患者さんの気持ちを考えたがん薬物療法 阪神緩和薬物療法ネットワーク学術講演会 2022
シンポジウム2:ディスカッションと質疑応答
シンポジスト: | 桜井 なおみさん、堀 麻衣さん、徳垣 典子さん |
座長: | 渡邊 清高さん、岡本 禎晃さん |
岡本:ありがとうございました。桜井さん、いかがですか。かかりつけ薬剤師としてみて。
桜井:こういう薬剤師さんがいたら、すごく心強いなと思います。調剤薬局は、結構行くたびに違う人が出てきて、そうするとまたコミュニケーションを一から始めなくてはいけないのがすごくつらいです。なので、毎回同じ人が出てきてくださると、こちらも少しずつ話しやすくなっていくのではないかなと思います。かかりつけ薬剤師さんではないですが、「お話しできるなら、この人に」とできたらいいなと思っていました。そういう仕組みが今まではなかったので、できたらいいなと思っていますが、今後はどうですか。
徳垣:今、「かかりつけ薬剤師を持ちましょう」というのは、国としても進めている状況なので、もしこれに賛同して、この人という方がいらっしゃったら、患者さんからも言っていただけたらありがたいですね。
桜井:患者さんサイドも、こういう仕組みがあるということをもっと知っていけたらいいなと思います。
徳垣:患者さんにも、そういう制度があると、ご説明してはいるのですが、もっと幅広く浸透すればいいなと思います。
桜井:「かかりつけ薬剤師を持ちましょう」というのは国からの呼びかけであって、さらに「持ってよかったよ」という実際に経験された方からの情報がないと行動は変わらないのではないかなと思います。
徳垣:かかりつけ薬剤師の制度は、やっぱり患者さんとしてよかったと実感していただかないと意味がなくなるところもあります。
渡邊:話をしてみて、「この方だったら結構気軽に話ができる」、「困っていることや、悩んでいることも関心を持ってくださる」と感じたら、今まで聞けなかったことを聞いてみようかなと思っていただけます。最初は薬の副作用の話ですが、生活のことや、お金のことなど、もう少し踏み込んだ話をするきっかけになると思います。ですから、かかりつけを「持たなくてはいけない」、というのではなくて、まずは薬のことで「少し話をしてみたい」というのが第一歩になるかなと思います。
桜井:患者さんは、がんの薬だけではなくて、ほかの薬ももらいます。それを1か所の薬局にまとめておくといろいろな意味ですごく楽です。今12月ですから、ぜひ確定申告の時期になったら、薬局も1か所にまとめておいた方が領収書の処理などがとても楽になる、ということを患者さんに知らせてもらえるといいと思います。いちいちエクセルで入力すると、薬局名を全部変えていかなくちゃいけないから結構大変だと思います。薬代はすごく高いので、「確定申告忘れないでよ」と声掛けしていただくのも、コミュニケーションのきっかけになるかなと思っています。
渡邊:今ですと、調剤薬局さんはカウンターでお薬の受け渡しをする以外に、話をする面会室があったりするので、今お話しされたように、ほかの方に話が漏れてしまうと話しづらいという話は、そこで時間を取ってゆっくり話をすることができてすごくいいなと思っています。
今コロナウイルス感染症の流行が心配な状況なので、いろいろな機会に感染対策をしています。個室や、パーティションを上手に使ってスペースも確保しているので、そういう場所の使い方もできるし、コロナが少し落ち着いたら相談室として使えるので、受け渡しだけではなく、調剤薬局さんや、薬剤師さんとのコミュニケーションができる場であるというのが隅々に伝わるといいなと思います。
桜井:安心して話ができる場所がほしいのは、がん患者さんだけではなくて、メンタルヘルスなどほかの疾患の方でもいらっしゃると思います。
徳垣:やはりご病気によっては、話し声はあまり聞こえない方がいいだろうなと思います。そのときには面会室でお話ししますし、お話を深く伺った方がいいだろうなというときには、できるだけお話を伺うようにしています。コミュニケーションを取っている中で、いろいろ薬のことに関する問題点が徐々に見えてきたり、通り一遍な説明、マニュアルに沿った説明をしているだけでは、気付けなかったことに気付けたりなどが、すごくたくさんあるので、やっぱりコミュニケーションは大切だなと思います。
