第四回公判について(07/4/27)
第4回公判は4月27日(金)午前10時より福島地方裁判所第一法廷で開廷されました。今回より裁判長が交代となりました。
(鈴木信行裁判長)
まず、弁護側から以前に証拠として提出した教科書、文献について、検察側ははじめ証拠として認めていなかったが、裁判所の指導により6〜7つの教科書、文献が証拠として認められた。その証拠の主なものは
1.新女性大系(胎盤の構造や、前置胎盤?、癒着胎盤について記載されている箇所)
2.目で見る胎盤病理(中山雅弘博士著)
3.Miller, D.Aらの文献(Am. J. Obstet. gynecol. 177:210-4, 1997)
4.Phelan, J.P. and Clark, S.L著 Cesarean Delivery, Placenta accrete, Elsevier, NY, Amsterdam, London, P.263-264, 1988
5.異状死のガイドライン
などがあります。
その証拠についての提出理由の説明があり、その時、検察側はClarkの本のところで、”When the accrete is focal, simple excision of the site of trophoblast invasion, oversewing the area with several figure eight sutures, or sharp curettage may occasionally be effective.”と記載している所で、我々は癒着が局所的な場合と訳して、証拠として提出したが、検察側は、軽度の癒着であるとすべきと主張してきたが、focalをmildと勘違いしているのではないかという印象を持ちました。
午前10時45分より、午前中の証人尋問は手術室の看護師さんで、事件当日手術室で出血量を量る役割をしていた看護師でした。尋問内容は手術室の見取り図から、人の配置などから始まりましたが、出血量が多くなった時と手術の進行程度の記憶がはっきりしていませんでした。また、術中、床にしたたる位の出血があり、これを膿盆でうけたことを証言しましたが、出血は術野から溢れる出血が床に落ちたということはなく、多分前置胎盤?であったため、術中膣からの出血が床に落ちたためと思われますが、検察側や裁判官の人達が理解していただけたか、少し心配になりました。午後1時5分頃昼休みとなりました。
午後2時より再開廷、午後は大野病院院長でした。尋問中、院長が患者さんのことを知ったのは当日、op中の3時30分頃で、手術室に行ったのは3時50分頃、その時は患者さんは挿管されて、全身麻酔がかかっていたとのこと。血圧が下降していたが輸血がはじまって血圧が上昇してきた時点で、一度手術室を出たが、午後6時30分頃、心停止で心マッサージをしている時再入室してきたと証言。死亡後、麻酔医、加藤医師、事務長、事務次官と話し合い、異状死でないと判断し、その日の夜、県の担当幹部と電話で相談し、医療過誤ではなく、病院のマニュアルに即しても届出るものではないと判断したことを伝え、担当幹部も了承したことを証言した。今後、異状死の判断および届出についてがポイントになります。午後4時20分頃閉廷となりました。
次回は5月25日(金)午前10時より、検察側の証人、摘出された子宮を病理解剖した病理の医師が証人尋問に立つ予定です。
それ以後の予定は下記の如く決まりましたが変更もありうるとのことでした。
6月29日(金):検察側の鑑定書を書いた産婦人科医
7月20日(金):加藤本人
8月31日(金)、9月28日(金) :弁護側からの証人尋問
これ以降はまだ決まっていません
佐藤 章 記
第四回公判内容詳細
平成19年4月27日(金)、福島地方裁判所第一法廷において、県立大野病院事件の第4回公判が開催されました。午前に当該手術に立ち会った県立大野病院のO看護師、県立大野病院のS病院長の証人尋問が行われました。 傍聴希望者は78人でした。
この傍聴記は、傍聴時のメモをもとに書き起こしたものです。聞き逃しや当方の聞き間違い等の可能性がございますことをご了承ください。またご協力くださいました皆様に深謝いたします。
【開廷10:10】
裁判長(新): 裁判所の構成が変わりましたが、起訴状の朗読その他は良いですね。(左右二人の裁判官は不変) 用紙を写しますか?では準備を。
弁護側の書証の説明
弁護側より、裁判長(新): 裁判所の構成が変わりましたが、起訴状の朗読その他は良いですね。(左右二人の裁判官は不変) 用紙を写しますか?では準備を。
弁護: 子宮と胎盤の構造 弁3証は、「これならわかる産科学」 妊娠生理的に解説しています。子宮は70gの硬い臓器ですが、妊娠と共に増大し、1000g、5Lとなる。筋層の厚さは1.5cmに薄くなる。35頁以降に胎盤付属物の解説があります。36頁は内子宮口の解説です。胎盤は妊娠4ヶ月目には構成され、径15〜20cmとなり、厚さは中央2cm、重量500gとなる。
胎盤については、弁1証、「胎盤の基礎と臨床」にあります。弁4証「これならわかる産科学」にも、説明がありますが、弁1証の87頁〜胎盤について解説があり、胎盤は・・(プロジェクタに写る) 胎盤基質は重も上手くと絨盤との間で、絨毛膜盤、付着絨毛、絨毛管腔は、弁1証の95頁に図があります。絨毛腔には母体からの血流があります。妊娠については弁1証92頁の表1、94頁の図6,絨毛では、胎児血と母体血の交換が行われています。弁2証の92頁には、胎盤の母体面の写真がありますが、分葉構造を形成しています。
前置胎盤?、癒着胎盤については、弁5証の「女性科学」の「異常妊娠」5章に解説があり、「日本産婦人科学会定義によると、前置胎盤?は・・妊娠末期大量出血の主な原因」
弁12証「目でみる胎盤病理」は、中山まさひろ先生が書かれていますが、癒着胎盤は床脱落膜の欠損により、分類、写真があります。弁12証には、胎盤の基準値があり、大きさ3000gの赤ちゃんの場合、胎盤は平均438g、長径20.1cm、短径17.2cmです。
弁7証の「新女性医学大系」は、分葉胎盤、膜様胎盤の解説があり、
弁6証の「新女性医学大系 正常分娩 25章」には、胎盤剥離部分から子宮収縮がおこるため、胎盤が剥離していく機序として胎盤が剥離した部分の子宮が収縮して剥離がさらに進行する機序が説明されてます。
弁9証「癒着胎盤の臨床的リスク因子」、癒着胎盤は、弁15証、ミラー博士の論文が掲載されています。癒着胎盤の発生の頻度は、35歳未満の前回帝王切開の手術創にかかっていない前置胎盤?例では3.7%です。
弁13証は、実施手術 ですが、ハサミの使用は先端で組織を剥離すること、ハサミによる鈍的性質を兼ねたクーパー(ハサミ)の使用方法が記載されています。
弁14証は「臨床産婦人科手術全書」です。
弁14証はハサミは組織剥離に有用で多用され、極めて便利であるが、鈍的剥離と鋭的な剪断を使い分けると記載されています。剥離は刃の先端部を閉じて彎曲を保護する組織に向けて剥離を行う。切断と剥離と両方の用い方があると書かれています。
弁17、弁18証は海外のクラーク博士の文献とその訳で、癒着胎盤において、癒着の程度によっては数カ所8の字縫合を行ったり、鋭的な剥離は効果的だと記載されています。
検察: 弁17,18証は、告知、簡単な切除、8の字縫合、鋭的な剥離は、癒着が軽度である場合という記載があるので、それを明記してほしい。
弁護: 告知は証拠の一部分としてされる。全体が証拠として記載されるということなので、判断は裁判所である。
弁護: 弁128証 岩手医大母子総合周産期センターの症例報告で、症例1は、前回帝王切開の前置胎盤?で母体搬送され、帝王切開したが、胎盤剥離を行い子宮が温存できた。症例3は前回帝王切開で前置胎盤?で癒着胎盤が疑われた37週3日の妊婦で、帝王切開を行った。子宮後壁から癒着しており、子宮を全摘した。後壁付着の癒着胎盤は診断困難であると書かれている。
