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市民公開講座 がんになっても尊厳をもって安心して暮らせる社会へ 2024
みんなでつくろう!“仕方ない”の無い医療を

桜井 なおみさん(一般社団法人CSRプロジェクト)

患者さんの気持ちを受け止め「仕方ない」をなくして

講演の画面00講演の様子

私は患者の立場から今日はお話をさせていただこうと思います。テーマは、「みんなでつくろう!“仕方ない”の無い医療を」、ないないづくしになっていますけれども、このようなテーマを用意させていただきました。

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これ、実際のところ、支持療法関係だとどんなことがあるのかなと、診察室でよくある会話ということで、出だしに持ってきたのですけれども。「それ、仕方がないんだよねー、仕方がないんだよねー、仕方がないんだよねー」というこの言葉ですね。あともう一つが、「個人差があるんだよね」という言葉です。これでほとんどを片付けられてしまうことが多くて、せっかく患者さんの側から、「ここがしんどいです」というようなお話を切り出したとしても、この言葉でまとめられてしまうことがとても多いなと思っています。
これは、先ほどの骨転移の話もそうですし、乳房のこともそうですし、私自身もリンパ浮腫(ふしゅ)というものを持っておりますけれども、この浮腫のことなども、ざっくり、動かさないでほしい、重たいものは持っては駄目ということが非常に多いですね。 海外の学会に行った時に、浮腫の予防に運動がよいということで、皆さん、一生懸命運動をしているのを見てびっくりした覚えがあります。「えーっ?運動していいんだ」ということですよね。

私は、こういう都市伝説みたいなものが、サポーティブケアを含めて結構多くあるのではないかなというふうに思っています。それはおそらく、医師だけではなくて、看護の世界にも、かなりこういう都市伝説はあるのではないかなと思います。ぜひ、せっかく患者さんのほうから相談があれば、仕方がないではなくて、仕方がないこともあるかもしれないですが、せめて「その気持ちだけは受け止めてほしい」と思っています。でも、仕方がないことについては、ぜひ、なくしていってほしいというのが、患者としての希望です。

がん治療の進歩によりがんと共にどう生きるかが課題

では「治療の進化と生活」ということで、今、がんの治療成績はとても伸びてきていて、先日もがんの10年生存率ということで発表になっておりました。本当に変わってきたなとは思いますが、ではこの治療の進歩によって、患者さんやご家族、一人一人の暮らしの中で、どのような変化が出てきているのかということを、少し考えてみたいと思います。

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これは、「がん経験者が直面する4つの痛み」ということで用意をさせていただいたものです。心と体ということで、これはそれぞれ学会などもあって、比較的いろいろな考え方が進んできたのではないかなとは思います。やはり治療が長くなってくる。昔はおそらく、術後(手術が終わったあと)の補助療法というようなものもなかったような時代から、今は、補助療法としてお薬を飲むような期間も非常に長くなっている。それがいろいろながんの部位にも広がってきているなということを実感として感じています。
そうすると、やはり今、外来中心のがん医療の中では、診察室よりも社会の中で生きている時間のほうがはるかに長いわけですね。私は、その中でどんなことに苦労しているのかというところが、非常に重要になってきて、これが先ほどの有賀先生のお話でもあるのですが、診察室の中だけではなくて、外も一緒に取り組んでいかないと、なかなか患者さんの尊厳やQOL(Quality of life:生活の質)という部分は担保できないのではないかなと思っております。

働く世代・女性・高齢者のがんの増加が課題

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今、日本人のがん患者さんの数、死亡者数ということで、先ほどもお子さんの生まれる数のほうが少なくなっているという、これも結構衝撃的だったのですけれども、いろいろな問題があると言われています。私も、外でお話をさせていただく時には必ずこのお話をします。3つのがんの課題についてぜひ考えてほしい。一つは「働く世代のがんの問題」です。働く世代も、これからどんどん高齢化していきます。年金制度も、私たち、今ここにいらっしゃる方たちも、オンラインで見ている方も、おそらくどんどん後ろに送られていくと思いますので、かなり大変になってきますよね。そうすると何かの病気を持ちながら働くという人たちが、どんどん増えてくることになります。
もう一つは、今、妊よう性(妊娠するための力)も含めてですけれども、若い世代は「女性のほうががんになる数は多い」ということです。働きながら、介護もしながら、子育てもしながら、「じゃあ、がんの治療どうするの?」という話も出てくるのではないかと思っています。
あともう一つは、やはり「高齢者におけるがんの医療」です。ここに対しては、がんの治療をしたほうがよいのか、それとも認知症なのか、それともロコモ(運動器症候群)なのか。
いろいろなことのそれぞれの世界の中で都市伝説が結構あるのではないかなと思います。

