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十勝地域のがん患者さん支援の充実に向けたセミナー 2024
在宅緩和ケア充実診療所における在宅がん診療

酒井 俊さん(さかい総合内科クリニック 院長)

皆さま、よろしくお願いします。さかい総合内科クリニックの酒井と申します。
今日は、「在宅緩和ケア充実診療所における在宅がん診療」について講演差し上げたいと思います。

在宅の患者さんを診るための時間をつくって

当院は、2018年11月に開院しました。もともと消化器内科や総合診療科をやっておりましたので、一般診療プラス在宅医療をやっているような、ミックスされた診療所で、ほかにはあまり多くはないかと思います。
訪問診療の中身ですが、週3回、月、火、木曜日の午後に実施しています。医師1名と看護師2名で患者さん宅を訪問しています。1日当たり大体5~10件を回りまして、プラス往診が入ってくると、結構いっぱいいっぱいになってしまうこともあります。訪問範囲は帯広市内と芽室、音更、幕別になります。軽自動車なので狭くて、最近、レントゲンの機器やエコーなどを積んで回る機会もあって、「大きい車が欲しい」と言われるのですが、結構帯広市内は狭い所が多くて、このほうが安心して回れます。

開業するまでは、勤務医をしておりましたので、開業するに当たって、在宅の患者さんを診るにはどうしたらよいのかと考えました。消化器内科もやっていましたから、大腸の内視鏡検査を行っていたのですが、これをやめて、代わりに在宅の患者さんを診ようと考えました。
当院は昼休みが2時間半あります。長いですが、別にそれほど休んでいません。長くすることによって、臨時の対応、例えば急変された方がいらっしゃったら、その時間帯を使って訪問し、往診できる体制をとっています。看護師さんの勤務はスライド制にしていまして、誰かが必ずオンの状態になっていますので、「今から行こうか」というふうに、急変にすぐに対応しやすい体制をとっています。

訪問診療ではあらゆる疾患を診ている

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訪問している患者さんは、プロットしてみますと、帯広市内がちょうどこの真ん中辺にありますので、当院は市内の大体真ん中辺にあります。囲ってみますと、やはり5km以内の市街地が多いです。けれども、結構最近は、音更の北のほうや芽室、それから札内の東のほうが多く、法定速度をもちろん守らないといけないのですが、法定速度を守りつつ急いで行って帰るといった感じで、特に冬道は大変です。
在宅では、あらゆる疾患を持ち合わせた患者さんを診ます。もちろんがんで紹介いただくのですが、がんの紹介状に精神科や皮膚科、泌尿器科の紹介状がついていることはザラで、そこを全部診ていかないといけないわけです。私は、在宅の患者さんを診ている診療所というのは、一般の外来だけの診療所と、病院の中間のような感覚を持って診療しています。実際に、クリニックとして病棟は持っていませんが、寝ると時々患者さんのベッドが頭に浮かぶので、各家にベッドがある「クラウド病棟」があるような感覚で診療に当たっています。

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訪問患者さんを疾患別に分類してみると、6月のある日の状態ですが、認知症と廃用症候群が合わせて6割で、やはり高齢者が多いですから、こうした方々が多いです。次いで、神経難病、運動器障害、脳血管疾患となって、がんの患者さんは意外に少ないことがわかります。後ほど関連が出てきます。
当院で経口麻薬を投与した患者さんを見ますと、大体10~20人を診ています。

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持続の皮下投与を行った患者さんを、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルフォンで分けてみると、やはり腎機能が悪い方が多いのか、モルヒネを使わないケースが多いです。オキシコドンは一定数使っていまして、最近はヒドロモルフォンを使うケースが多いです。それは、がんが進行して医療用麻薬の投与量が多い患者さんを紹介いただくケースが最近増えてきているので、投与量が少なくてすむヒドロモルフォンを使うケースが増えているのかと思っております。

看取りは老衰に次いでがんの患者さんが多い

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これは当院で行った看取りの数ですが、年齢別にプロットしてみると、40歳未満はやはり少ないです。80歳、90歳と高齢になるにつれて増えてきます。一番若い人は、1歳の脳腫瘍の方でした。一番高齢の方は105歳で、100歳以上の方も最近増えています。右端の合計を見ると、2022年は飛び抜けて亡くなった方が多いのですが、これは新型コロナウイルス感染症の影響があると思います。病院で亡くなると面会もできないので、急きょ退院して在宅看取りという方が増えました。それを除くと、大体50~60人といったところです。