弁124証は、本件の帝王切開に立ち合ったK助産師の証言で、赤ちゃんの娩出後、羊水を吸引したりした。2,3分待っても胎盤が取り出されなかった。取り出されるのに20分程度かかった。赤ちゃんを保育器に寝かせてからナースステーションに行ったら、輸血を5単位持ってくるようにという電話があった。輸血が用意してある薬局に行き、手術室に持って行った。手術室の状況は良く覚えていないが、誰かが出血が多くて5000出ていると言ったということを聞いた。
弁19証は、K医師と同じ医局の医師が・・・
裁判長: (がやがや)弁の128証は不同意のままになっておりますが、読んでしまったところだけれど、(4)ですね、5頁が。
弁護: 同意になっているというふうに・・・。
裁判長: いずれにしても同意になってないですね。同意ですか? いや、なってないですね。
弁護:
裁判長: 今のところは不同意です。
弁護: では弁19証、産婦人科医師が当日の状況について、「私は前置胎盤?の患者だときいていた。K医師は後壁メインの全前置胎盤?で、前回帝王切開の術創にかかっていないようです、といっていた。週数が進むと前回の帝王切開痕は超音波検査で確認できないが、その部分にはかかっていないと行っていた。仮に彼がかかっていないと思いますという曖昧なことを言ったのであれば、私は先輩として、聞き質したでしょう。もし、かかっているかどうかがわからないようだったら、大野病院で手術を行わなかったであろうし、私も一人で手術をさせなかっただろう」、ということです。
次に弁125(?)証では、「国民衛生の動向」で、55頁の、妊産婦死亡は、昭和46年には161.7件、平成16年には少なくなったがゼロではなく、49件です。
弁126証、死因分類における人口動態 では、妊産婦死亡の第一位は肺塞栓で23.6%、第二位は分娩後異常出血、第三位が分娩前異常出血で、出血が死亡原因の上位を占めています。
弁 証、人口動態では、1995年―2003年の死亡原因について、年間70人が死亡し、うち20人が分娩後出血です。
弁護人交代 弁護?: 弁41-45証は異状死に関してです。
弁41証は、日本法医学会が平成6年5月に出した異状死ガイドラインですが、医師法21条の異状死について明確な定義がないので混乱が生じていると記載されています。
弁42証は、四病院協議会の報告書(平成13年4月発表)ですが、異状死には明確な定義がなく、法医学会のガイドラインを拡大解釈であると述べています。
弁43証は、外科学会が平成13年4月に出した声明ですが、異状死は合理的に説明できないと記載されており、この声明には救急医学会も賛同しています。
弁44証は、厚生労働省のリスクマネジメントマニュアル(平成12年8月発表)で、医療事故発生時の対応のマニュアルですが、ここでは警察への届け出要件として、医療過誤による障害や死亡の際には施設長が警察に届け出ることとなっております。医師法21条の医師が検案して異状を認めた場合には警察に届けることを付記しています。
弁45証は、県立大野病院のマニュアルで、平成13年2月に弁44証をもとに作成されています。これには病院長が医療過誤の時には警察に届け出るとなっています。
弁46証は、165回国会で、西島参議院議員が、参議院厚生労働委員会で医師法21条異状死に関して質問を行った際に、国務大臣(柳澤伯夫)の発言で、 「今局長の方からもお話をしたかと思うんですけれども、この医師法二十一条の規定の異状とは何かということにつきましては、これは病理学的の異状ではなくて法医学的なそれを意味するものという解釈が、常識的に言ってもそういうものとしてこの規定が置かれていると、こういうことだろうと思います。しかし、なかなかこの異状というものについてポジティブな基準を示すと、あるいは解釈の基準を示すということも困難であるということのままで、ある意味でお医者様の個別の判断にゆだねられていると。」
弁47証は、議事録に対する誤記です。
弁49証は、学者の議論ですが、「ジュリスト」に医師法21条について医師、弁護士、患者の立場からの議論があります。日本外科学会の加藤紘之(北海道大学医学部教授)、児玉安司(弁護士)は、ガイドラインの解釈がまちまちであることを述べ、佐伯仁志(東大法学部教授)は医師法21条は違憲と言っている。その理由として、1.検案事項が日時と場所に規定されていること、2.黙秘権が考慮されていないこと、3.公衆衛生のための法であること、4.犯罪捜査できないことを挙げている。
弁55証は、畔柳達雄氏による、都立広尾病院事件の考察で、戦前は「異状死」であったが、戦後は黙秘権も認められるようになり、医師法21条は改めるべきと書かれている。
弁129証は、判例タイムス1155号で、畔柳氏が医師法21条のルーツがドイツの法にあることを紹介し、16州で埋葬法が適応されるが、届出義務に罰則があるのは半数のみである。東大法学部の樋口範雄氏は、医師法21条は刑法上も医療刑事裁判上も問題であると指摘しており、医師法21条は犯罪に関係する届出のみで明治憲法下では良かったが、戦後になり、戦前は警察は内務省で公衆衛生を担当していたのが、戦後は厚生労働省に分かれたので、医療問題は厚生労働省にいくべきである。しかし医師法21条の改正はなかったのは犯罪に限っていたからであるとあります。
以下に、検察官の本件にたいする説明に対してですが、
弁136証は、弁護団による文献記載内容
弁137証は、岡井崇教授による、9号証、「産科93例ベストプラクティス」に対して、「この書は教科書やガイドラインではなく、臨床で直面する問題に対する個人の意見である。臨床エビデンスでもない。本書と診療指針が違っているから間違いと考えるのは間違いです。本件は緊急の処置であり誤った対応とはいえない。261頁
弁137証は、東京医大名誉教授、吉田研二名誉教授は、第15証について、「帝王切開と経膣分娩は大きく違う。妊孕希望の妊婦については、子宮温存を第一に考えるべきである。
弁141証、東北大学岡村邦宏名誉教授、あくまで自然分娩後のことで、帝王切開ではない。
弁143証、埼玉医大、たけやさとる教授、12号証について、胎盤全面が必ずしも癒着しているわけではない。胎盤が剥がれるときは用手的に剥がして剥離面の止血をはかるべきである。剥離面の縫合により、子宮温存可能となるときがある。12号証の産婦人科学では、陥入穿通、は全面癒着のときである。
検察: 書面の・・
裁判長: 異議ですか?
検察: はい。告知書6頁の4、12号証の要旨告知は、分娩室に向かったが、の後の「かぎかっこ」は不同意なので、削除してほしい。
裁判長: 124号証につきましては確認します。124号については、同意不同意伺った後で採用決定していないことになっています。今の異議を受けて、その通りでいいですか? 裁判所はわかりませんので、そちらで。
検察: 告知の、弁18は省いているのでこちらが追加している。
弁護: それは検察が行うものではありません。
検察:弁号証につきまして、補充したい。
裁判長: 異議棄却します。裁量にまかせられるので次に。
証人尋問(手術に立ち合った看護師の方)
裁判長: では証人尋問に入ります。
証人:名前、年齢、職業住所に間違いありません。宣誓、着席。
検察: 石村から訊ねます。証人の経歴を確認します。証人は昭和63年3月に県立看護学校を卒業し看護師試験に合格しましたね。
証人: はい。
検察: 平成元年に県職員となり、県立病院に勤務しましたか
証人: はい。
検察: 県立大野病院には平成8年4月から勤務で良いですか
証人: はい。
検察: 大野病院ではずっと看護室で勤務されて、手術にたちあう看護師として勤務しましたね。
証人: はい。
検察: 現在大野病院で主任看護師ということだが、何年からか。
証人: 平成13年くらいからです。
検察: 手術室での看護師の役割は、ope責(責任者>)、機械出し、外回りの3つだという理解で良いですか?