就労継続にも影響するがん治療による「体力低下」「副作用」「手術の後遺症」

私たちも団体として患者さんの相談を受けていると、非常に増えてきているのは、やはり副作用の部分です。「こんなことで困っているのだけど」というような相談を受けることが非常に増えてきました。これ、どんな影響があるのかなということで、少し調査をしてみました。

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そうすると、いくつかわかってきたことがあります。働くということをテーマにしておりますけれども、がんと診断された時に仕事をしていた方たちに「がんによって仕事に影響があった?」とお聞きすると、「体力低下」が挙げられました。体力を低下させないために行動が必要なわけですけれども、長く安静療養となってしまうと、やはりこれは避けられないと思っています。それから「手術による後遺症」です。後遺症でも、おそらく自分で何とかできるもの、自分が主体的に参加できる後遺症を低減していくような活動もあるかなと思うのですけれども、起きてしまう部分は仕方がないということで、これも何か諦めちゃっているのかなと思います。最近一番多いのは、「薬物療法での副作用」、やはりこれですね。これはもう本当に、調査をしても、患者さんたちの訴えの中でとても多かったですね。

がん就労の話をすると必ず、「会社の理解が少ない」というようなことが出てきます。確かにこの部分もあるかとは思うのですけれども、今、やはり企業のほうはダイバーシティーということで、いろいろな働き方を用意しています。それだけではないと思うのですけれど、やはり私は、病院の中でやってほしいがん就労に関することというのは「支持療法」なのですね。しっかりとしんどいという症状を取っていってほしいと思いますし、心と体、特に心がとても変化をしてきます。やはり、先ほどのお話にあったおなかの調整のところで、日記をつけて作戦を立てて、食欲が増すというのは意欲が上がるのですよね。こういう、本当にささいなことかもしれないですけれども、体の調子が悪いというのは心にも影響を及ぼしていきます。こういう関係性がある中を、やはり優先していってほしいなと私どもは感じているところです。

副作用の第1位は伝えにくい見えない倦怠感

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副作用のつらさは、瞬間的に1日だけで済むものと、ずっとじわじわ何年も続くものがあって、患者さんたちに聞くと、つらさの「深さ」と「長さ」があるということが見えてきます。そうすると例えば、代表的なもので吐き気もそうですね。これは、ガイドラインもとても進化をしてきて、かなり昔の、十余年前の治療とは変わってきていると思いますけれども、この「長さ」がすごく短くなるのです。短くなるのですが、こうやって見てみるとやはり上位のほうに上がってくるということになりますね。
でも、平均で1年以上皆さんが悩んでいる症状というのは、まだまだたくさんあって、この調査の中では一番多かったのが実は「倦怠(けんたい)感」だったのです。会社で倦怠感を伝えると、何か怠けている感じになってしまうからすごく伝えにくい、ということがあります。逆に体の見た目が変化するようなものは、はるかに伝えやすくて、内包してしまうものって、ものすごく伝えにくいなと思っております。こういうものを、私たちは社会の中で考えながら、支えながら、他者とコミュニケーション、関係性を持っていかなくてはいけないという難しさがあります。ですので、私はこうしたところを、もし治療があるのであれば、ぜひ治療を患者さんたちに漏れなく届けてほしいと思います。

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これは副作用のつらさと、就労が継続したのかどうなのかというのを比較したものですけれども、もう明快です。働き方を変更せざるを得なかったという人たちは、軒並み全ての症状に対して、「しんどかった」と答えている人たちが多いです。ピンク(働き方を変更した)の回答が、全ての項目に対して高いです。気持ちの落ち込みもそうですし、治療部分の痛みもそうです。慢性疼痛(とうつう)って、なかなか訴えにくいので、「仕方がないんだよね」という言葉がやはりこういうところにも出ているのではないかなと思います。アピアランス、見た目もとても重要ですよね。倦怠感、やはりここでもトップに出てきます。こうしたところを何とか取っていくということ、これが私は支持療法の中で患者さんが求めているものではないかなと思っています。