渡邊:病院でもやっぱり薬剤師外来があったり、薬剤師さんが処方箋の疑義照会(処方箋の内容について、発行した医師に問い合わせること)をしたり、その説明以外でも何らかの話ができる機会がだんだん増えてきていますね。
堀(医療法人 薫風会 佐野病院):そうですね、かなり増えてきていると思います。徳垣さんのお話を聞いた中で、私たちも共感できるなと思うことが1つあったのでお話しします。
「健康な人に何がわかるの」「薬局薬剤師なんかにしゃべって何かできるの」というのは、病院薬剤師でもやっぱり一緒で、「薬剤師なんかに何ができるの」、「あんたなんかに話したくないんだけど」と言われたことがありました。「健康な人に何がわかるの」とはじめて言われたときに、どのような返答をしたらいいかなと考えました。
そのときは面食らってしまって、あまり答えられなかったのですが、「私はあなたの病気ではないからほかのことはわからない。でも、何かわかりたいと思ってお伺いしていますがいかがですか」というような対応を今はしています。桜井さんからアドバイスをいただけたらと思います。
桜井:病気をしたときは、あちら側とこちら側というのはものすごく感じるんですよね。私もAYA世代(Adolescent and Young Adult[思春期・若年成人])で罹患(りかん)したので、余計に境界線を感じてしまいました。スーパーマーケットに行っても、電車に乗っても、「何でこの人は病気してなくて私はがんになっちゃったんだろう」と、常に考えていました。先ほどお話にあった、病気の受け止め方というのが、まだ自分の中で咀嚼(そしゃく)できていなくて、怒りなどの気持ちも、家族にも誰にもぶつけられないから、ひとまず目の前の医療者にぶつけてしまうというのは、やっぱり自然な反応としてなんじゃないかなと思います。言ったあと、たぶん本人が一番落ち込んでしまって、それでまた自分が嫌になったりします。こういう「気持ちが揺れ動く時期がある。でも私は、とにかくあなたの味方です」ということを諦めずに伝えていただくことが一番なのかなと思っています。
堀:ありがとうございます。私も今のお話を伺って、このままだったら患者さんも嫌なのかなと思って、「今日はお話ししてもいいですか」と最初のよいときを見計らって対応を続けたいと思います。
桜井:私は、前の仕事のときも作業現場に行くことがあって。作業現場は男社会です。おじさんたちばかりで、自分から声を掛けていかないと、「女のくせに」と相手にされないことがやっぱりあるわけです。今の話に、すごく通じるところがありました。そのときの上司から「現場100回。100回行けば絶対人の心は動くから」と言われました。「一緒によいものづくりをしたいのなら、現場に100回行かなきゃダメなんだよ」と言われて。それ以来、「おはようございます」など、ちゃんとあいさつだけは全員にするように心掛けました。すると、最初は無視していたおじさんたちも「おい、水飲む?」と何かくれたり、態度が変わってくるんです。信頼関係ができて、緊張感が何となくほぐれてくるのではないかなと思っています。そこに期待していくのもいいかなと思います。
渡邊:最初に「何でここにいるのだろう」、「どうして薬剤師さんと話をしなきゃいけないのだろう」というところから、受動的な流れでやりとりする中で、薬剤師さんと話をするときに、声を掛けられて、「何で声を掛けてくれるのだろう」になり、次はもう少し踏み込んでコミュニケーションしたり、質問しても答えてくれるということで、もう一歩、「次は違うやり方で話してみよう」のようにつながりますよね。そういうきっかけがあると、「自分のことについて関心を持ってくれる」とおそらく患者さんは思っていくでしょう。
