外科病理標本に見られる人工産物、偶発産物、所見の解釈の問題、不活性物質。

(a) 硬膜中の脂肪組織(上)は、神経画像検査では正常な所見として観察されることが多いが、外科的病理標本に含まれる場合、この患者のように、隣接する硬膜を癒着させたまま髄膜腫を切除した場合、解釈を誤る可能性がある。この標本内には少量の外科的誘発出血がある。

(b) パッチーニ小体(上)は、目立つ同心円状のタマネギの皮のような正常構造で、末梢神経(下)の生検標本に時折見られる。

(c) 脈絡叢細胞の脂質空胞は、外科手術や剖検の病理学的材料で見られることがあり、正常加齢とともに発生するが、病理学的な意義は知られていない。脈絡叢はまた、嚢胞性変性、黄色肉芽腫、膠原線維間質の石灰化、脈絡叢内の髄膜上皮細胞の砂粒体、脈絡叢細胞の細胞質内でのビオンディリングなど、他の多くの加齢に関連した変化を観ることができる。PASや銀染色でよく見られる。ビオンディリングはまた、意義は不明で、特定の疾患との関連はない。

(d) マクロファージは、シート状に集簇していたり、または傷害に応答して組織損傷の空洞内を占めていたりしている場合には、解釈に問題はないが、急性脱髄性病変(ここに示すように)の生検標本では、マクロファージは、髄鞘脱落以外はほとんど所見のない白質に拡散的に浸潤している。反応性アストロサイトとの存在は更らに診断を難かしくしている。いくつかの例では、原発性脳腫瘍と誤診される。

(e) 慢性硬膜下血腫は、大量の好酸球が存在し、さらには髄外造血の病巣でさえもありうる。ここでは両方とも見られる。造血腫瘍を含む転移性腫瘍はしばしば硬膜に発生するが、この肉芽組織応答は、腫瘍として解釈すべきではなく、異常ではない。

(f) 第三脳室のコロイド嚢胞(矢印)の外科病理標本内の脈絡叢(上)が人工的に圧縮されている場合、コロイド嚢胞の虚脱内腔と配列が認識されない限り、血管奇形、あるいは脈絡叢乳頭腫と間違える可能性がある(矢印)。

(g-h) ゆっくりと成長する低悪性度の脳腫瘍(矢印)内の正常髄膜上皮細胞の巻き込みはまれだが存在する。閉じ込められた細胞の同一性は、上皮膜抗原(EMA)等の免疫染色によって証明される(h)。また、アミロイド小体が浸潤性グリオーマに取り込まれることもある。これは通常、正常な加齢の一部として多数のアミロイド小体を脳に含む高齢者に起こる。

(i) 繊維腫(布性異物遺残)は、術中に使用される外科用止血性充填材(矢印)に反応して発生することがあり、神経画像検査で再発脳腫瘍に類似した脳腫瘤を誘発する。異物反応は、ゼラチンスポンジ、酸化セルロースおよびミクロフィブリラーコラーゲン(再吸収性薬剤)、または綿またはレーヨンベースの止血材(非再吸収性)に反応して起こることがある。腫瘤病変は通常、脳の手術ではなく腹部の手術後に起こるが、中枢神経系の例も報告されている。外観は、使用する物質によって異なる。

(j) Bioglue(生体ノリ)は、牛血清アルブミンとグルタルアルデヒドからなる不活性で生体接着性の外科用物質であり、通常、心臓外科手術の修復術に使用される。この23歳の女性は、数ヶ月前に後頚部脊髄解離術を受け、脳脊髄液漏れのためのシーラントとして硬膜縫合の上にBioglueを配置した。その後、後頚部組織に液溜まりと無菌性髄膜炎を発症し、創部の修正と軟部組織とBioglueの除去を行った。この標本は肉芽腫性の異物反応と好酸性Bioglueの小さな液滴を含むマクロファージを示している(矢印)。Bioglueの大きな中央の不活性な塊は均一に高密度に好酸性である。

(k) 動静脈奇形の手術による病変除去の前にポリビニルアルコール(PVA)で塞栓すると、奇形の血管腔の多くを閉塞している不活性針状体が血管内に認められる。パネルの左上端には明らかな脈管腔が残存している。この30歳の女性は、小脳動静脈奇形(AVM)からの自然出血を呈し、病変を除去するまでに3回の塞栓術を必要とした。塞栓物質は血管壁の壊死、急性感染症様の好中球浸潤、異物巨細胞反応を引き起こす可能性がある。