医療者は患者さんのつらさを低く見積もりがち

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ただ一方で、15年近く前になってきますが、こんなレポートも発表されています(1。同じ患者さんがいろいろな体のつらさや吐き気、それから下痢の症状などをお医者さんに訴えていくと、患者さんにとっては生まれて初めての経験で、とてもつらいと思う時も、先生たちにとっては、毎日何十人もの患者さんを診ているものを物差しにして診てしまうので、「ああ、あの患者さんと比べたら、それほど大したことはないのでは?」と思ってしまって、どうしてもつらさを低く見積もりがちというようなところがあります。
それから回数で伝えられるものと、回数ではなかなか伝えにくいものがありますよね。つまり生活が絡んでくるようなものです。そうなると、やはり患者さんがつらいと言っていることと、医師が「いや、この人、このぐらいだよね」と思っていることには、差が出てきてしまうということがわかります。一致してこないのですよね。これをどういうふうに縮めていくのかというのと、こんなものも、今は例えばアプリを使うとか、レポートを何とかやっていこうということで、いろいろな研究が、この論文を機会に進んでいったのかなと思っています。

支持療法の知識の普及と地域間格差の縮小を

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こうした「しんどいよね、仕方がないよね」ではなくて、やはり解決に向けた一歩というのをこれから踏み出していきたいと思っています。日本がんサポーティブケア学会も、学会ができて10年近くに、学会ができる前から活動はあったと思いますので、20年近くになっていると思います。がん対策の中でも支持療法の重要性というのがうたわれてきておりますので、私はやはりこれからとしては、この3つのことに特に力を入れていってほしいと思っております。
今日、オンラインも含めて参加されている患者さんの側から、差を縮めてほしいというようなことがありました。がん対策、もともと法律ができた時にも、1つ目の「地域間格差の縮小」というのは、ずっと言われていたことなのです。当時は治療自体に格差がありました。それと、もう一つ、「患者さんたちは東京で治療を受けている時には、こんなに副作用が小さいのに、どうして地方に行ったら、こんなに苦しまなくてはいけないのだろう」という声があるのですね。これ、解消されたでしょうか。まだまだ私は、十分ではないと思っています。「人材育成」、おそらくこうしたものも厚生労働省だけではなくて、文部科学省を含めて、もっともっと人材と、教育の中に支持療法や緩和ケアを学ぶ時間を増やしていかなくてはいけないのではないかなと思います。こうしたところから、初めて地域間格差を縮小していくということにもつながっていくと思います。

支持療法研究の推進に重要な「患者市民参画」

そして2つ目は、やはり「研究」ですよね。研究をどんどんやっていくということです。これがやはり、なかなか難しい。どんなものをしたらいいのだろうと悩んでいる人たちが、多いです。私も先生たちから、いろいろな相談を受けることがあります。その中でも、やはり医療機器や衣類、そういうものになってくると、なかなか一生懸命お金をかけて承認を取っていっても、「お金にならない」と企業が交渉してくれないというような、そんな課題があるというふうにも聞いています。そこをどういうふうにしていったらいいのでしょうか。その患者さんにとっての価値というのを、どういうふうにこの研究の中に入れていったらいいのかなということがあると思っています。
それを推進していくために、やはり3つ目の「患者市民参画」が重要です。「私たち、こういうことで困っています」「これを何とかしてほしいです」ということを、共に対話をしていくような機会、これを考えていく機会を増やしていくことも大事なのではないかと思います。

