十勝地域のがん患者さん支援の充実に向けたセミナー 2024
帯広厚生病院におけるがん診療と在宅医療連携
帯広厚生病院の大野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私からは、急性期病院でどのようにがん診療、在宅医療連携をしているかということをご紹介させていただこうと思います。
内容としては、全国と帯広における看取りの実態、当院の訪問診療データ、それから急性期病院である私たちが治療手段を地域で共有するということで、在宅の外来緩和照射に関してご紹介させていただきます。そして、地域医療連携室のデータをお示しさせていただいて、そこから見えるがん患者さんの退院支援の実績と課題ということをお話ししたいと思います。
最期をどこで迎えるか
皆さんもご存じのことと思いますが、最期を迎える場所、どこを希望するかというと、医療者だと6割ぐらいが自宅がよいだろうと思っているということが、令和4(2022)年度の厚生労働省のデータでは出ております。実際では、どのぐらいの方が自宅で亡くなっているのかというと、全国の5年ごとのデータでは、少しずつ増えてはいますが、まだ2割に満たないです。
これに対して帯広ではどうかというと、2021年で自宅が15%ということですから、全国よりは少し低い結果になっているという内容かと思います。
これは北海道で調べた道民の意識調査になりますが、十勝に住んでいる人では、最期まで自宅を希望するという方は2割と意外に少ないです。それから、緩和ケアなどを受けられる病院がよいという方は35%で、これは結構特徴かなというふうに読ませていただきました。
私たちの病院が、やはり地域で一番がんの患者さんを診ているので、そのデータをそのままお示ししますが、がんの死亡単位で見ますと、2023年は一般病棟で208名、緩和ケア病棟で121名になります。このうち、アンケートに沿えば、緩和ケアを受けている方は緩和ケア病棟で亡くなりたいということで、一般病棟の200名を超える方たちのうちの2割はご自宅で亡くなりたいとすると、40名ぐらいの対象候補が存在すると思います。
実際に、2019年~2023年の5年間に、一般病棟で死亡退院された方の居住地域を見てみますと、帯広市と近隣でちょうど85%を超える数字になります。このうちの仮に7割の人たちが在宅で看取ることが可能と考えると、年間25名ぐらいの新規需要があるのではないかと、私たちの病院のデータからは推察ができます。
訪問診療の希望者はコロナ禍で増加
私たちは、訪問診療を2019年から始めたのですが、まだ28例しか関われていないのが実情です。ただ、私たちの病院の特徴はどこにあるかと考えてみると、40歳以下の若年者が結構多いこと、それから、訪問診療前に緩和チームの介入があるケースが結構多いということかと思います。
新規の訪問看護の登録をした患者さんの中から、訪問診療を希望する方に私たちはアプローチをしているのですが、ちょうどコロナ禍になって、やはり病院の面会制限が出始めたあたりから、訪問診療の希望者が増えてきたという流れが見えると思います。
実際に医師の往診や訪問診療の延べ件数で見てみると、オレンジのKOというのは私ですが、結構関わらせていただいています。
ただ、急性期病院である利点を、どこに求めるかというのは、また難しいところですが、まず一つは主科からリクエストがあった時に、切れ目がないように継続して医師・看護師が関与できる点です。それから、私たちの施設での手術、あるいはIVR(Interventional Radiology:透視下治療)、放射線治療などはカンファレンスをしていますので、そこできちんと考慮された症例について訪問診療が始められるというのも利点かと思います。あとは緩和チームの介入が多いとお伝えしましたが、疼痛(とうつう)対策が充実していて、特に外来放射線治療による骨性疼痛への積極的な治療ができるところも利点かと思っています。今日はそちらについてお話をさせていただきます。
骨性疼痛への外来放射線治療は約3時間で
新しい病院になってからの症例数でいいますと、外来の緩和照射の症例は70例ありました。2022年度は5.6%の割合で、2021年度から増えているのがわかるかと思います。これは、地域の先生の理解が一番大事ですが、今日お話ししていただける帯広協会病院の杉山先生からのご依頼が非常に多いです。
対象となったがんに関しては、乳がん、大腸がん、前立腺がん、肺がんで全体の77%、照射部位は転移性骨腫瘍がほとんどです。ですから、骨性疼痛に関しては、大変よい適応になる可能性があると覚えていただければと思います。これは、多くは市内の病院(主に帯広協会病院)からの紹介です。それから、照射回数が単回というのが重要なポイントです。単回だと、結構つらい病状の患者さんでも来ていただいて、治療ができます。具体的には、10時半に受診すると、11時半に治療計画のためのCTを撮って、13時から照射して帰れると、3時間あれば、帯広協会病院から来て、照射して帰れるという仕組みをつくって取り組んでいます。ですから、ほかの医療施設の先生方にも、こういった取り組みを考えていただければと思います。
がん患者さんへの退院支援の取り組み
ここからは、地域医療連携室のデータをご紹介いたします。退院支援に関して、困難さに影響する因子、ここ数年間の変化、急性期病院から見た、がん患者さんの在宅支援に必要な要素、それから実績についてお話をしていこうと思います。
皆さんが感じられているのと同じように、私たちも患者さんが退院しづらい要素のポイントを7つ考えています。これからおそらく、ディスカッションの中で、こういったところをお話し合いできればと思います。
ここ数年間の支援の変化で見ますと、看取りが可能な施設は増えています。それから、ケアマネジャーの動きは早くなったと感じていますし、スキルも向上したと思っています。ただ、高齢者が多いので、高齢者のがん患者さんなどの増加があれば、当然病院で最期を迎える方の絶対数も増えてくる可能性を秘めていると思っています。
一方で、そういったことへの対応として、早期支援ができているケースもあります。それから独居高齢者の増加は、社会的な問題になるかと思いますが、調整が遅れてしまっているケースも増えていると感じています。
がん患者さんの在宅支援に必要な7つの要素
私たちから見た在宅支援に必要な要素とは、やはり苦痛に対する対応で、医療用麻薬の管理がきちんとできること、退院前の多職種のカンファレンスが充実していることです。
地域というのは、在宅にいる段階で介護認定を取得していただいたり、後見人手配などの社会的な背景の整備ができていたりすることが、おそらく帰れる要因になりやすいかと思います。加えて、情報交換会や学習会の機会です。これは、行政の方たちとも協力していくことになるかと思います。それから、病状の悪化時・急変時の対応窓口の明確化です。これは、先ほど渡邊先生が示された診療所と病院が併診している中で、どのような時に病院が対応するかというすみ分けをしておくことかと思います。そのほかに、生活の場の確認や、適切な支援内容を早期に特定すること、また、地域差への対応というのは、私たちの地域は広い十勝を相手にしておりますので、どうしても手の届かない所に住んでいる人たちがいるというのは、皆さん、わかっているところかと思います。
ここからは実際のデータですが、退院支援対象のがん患者さんの罹患(りかん)部位は、消化器、呼吸器、リンパ造血器、これで3分の2を占めています。
私たちの病院におけるがん患者さんの退院支援の実績は、令和5(2023)年度では1,020件で、退院支援全体数の25%になっています。
転帰先を見てみると、ここ2年間は、85%ぐらいの人が在宅(自宅・施設)に帰れています。
逆に、転院件数は15%ぐらいあって、転院先を見てみると、帯広市内や十勝管内になっています。私たちの十勝圏で大体賄えていますので、こういった人たちの中で、より多くの人が在宅に戻れる仕組みをつくることが課題かと思っております。
まとめについては、後で読んでいただけたらと思います。私からは以上です。ありがとうございました。