証人: はい。
検察: ope責の看護師は手術中の血圧、心拍数の状態の確認、患者への声かけが仕事ですね。
証人: はい。
検察: 機械出しは医師に器具を渡す役割でしょうか
証人: はい。
検察: 外回りは、出血量の確認やその他の報告を行うのですね
証人: はい。
検察: 大野病院の帝王切開手術についてうかがっていきます。手術があったのは、平成16年のことですが、平成16年当時、証人は大野病院で帝王切開に限らずどのくらい手術に関わられましたか?
証人: 一日1件から2件です。
検察: 月どれくらいですか
証人: 月20件かそれより多いかです。
検察: 平成16年当時、手術にたちあう件数は、日に1〜2件、月に20日くらいの勤務ですか?
証人: はい。
裁判長: 月に20日ですか20回ですか?
証人: 回数です。
検察: 確認しますが、平成16年当時、月20回かそれを越える回数、手術立ち会いだったのですね。
証人: はい。
検察: 手術のうち、帝王切開は、大野病院勤務で件数は
証人: だいたいですが、十数回くらいです。
検察: 帝王切開について、平成16年12月17日ということですが、そうですか?
証人: はい。
検察: 手術スタッフはK医師、助手<M医師、麻酔H医師、看護師につきましては、ope責N看護師、機械出しI看護師、外回りがK看護師と証人、助産師がT助産師とS助産師ですね。
証人: はい。
検察: 手術スタッフの構成や人数について、これまでの帝王切開と比べてどうでしたか?
証人: いつもと同じだが助産師が1名多かった。
検察: この手術について、カンファや術前に伝達はされていましたか
証人: 病名は、前回帝王切開で前置胎盤?だと書かれていました。あとは準備として輸血が5単位準備されていました。また、エコーの準備が必要でした。医師から何かあったら子宮全摘をするので準備と言われました。何かあったら双葉厚生病院の医師を呼ぶので覚えておいて、と言われました。
検察: 医師というのは、K先生のことですか
証人: 言われたのはK先生です。
検察: 麻酔表票などで前置胎盤?以外の健康状態に問題はありましたか
証人: 特にはなかったです。
検察: 手術状況について、手術室内の様子、執刀医の位置を図面で確認します。およその見取り図で書いて貰って、先生の位置も示して頂けますか?
検察: 図面には長方形や丸印で書いて貰ったが、何を表すか文字で示していって頂けますか
検察: 真ん中に長方形が手術台、周辺に機械台、吸引器ですね。
証人: ええ。
検察: 手術台につきまして、患者さんの頭は上の方と理解してよろしいか
証人: はい。
検察: 丸印が何を示しているか、文字で書いて頂けますか
検察: 出血量を記録する場所はどこになりますか
証人: 出血量のはかりがここにあります。
検察: その場所には他にはなにかありますか
証人: 出血量、ガーゼを記録する用紙とガーゼをまとめておく紙が敷かれていました。
検察: 執刀医のところから、はかりや記録のところまでの距離は
証人: だいたい、ここからそこまでです
検察: 証人席から書記官席までの距離ということですね。
裁判長: メジャーではかられているのですね。
検察: メジャーでみると、295cmになりますが、その数字について、証人の感覚とてらしてどうですか
証人: ・・・。
検察: 書いて貰った図面に、K医師から吸引器までの距離は
証人: このあたりにおいてました。(左手斜め下をさす)
検察: 左手斜め下の下あたりですか
証人: これくらいの感じです
検察: 左手先の下のあたりの感じですか。はい。
検察: 33号証 写真の(2)ですが、
裁判長: ではいいですね。
検察: 吸引器といいますのは、(52)の写真でしょうか
証人: はい。
検察: 執刀医から吸引器の目盛りは見えるのですか
証人: はい、見えると思います。
検察: 吸引器は音もするのですか
証人: 吸い上げている音がします。圧力の音がする。
検察: 吸引中はその音がするということですね。
検察: 帝王切開の執行は、14時26分開始ですね。証人は、切開の様子を見ましたか
証人: はい。
検察: 子宮の様子はみましたか
証人: はい。
検察: 子宮の様子はどうでしたか
証人: いつもの帝王切開とは違い、表面がぼこぼことした感じに見えました。
検察: どんな感じですか
証人: 表面しか見えませんでしたが、こうぼこぼこと隆起がある感じ
検察: ぼこぼことは、具体的にはどういう感じ
証人: 表現が難しいが(右手を山でも書くように動かして、指の付け根のとがっているところを指しながら)表面が隆起する感じ。
検察: 色はどうでしたか
証人: 暗紫色のような気がしました。全体的に。
裁判長: 暗紫色(あんししょく)とは
検察: 暗い紫色です。いつも見る子宮はどうですか
証人: 表面がつるんとしている
検察: 子宮はいつもと違って隆起していたのですね。子宮切開は見られましたか?
証人: はい。
検察: 子宮切開のところまでで、これまでの帝王切開と比べて変わりなかったでしたか
証人: エコーを子宮にあてて確認されていました。
検察: 患者さんの様子やその視野で変わったことはなかったですか
証人: はい
検察: 子宮について変わったところはなかったでしたか
証人: とくにないです。
検察: 娩出は見ましたか
証人: はい。
検察: 娩出までは看護師も見るのですか
証人: はい。患者さん赤ちゃんの状態が悪ければ手伝いにいきます。
検察: 赤ちゃんの娩出までで、帝王切開で違っていたところはどこですか
証人: まだなかったと思います。
検察: 患者さんの様子も変わりなかったですか証人: はい。
検察: 出血についてはどうでしたか
証人: 赤ちゃんの娩出までは他の症例と一緒でした。
検察: 赤ちゃんの娩出後のことをききます。出血量を計測しましたか
証人: はい。
検察: 出血量は
証人: 量はいつもより多かったです。
検察: どのように多かったのですか
証人: いつも700とかで、1000はない。今回は2000をこえて多かったです。
検察: 数値は、羊水込みですか
証人: はい。500〜700はいつも出ている。結構多く出ていた。
検察: その数字をみてどう思いましたか
証人: 多いので
検察: 証人がこれまで立ち合った帝王切開で2000を越える出血の経験はありますか
証人: ありません。いつもは1000をこえない。500〜700です。
検察: これは手術全体の出血量ですか
証人: 全手術通しての出血。
検察: 本件の出血量は多かったのですね
証人: はい
検察: 時間はどうでしたか
証人: いつもよりかかっていました。
検察: いつもは2分よりかかりましたか、どれくらいですか
証人: ながくでもなく、すぐでもなく、ちょっとかかっているという印象のみです。
検察: 麻酔記録によると、14時37分娩出とあり、胎盤娩出は14時50分です。13分間です。この13分は証人のなかなか出ない印象と一致していますか
証人: そうだなと思います。
検察: 2000の数字の後の出血はどうでしたか
証人: その後はずっと出血がありました。
検察: 確認しますが、出血は娩出の後ですか
証人: はい。
検察: 出血は、胎盤娩出前について、証人はどう感じましたか
証人: いつもより多いが、胎盤娩出まで出血している。胎盤娩出後は止まるかと思っていました。
検察: 出血が多いのは、一回あたりの量が多かったのですか、それとも続いていたということですか (一回あたり?)
