学校における「ストレスマネジメント教育」のあり方について

日本ストレスマネジメント学会(以下、本学会)では、ストレスマネジメントに関する研究を推進し、その成果の普及に貢献すること、およびストレスマネジメントの社会的普及に貢献することを目的として、さまざまな事業を行ってきました。特に、学校におけるストレスマネジメント教育に関しては,教育・特殊教育実践領域部会を中心に、教育現場におけるストレスマネジメントの実践と普及啓発に関して、継続して議論を重ねてきました。
2021年3月8日の参議院予算委員会では、本学会の冨永良喜顧問の意見や研究知見を踏まえながら、新型コロナウイルス感染症禍を含む、児童生徒を対象とした学校でのストレスマネジメント実践の現状と課題について、伊藤孝江議員(公明党)から質疑が行われました。実態として、コロナ禍に関連したいじめやからかいが学校現場で危惧され、実際に授業として対応に取り組まれている様子も報告されました。萩生田光一文部科学大臣からは、従来の保健体育の授業時間枠を活用しつつ、これらの授業時間の枠組みにとどまらずに必要な授業の実施を提供するよう、各教育委員会に伝達する旨の回答が得られました。
この学校における「ストレスマネジメント教育」のあり方をめぐる議論に関して、本学会では、以下のように考えております。

  1. 児童生徒を対象としたストレスマネジメント教育は、さまざまな不適応問題および心身の症状の改善・予防に効果があることの学術的エビデンスが示されています。
  2. 学校教育においては、現在、「保健体育」のカリキュラムの中で小・中学校ごとに1時間ずつストレス対処に関わる教育機会が設けられていますが、これに加えて「総合的な学習の時間」を軸として、ストレス対処を中心にすえたストレスマネジメント教育の授業を、小学1年生から高校3年生までのすべての児童生徒を対象に展開する必要があります(例えば、現行70時間数の数時間分を割り当てる等)。
  3. ストレスマネジメント教育の実践にあたっては、学校の教職員(養護教諭を含む)のリソースのみならず、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の専門家との連携のもと、児童生徒の発達段階を考慮したうえで、その内容を計画・実施する必要があります。
  4. 本学会では、学会の監修のもと、学校におけるストレスマネジメント教育に活用可能な授業指導案の集積が行われています。
  5. 児童生徒を対象としたストレスマネジメント教育は、授業形態をもって一斉授業を行うことが望ましいと考えていますが、学校現場の現状に鑑みて、本学会では特別活動の時間や教科横断型の指導等の際にも活用可能な児童生徒向けコンテンツ「コロナに負けるな!みんなでストレスマネジメント」や「ストマネマスターへの道」等の自己学習用教材を作成しています。

 これまでにストレスマネジメントに関する学術的研究、学校現場等の実践の中で培われてきたエビデンスをもとに、学術的観点から学校におけるストレスマネジメントの教育内容を整理、体系化しております。以上を通して、児童生徒のメンタルヘルス・リテラシーの向上をはかることが可能になると考えております。

2021年3月12日
日本ストレスマネジメント学会 理事会
理事長 嶋田洋徳