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第2回 北見地域のがん患者さん支援の充実に向けたセミナー 2023
【グループワーク】
各グループの討議発表

関:残りのグループ、皆さんにお聞きしていきたいと思います。お願いいたします。

ご本人・ご家族の気持ちを大切に

3グループ:自宅療養を希望した場合、実現するためにはどのような支援や配慮が必要かというところですが、まず、奥さんはどうしていきたいのか、ご本人も奥さんに知らせてほしくないのはなぜなのか、ご本人やご家族の気持ちを確認して、そこを大事にしていかないと、この先、病状が進んで介護が必要になってきた時に、家族が協力して一つの方向に進んでいけなくなるので、そこを、まず大事にしていったらよいのではないかという意見が出ていました。
アドバイスとしては、医師がどう関係性をつくっていくかというところでは、治療していく上でのパートナーの立場だとご本人にお伝えしながら、「そのパートナーの医師としての考えを、あなたにも伝えていってもよいか」と、主治医と患者さんというよりは、支える一つの職種という立場をお伝えして、気持ちを伝えていくというような、腹を割って話せる関係性をつくっていくところを大事にしているというようなお話も聞かせていただきました。

自宅療養のための環境整備など調整には時間がかかる

3グループ:また、金銭的な問題では、治療や介護にお金はかかってくるので、奥さんがパートのお仕事を辞めたり、少しお休みしたりすることができるだけの金銭的な余裕が、ここのご家族にあるのかどうかの確認も必要というようなお話が出ていました。
ご自宅の環境整備では、2階に寝室があるという点で住宅改修の問題や、福祉用具のレンタル、ご自宅が今、帰れる状態であるのかというところは、やはりケアマネジャーさんの立場として、非常に気になるというようなお話が出ていました。
話の中で、「調整に1週間はほしい」という意見が出て、ケアマネジャーさんたちの立場と医療機関側の立場では、必要な期間の認識も結構違うということがわかりました。介護保険を申請している方であれば、2~3日で調整できる場合もあるのですが、この事例の方の場合、申請と調整を同時に進めていくとなると、ある程度時間が必要になってきます。
この方の場合、余命が2~3か月ということで、何とか調整が間に合うかもしれないですが、事例によっては、あした、あさって亡くなりそうという方に、ケアマネジャーとして調整に入ったところ、ご自宅に帰ってくる前に病院で亡くなってしまって、調整のために動いた分の報酬がもらえないなど、世の中にはいろいろ複雑な問題があるということも共有いたしました。

多職種でチームを組み支援していく

3グループ:ご本人やご家族が非常に不安で、本当にどうしたらよいのかわからない状態の中では、いろいろな職種がチームを組んで、支援していくことが大事だと思います。
その方法としては、いきなりご自宅に帰るのではなく、直接そこの病院でも大丈夫でしょうし、在宅療養を支援している病院に転院する中で、ご自宅の環境を整えていく時間をつくるというお話や、試験外泊を繰り返して、その中で、奥さんが「これだったら大丈夫かも」と思えるようになり、ご自宅での看取りができたという事例の紹介もありました。いきなりご自宅に帰って、そのままというわけではなくて、「試験外泊を繰り返すことができる」「駄目だったら病院に戻って入院できる」ということをきちんと伝えて、サポートしていくことが非常に大事だと思います。
また、そういった情報などを関係機関でチームを組んで共有していくところで、皆で支えていることをわかっていただけるような働きかけも大事だというようなお話が出ていました。以上になります。