証人: はい
検察: いつもより出血が多くてとまらないことが続いていたということですね。胎盤が娩出されなかったとこのとですが、最終的には娩出されたのですか
証人: はい。
検察: 娩出された胎盤をどうしましたか
証人: 私が膿盆で受け取りました。
検察: 胎盤の形はどうでしたか
証人: いつもより形が違いました。
検察: いつもはどういう感じですか
証人: 形が整っていると思っていましたが、今回は違った。形が崩れていました。
検察: 胎盤娩出後について、出血はどうでしたか
証人: 引き続き計測していました。
検察: 出血は続いていましたか
証人: はい。
検察: どのような作業で出血を計測していましたか 娩出の後も出血が続くところで、証人はどういうことをしていましたか 計測のペースや作業についてはどうでしたか
証人: ガーゼをみるとかそういうことですか。バケツの中身を確認したり、はかりに載せる回数は多かったです。
検察: バケツはどこに置いていましたか
証人: ここです。
検察: バケツはどういうことで置かれていましたか
証人: 術者が血を含んだガーゼを一旦そこに置くので。
検察: その手術で看護師の応援を要請しましたか
証人: はい
検察: 何故ですか
証人: 麻酔科の指示が多くなり、出血量が多いので看護師を動員したほうが効率よく動ける。
検察: どういうことですか
証人: 薬剤の指示が増えたので、指示が多くなると看護師が多い方が良い。出血量が多くなると手が足りなくなる。
検察: 出血量の計測にも手間がかかるのか
証人: はい
検察: 応援看護師はどんな補助をしましたか
証人: ガーゼカウントの手伝い、輸血の手配、輸血の準備をしました。
検察: 出血が止まらず量も多くなったのですね。出血量の計測は娩出後も続いていたのですね。残りの作業はどれくらいですか
証人: 吸引器のみの時には書いていなかったが、ガーゼ出血が降りてくるようになってからは、記録用紙2枚くらい使うくらいになりました。
検察: 24号証資料1,記録用紙
裁判長: よろしいですね。
検察: 記録用紙2枚くらい記録したと言うが、何回くらい記録したのか。
証人:記録の数は15くらいあるので、30回近くと思う。
検察:麻酔記録では、10ヶくらいしか数値が書いてありません。麻酔記録では記録できないということか。
証人: 麻酔医師が一部を書かれていたか不明です。薬剤注入など記録できていない。患者の状態にあわせ、出血を止めるための処置を色々していたので、書くことができないところがあった。
検察: 出血量計測報告について、多い場合はこまめに計測して、口頭で医師にも報告となっています。どういうところで報告するのですか
証人:執刀医の背後から。
検察:おおよその位置を教えてください。出血量の報告は誰におこないますか
証人: 麻酔科の医師へです
検察: なぜですか
証人: 全身状態を管理しているのは麻酔科なので。必要な状況を伝えます。
検察: 実際に立ち合った報告は、執刀医の耳にはいっていましたか
証人: 「聞こえて・・・いた・・・と・・・思います」
検察: 患者さんの娩出後も出血が多かったが、いつもの帝王切開と違うところはどこですか
証人: 手術が終わる頃になり、膿盆に入れて計測しました。流れ落ちる血液も膿盆に入れました。共に計測しました。
検察: どういうふうにして、出血の計測をしたのですか
証人: 覆布の上から流れてきたので、たれる位置に膿盆を置きました。
検察: それはどこですか
証人: 吸引器とK先生の間に置きました。
検察: 膿盆にうつした血液のほかに計測したもの
検察: バケツにガーゼが入れられて、ガーゼはどうなるのですか
証人: ガーゼはかなり血液を含んで固まりになった。
検察: バケツのガーゼから血液が出てしまうことはありましたか
証人: バケツから膿盆に移してはかりました。
検察: どうやってやったのですか
証人: 下の方で、膿盆にバケツから移しました
検察: バケツは術者たちの足元にあるが、そこでバケツの中身を膿盆に移し変えたのか
証人: 近くではなくて(離れたところで)
検察: この帝王切開以外でも、手術立ち会いのところで膿盆から出血量を計測したことはありますか
証人: 膿盆にしたたり落ちるほどの出血はありません
裁判長: もう予定時間ですね。質問を10個くらいにしてください
検察: この手術について、摘出された子宮はどうなりましたか
証人: 私が膿盆で受け取りました。
検察: 子宮はどうでしたか
証人: これまで子宮筋腫手術などでみた経験はあるが、切開されているし、ガーゼも入っているし・・・。
検察: 手術台から血液がしたたり落ちたのは、子宮を受け取った後ですか前ですか
証人: 記憶があいまいです。手術後半ではあるが、子宮を受け取る時間の前後かどうかは・・・。
検察: ガーゼを並べたのはどんなふうにですか、また何故ですか
証人: 10枚一組にして、10個くらいはありました。
検察: それを手術室の図で右下隅に並べたのですね
証人: はい
検察:そのガーゼの束が並んでいるのは手術スタッフから見えますか
証人:はい。
検察: 手術中に被告が何か話したことで、印象に残っている言葉はありますか
証人: 麻酔科医師と子宮摘出について話したのと、私に直接指示で、血小板をたのんでくださいと言われたのと、血液がいつ届くのかときかれました。
検察: それはどういう意味ですか
証人: 血液が届くのにあわせて、子宮をとるのをその時期におくということでした
検察: 医師の応援の話はありましたか
証人: S院長が、呼びましょうかといいましたがK先生は大丈夫ですと。H医師からもありました。
検察: それに対してK医師はどう答えましたか
証人: 大丈夫です、だったか、いいです、だったか、とK先生は答えました。
検察: それに対して、証人の思いはどうでしたか
証人: 双葉厚生病院の先生を呼ぶのは、そのときH先生から訊いていました。出血が多くなったが、カンファでは呼ぶタイミングが明かでなかったので、それはいつごろだろうと考えていて、まさにその頃に声をかけていたと思った。
検察: どう思いましたか
証人: 先生は出血の量はわかっていて、どのようにやるのかもわかっていて、一生懸命やっているので大丈夫かなと受け入れました。
検察: 証人は、K先生のことばがあるまではどうでしたか
証人: 大丈夫だろうかと思いました。手術室がすごく重い感じがありました。その後S院長が来て、応援を呼ぶかときかれて、あ、大丈夫だと思いこもうとしていました。S院長も大丈夫ですということで了解したと思いました。K先生はわかっていらっしゃるということで、大丈夫なんだと思いました。
検察: 証人には不安もあったのですか
証人: はい
検察: 以上です。
裁判長: 弁護側からの質問はどれくらいですか
弁護: 同じくらいです。
裁判長: 続けてやりましょう。
弁護: 検察から経歴について話がありましたが、S63年5月に看護師資格をとられましたが、看護師以外の資格はどうですか、看護学校、産科についてはどういたことを学ばれましたか?
