病理的異常と人工産物や付帯物の区別
診断解剖医や外科病理医、あるいは研究にヒト組織を使用している研究者にとっての最大の課題の一つは、組織の肉眼的または顕微鏡的に見ている所見が本物かどうかを判断することである。中枢神経系や末梢神経系の解剖学は、もともと理解と解釈は十分に難しく、アーチファクトや偶発的な所見なのか、正常範囲の変化により、さらに複雑になる。複雑な解剖を持つ脳の接線方向切断により、誤って存在しない異常と判断されることがある。正常組織は、圧迫され、ねじれやすく、組織ブロックが腫瘍のみが含まれているかのごとく観られる場合がある。CNS組織の水分量は多いため、組織の浮腫は固定不良や組織の保存が難しくなる。年齢によっては、所見が、単に正常なのか、年齢に関連した変化であるのかという誤解を招くことがある。多くの小体、細胞内封入体、色素、結晶、裂け目、組織障害に対する異常反応、外科的または治療関連の不活性物質が、病理検査のヒト組織内に包含されている可能性がある。これらの構造は、剖検および外科病理医、ならびに研究に組織を使用している研究者にとって、診断上混乱を招きうる。封入体のほとんどはニューロン内で発生し、感染細胞内のウイルス凝集や、神経変性疾患や蓄積疾患における異常タンパク質や細胞骨格成分の凝集体である。
剖検時に観られる人工産物と偶発的産物
外科病理標本に見られる人工産物、偶発産物、所見の解釈の問題、不活性物質。
神経系の色素沈着、裂隙、結晶
色素と結晶
中枢神経系と末梢神経系におけるメラニン、リポフスチン、アミロイドの外観
参考文献:General pathology of the central nervous system. Greenfield's Neuropathology. 9th edition. Edited by Seth Love, Herbert Budka, James W Ironside and Arie Perry. CRC Press.