あとは、処方する医師からしても、話をしてもやっぱり伝わってない、先ほどのアドヒアランス(患者さんが治療方針の決定に賛同し積極的に治療を受けること)の話もそうですが、患者さんに「お薬を出しましたよ」ということと、患者さんがそれを「理解して、納得して、お薬をのむ」という間には、いろいろなプロセスがあります。そこのどこかが止まっても、うまくいかないということになって、そこはコミュニケーションの問題なのか、目的がちゃんと伝わっていないのか、不安がちゃんとくみ取れていないのかというところを本当はアンテナを張らなければいけないのですが、薬剤師さんがそこでひと言声を掛けてフィードバックしてきたことで、まだ少し説明が足りなかったなということを、ほかの医療者も気付くし、薬剤師さんもそこでかかわっていただくことによって、薬のことはやっぱり薬剤師さんに相談するといいな、と患者さんの信頼にもつながるなと思いました。
桜井:薬剤師さんと対話するときに、担当医からどこまで病状や治療の説明がなされているのか、やりとりの様子がわからないと、占いみたいになっているのがすごく大変そうだなと思います。「この人はどこまで知っているのかしら」など、困ってしまっているのだろうと。
渡邊:腹の探り合いみたいな感じになりますよね。
桜井:患者さんも病院で最初のころ、いろいろな質問をされるじゃないですか。それで薬局に来て、「また聞かれるの?あのときに言ったことが、何で伝わってないんだろう」と思うこともあるかもしれません。もっと病院と情報を連携してほしいと思います。あと、お薬手帳も何で持つのかと、意義を理解できないこともあります。持つのと持たないのとで支払うお金が違うということではなくて、先ほど紹介した私の友人がやったように、もっとここに気持ちや症状も書き込んでもいいんです。お薬シールを張るだけで、スタンプラリーのようになってしまっているときもあるので、ちゃんと「そういうところも書いていいんですよ」というアドバイスがあってもいいのかなと思います。
堀:私たちも外来化学療法の中での取り組みなのですが、お薬手帳に、患者さんのお名前と治療項目と、あと必要な検査値と、副作用の情報など、重要なものを書くようにして、グレーディング(有害事象の程度を示す指標)を書いています。そうすると、調剤薬局の薬剤師さんは、必ずお薬手帳を開いてくれるので、二度手間ではなくなるというのがいいかなと思っています。お薬手帳を持ってきていない方には必ず、「お薬手帳はなくてもこれだけは見せてね」と言って調剤薬局さんに行ってもらうようにしています。
徳垣先生に質問ですが、「お薬手帳にあったらいいな」や、今話した以上に「何かこれができたらもっと助かる」などがあれば教えていただきたいです。
徳垣:少しかぶってしまうかもしれないですが、やっぱり治療内容や、検査値など、個人情報のことなどもあるとは思うのですが、患者さんが「書いちゃっていいですよ」というような感じだったら、そういう記載があればいいと思います。
薬局でも肝機能や腎機能の数値や貧血・白血球数はどうかな、など検査値がまったくわからなかったら気付けないけれども、それがあればそこでも踏み込んでいって、病院や処方医との連携で提案はしようとはなるので、そういうのはすごくありがたいと思います。 あとは、お薬手帳に、できないかもしれないですし、少し書きづらいと思うのですが、患者さんの感情、感じ方、コンプライアンスなど、そういう「今この方は、こういう考え方をしている」といったこと、病院さん側で把握されていることなども共有できれば、こういうことに注意していったらいいなというのがわかりやすくて、患者さんによりよい対応が可能になると思います。
桜井:病院で検査のデータを先生がプリントアウトしてくれますよね。だいたい持ち帰ってファイルしたりしますけど、先生からはほとんど説明がないですよ。患者さんとしては、「このヘモグロビン値(貧血の指標)やこっち大丈夫なの?」とか、肝臓の数字などが気になっていて、薬局の薬剤師さんがそういう説明をしてくれるなんて思ってないので、「検査データを持ってきてくれれば説明しますよ」と言ってくれたら、持っていきます。
徳垣:確かに。はじめに、「検査表、もらわれています?」と、こちらからお声掛けして出していただく流れにはなるのですが、患者さんから要望があったら「今こういう感じですね。ここはこういうふうに見るんですよ」などと説明すると、結構次のときからは、自然に処方箋と一緒に検査表を出してくださる方も多いです。