検察: 内容が不明確です
弁護: 実習での経験をききますが、帝王切開は
証人: ありません
弁護: 前置胎盤?を学んだことは
証人: ありません
弁護: 癒着胎盤は
証人: ありません
弁護: 前置胎盤?や癒着胎盤の写真をみたことは
証人: ありません
弁護: 勤務病院の数は
証人: 今の病院全てで4カ所です、Iリハビリ病院、A総合病院、T病院、O病院
弁護: T病院には何年いましたか
証人: 2年です
弁護: T病院ではどこに勤務されてますか
証人: 内科病棟です
弁護: A病院には何年はたらきましたか
証人: 4年です
弁護: 4年間いらしたんですね
証人: その間出産しているので休みもありましたが・・・
弁護: そこではどこで勤務されましたか
証人: 手術室と内科産婦人科眼科の混合病棟でした
弁護: そこでは出産はあつかわれましたか
証人: はい
弁護: 帝王切開にはつかれましたか
証人: 産婦人科では、はい。
弁護: I病院には何年勤務されましたか
証人: 2年です
弁護: 勤務内容はいかがでしたか
証人: 内科です
弁護: 大野病院には平成8年に勤務されたんですね。大野病院での勤務について伺います。分娩立会いは
証人: ありません
弁護: 手術室以外の経験はありますか
証人: ありません
弁護: 産科婦人科手術の内容は
証人: 産科オーダーの手術は帝王切開、産科婦人科では人工妊娠中絶とかあります。悪性疾患はあまりありません。
弁護: 産科は大野病院は、医師は何人手術で立ち合いましたか
証人: 6人くらいです
弁護: K医師に多い手術のそういう特徴は
証人: 産婦人科にはあまりなじみなかった。医師が3ヶ月で交代するので、それほど件数がなかった。K先生が常勤になってからかなりの件数になりました。病院が、平成15年4月に産科が開設され、新病院になると分娩数が増えました。帝王切開件数は分娩症例が多いと多くなるので、帝王切開の件数は平成16年は十数倍になりました。
検察: 大野病院で帝王切開が十数倍といっている。正確に述べてほしい。平成16年1月からの大野病院での帝王切開件数は
証人: よく覚えていません。
弁護: 平成8年からみれば、十数倍ですか
証人: はい
弁護: 前置胎盤?、癒着胎盤の経験は
証人: ありません
弁護: K医師の前置胎盤?の手術は
証人: 私は入っていません。勤務外だったので。
弁護: 出血が多く色々な薬を使って母子に問題ないのは知っていますか
証人: はい
弁護: 証人は外回りをした様子だが、仕事のわりあてはどういう形ですか? 個別ですか?
証人: 師長です。
弁護: 前置胎盤?と知ったのは、手術前ですか
証人: カンファは当日の午前中でした。
弁護: それに参加したのは看護師全員ですね。医師も出席するのですか
証人: はい
弁護: 医師の指示などは看護師スタッフに伝わるのですか
証人: 主任手術長が情報収集にいくときに、カンファで特に話しあわせて内容を検討します。
弁護: 助産師1名増やす話になったのですね。助産師が2人に増えた理由は
証人: きいていない
弁護: 本件カンファがいつもより時間がかかりましたか
証人: いいえ
弁護: 看護師からカンファで不安が出ましたか
証人: 不安というよりはその時点では連絡などがあるのでその確認などです。
弁護: 手術の不安はありましたか
証人: ありませんでした
弁護: 術中エコーはどのように準備しましたか
証人: 産科外来から助産師に機械をあげてもらって入り口から部屋まで持って行きました。
弁護: エコーの目的は何でしたか
証人: よくわからないですが、胎盤の位置を確認したと思います
弁護: 術中エコーは以前あったか
証人: 帝王切開ではない。今日はじめて
弁護: 他に準備は。
証人: 輸血の準備をしました。麻酔科より加温器を一台準備するよう言われました。
弁護: 本件の手術は、今の手術見取り図になるのですね。証人の手術開始時の位置は
証人: エコーの介助に入っていたのでエコーのそば。
弁護: 赤ちゃんと母親と対面させますか
証人: はい、対面しています。
弁護: 母からはどうするのですか
証人: 助産師が毛布で赤ちゃんを抱いていって会わせます。
弁護: 15号証、チャートを見てください。血圧などがあります。出血2000のところ、45分のところですが、羊水混みで間違いないですか
証人: はい。吸引されるので、どれくらい混じっているかは不明です。
弁護:羊水自体の色をご存知ですか
証人:茶色を薄くした感じ
弁護: 血液だけ吸引した場合と、羊水だけ吸引した場合では色が変わりますか
証人: ・・・。外科手術では泡立ち濃厚な赤色、羊水を含むとそういう感じではなくなる。
弁護: 外科手術のときとは色に違いがあるわけですね
証人: はい。
弁護: いつもの帝王切開と比べてはどうです、
証人: ・・・。濃くはないなと。
弁護: 出血2000の記載の14時46分すぎですが、これ以前に吸引はありましたか
証人: なかったと思います。赤ちゃんを出す際に羊水を吸いだすのに吸引びんを使うので。
弁護: 帝王切開では子宮切開時に出血量の計測が始まるということか
証人: はい。
弁護: 証人は出血が増えた時刻は覚えていますか
証人: わかりません
弁護: では何をきっかけに出血が増えましたか
証人: 増えたというより、吸引開始後ずっと止まらない感じでした
弁護: K先生から会話はありましたか
証人: 先生が輸血の時間をききました。時刻は3時30分でした。
弁護: なぜ3時30分ですか
証人: 輸血を頼むときに時間をみないといけないので、そのとき3時30分でした。
弁護: 血小板輸血を指示したときのK医師の様子はどうでしたか
証人: あわてているかんじはありませんでした。
弁護: K医師の様子の変化はありましたか
証人: 一生懸命にしていました。最後のVTの時に表情が変わったのですが、それまでは落ち着いていました。私は先生は落ち着いて処置をされているように見えていました。
弁護: 証人は胎盤を膿盆に受けたとのことですが、癒着胎盤を見たことはありますか
証人: ありません
弁護: 普通の胎盤を見たことはありますか
証人: あります
弁護: 通常の胎盤と比べて異なる特徴がありましたか
証人: このくらいの大きさの膿盆で受けました。膿盆いっぱいになりました
弁護: 膿盆の大きさはいかがでしたか
証人: これくらいでした(両手で示す)
裁判長: A4版ですね
弁護: くぼみがあるので正確さにはかけますね
証人: 通常より大きい印象があります。
弁護: 普段の胎盤ではいっぱいいっぱいにならないのですか
証人: なるときもあります。大きさは色々です。
弁護: 子宮は筋腫の手術の経験はあって、帝王切開例の子宮の経験はないのですね
証人: 帝王切開に伴う子宮の経験ははじめてで、子宮を見るのも初めてです。
弁護2: 手術台からしたたり落ちる血液を膿盆で受けたということ、バケツのガーゼも計量されたとのことですが、時期は手術の最後のところですか
証人: 全体としての手術の後半戦ということです。
弁護2: 子宮摘出後か前かはっきりしないのですが、胎盤娩出は14時50分になっていますが、記憶はありますか
証人: ありません
弁護2: 子宮摘出は何時か、はっきり記憶はないのですか
証人: ない。
弁護2: 18年3月4日でしたか、警察で調べがありましたが
証人:はっきりしません。
弁護2: 3月初めの頃の記憶はありますか
証人: 何月かはっきりしませんが、受けたことは覚えています。
弁護2: 何月ですか
証人: 忘れました
弁護: 記憶は時間がたつと薄れていくのでいいですか
検察: 異議あり、意図不明
弁護: いや、はっきりしています
検察: 記憶が薄れるという言い方は不適切です
弁護2: 検察の取調において証人は、子宮摘出されても出血が続いて、血が滴り落ちたので、膿盆で受けたと述べた記憶はありますか
