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北海道のがん患者さん支援の充実に向けて がん治療とソーシャルワーク専門部会研修会 2023
がん相談支援センターの取り組み

木川 幸一さん(北海道がんセンター)

がん相談支援センターの概要

北海道がんセンターの医療ソーシャルワーカー木川です。がん相談支援センターの取り組みについて説明します。がん相談支援センターはがん診療連携拠点病院の中に必ず設置されています。お示しのとおり道内各地に設置されています。がん相談支援センターのミッションになりますが、がん診療の地域連携協力体制の構築、がん患者さん・家族に対する相談支援および情報提供を行っています。地域におけるがん医療を担う方、行政、患者団体等の関係団体にも積極的にかかわりながら、自施設のがん患者さんに限らず他施設のがん診療を受けている方、もしくは受けていた方にもかかわっています。地域の医療機関等との連携等を図り、総合的に支援することが私たちに求められていることになります。

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がん相談支援センターの業務に関して、またご案内に関してはお示しのとおりですが、私たちの所属するがん相談支援センターはさまざまな相談をお受けしています。治療に直結する相談であったり、社会生活や経済面のつらさの相談、「ほかの患者さんはどうされているのでしょうか」といったお話を伺いながら、治療経験者である「ピア・サポーター(自分も障がいや病気の経験があり、その経験を生かして同じ境遇にある仲間をサポートする人)」を紹介したり、さまざまな情報をお伝えしながら、さまざまな負担や不安の軽減に役立てるように、工夫をしながらお手伝いをさせていただいているところです。

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がん相談支援センターの業務の中で、北海道内22カ所の拠点病院は1年間の相談件数としてはおよそ2万7,000件の相談実績があります。一番多かったのが医療費や生活費の社会的な面の相談、あとは「実際どんな治療方法があるのだろう」というがんの治療に関する相談や、それに対する不安や精神的な面のサポートの相談、介護や看護、療養に関する相談も含めた在宅医療の相談も受けております。

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そのほかに、医療関係者と患者会が共同で運営するサポートグループの活動や、患者サロンの定期開催についての支援も行っております。22カ所の病院では昨年、174回、のべ参加者が588名というサロンを実施しております。具体的に、北海道がんセンターでは4種類のサロンを行っておりまして、年代を区切ったサロンや、卵巣がん・乳がんという病名に限った患者さんが集まるサロンも開催しております。
また、道内のいろいろな患者団体・患者支援団体が、北海道がん患者連絡会という1つの連合体をつくっていて、そちらでも患者サロンを運営しています。そしてこの北海道がん患者連絡会と拠点病院が連携をして、連絡会のほうから道内各地の患者会のサロンや拠点病院のサロンなど、イベントを毎月紹介いただいております。

北海道がんセンターの支援

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次に、北海道がんセンターを具体的に紹介いたします。がんセンター正面玄関を入りますとすぐ左手のほうに、患者総合支援センター、がん相談支援センターが設置されています。先ほどお話しした相談のほかにも、がんセンター独自で、「アピアランス(外見)ケア相談」として外見の変化に対してケアの必要性が認識されている患者さんに対してウィッグのレンタルサロンや、そのほかもろもろの支援を個別の部屋で対応しております。
そのほか、就労相談になります。ハローワークや産業保健総合支援センターからの定期相談を開設したり、札幌市「働く世代のがん患者への支援事業」の申請窓口も、がんセンターになっています。がん患者さんから「仕事をしたいが、どういうふうに相談したらいいか」といった就労に関する相談もありますし、「今現に仕事をしている中でがんに罹患(りかん)し、どのように両立していくか」という相談もあります。行政や関係機関と連携をしながら相談体制を整備しています。

患者さんが求める情報を確実に伝えることの大切さ

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今までお話しした相談内容や相談支援について、お役立ち情報、相談できる窓口、地元の患者会や患者支援団体の連絡先など、北海道の療養情報として患者さんにまず知っていただきたい情報を、道内拠点病院のがん相談支援センターの実務者が相談しながらまとめた、「地域の療養情報」、「北海道がんサポートブック」の初版を2013年に発行しております。発行までの経緯はお示しのとおりですが、ぜひ知っていただきたい情報としてPDF化をして、北海道がんセンターや道庁のホームページにもちろん公開しておりますし、一部はがん相談支援センターや医療機関、地域包括支援センターや行政窓口などで活用できるように、設置していただいていると伺っております。

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こういった情報が、患者さんの相談支援や情報提供にかかわる方同士で共有されて、より多くのこれからの患者さんに確実に伝えられて活用されていくことが、私たちは大切だと感じております。配布対象者や、配布先に関しては記載のとおりで、1万部発行しております。

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2022年版の掲載内容はご覧のとおりですが、2023年版も3月に発行する予定で、現在編集作業を進めております。
ただ、地域に暮らす患者さんが求める情報について、がん相談支援センターが提供できる情報には限りがあります。また、医療・介護、福祉・行政が提供できる情報にも限りがあります。情報の補塡(ほてん)を見える化し、そこにお住まいの患者さんがいろいろな情報を得て、身近な地域で医療や介護を受けられるという気持ちを持っていただけること、そして知っていただけることで安心につながると私たちは考えています。そして実際にそういった情報が活用されて支援に結びつくこと、そしてみんなでそれを支えていくことをきっかけに、現場の医療従事者の方、介護にかかわる支援者の方が互いに特徴や違いを理解し、互いに活用し合うネットワークができることを、私たちは今、期待して活動をしております。
私の報告は以上になります。ご清聴ありがとうございました。

渡邊:木川さん、ありがとうございました。木川さんからは、「がん相談支援センターの取り組み」ということでご紹介いただきました。がん相談支援センターの取り組みの範囲は年々広がってはいるのですが、その分ニーズが増えてきているので、患者さんから「どういった困りごとがあるか」をうまく引き出していくスキルも求められている、そういった活動の広がりと連携は非常に重要だなと思って伺っておりました。
では、続いて「小児がん患者支援」ということで、北海道大学病院の駒形さんからご紹介いただきたいと思います。

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掲載日:2023年03月27日
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