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十勝地域のがん患者さん支援の充実に向けたセミナー 2024
十勝地域でがん患者さんとご家族を支えるために

渡邊 清高さん(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科 教授)

このたび、貴重な研修会の機会をご提案いただきまして、帯広厚生病院の皆さま、ご参加いただいている皆さま方、そしてオンラインでも、今、60名ほどご参加いただいておりますが、多くの皆さま方にご参加・ご協力いただきまして、ありがとうございます。

研修会の目標

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本日の研修会の目標といたしましては、こちらに出ております「十勝地域のがん患者さんとご家族向けの支援の現状と課題を概説できる」「QOL(クオリティー・オブ・ライフ:生活の質)の向上と支援の充実に向けた関わりの事例を説明できる」ということ、また本日、いろいろな職種の方、地域の方、そして施設の方にご参加いただいておりますが、「多職種チームアプローチの意義を説明できる」というところをねらいとしています。

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これは先週末の時点ですが、多くの医療関係者の方にご参加いただきました。職種で申し上げると、看護師の方が一番多く、ソーシャルワーカー、医療、介護に関わる方にご参加いただきました。がん患者さんの支援に関わった経験というと、現在関わっている方が7割ほどいらっしゃいます。
ご参加の皆さまからのコメントとしては、「今後、関わることが増えていくと思い、学習できれば」「十勝地域も範囲が広く、医療・福祉資源の格差があるのではないか。その課題と対応ケースについて知りたい」ということです。こちらのコメントは確か都内の方でいらっしゃったと思いますが、「がん相談支援センターで働いています。地域のことなどを知ることができれば」とオンラインで参加されていると伺っております。
私は導入ということで、皆さんの議論できる時間をなるべく確保したいと思いますので、早速始めていきたいと思います。

これからは病院と診療所が連携してケアを

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「尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築」というのが、現在第4期の「がん対策推進基本計画」で示されているわけですが、そのような中で、普段「自分らしい日常生活を送ることができている」患者さんは7割ほど、「病気や療養生活について相談できた」方は76%、「家族の悩みや負担を相談できる支援が十分」とお答えになった方は成人で5割、小児で4割です。この数字が多いか少ないかを考えるには、まだまだ今後経年的な比較が必要ですが、一つのアウトカムというか、アウトプットの指標として参考にしていただけるとよいデータかと思います。

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本日のメインテーマになりますが、緩和ケアについても「療養生活の最終段階において、身体的な苦痛・あるいは精神心理的な苦痛を抱えている」方が4~5割ほどいらっしゃって、そういったことをどのように克服していくか、全国を挙げて取り組んでいるところです。

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そうした中で、病院と診療所といった医療機関が、患者さんの病気の進み方、経路、トラジェクトリーともいいますが、そのどこかでバトンタッチというかたちから、経過に応じて必要なことをお互い手を携えて、連携しながらケアしていくという枠組みが求められています。

私は、以前国立がん研究センター「がん情報サービス」というウェブサイトをつくるプロジェクトに関わっておりまして、「病院内チーム」や「地域医療チーム」、あるいは「地域包括ケアチーム」というのをご紹介する文面をつくる機会がありました。
チームというのはたらい回しではなく、「患者さんのその時々に応じた必要なニーズに対して、いろいろな専門性を持った職種の方が話し合って、患者さん・ご家族と一緒に医療をつくっていく、あるいはケアをつくっていく」ということを説明する文章をつくらせていただいたことがありました。そうした中で、「では、自分の住んでいる地域、あるいは自分の暮らしている地域で、どのようなサポートが受けられるかということを、ぜひ知りたい」「いろいろ考えてみたい」というお声を多くいただきました。

がんに関する地域の情報を冊子に

先ほど、国立がん研究センターで情報をつくっているというお話をしましたが、やはり地域で、地元で、「この番号に電話をかければ大丈夫」「この窓口に相談すればよい」というような情報を一緒につくる提案をさせていただく機会がありました。北海道はいち早く手を挙げてくださって、北海道庁で、「一度、このような情報冊子をつくりませんか」というお話をさせていただきました。

北海道がんサポートハンドブック』は、すでに10回ほど改訂を重ねられて、2024年も新しい情報ということで改訂版をつくられています。特に患者さんが診断されて間もなくではなくて、その後継続して治療を続けられる、あるいは治療が一段落しても療養したい、あるいは後遺症や副作用と向き合いながら過ごしていく、その時に役立つ生活の情報、お金の情報、あるいは仕事に関する情報といったことについて一つの冊子のかたちで、ウェブでも展開されていますので、オンラインでもご覧いただくことができて、そういった情報を、相談に関わる方が共有するという動きもできてきました。

そういったことで、診断された直後だけではなくて、普段生活している時にいろいろと役立つ情報をまとめるプロジェクトを10年ほど前からスタートいたしまして、2024年に新しく『がん患者さんとご家族をつなぐ 在宅療養ガイド』という冊子にまとめています。オンラインで無料で全部ご覧いただけますので、よろしければ後ほど検索いただければと思いますし、お手に取って書籍でご覧いただければと思います。

情報がそこにあるというだけではなくて、そこに情報があることを皆が知っていること、活用してきちんと目に見える支援につながることが大切だと考えまして、いろいろな所で、当地で意見を交わす、あるいは顔見知りになるというような関係づくりをご一緒させていただきました。そこでは、情報がそこにあるということだけではなくて、どこに相談すればその情報が得られるのか、その情報について、どこでサポートが受けられるのか、というようなことをお知りいただける、そういった提案をさせていただきました。

地域における「がん医療ネットワークナビゲーター」の育成

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これは一つの例ですが、地域で相談支援人材を育成する動きが日本癌治療学会の「がん医療ネットワークナビゲーター」の育成ということで進んでおります。これはがん相談支援センターが、がんの拠点病院、帯広厚生病院にも設置されておりますが、そういった所の相談員と連携して、地域で患者さんの相談に携わる方を育成するというもので、いろいろな職種の方がこういった研修やeラーニングで勉強していらっしゃいます。私自身もこういった教育プログラムにも関わっておりまして、がんの相談員あるいは相談員ではない薬局の方、訪問看護の方、いろいろな立場の方ががんについて、あるいは療養生活について学ぶことを提案させていただいております。

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これは今回の学習プロジェクト「がん患者のための多職種チームケアと地域医療連携を推進するプロジェクト」ということで実施をさせていただきます。
後ほどのグループワークでも、ぜひご機関の患者さん・家族への支援ということで、皆さま方の地域でうまくいっていること、工夫していること、苦労していることをお話しいただきまして、皆で共有して、これからの十勝地域の患者さん支援について考えていただきたいと思います。ご静聴いただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いします。

木川:ありがとうございました。それでは講演に移ります。まず、1題目は「帯広厚生病院におけるがん診療と在宅医療連携」をテーマに、JA北海道厚生連帯広厚生病院副院長、大野耕一先生からお願いいたします。

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掲載日:2024年11月05日
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