証人: 記憶はあります。出血が続いたと述べました。
弁護2: 今お聞きしているのは、子宮摘出後も出血が続いたと述べた記憶がありますかということです
証人: わかりません
弁護: それに続いて、医師が血を吸い取ったガーゼを膿盆に移し替えて計量したという記憶はありますか
証人: 詳しくおぼえていません
弁護3: 麻酔チャートの1頁で、14時40分に、出血量2000、出血量に吸引器でとったものというコメントがあります。ここでは、ガーゼで出血量をとっている、又はガーゼカウントはなかったとして良いですか
証人: 14時40分でガーゼをいっぱい集めて測った記憶はありません
弁護3: 先ほどの発言では、吸引のみとのことで、2555となっている14時52分には、ガーゼカウントはありましたか
証人: 覚えていません、ガーゼもなくはなかったかと思う感じです
弁護3: 2555の中にガーゼを含みますか
検察: 異議あり、質問の意図が不明
弁護3: 仮にガーゼがあったとすれば、ガーゼを確認する時間があったとすれば、何分か、何秒かかかるはずなので、2555mlの出血量にガーゼのカウントが入っていたとすると、
証人: すいません、もう一度
弁護3: ガーゼのカウントはガーゼの重量を量り、出血量を合わせて報告とするのですね。14時52分にガーゼは入っていますか
裁判長: 何をききたいのかわかりにくいのではないですか
弁護3: ガーゼカウントの記憶があるのはいつですか
証人: はっきりした記憶がありません
(注:吸引びんでの出血カウントは50〜100ml単位で行うことが多い。従って、出血2555にはガーゼカウントも含まれていると推測される。証人は弁護側の質問の意味がわからず、答えられていない)
弁護3: 膿盆で計測したのはどういうきっかけですか
証人: 液体で流れ込んでくるものを一番速く計測するには膿盆しかないというとっさの判断です。
弁護3: どこの部分ですか、流れていたのは
証人: 先ほど示した位置です
弁護3: どういう場合でしたか
証人: 手術の後半戦でした
弁護3: どういう行為で気づいたのですか
証人: 見ると、流れ込んでいました
弁護3: 場所は
証人: 患者さんの足にかかっている覆布の上です
弁護3: どういう場合ですか
証人: 見たら、流れていました。
弁護3: 麻酔記録の2枚目ですが、あなたは血液を採血しましたか
証人: 介助にははいっていました。
弁護3: そのとき気づいたのですか
証人: このときは足を見ました。覆布の下です。
弁護3: 足の下とは、
証人: 患者さんの足から採血をしました。採血するために足元の覆布をはずした時に(機械台の)支柱にも血液が流れていたので、そこにも膿盆を置きました。
弁護3: それは別のところですね。時間は違いますか
証人: はい。採血のとき、足を見て気づいて
弁護3: 手術室を離れた場面はありましたか
証人: はい
弁護3: いつですか
証人: 胎盤が出たときと、3時くらいに加温器をとりに出ました
弁護3: 加温器とは
証人: 血液をあたためるためのものです
弁護3: 指示はどこからですか
証人: 麻酔科医の指示です
弁護3: 何時頃でしたか
証人: 3時くらいだったような
弁護3: そのとき何をみてそう思ったのですか
証人: 時計をちらっと見た気がします。
弁護3: 血小板を指示を受けたのが何時ですか
証人: 15時30分です
弁護3: 加温器を取りに行ったのが、15時頃ですか?
証人: はい
弁護3: 輸血のために必要だったのですか
証人: 明確には聞いていません。H先生から、もう一台取りに行くようにという指示でした。
裁判長: 他にありますか
検察: 弁護側の質問で、カンファの時の応援の産婦人科の先生の連絡の電話というのは、どういうところへの連絡でしたか
証人: 双葉厚生病院でした。
検察: 双葉の先生の応援ですね、他は特になかったですか
証人: ありません
検察: 加温器が胎盤がとれる前後で、時間ははっきりしませんが、胎盤がとれたくらいの時間でしたか
弁護: そんなこと証人は言っていないですよ。午後3時頃と言っていますよ。
検察: 胎盤がとれる頃だったのか3時だったのか、聞いています。
裁判長: 胎盤がとれる頃という発言? そんなの聞いてないんだけど。
弁護: そこ無理ですね
裁判長: わかりませんね。検察は確認してから聞いてください。
検察: 加温器を取りに行ったのは、手術の中のいつですか
証人: どたばたの、始まった頃だった気がします。
検察: 赤ちゃんの娩出、胎盤、子宮の関係では
証人: 赤ちゃんは既に生まれていました。
検察: 胎盤と子宮摘出の関係は
証人: ・・・。3時くらいというのが、時間の短針が3を指していた。
検察: 胎盤娩出の後の3時ですね、それともはっきりでなく3時頃ですか
証人: わかりません
検察: 短針が3のあたりですか
証人: それはわかりません。針が3でなく、3時と思っていました。
検察2: 先ほどの弁護側からの質問の中で、手術中、VTの時に表情が変わったと答えましたね。ところで手術の際は着衣を上から着ますか
証人: はい
検察2: 帽子もですね
証人: はい
検察2: どのへんから隠れますか
証人: 眉の中までです
検察2: マスクはしますか
証人: はい。すべて覆います。
検察2: 何故表情がわかるのですか
証人: ・・・。
検察2: それは、あなたがそう思ったのですか
証人: 先生は日頃落ち着いています。声が荒々しくないです。物を取るときの態度とか、荒々しくないことです。
検察3: 術中の被告人から、人が亡くなる危機感を感じるときはなかったのですか!
証人: 私はこういう時だから冷静に対処されようとしていると感じました。
検察3: 危機感はなかったのですか!
証人: 心の中はわかりません
裁判官2: 血液を頼むときは時間を見るというのは、何故ですか
証人: 取り寄せになるので1時間くらいかかるので、発注、到着、交差の時間が先生の指示にかかわるので
裁判官3: 出血量の計測して、その場で麻酔医への報告は、何時何分何cc ですか
証人: そのときの時間は言いませんから、何ccのみです。
裁判官3: 麻酔医は、はい、と言うのですか
証人: はい、ということもあるが、処置もあるので、必ずしもはいという答えは返ってきません。
裁判長: 膿盆の血液は2回とか、1回か
証人: 2場面あったということです
裁判長: 一つの場面で数回ですか
証人: 回数ではなく、ずっとという感じでした。一つの場面あたり1〜2回は、という記憶です。二つの場面でありました。
裁判長: 今の証人の証言は、調書と一体とします。
【閉廷13:10】
【開廷14:05】
証人尋問(県立大野病院病院長)
裁判長: 宣誓、証言したことで、証人が刑事に問われるようなことを質問され場合には黙秘することも可能あることを裁判長より、伝えられる
(午前の証人には、黙秘権の説明はありませんでした)。
検察: 鈴木より質問します。証人の経歴について伺います。昭和43年12月に 医師免許を取得し、その後福島県立医大附属病院をへて、昭和56年から大野病院で勤務されていますね。
証人: はいその通りでございます。
検察: 院長はいつからですか。平成13年4月からですね。
証人: その通りです
検察: 証人の専門科は
証人: 整形外科です
検察: 証人は、平成16年12月にK被告が手術をした患者さんが亡くなられたのはご存じですね
証人: 存じております
検察: 事件当時の、大野病院の診療科についておしえてください。
証人: 内科、外科、整形外科、産科、麻酔科が常勤でいました。
検察: 常勤医医師数は
証人: 常勤は12名です。
検察: 看護師の数は
証人: え〜、はっきりとは...89人かそのくらいだと思います。
検察: 病床数は何床ですか
証人: 146床
検察: 病院は地域医療病院の認定を受けていますか
証人: 受けていません。
検察: 特定機能病院ですか?