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最初に、「知識の普及、地域間格差の縮小」ということから少し挙げていきたいと思います。「J-SUPPORT」 という支持療法の研究グループがありますけれども、ここで研究成果の報告会をやっているのですね。ひょっとしたらこの中でもご覧になった方、いらっしゃるかもしれないですけれども、2023年10月に開催された報告会では、何をやろうかなと言ったところ、「手足症候群」(抗がん剤によって手や足の皮膚・爪の細胞が障害されておこる副作用)ということをテーマにやろうとしたのです。ぜひここに、経験者の人たちに参加してほしいということで、全国がん患者団体連合会の中の加盟団体を通じて、「手足症候群をご経験の方、いらっしゃいませんか」「ぜひ登壇してあなたの経験を話してください」ということで、お声掛けをしました。そうするとどんなことが出てきたかと言うと、手足症候群だけではなかったのです。いわゆる「末梢(まっしょう)神経障害」、手足のしびれなのです。そこで、「えっ?」と先生たちはびっくりされたのですよね。先生たちは、水疱(すいほう)が出るなどの症状を期待していて、こういうものが出てきてしまうと、治療そのものが継続しなくなっちゃうことがあるので、これを何とかしようと、今回の成果発表をテーマに用意したということだったのですが、何とかしなくてはいけないのは末梢神経障害もあるということだったのです。

患者さんに伝わるようにわかりやすい言葉を

先生方が見れば、この患者さんはこの薬を使ってこういう症状だから、「これは手足症候群で、末梢神経障害ではないです」「あなたはこの薬を使っているから、手足症候群ではなくて、これは末梢神経障害です」みたいな感じでわかるのですけれども、いやいや、患者さんにとっては、そういうことはわからなくて、とにかく今、目の前で起きている「この足の症状や手の症状を何とかしてほしい」ということで、実はパネルディスカッションのテーマが変わりました。このポスターのテーマは「手足症候群」になっていたのですけれども、このあと、「手と足のケア」というふうに変わったのですね。
こういうふうに支持療法を見ていると、何だか言葉が難しすぎます。色素沈着も「しみ」では駄目なのでしょうか。
浮腫(ふしゅ)もそうですね。私も浮腫という字、最初読めなかったです。先生たちが当たり前に使っている言葉が、おそらく患者さんたちには伝わっておらず、伝わっていないから、これがまさか抗がん剤の副作用による症状だとは思っていないのです。だから、見えてない。そういう何か隠された症状が結構あるのではないかというのが、実はこの研究成果報告会の成果の一つになりました。

支持療法研究には多職種の参加が重要

こういう支持療法研究というのは、このようにどんどん進めていってほしいと思いますし、その中では、やはり多職種の参加って非常に重要だなと思っています。例えば、日本から出された研究発表で、ASCO(American Society of Clinical Oncology:米国臨床腫瘍学会)というアメリカの大きな学会のガイドラインが変わりましたよね。オランザピンという薬をいいのではないかと思われた方、薬剤師さんなのですよね。それから飲むタイミングというのも薬剤師さんたちが気がつかれました。就寝前ではなくて夕食後でもいいのではないか、それだけで効果が出てきました。こういう、あるけれども何となく都市伝説でそのままにしておいた、放置されていたものが結構あるわけなので、こういう研究などが、日頃患者さんの声を聞いている薬剤師さんなどから発信されていくということも、私はいいのではないかなと思います。また、今、プレシジョンメディスンということで、遺伝子などを解析して的確な医療をしていこうということなども進んでいます。そうすると、薬が効きそうか、副作用が出やすいかということもわかるようになってきています。その中で、「この人は強い治療をしたほうがいい」「この人は3か月でいい」というふうに分かれてきていますよね。そういう基礎分野からの研究というのも、もっともっと支持療法マインドというのを入れていってほしいと思っています。

そんなことを、この患者市民参画を推進していく中で私たちは語っていくことができればいいなと思いますし、そうしたことは、結局、回り回って患者さんたちの生活の質や、先ほどの生きる・亡くなるという最期のところかもしれませんけれども、QOD(Quality of Death/Dying:人生の終末の質)というところにもつながっていくのではないかなと思います。
これからはAI(人工知能)が出てくるなど、いろいろなものが進化していきます。今、マイナンバーカードも含めてですけれども、ビッグデータといって、私たちのさまざまなデータをくっつけていこうということが進んでいます。そうすると、例えば患者さんたちも、一生懸命ePRO(electronic Patient Reported Outcome:電子的に収集した患者報告アウトカム、イープロ)というものに、いろいろなデータを入れていっています。あのデータは、一体どこに消えていっているのでしょうか。製薬企業のポケットの中だけに収めているのではなくて、やはり患者さんに還元していってほしいですね。そうやって考えていけば、そういう普通の生活の中や、看護師さんが看護記録として取っているような言葉の一つ一つにも、ものすごくヒントがあるのではないかなと思っています。

