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北海道のがん患者さん支援の充実に向けて がん治療とソーシャルワーク専門部会研修会 2023
小児がん患者支援

駒形 成美さん(北海道大学病院)

道での取り組みや、がん相談支援センターの業務について話がありましたが、私からは小児がんにおける具体的な支援や今後の課題についてお話をしていきたいと思います。
まず、北海道大学病院は小児がん拠点病院に指定されています。小児がん拠点病院は全国15カ所にあり、小児がん患者さんと家族が安心して医療や支援を受けられる環境を整備することを目的として設置されております。施設ごとに相談窓口が設置されており、小児がん患者さん・家族はもちろんのこと地域の方々などもご利用いただける相談窓口になっております。

小児がんで求められる支援は多岐にわたる

講演の画面1

小児がんとは、小児がかかるさまざまながんの総称のことをいいます。一般的には15歳未満にみられるがんのことをいいます。年間で2,000人~2,500人が罹患(りかん)しており、子ども1万人に1人の割合といわれています。疾患の割合は、白血病が一番多く、脳腫瘍、リンパ腫、神経芽腫などもあります。白血病やリンパ腫を除くと大人では、まれなものばかりです。

講演の画面2

これは小児がんの生存率です。小児がんは、成人のがんと比べて化学療法や放射線治療に対する効果が高いといわれており、ここ数十年の医療の進歩で7~8割が治るようになってきました。
小児がんではどのような支援が求められているのか。主に相談を受ける内容としては、医療費や経済的不安に関すること、親の仕事やきょうだいのこと、学校のこと、脱毛に関すること、自宅に帰ってからの生活のこと、就学、進学、就労に関することなど多岐にわたります。それらの相談に対し行っている支援として、小児に特化した内容を一部ご紹介していきたいと思います。

小児がんに特化した具体的な支援内容

まず、医療費助成としては、「小児慢性特定疾病医療費助成」があります。小児では悪性新生物が対象疾患になっているため、18歳未満のお子さんであればこの医療費助成の対象になります。高校生など、提携の診療科で治療を受けている方はこの助成が見過ごされていることもあるので、かかわっている方がいればご確認いただけると幸いです。所得が高い方でも月1万5,000円を上限として入院時の食費も助成の対象になるので、「小児慢性特定疾病医療費助成」があるとないとでは大違いだと思います。
また、小児がんの患者さんを対象とした交通費の助成(GRN小児がん交通費等補助金制度)経済的援助(がんの子どもを守る会療養援助事業)もあります。小児がんの治療ができる病院は限られているので、北見や帯広、函館など遠方から治療に来る方も多いので、そういう方に活用していただいています。

講演の画面3

きょうだいの支援も大事になってきます。きょうだいはこのような気持ちを持ちやすいといわれています。きょうだいにもきちんと病気のことを伝え、家族の中で仲間はずれにしないことも必要になります。NPO法人しぶたねが作製している「きょうだいさんのための本」というのを院内で活用することもあります。

講演の画面4

入院中の教育支援に関して、当院のように院内に分校として特別支援学級がある場合、それから特別支援学校が隣接している場合、特別支援学校の先生が病院に来てくださる場合、ICT(情報通信技術)を活用して元々通っていた学校のオンライン授業を受ける場合があります。高校生もオンライン授業を受けることで出席単位として認められることも増えてきました。

講演の画面5

治療を終え退院するとき、子どもたちにとって学校は大事な社会生活の場になります。患者さん本人や家族、通う学校の先生方が安心して安全に通えるよう、「復学支援会議」を開催しています。コロナ禍でオンラインも活用するようになり、遠方の学校でも実施しやすくなったのがよかったことかなと思っています。
脱毛に関することについては、ケア帽子やウィッグなど、お子さん用の既製品は少ないのですが、寄付でいただいたり社会貢献事業の一環としてウィッグを無償提供していたりする所があるので、いくつかご案内させていただければと思います。高校生も利用できる所があるので、ご活用いただければと思います(対象年齢4~15歳:アデランス「愛のチャリティ」アートネイチャー「リトルウィング・ワークス(LWW)」、対象年齢18歳以下:つな髪プロジェクトJapan Hair Donation&Charity(JHD&C))。

長期フォローアップの必要性

講演の画面6

今後の課題についてですが、治る時代になってきたからこそ、晩期合併症や二次がんが問題になってきました。それに伴い長期フォローアップが必要といわれるようになり、進学や就職・結婚・出産など、患者さん本人のライフイベントに合わせた支援が必要になってきました。成人診療科への移行をどう進めていくかも、今の課題となっております。
また、治る時代になってきてもやはり看取りが必要な患者さんというのはいる状況で、今までは病院で最期を迎える方が多かったのですが、コロナ禍ということもあり、自宅で家族と一緒に最期を過ごしたいというニーズが増えてきました。しかし、在宅で障がい児などを診ている施設などで、小児は診たことがあっても看取りをしたことがない、医療用麻薬の管理をしたことがないという所、また看取りはしているけれども小児は経験がないという所が多く、受け入れ先を探す難しさがあります。今後もっとニーズは増えていくかと思いますので、小児の在宅医療も今後の課題になっていくかと思います。

最後に、小児がん患者さん・ご家族向けでもサポートブックをつくっています。ホームページにPDFデータもございますので参考にしていただければと思います。先ほどお伝えした制度のことのほかに、患者会や支援団体の情報も載せています。また小児がん相談窓口も掲載しているので、こちらも小児がんで困ることがあれば活用していただければと思います。小児がんのサポートブックは冊子もまだ余っておりますので、必要な方がいればご連絡いただければと思います。ご清聴ありがとうございました。

渡邊:駒形さん、ありがとうございました。小児がんは生存率が向上しきているところではありますが、一方でがんを経験した方が、生活者として成長するとき、さまざまなライフイベントを迎えるときといったところでも新たなニーズが出てきているという側面もあります。そのための連携ということも「情報づくりをどう進めていったらいいか」ということで、私も冊子を拝見したのですが、ご家族が困ってらっしゃる悩みごとに沿って、寄り添うように温かいタッチでまとめられていらっしゃることが参考になりました。ありがとうございます。
では、続きまして帯広協会病院の田巻さんから、「在宅療養の現場から」ということでお話をいただきたいと思います。

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掲載日:2023年04月03日
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