関:ありがとうございました。多方面にわたることを報告いただきました。次は4グループの方、よろしくお願いいたします。

退院時共同指導と多職種でかかわることで安心を

4グループA:自宅退院に向けた準備というところで、介護保険の申請、ケアマネジャーの調整が必要であること、50歳代なので介護保険の第2号被保険者に該当するということでお話をしておりました。療養環境を整えて、排せつで問題になるところなど、いろいろなことについてお話ししましたが、それには実際、退院の時に「共同指導(退院前に入院施設と訪問看護が共同して退院後の在宅療養について指導を行うこと)」をしていただいて、状態を見ながらサービスを決めて、多職種でかかわれたら、一番皆が安心して、ご自宅に帰れるという話も出ていました。
最後というところで、予後などの話もつらい選択にはなりますが、皆さんで話をしていただいて、心構えを決めて意識を共有していただくことが必要だと思います。「ご本人の希望をかなえてあげたい」と皆が同じ方向を向いて支援し、ご本人がやりたかったことなどもさせてあげられたら、幸せなのではというお話もしました。ただし、ご自宅に帰ることが難しい場合もあるので、そのような時にも、ご本人とご家族のケアが必要なのではという話をしました。
この中で、親御さんが施設にいらっしゃって、ご本人が「会いに行きたい」と思うのか、「このような姿を見せたくない」と思うのか、そこをどういうふうに考えるのだろうというような話も出ました。

4グループB:1点追加です。お子さんの家族に会えないかもしれないのですが、写真を見せてあげて、「今こういう感じで、楽しみに待っていてね」など、そういう話題を共有するのがよいのではという話も出ました。

ご家族の介護力と自宅の状況確認を

5グループ:自宅退院に向けた課題は、ご家族がサポートをどれぐらいできるのかという確認がまず必要で、お子さんがどれぐらいできるのか、奥さんの精神状態として支援できる状況なのか、お子さんは遠方にいますが、例えば介護休暇などを取って介護のために帰ってこられるのかを確認することと、寝室が2階にあることに関しては、例えば寝室の代わりとして1階で生活することが可能なのか、自宅の状況を確認する必要があるという話が出ていました。
また、麻薬の使用に関して、正しく服用しないといけないけれども、薬が残って返ってくることも意外とあるというお話を伺えたので、薬の正しい理解や副作用の情報も含めて確認していく必要があると思いました。
大切にしたい支援というところで、「趣味を大切にしたい」というご本人の希望をかなえてあげられるように、例えば自分でできなくても、お子さんと一緒に出掛けて、お子さんが楽しむ様子を見たり、写真に収めたり、ご本人が思い残すことがないようにする方法を一緒に考えていくことも、大事なのではと話しました。

患者さん・ご家族のACPで意向を確認していく

5グループ:基本的には介護保険を申請して、できるだけ早い支援を考えること、ケアマネジャーや訪問看護師、薬剤師、病院の医師、看護師が多職種で連携して、支援策を一緒に考えていくこと、ご本人・ご家族のACP(アドバンス・ケア・プランニング:今後の治療・療養について患者さん・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス)で、最期どのように過ごしたいかを、意識がはっきりしている時からしっかり確認していくことが必要だと思います。
自宅退院が難しい場合の課題で、「自宅に帰りたい」というご本人の思いに反することになってしまうので、自宅退院が難しい状況について、ご本人・ご家族にしっかり説明すること、退院できないという状況でも、面会の頻度を調整できないか、リモートの面会ができないかなども考えること、全体的にご家族の精神的なフォローと、訪問看護師などを中心にご本人の理解度などを日頃から確認していくことが必要だという話が出ました。以上です。

制度を利用しながら経済面のサポートも

6グループ:北見赤十字病院のがん相談支援センターで相談員をしている堀といいます。よろしくお願いします。お2人がお仕事をされているということで、介護をしていくにはやはりお金も必要というところで、先ほど介護休暇の話もありましたが、パートの方でも介護休業は取れる制度になっておりまして、ハローワークのほうで介護休業給付金も出るので、そういった制度を使いながら支援していけると安心できるという話が出ていました。その中で、例えば生命保険に入っているのか、住宅ローンが残っているのであれば免責になるのかなどの経済面のサポートも入院中にしていけると、安心して在宅に向かっていけるという話が出ていました。