証人: 受けていません。
検察: 救急の一次、二次病院の分類はどのような意味ですか
証人:
検察: 証人の理解でお答えください
証人: 私の理解では、一次救急は初期救急、休日診療や夜間診療を、主に入院でなく軽症患者を扱います。二次は指定された救急告示・教育病院で、24時間救急の医療を受け入れます。要件がございますが、三次救急は救命センターとして、生命の危険が迫る心筋梗塞や脳卒中に対処できる病院です。
検察: 大野病院は平成16年には、どうでしたか
証人: 二次救急、救急告示病院です。
検察: どのような基準ですか
証人: 24時間救急に精通した医師が待機している、レントゲン、輸血、輸液、カウンター(電気)ショックの設備が整っている、心停止に対する処置ができる、救急車が搬送しやすい場所、設備があって、救急専用の病床が3つ、救急優先の病床が5床以上ということです。
検察: 証人がおっしゃったのが
証人: 二次救急医療機関です
検察: 大野病院の患者さんはどのあたりに住んでいますか
証人: 双葉地区(郡内)です
検察: 大野病院の役割はどのようなものと理解していますか
証人: 双葉郡内の中核病院として、一般的な診療を行います。中核病院としての機能を持ち、救急に対処します。
平成15年1月に改築したので、一般医療の他に感染症、救急、初期被爆の医療機関、政策医療を行うことです。
検察: 一般的医療とは
証人: 各科でドクターの専門性に従い、見られる患者をみるということ...。
検察: 勤める医師の専門に外れているところはどうしているのか
証人: (自分の専門の整形外科では)他の病院へ紹介している。
検察: 紹介先はどこか
証人: 福島県立医科大学や東北大学。どういうところが得意かは、医師は知っているので、各々専門的にやっているところに紹介します
検察: 証人も院長だけでなく、診療もされているのですね。整形外科以外の他の診療科も同じことが言えるのですか
証人: そう思います。
検察: 大野病院では輸血はどうしていますか
証人: 必要時に確保します。
検察: 常時おいてはいないのですか。
証人: 常時はない。
検察: 血液の確保はどのようにするのですか
証人: いわき市の日赤血液センターから取り寄せています。
検察: 距離はどのくらいですか
証人: 50km、時間にすると1時間くらいです
検察: 証人の、本件当日のことについてお尋ねします。本件患者さんの帝王切開について、証人は事前に知っていましたか
証人: 知りませんでした
検察: はじめて情報を得たのはいつでしたか
証人: 12月17日の午後3時半でした
検察: どこで知りましたか
証人: 院長室の前でききました
検察: 誰からですか
証人: 事務主管のKさんからです
検察: どのように聞きましたか
証人: 「先生ご存じですか、帝王切開で5000mlの出血をしている患者さんがいます」と言われました
検察: 証人はそれをきいて、どう思いましたか
証人: かなり出血が多いので、これはどうなっているのか心配になり、手術室にはいりました。
検察: 院長室は1階にあるのですね
証人: 1階、事務部と同じところにあります
検察: 手術室は2階ですね
証人: そうです。
検察: 手術室に入るまでに、証人が気づいたことはありましたか
証人: 2階に上がって、手術室に行く前にナースステーションがあり、ステーション脇に採血室があり、そこで、職員がお互いに採血をし合っていました
検察: どう思いましたか
証人: 緊急なことだと思いました。血液が相当たらない。大変。と思った。
検察: 患者さんの様子はどうでしたか
証人: 手術室に入ったとき、全身麻酔がかかっていて。麻酔科のH医師が、pumpingで輸液をし、手術台の上ではK医師がお腹に手をあてて、後でわかったが圧迫止血をしていました。
検察: その他の看護師、医師について、記憶に残っていることはどんなことですか
証人: 患者さんの向かって左手にK医師、右側に助手の外科M医師、出血のガーゼをカウントしているナース、隣の手術室からきた看護師、機械出しナース、その後ろにもひとりおったようです。血液測定などで、動きが急でした。
検察: 心電図モニターをみましたか
証人: 見ました
検察: モニターの表示はどうでしたか。記憶はありますか
証人: 最高血圧60くらいでした。脈拍は、140くらいで、この値は変わりますが、大体140でした。
検察: 証人が手術室に到着したときの出血量の認識はどうでしたか
証人: 私の到着時に、7000ml台の出血という認識でした。
検察: 患者さんの容態はどのように認識されましたか
証人: 脈拍が多く、最高血圧が60台で、出血性ショックの状態だと考えます。
検察: 基本的なことを伺いますが、ショック状態とはいかなるものですか
証人: 循環血液量が減少して、血圧が低下し、酸素運搬能が低下して、持続すると組織や臓器に不全をきたす。すぐに戻れば良いが、酸素不足で組織や臓器が機能不全におちいる。
検察: ショックの原因が、出血性ショックというのはどこから認識されましたか
証人: 血圧低下と脈拍上昇、相当量の出血があり、循環血液量が少ない状態と考えました。
検察: 患者さんの状態はどうでしたか
証人: この状態が長く続くと大変なことになる、マズイという認識でした。
検察: 大変なことになるとは、具体的には
証人: 各臓器の機能不全が長引くと、心・腎等々に重大な影響を生じます。
検察: 生命の危険についての認識はいかがでしたか
証人: 長く続けば危険な状態でした
検察: 回避するにはどのような方法が良いですか
証人: 循環血液量を増やすこと、輸血、血圧を上げる収縮剤、補液、血漿、代用血漿による輸液です
検察: 患者さんの出血は続いていましたか、止まっていましたか
証人: 続いていました。
検察: 出血を止めることについて、考えはありましたか
証人: 出血が続いているので、技術的に得意な医師を呼んで応援してもらったらどうかと考えました。
検察: 端的に、止血を考えた方が得策でしたか
証人: 止血が第一と考えました
検察: その方法として、他の医師の応援、具体的には誰ですか
証人: 腹の中のことなので外科部長のM先生に入ってもらったらどうかと考えました。
検察: 誰に話しましたか
証人: K医師に話しました。
検察: 被告人はその時間何をしていましたか
証人: お腹を押さえて圧迫していました。
検察: 証人がM医師を呼んだらどうかと言ったときの、被告の反応はいかがでしたか
証人: 聞こえなかったかもしれません。間があって、後ろのナースが、院長がそう訊いているとK医師に言いました。大丈夫と答えました。
検察: 大丈夫ですというのが答えだったと。
証人: はい
検察: 応援を頼む話が出たことを証人は知っていましたか
証人: はい
検察: それはどのように知りましたか
証人: 手術室の左足側のところで、私の左手にいた看護師が、(助手をつとめた)外科のM医師から、M部長の応援を読んだらどうかと、H医師からは近くの産婦人科医に来て貰ったらどうかという話があったが、大丈夫だということで呼ばなかったと、看護師から訊きました。
検察: 応援要請を再度言ったことはありましたか
証人: ありません
検察: それは何故ですか、証人の考えはどうでしたか
証人: 手術中の体制は、実際にメスを入れる手術医は複数でやっていても、命令系統はすべて術者その人にあります。前立ちが先輩なら前立ちがしきる。全身管理は麻酔科医師が行います。術者に手術を止めてくれというのも麻酔科医です。術者に「応援が大丈夫です」というものを、それ以上は言わないのが普通です。
検察:その後、患者さんが亡くなるまで、証人は手術室にいましたか
証人: おりません。途中で退室しました
検察: どのタイミングで退室しましたか
証人: 頼んだ血液が到着し、院内の輸血も運び込まれた。輸血を始めて間もなく血圧が上昇し、120台になったので、私としては良かったと思い、間に合ったという印象で良かったなと退室しました。
検察: その後証人は何をしていましたか
証人: 整形外科の外来で書類仕事をしていました。
検察: その間患者さんが午後7時01分死亡されたのは、ご存じですね
証人: はい。
検察: そのことを、どう知りましたか
証人: 院長室で看護師長のYさんから、先ほどの患者さんが亡くなったみたいですと。18時30分頃だったと思います。
検察:どう感じましたか
証人: 血圧が回復して大丈夫と思っていたので、どうして、と驚きました。
検察: 証人はどう行動しましたか
証人: 手術室に向かいました