桜井:次にまたほかの病院で薬を処方されたときに、「こんなにいっぱい出ちゃったけど腎臓とか私大丈夫?」というような心配があるので、そういうことなども相談できたらすごい。今の病院の中では、そういう時間がないので。
徳垣:先生はとても忙しいと思うので、結構薬局でも「先生、お忙しいので聞けなくてね」のように言われる方がいらっしゃるので。病院で聞けなかったことを薬局でフォローするということが、調剤薬局の役割としてはすごく大切な部分かなというふうには思います。
岡本:病院薬剤師は必ず電子カルテを用いて検査値を確認してから調剤します。でも、院外の薬局は検査値を見ることができないので。また、検査値を読んで評価することが結構苦手な方もいます。
桜井:「駅に近いから」という理由ではなくて、「あの人がいるから」ここの薬局に時間をかけてでも行こう、というふうに変わると思うんですよね。
岡本:患者さんにたくさんお越しいただいているのですが、「薬局でぜひとも説明してほしい」と患者さんから言ってもらったら、薬剤師は、追い詰められてでも勉強すると思います。
渡邊:この薬、この肝機能など、その数値の意味はよくわからないけれど、問診とか診察の中で、「ちょっとここは重要な数字らしいよ」というところを薬局に持ってきてくれると、薬局でそれについて詳しく話してあげて、「今、肝機能に気を付けなきゃいけない時期なんだな」、「次の診察までに、ここはちゃんと注意しなきゃいけないところで、それに影響のある薬は何だろう」と、やりとりすることによって、わからないことやつながっていなかったところがつながります。そこが大きいですよね。
今までは処方箋のやりとりだけしか道具がなかったけれど、検査のデータや、いろいろな数字が変わったりすることなどもあるので、データを持っていらっしゃると、やっぱりこれが今、患者さんにとっては重要なこと、関心事なんだなということが共有できるだけでもすごく大きいと思います。
桜井:「検査データをもらいましたか?」「もし、わからないことがあったら説明するので、お時間があるときでいいから言ってくださいね」でもいいと思うんです。そういうコミュニケーションが本当にできてきたら、すごく心強いなと思います。
岡本:先ほどの桜井さんのご講演の中で、目薬のやり方で、「お医者さんに一緒に行って、聞いて、学ばせてもらっていいですか」というお話があったじゃないですか。
あれで、患者さんが喜ばれるなんて、われわれは絶対に思わないですよね。恥ずかしいから、そんなことはちょっとこっそりやろうと思います。それで喜ばれるのであれば、それで一緒に勉強できるのであれば、これはどんどんやるべきですよね。確かにおっしゃられるとおりで、直接処方した医師に照会するのが一番スムーズですよね、先生の意図がわかりますから。それがさらに喜ばれるのであれば、これはどんどんやるべきです。
桜井:私、網膜に病気があって、「瞳孔をストレッチさせる、ある成分が入っている薬はなるべく使わないように」と言われたんです。その成分名をうっかり忘れて、「何かそういうことを言っていたんですけど」と言ったら「何でしょうね。では、一緒に今聞くから」と言ってくださって。すごく心強かったです。
渡邊:薬剤師さんお1人だけだったらたぶん何ごともなかったようにされてしまっているけれど、桜井さんが薬剤師さんに声を掛けてくれたことによって、お問い合わせがなされて、処方した医師側も「患者さんがこれを心配していたんだ、では次はこのことを話題にしようか」と、お互いに話しやすくなりますね。そのきっかけがすごく大事だなと思います。
では、QAにもコメントをいただいていて、結構今のやりとりと重なる部分があるかなと思うので、紹介させていただきたいのですが、まず薬局薬剤師さんの方からです。
「患者さんの治療段階において心理状態はどんな状況だろうといつも思います。病気や治療状態をご本人・ご家族が受け入れているかどうか、そういったことの受け入れをどう探るか、聞くかというのはなかなか難しい部分があるかなと思います。」確かにやりとりもありましたけれど、どう患者さんが受け止めていらっしゃるかというところがわからないとどうかなと思うのですが、「声掛けのポイントがあったら」というところが一つと、あともう一つは、「処方医との連携において困っていることが山ほどあると思いますが、特に解決したいことを教えてください」ということですがいかがでしょうか。
