地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報
普及と活用プロジェクトについて
「がんの在宅療養 地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクト」ウェブサイトを訪問してくださいまして、ありがとうございます。
日本人が一生のうちに何らかのがんにかかる方が2人に1人という現在において、がんという病気や治療について正しく理解し、緩和ケアの意義や目指すところを知ることはますます重要になってきています。信頼できる情報のもとに、患者さんやご家族ひとりひとりが住み慣れた地域で活用できる身近な医療・療養資源に関する情報を得ることは、がんになっても安心して暮らすことのできる第一歩になります。
2007年にがん対策基本法が施行され、患者家族・医療者など、立場を超えた関係者が手を携えてがん対策を一体となって推進しようとする枠組みが定められました。具体的な行動計画となるがん対策推進基本計画や、都道府県のがん対策推進計画に基づいて、がん診療に関するガイドラインの策定や、がんに関する冊子など信頼できるがん情報の作成などがなされ、がんに関する知識や治療の流れなど、情報の基盤は整備されつつあります。しかしながら、全国の各地域の実情や療養環境に適したかたちでの情報提供や支援の取り組みが、そこに住まう住民や患者さんご家族に届いているかと問えば、まだ道半ばといえます。それぞれの地域ごとに「がん患者さんの療養支援と緩和ケア」をいかに構築していくかが、今後の課題となります。
本プロジェクトでは、さまざまな組織からなる学際的なグループとして、がん医療および在宅緩和ケアの専門家に加えて、死生学や宗教学を専門とする人文社会科学系の研究者が密接に協働する取り組みを進めてきました。また2012年以降「がん医療フォーラム」を開催・企画してまいりました。
- がん医療フォーラム2014「がん患者さんとご家族を地域で支える仕組みづくり」
- がん医療フォーラム2013「がんと共生できる社会づくり」
- がん医療フォーラム2012「地域で支える新しいがん医療のかたち」
そこでの議論や参加者の方からいただいたご意見やアンケートやヒアリングなどを経て、2015年に冊子「ご家族のための がん患者と家族をつなぐ 在宅療養ガイド がん患者さんが安心してわが家で過ごすために」を作成しました。この在宅療養ガイドは「緩和ケア」「在宅支援」「グリーフケア」などの要素を盛り込み、全人的な患者・家族向け支援を実現することを目指しています。
がん医療フォーラムでは、よりよい情報づくりやコミュニケーションに向けた提案だけでなく、来たるべき超高齢社会に向けて、療養介護に関わる家族向けの情報や支援の必要性、地域社会を含めた療養環境の充実など、多くの関係者が一体となって取り組んでいくことが重要であるとの意見をいただいております。2019年末から急速に国内外で拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のもと、在宅で過ごすがんを患った方、家族の方そして親しい方々は、これまでにない不安や心配を感じながら日々を過ごしていらっしゃったと思います。このプロジェクトでは、対面でのフォーラムや研修会が困難になった2020年以降も、現在の治療や療養・ケア、普段の過ごし方、生活上の注意点など、継続して「必要で、役に立つ、参考になる」情報を収集してきました。対面での相談や受診が難しいなか、インターネットや電話、ソーシャルネットワーク(SNS)などを上手く活用して、意思疎通ができるようになっています。とはいえ、物理的にも精神的にも距離を置いてやりとりすることに、疎外感を感じていることも多いと思われます。住み慣れた家で、地域で安心して暮らせるために、そして、対話(コミュニケーション)によって少しでも心の距離を縮めるために役立つ情報を、ウェブサイトやSNSなどでご紹介しています。
本プロジェクトでは、より役に立つ、信頼できる情報づくりのためにさまざまな地域において、フォーラムや研修会を開催し、アンケート・ヒアリングや調査研究を行って地域における医療や療養支援を推進するためのエッセンスを引き出していきたいと考え活動してまいりました。2020年以降はオンラインでのフォーラムや研修会も積極的に実施しております。ウェブサイトから開催記録やアンケート結果をご覧いただけます。
2024年には、がん治療やケア、がん支持医療(副作用や後遺症を予防したり軽減する医療やケア)の進歩などを踏まえ、診断されて間もない時期や、通院治療中にも役に立つ情報を加えて大幅に内容を拡充し、「がん患者さんとご家族をつなぐ 在宅療養ガイド ~豊かな療養生活をかなえる安心の1冊~」を発刊しました。
「地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクト」においては、患者家族、医療関係者、学術団体、自治体、行政、メディア、企業などの多様な立場の方々と連動しながら、地域における連携や教育研修、住民や患者家族への啓発の場面などを通して地域の実情に応じた支援のあり方を追求し、情報提供や相談支援の充実やがん患者とその家族を地域で支える仕組みづくりに取り組み、「住み慣れた地域において、患者と家族に寄り添う緩和ケア」「誰一人取り残さないがん対策」の実現に向けて展開してまいります。関係の皆さまのご理解とご協力に感謝申し上げるとともに、このウェブサイトが、がん患者さんとご家族を支える仕組みづくりのきっかけとなりますよう、ご支援ご指導のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
普及と活用プロジェクト プロジェクトリーダー