外見の変化への対処法も情報共有を

私たちの企業、キャンサーソリューションズ株式会社のほうで、厚生労働省の藤間班というアピアランスの研究をしているところで行った千人規模の患者さんたちの調査になります。外見変化、アピアランスの変化の説明と、実際に起きた変化がどのくらい違ったかということなのですが、「ほぼ一緒だった」と思っている方は6割ぐらいしかいなくて、「説明より起きた変化のほうが大きかった」、逆に「説明より起きた変化のほうが小さかった」という方がそれぞれ2割ぐらいいらして、バラバラなのですね。これがやはり一致してくることで、私たちは心の備えや、あるいはものの準備ということができるようになってきます。それから、「外見変化が起きる」ということだけではなくて、「それにどういうふうに対処したらいいのか」というところまでを含めての情報共有というのをしていただきたいなと思っています。

そのことを考えていて、私が最近思っているのは、いろいろなデータが今はあります。それから隠れたデータもたくさんあるのではないかなと思います。そういうデータを一つ一つ入れていって、よりわかりやすく伝えていくためにも、ペイシェント判定1ではないのですが、仮想空間の中に、自分が「この抗がん剤治療を受けた時はこんなふうになります」「こっちの治療にしたらこんなふうになります」というようなものが可視化されて出てくるというようなことです。そうすると、それを知った上で「私の生活の中だったら、この治療を選びたいですね」というふうにできるようになると思います。
あるいは、先生がこの話をしながら、「あなたの場合は、こういうものを使ったらどうなるかな」と、ポンとクリックしたら、「ああ、治まってきましたね」などというのが可視化されていくと、今の私たちには、これは届かないかもしれませんけれども、10年後、20年後の患者さんたちが、同じ苦しみを味わわないで済むのではないかなと思っております。
先ほどの言葉の問題も含めて、それからひょっとしたら地方の方言のほうがものすごくうまく言えている症状もあるのではないかなと思うので、そういう言語解析などを行って、もっともっと患者さんに近づいていってほしいなと思います。

副作用で苦しむ患者さんのことを考えて創薬を

最後になります。そして考えていくと、今日の登壇者の中にはいらっしゃらないのですが、私が、今日見ていてほしいなと思うのは製薬企業の方たちです。私は、製薬企業の方たちも、氷山の下にあるさまざまな症状で患者さんたちが本当に苦しんでいるということを、もっと考えてほしいと思います。臨床試験の発表があった時に、「副作用何々。グレード1、2、3がこのくらいの割合で起きていました。終わり」ではなくて、そこにいらっしゃる人たちをどうするかということも考えていってほしい。それが私は創薬だと思っております。

講演の画面10

医薬品の価値というのは、いろいろな意味で評価をされてきております。これは、バリューフラワーといって、「価値の花」と呼ばれているものです。例えば今回の新型コロナウイルス感染症では、感染の恐怖ということで、ワクチンも含めてですけれども、ものすごい速さで承認されましたよね。ああいうふうに、やはりこれから私たちの価値、薬の価値とは何だろう、治療の価値とは何だろうということを数字で測っていく、私たち自身も届けていく、そして一緒に考えていくような価値というものがあるのではないかなと思っております。これがまだまだ数字としてちょっと表せない、例えば希望の価値もそうですね。まだまだ語りベースかなというふうになりますけれども、どうか、その「語り」というものを過小評価しないでいただきたいと思います。
こうした中から、薬の価格やその承認、薬事のプロセスなどということに、今後は反映されてくる可能性があるということを、私は製薬企業の方たちにも認識していただいて、もっと何ができるのかということ、これを今後進めていっていただければと思っております。私からは以上になります。ありがとうございました。

渡邊:「みんなでつくろう!“仕方ない”の無い医療を」ということで、今日は支持医療、サポーティブケアをテーマにしたタイトルということでありますが、最新の研究成果には、当事者の視点からの発表も多くあります。いずれもやはりご本人が声を上げて医療者に届くということもあるし、医療者がアンテナを張って、皆で関心を持つというところがきっかけづくりになるということもありますね。桜井さん、ありがとうございました。

1) E Basch, N Engl J Med 2010; 362:865-869
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp0911494

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掲載日:2024年04月08日
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