岡本:患者さんの気持ちはやっぱりストレートに聞くのがいいですよね。どう理解されているのかはわからないので。
桜井:「先生のお話、わかりましたか?」でもいいと思います。
渡邊:最初は、「わからないことがわからない」というところかもしれない。ご本人の言葉で自由にお話しいただくことが本当はできるといいのですが、なかなか十分にできてない。何となく押しとどめてしまって鬱々としていらっしゃる部分もあるので、そこにアンテナを張れると本当はいいのですが、薬局の薬剤師さんや、病院の薬剤師さんでそういうことが聞ける機会があるといいなと思います。
桜井:いいですね。得てして、ショックで頭が真っ白になって、「私、今日はここでいっぱいです」というときに情報をいっぱい注がれてしまっているときがあるので、それを先ほどのように、「先生、どんなふうに言っていましたか」とオープンクエスチョンで言ってもらえると、「はい」、「いいえ」ではなくて答えられるのかなと思います。「何か言っていたけどよくわからなかった」でもいいんですよね。
渡邊:「わかりましたか」と聞くと、患者さんは、もう「いいえ」とは言えないのではないかと、少し圧をかけてしまうかもしれませんよね。
堀:「わからなかったですかね」と聞いた方がいいかもしれないですね。
渡邊:そうですね。「どう思われましたか」など、少しオープンクエスチョンで聞けるといいですね。
桜井:「ちょっとずつがんばっていきましょうか」でもいいですよね。そうしたら患者さんも「そうだな」と思えます。対話するのは1回ではないので、何回も重ねられるのがたぶんいいところだなと思います。
渡邊:たぶん医療者側も、薬剤師さんがあとでサポートしてくださると感じていらっしゃると、またこのあともやりとりができると安心していろいろ話はできますよね。
徳垣:話してくださる患者さんもいますけど、初対面では、なかなかご本人が気持ちをいきなり言うというのは難しいです。やっぱり先ほどの話にあったように、2回目、3回目、と少しずつ顔なじみになって、少し話しやすい感じになってくると、患者さんも本音が出てくるかなと思います。
桜井:時間の薬、「時薬(ときぐすり)」という薬があるので、最初はびっくりですけど、だんだん落ち着いてくれば、「不安なことも含めて受け止めてくれる人がいるんだ」と思えれば、ボールは投げていける気がします。医療の現場だと、先ほどの情報から見えているので、先回りしたくなると思うのですが、患者さんは今、目の前のことで一生懸命がんばっているところだから、その時間を待ってあげることは必要なのかなと思います。
渡邊:時間になりつつありますので、よかったらひと言ずつまとめとして、今日のご意見、ご感想などがあったらいただければと思いますけれどもいかがでしょうか。堀さんから、いかがでしょうか。
堀:今、時計を見て、あと30分くらいあるのかなと思ったらもう時間で、すごく有意義で、一つ一つが明日から使える情報だったかなと思います。私も聞きたいことも聞かせていただいたし、本当に心が温かい内容になっています。本当にありがとうございます。
渡邊:ありがとうございました。徳垣さん、お願いします。
徳垣:今日はこのような場で、お話しさせていただく機会をいただいてすごく恐縮しきりだったのですが、患者さんの立場の本音というのを伺えたり、病院薬剤師の立場からのご意見をいただけてすごく勉強になりました。普段、がんに関する研修となると、副作用対策や、症状や対応がどうかなど、個別の病状や対応に焦点が当たりがちなものが結構多いのですが。やっぱり患者さんの気持ち、コミュニケーションに焦点を当ててというところはすごく大切だなとあらためて思いました。ありがとうございました。
渡邊:ありがとうございます。桜井さん。
桜井:私は今日参加して、すごくいろいろな意味でギャップがやっぱりあったんだなというのをあらためて思ったので、私たち患者さん側も今言った「マイチームつくっていこう」というメッセージをもっと発信していきたいですね。そのチームの中には地域のすぐ聞けるような、専門性の高いかかりつけ医を持つことはなかなか難しいかもしれません。でも、「かかりつけ薬剤師さんを持っていこうよ」というのなら、割とできることかなと思うので、「マイチームの中に、地元の薬剤師さんがしっかり柱になれるように、みんなでがんばっていこうよ」というムーブメントがもっと広められたらいいなと思います。
