しました。ナノサイエンス、ナノテクノロジーの全般を網羅し、物質科学から生命科学にわたる先端的な学術に取り組む学会として活動を行っています。ナノスケールの原子・分子集団が示す特異な現象や新たな機能を探究するナノサイエンス、この基礎に立脚して機能性材料の開発やバイオ・医療分野への応用を開拓するナノテクノロジー、これらを基盤に、エネルギー、環境、資源、生命など、現代社会が直面する諸課題の解決に資する学術を先導することを使命としています。

 ナノ学会の活動は、年一回開催されるナノ学会大会を中核としており、最先端の研究成果の発表・討論、企業展示などにより、情報交換や人材交流の場を提供しています。特に大会ごとに企画される基調講演・招待講演は、ナノ科学技術とその関連分野の最前線の研究に触れる貴重な機会となっています。大会に加えて、「ナノ構造・物性」、「ナノ機能・応用」、「ナノバイオ・メディシン」の3部会が主催するシンポジウムでは、部会ごとに専門性の高い討論が行われます。会員は複数の部会に所属することが可能であり、分野の垣根を越えた活動の機会を提供しています。このほか、会報「The Bulletin of the Society of Nano Science and Technology」の発行や、若手研究者を奨励する顕彰活動を行っています。

 以上のように、ナノ学会は、物理-化学-生命科学を繋ぐ分野横断的な交流と、理学-工学-医学等の学界から産業界までを跨ぐコミュニティの連携で、「ナノ」に関連する事象を多様な視点から扱う広範なスコープを特色とする学会です。ナノ学会をホームグラウンドとする方にも、他学会に軸足を置く方にも、既存の学問分野やコミュニティの枠を超えた交流の場としてナノ学会を是非ご活用いただき、新たな学術の芽を育んでいただけましたなら望外です。

 今般、会長交代とともに理事のおよそ半数が入れ替わり、女性研究者や企業関係者の参画も増え、理事会がフレッシュな顔ぶれとなりました。副会長はじめ理事会メンバーの協力を得て、学際性と多様性を原動力としてナノ学会の益々の発展に尽力してまいります。皆様がたのご支援・ご鞭撻をこれまで以上に賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

2021年6月
ナノ学会会長  寺嵜 亨