「がんサロン」での交流で病状を受け入れる

6グループ:また、奥さんの「もう少し動けるようになるまで病院に置いてほしい」という思いについて、がん患者さんはなかなかよくなることはないので、急速に悪化していく、進行していくことを考えると、ある程度スピード感のある支援が必要で、その辺の病状についての理解を得ることが難しければ、先生からもう一度話をしていただいて理解を促すことも必要です。
それでも若い方なので、病気自体の受け入れが難しい場合、例えば専門の看護師さんなどに話を聞いていただくこともありますし、北見の話ですが、北見赤十字病院でがんサロンを開催しておりまして、患者さん同士が交流できる、あるいはご家族の方がどういうふうに支援していけばよいかということを考えられる、茶話会のようなこともやっているので、そのような所に行きながらほかの方たちの意見を聞くというのも、受け入れるための準備としてはあるという話がありました。

ご家族への情報提供も大切な支援

6グループ:ご家族の支援も大事なケースになると思います。ご家族がどれだけ看病しても、亡くなったあとに喪失感とともに、本当に本人のために十分にやれたのだろうかと思う方がほとんどですので、そのあたりを最初から情報提供として、「どれだけ頑張っても不全感が残ることは避けがたく、当たり前のこと」というお話をしておいてあげるとよいというお話もありました。札幌ではそういう遺族ケアも積極的にやっている団体などもあるので、そういった情報提供をしていくのもご家族の支援の一つというお話がありました。
在宅に向かっていくとして在宅を選択しても、在宅が難しくて再度入院を希望することも、選択肢として保証してあげることが、在宅療養をむしろ推進していくために必要なことで、「場合によっては入院という方法もある」ということを、情報提供していくことが大事というお話がありました。以上です。

関:ありがとうございました。40分ほどかけて、この症例についていろいろお話をしていただきました。答えではありませんが、この症例が実はこのあとどうなったのかということについて、ナビゲーターの上林先生から情報提供していただければと思います。

上林:遠方のお子さんに介護休暇を取ることを勧めて、これが一番肝だと思いますが、介護申請を行いました。実は病院でいくと、なかなかここの肝の部分が出てこないです。ケアマネジャーさんを決めて、寝室はやはり1階に移して、電動ベッドとマット、車いすもレンタルしました。尿道カテーテルの管理などもおそらく要るでしょうから、訪問看護、訪問診療に入っていただきました。レスパイト入院(介護する側と受ける側の双方のストレス軽減を目的につくられた短期入院制度)も含めて、緊急時には入院できるかどうかもケアしていく必要があるということで、先ほどのお話に出ていました試験外泊、そういったことで不安を取りながらサービス担当者とともに共同指導、退院調整会議を行って、何とか退院につなげました。
ただ、先ほどのお話にありましたが、退院して在宅になったら在宅を続けなくてはいけないということではなくて、臨機応変に可能なかたちでできればよいと思います。
対応の一例です。以上です。

関:ありがとうございました。では、オホーツク勤医協北見病院の菊地憲孝院長から一言コメントをいただければと思います。


コメント

菊地 憲孝さん(オホーツク勤医協北見病院 院長)

皆さま、お疲れさまです。オホーツク勤医協北見病院の菊地と申します。大変勉強になりました。私が長々申し上げることはありません。この場で出た、皆さんのグループそれぞれの意見が貴重で、私のグループでも非常に勉強になる発言が多くあり、よかったです。
感じたことは、広く多職種連携でもあるのと同時に、北見という所に私はこだわって考えたいのですけれども、北見をあげての事業所間の連携というところをつくり上げられるのではないかと思っていて、今日この場に参加されている皆さま方が、そのコアのスタッフになりながら、患者さんのために力を合わせていけたらよいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございます。

関:ありがとうございます。では、ここまでのセミナーを通じて、渡邊先生からご案内と、まとめをいただきたいと思います。お願いいたします。

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掲載日:2023年12月11日
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