渡邊:ありがとうございます。岡本さん。
岡本:やっぱり今おっしゃられたように、「医療のハブになる」というのがキーワードだけれど、いまだに活動を見ずというのが現状です。
やっぱり最初の、「一緒に聞いて一緒に勉強する」。それを積み重ねることによって、薬剤師も万能ではありませんので、私どもはいろいろな科の病棟を担当する中で、担当した科はわかっているのですが、担当してない科については苦手だったりするので、やっぱりそういうのは適性がある。人の経験というのもある。その経験をやっぱり薬剤師という立場で学ぶ必要がある。患者さんと一緒に勉強することはすごく意義があるなというのはよくわかります。そう思いました。あと、ギャップのところですけれど、やっぱり食欲不振、倦怠(けんたい)感の感じ方は絶対にギャップがありますよね。
桜井:絶対にギャップがありますね。最近思っているのは、新型コロナウイルスワクチンで倦怠感を経験された方がいらっしゃって。がん治療の倦怠感を伝えるときに、「あれよ、あれ」と言うと、伝わるようになってきたのがよかったです。「右手を左に持っていくのももう嫌」っていう感覚。これは気持ちのことも含めて伝えにくい、でも「そういうことなんですよ」と言うと伝わるようになってきました。
岡本:倦怠感も食欲不振もなかなかよい薬がないんですよね。
桜井:再発したがんを患っている方が参加するサロンの機会で、患者さんが、「ひょっとして、1人で食べているからではないですか」と尋ねて。すると奥さんが「味覚障害もあるし、一緒に食事を食べるのが楽しくなくなった」と寂しそうにお話しされるんですよ。でも奥さん、一緒に食べたいんですよね。でも、食欲がなくて、食べることが楽しめないのが、せっかくつくってくれたのに申し訳ないと食事が別々になっちゃったんです。なので、サロンのときにみんなが好きな食べものを持ってきて、「オンラインだけどみんなで一緒に食べる?」と言ったら食べられたんです。何かそんなかたちでもいいのかなと思って。
岡本:ありがとうございます。勉強になりました。
渡邊:ありがとうございます。
患者さんが普段困っていることを、普段の診療の中でやりとりすることはあまりないじゃないですか。結構うまくいっていることを話して、あとそれ以外のことは聞き出せていないことはあると思います。何らかの困りごとをお持ちで、「気付いてほしい」とアラートを出しているときに、「どうです?」というように、チームでちゃんと気付いてあげられるような仕掛けもやっぱり必要だし、そういった意味では、患者さんにもそういう促しも必要だと思うし、やっぱりそういったアンテナを張ってらっしゃる薬剤師さん、看護師さんなどいろいろな職種の方と連携することで、患者さんをハブにすることが大切だと思いました。今回の研修会では薬剤師さんをハブにして、情報共有や連携をやっていくことの意義や大切さを議論することができました。もっと言えば、こうしたことは患者さんのためにもなるということで、今まで見えてなかったことがいっぱい見えてくるというのはすごく感じます。
私自身も、こういうディスカッションは、やっぱり話さないと伝わらないところだったと思って、絵面を追っていっても残らないなというのはあって、こういう機会はすごく大事だなと思いました。
桜井:特に緩和ケアのお薬は、ほとんど先生が処方箋を持って薬局に行くというのが現状なので、やっぱりずらずらと並んだときに圧倒されてしまうようなところがあります。
渡邊:それこそ、「がんが小さくなった」や、「数値が小さくなった」というようなところで評価するのではなくて、「患者さんの体験ベースでどうだったのか」というところにちゃんと心を配って、そこに注目するようにしていかないと、絶対そういうニーズや困りごとは、聞く機会がないですから届かないので、そこはすごく大事だと思います。
この辺りでディスカッションは終了とさせていただきたいと思います。ご協力いただきましてありがとうございました。