学会誌
論文抄録
『医学教育』44巻・第1号【抄録】2013年02月25日
INDEX | |
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特 集 | 医学教育の国際認証 「医学教育の国際認証」について聞く
…吉岡 俊正,福島 統,椎橋 実智男 |
原 著 | 医学生の製薬企業との接触行動に関する全国調査
…宮田 靖志 |
教育 実践研究 |
臨床研修医の態度評価 ─指導医評価と看護師評価における乖離─
…渡辺 直 |
掲示板 | 医学教育理論を応用した戦略により,大学病院の経営と教育の改善を両立する試み
…小畑 陽子,浜田 久之,宮本 俊之,松島 加代子,河野 茂 |
掲示板 | 名古屋大学医学部における「地域枠」学生教育の工夫
…安井 浩樹,青松 棟吉,阿部 恵子,平川 仁尚,植村 和正 |
掲示板 | PBLテュートリアル実施状況調査の報告
…松尾 理 |
インタビュイー 吉岡 俊正 先生
インタビュアー 福島 統 編集委員長
コメンテーター 椎橋 実智男 編集副委員長
この記事は,2012年に国際的な外部評価を受審された東京女子医科大学医学部の吉岡俊正先生をお招きし,医学教育の国際認証をテーマにしたインタビューの記録です.インタビューは2012年12月28日に行われました.
宮田 靖志*
要旨:
1) 全国の医学生が製薬企業との接触行動をどの程度経験しているかを2012年に調査した.
2) 全体で5,431名から回答が得られ,内訳は4年生1,755名,5年生2,222名,6年生1,454名であった.臨床実習前と後の学生数はそれぞれ,1,755名-0名,853名-1,369名,53名-1,401名であった.
3) 文房具授受,製品説明パンフレット授受,製品説明会への出席,弁当飲食は,実習前20-37%,実習後95%以上の医学生が経験していた.懇親会への出席,タクシーチケットの授受は,実習前約10%,実習後約60%が経験しており,食事会・宴席への出席は,実習前約8%,実習後約40%が経験していた.
4) 多くの医学生が製薬企業との接触行動を経験しており,その頻度は臨床実習参加後に有意に増加していた.
キーワード:医学教育,利益相反,製薬企業,医学生
* 北海道大学病院・卒後臨床研修センター,Postgraduate clinical trainig center, Hokkaido university hospiptal
[〒060-8648 札幌市北区北14条西5丁目]
受付:2012年11月4日,受理:2013年1月4日
渡辺 直*1
要旨:
背景:臨床研修医の多面的態度評価の実態と意義についての検討は未だ少ない.
方法:2003〜2010年入職の臨床研修医98名の評価を採用時と研修終了時で比較した.
結果:採用時(面接+学科試験)で高評価を得た者が終了時にも良好な指導医評価を得る有意の傾向が認められた(相関係数0.4,p<0.005)一方で採用時と終了時看護師評価との間には相関がなかった.
考察:医師から見ると,採用時に素材があってこれが順調に伸びたと判断される一方で,医師が優れていると思っている研修医が必ずしも看護師側から評価されていなかった.医療プロフェッショナリズムの観点からは,より多面的な評価の重視,採用時評価基準作定を行ってゆくことが重要と思われた.
キーワード:研修医評価,多面的評価,臨床研修医,プロフェッショナリズム
*1 聖路加国際病院教育研究センター教育研修部,Division of Education and Training, Center for Education and Research, St. Luke’s International Hospital, Tokyo
[〒104-8560 東京都中央区明石町9-1]
受付:2012年7月27日,受理2013年1月7日
小畑 陽子* 浜田 久之* 宮本 俊之* 松島 加代子* 河野 茂*
要旨:
1) 若人が集う病院づくりのために,若手医師の労働・教育環境の改善を病院の経営改善へ結びつける試み “CHANGE 長崎大学病院” プロジェクトを行った.
2) 改革を実施するにあたり,成人教育理論に基づいたABCD戦略を意識して,アンケートで抽出された問題点を中心に,医師の雑務軽減や教育環境改善を行った.
3) 医師の雑務軽減等により,臨床教育へ力が注げるようになり,4年連続医師マッチング数の増加となった.さらに,経営の改善も果たした.
キーワード:医学教育,キャリア,病院経営,労働環境,大学病院
* 長崎大学病院医療教育開発センター,Medical Education Development Center, Nagasaki University Hospital
[〒852-8501 長崎市坂本1-7-1]
受付:2012年12月14日,受理:2012年12月26日
安井 浩樹*1 青松 棟吉*1 阿部 恵子*1 平川 仁尚*2 植村 和正*3
要旨:
医師不足対策として,医学部地域枠定員が増員されているが,その教育システム,カリキュラムについては,まだ確立されていない.名古屋大学医学部においても,平成21年度より地域枠学生の受け入れを開始,地域医療教育学講座を開講し,地域医療セミナー,基礎医学セミナー,病院見学会,多職種連携教育等を行っている他,平成25年度からは4年生対象の必修科目地域医療学(7コマ)を実施予定である.地域枠学生対象の教育には,担当講座内にとどまらない,大学内外の組織や地域との連携や,また上級生のロールモデルとしての役割が重要であると考えられた.
キーワード:地域枠,地域医療教育,キャリアパス
*1 名古屋大学地域医療教育学講座,Department of Education for Community-Oriented Medicine, Nagoya University Graduate School of Medicine.
[〒466-8550名古屋市昭和区鶴舞町65番地]
*2 名古屋大学医学部附属病院卒後臨床研修・キャリア支援センター,Center for Postgraduate Clinical Training and Career Development, Nagoya University Hospital
*3 名古屋大学医学部総合医学教育センター,Center for Medical Education, Nagoya University School of Medicine
受付:2012年12月30日,受理:2013年1月4日
松尾 理*
要旨:
PBLテュートリアル実施状況を2008年,2011年および2012年にアンケート調査した.
2008年での実施状況は各大学で大きく異なっていて,実施の有無を問うのは実態を反映していないと思われる.
2011年にPBLテュートリアルが少なくとも5年以上続く可能性を問うた所,8割以上がそう思うとした.
2012年に実施内容の変化を問うた.PBLテュートリアルの回数,期間および症例数について8割以上の大学が変わらないと回答した.テュータの評価について,全体としてテュータのモチベーションを上げる状況ではない結果であった.将来の状況について現状と変わらないとの回答が一番多かった.
キーワーズ: PBLテュートリアル,人的資源, テュータ, 評価,アンケート調査
* 近畿大学医学部,Kinki University Faculty of Medicine
[〒589-8511 大阪狭山市大野東377-2]
受付:2013年1月20日,受理:2013年1月24日