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死因別で見てみると、やはり高齢者が多いので、老衰の方が圧倒的に多いです。ただ、第2位ががんです。先ほどお示しした訪問患者さんの疾患で、がんの患者さんは多くないのですが、実際に看取った方は、がんの患者さんが多いです。それは、やはり診ている期間、スパンが非常に短いということです。長くて2か月、短いと3日間で看取ることになります。紹介いただいて「ああ、これはもうすぐ行かないと」と、その日に行って、3日ぐらいで亡くなる方もいらっしゃいます。非常に早いです。

在宅療養支援診療所が連携し切れ目のない在宅医療を実現

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小さいクリニックですから、連携なしには医療はできません。そこで当院では、「とかち麦穂ネットワーク」というのをつくって連携しています。これは、十勝で初の連携強化型の在宅療養支援診療所で、4つの在宅療養支援診療所が集まって強化型になりました。それと同時に当院では、「在宅緩和ケア充実診療所」を取得いたしております。
このネットワークのよいところは、連携内容で見ますと、月1回のカンファレンスをオンライン(Zoom使用)で開催し、近況報告や症例提示などを行っています。それからやはり、在宅で診ているということは、いつ電話がかかってくるかわからないので、不在にできないです。内科学会、最近ウェブで参加できますが、やはり学会と称して行きたい学会もありますから、そういう時に診てくださることは非常にありがたいです。厚生局への届け出なども内容を共有することで、抜けがないように作成できます。年2回の懇親会も大事で、飲み会ですが、これも情報共有に生かせると思います。個人立のクリニックだからこそ、こうした連携の場というのは非常に貴重です。

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それからもう一つ、このクリニックが主催している多職種連携カンファレンス、「ふくろう会議」と呼んでいますが、これも連携のために重要だと思います。当クリニックと共に在宅療養、在宅医療に携わる各職種が集まって意見交換や、テーマを決めて勉強会をしています。今まで7回開催しています。コロナ禍で間が空いてしまったり、最近少し怠けて休んでしまったりしていますが、また開催しようと思います。十勝の在宅看取りの現状や、おひとり様看取り、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、医療用麻薬の使い方など、テーマを変えて開催しています。
今日はいらっしゃらないかもしれないですし、オンラインで参加されているかもしれませんが、看護師さんや薬剤師さんと共に、クリニックの中で勉強会をしています。

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在宅緩和ケア充実診療所によるがん緩和ケアのメリットは、何かと言うと、当院は特別の所属を持たないクリニックですから、複数の医療機関や居宅事業所と連携がとりやすいことです。
それから、最近はICT(情報通信技術)、インターネットを用いた情報共有システムが非常に発達してきていますので、電話でやりとりもしますが、直接電話などでやりとりをしなくても、ICTを用いることで、訪問看護師や薬局の方、ケアマネジャーさん、リハビリの方が随時情報をアップできることです。それはもうグループLINEと同じです。それなしでは、逆にこういう緩和ケアの診療所はできないと思います。
加えて、小さなクリニックですからフットワークの軽い診療ができることです。例えば午前の診療中に「何か調子が悪い」と電話をいただいたら、「診療が終わり次第すぐに行きます」と言って、先ほどのオンの看護師さんと共にぱっとエコーを持っていけます。クリニックの看護師さんには非常に迷惑をかけていますが、こういうことがやはり利点だと思っています。

緩和ケアができる診療所の不足や病院との連携強化が課題

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今後の課題としては、十勝地域では、緩和ケアができる診療所はまだまだ少ないことが挙げられます。そもそも在宅医療を行っているクリニック自体が少ないのですが、緩和ケアとなると、さらに少ないです。それから、病院と診療所間での緩和ケアの勉強の場がないです。やはりある程度特殊なテクニックや、そういう考え方が必要だと思いますので、こうしたことを定期的に勉強したいと思います。
また、先ほども出ていましたが、病院と緩和ケアクリニック間で患者さんの情報共有の機会が少ないです。このような患者さんが今いらっしゃって、「在宅が望ましいのではないか」というような情報提供をいただくのですが、もっと幅広く、ICTなどを活用してできればよいと思います。
今、進行中の「とかちICTネットワーク」(とかち月あかりネットワーク)、こちらは9月4日に統合されたばかりですから、こういうものを病院のほうでも積極的に使っていただいて、情報共有ができればよいと思っております。
以上です。どうもありがとうございました。

木川:酒井先生、ありがとうございました。続きまして、「在宅看取りを支える在宅医療連携」をテーマに、更別村国民健康保険診療所所長、山田康介先生、お願いいたします。

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掲載日:2024年11月18日
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