検察: 手術室に被告人の姿はありましたか
証人: 手術室にはいなかった。手術室の手前、更衣室にK医師が手術室から入ってきて、会いました。
検察: そのとき、会話をしましたか
証人: 「どうだったの」と私が声をかけました。
検察: 被告人は
証人: 「やっちゃった(吐息のような)」というようなことを。
検察:被告人のそのときの表情は
証人: 非常に落胆、うなだれたという感じですか。「やっちゃった」とボソッと言ったことを覚えております
検察: 証人は被告の口調や表情から、当時の心中を察しますか
証人: 「大変なことになってしまった」と認識した。これは医師にとって最悪のことですからね、がっくりきている。
検察: それは心中を察して感じていることですか
証人: そうです。
検察: 証人は被告に何か声をかけましたか
証人: 「大変だったね」か「ご苦労だったね」か、私は悪戦苦闘したK医師に対して、ねぎらいの言葉をかけました。
検察: 被告人と話した後ですか、時間を整理すると、証人が手術室に入ったとき、手術室の中ではどういう状況でしたか
証人: 心臓マッサージをしていました。モニターを見ますと、脈拍が出ていなくて、平坦でした。
検察: 心臓マッサージは誰がしていましたか
証人: H医師、M医師で。
検察: 証人は心臓マッサージの様子をみて、蘇生の見込みがあるかについては、どうですか
証人: 心臓マッサージをすると波形がでるが、手を止めると平坦になる状態。救命不能と考えました。
検察: その後証人は手術室を出たということでよろしいですか
証人: はい。
検察: 証人に手術の説明はありましたか
証人: あります。
検察: いつですか
証人: その日の夜10時30分くらいでした
検察: どこでありましたか
証人: 院長室です
検察: 他の医師はいましたか
証人: K医師、麻酔科H医師の二人でした。
検察: 証人は10時30分にどのような説明を受けましたか
証人: 帝王切開があったこと。名前、年齢、一度帝王切開の既往があったこと、前置胎盤?であったこと。予定の帝王切開であったこと、手術の経過について話をききました。赤ちゃんの娩出までは問題なく、胎盤の剥離の段になり上から剥離して大丈夫だったが、下まで用手で進めるとはがれず、下部はクーパーを使用して剥離した。癒着胎盤の状態であった。出血、大量出血がおこったことについてききました。止血が圧迫止血で待っていて、血液の到着をまって、子宮摘出をやったこと、摘出が終わって閉腹したときに、急にVTなり、心室細動になり、DCを3回行ったが救命できなかったとききました。手術中のことは本人からきき、救命について、VTからVfになったこと、血圧が測れなくなったと思ったらVTだった、これはH医師の言葉です。
検察: H医師からの説明を除くと、被告人からの説明ですね
証人: はい
検察: 証人は医師法21条(医師法21条を朗読)は知っていましたか
証人: はい
検察: 証人は当時、届出はどのような例と考えていましたか
証人: 安全管理マニュアルの中に、医療過誤による死亡や傷害が発生した場合に、病院長が届け出るという規定があります。
検察: そういう認識はありましたか
証人: もちろんです。マニュアルに従うことが私の任務であります
検察: 証人は、「医療過誤による」の規定は認識していましたか
証人: はい
検察: 医療過誤とはどのようなことと認識していますか
証人: マニュアルにありますように、過誤とは医療事故の一類型で、医療の準則に違反したもの、ミスが過誤と考えております。
検察: 当時、証人は患者さんの手術に対する認識はどのようなものでしたか
証人: 医療過誤にあたるとは思いませんでした。
検察: その根拠はどういうものですか
証人: 執刀医、麻酔医に過誤があったか再度問い返しました。K医師、麻酔科医に医療過誤の例を挙げて説明したところ、医療過誤には当たらない、と二人とも言ったので、そうであると思った。
検察: 準則に、反しない行為、反する行為か、判断する知識は証人にはあったのですか
証人: 産婦人科の専門、きわめて専門のところは知りませんが、帝王切開は普通言われているレベルは知っています。他の臓器を傷つけたりはしておらず、薬剤の誤投与や異型輸血についてはないということでした。準則に違反とは思わなかった。
検察: 証人は一般知識があるとのことでしたが、癒着胎盤についての知識はありましたか
証人: ありませんでした。
検察: 本人からの報告で過誤なしと判断されたとのことでしたが、警察に届出についての判断はいかがでしたか
証人: 医療過誤またはその疑いがある場合に届け出るとしていたので、それなら届出は不要と判断しました
検察: 実際届け出ましたか
証人: 届けませんでした。
検察: その後、証人の認識が変わったことはありましたか
証人: ありました。
検察: そのきっかけは何でしたか
証人: この医療事故があり、死亡原因及び防止対策について、大野病院の医療事故調査委員会の委員の発言で、私は医療過誤があったのではないかと考えを持ちました。
検察: その委員の発言はどうでしたか、どのような発言でそうなりましたか
証人: 癒着胎盤であっても、用手剥離で剥がれるものを剥がすのは良いが、教科書的には用手剥離できないものは、器具等で剥離してはいけない、という発言がありました。剥離できないものを剥離するとコントロール不能な出血をきたすことがあると。
検察: どう考えましたか
証人: 教科書的に産科領域で器具を使って剥離してはいけない。そう聞いたときに、動揺しました。そうだとすると、やってはいけないということをしたのではないかと、過誤にあたると疑いました。
検察: 事故調査委員会のメンバーは
証人: 3人とも県に頼んで選んでもらった産科の医師で、いずれも産婦人科専門医で、産科において優れた業績のドクターです。
検察: 発言は委員が言ったのですね
証人: はい
検察: 3名ですよね、残り2名は意見はわかれましたか
証人: 他の2人も同席していましたが、異論反論は全くありませんでした。
検察: 教科書的にという意味は、とはどのような判断ですか
証人: 教科書とは、医療の専門家を志す人、医師は、教科書を勉強し、それに従い訓練する標準的なところを書いてある、というのは、我々の世界では、議論の上でもスタンダードマニュアルで行うべき、行う標準的なものと考える。
検察: 当時証人は、教科書的に剥離がダメなのはどういう理由だと考えましたか
証人: 非常に血行の豊富な場所なので、器具を用いるのは、標準的な手法から外れる度合いが大きいことだったのではないかと、思いました。
検察: 証人は事故調査委員会までは、それを知らなかったのですか。
証人: 知らなかったです
検察: 癒着胎盤をはがす危険性については
弁護: 異議あり、癒着胎盤を剥がすことと、クーパーをつかってはがすこととは、ずれています
検察: 証人は、事故調査委員会まで、用手剥離でなく、クーパーを用いた剥離のリスクについて、被告から聞いたことはありましたか
証人: ありません
検察: その委員会の後で、証人は被告と、それについて話したことはありましたか
証人: だいぶたってから、胎盤を剥離するのにクーパーを使ったらいけないんじゃないの、と聞きました。
検察: それに対して被告はどう答えましたか
証人: そんなことはない、case by caseと。胎盤を剥離したとき、すじっぽいところをちょっと切っただけですけどね、と言っていました。
検察: すじっぽいところとは? 証人の理解ではいかがですか
証人: はがれないところをちょっと切ったと理解した。
検察: 証人はこの答えをどう感じましたか
証人: 事故調査委員会では、器具を使っての剥離は教科書的ではないと聞いたので、クーパーは使ってはいけないということを知らないのか、と思った。
裁判長: これで終わりですか
検察: はい
弁護: では、北島から質問します。証人のことを、院長と呼びます。S院長の、産科の経験はございますか
証人: 全くありません
弁護: 胎盤をご覧になった経験はありますか
証人: 2回、学生のときに一度、2年前に大野病院で一度あります
弁護: 本件の患者さんの既往歴を知ったのは、いつですか? 前置胎盤?とか
証人: 12月17日の、事故の起こった夜10時30分、K医師よりきいたのが最初です。
弁護: 17日、院長が手術室に入った時間は何時でしたか
証人: 15時45分頃、ではないかと推測する。麻酔チャート等を見て、全身麻酔の開始が15時35分、麻酔科医からの血液、血漿ですね、そのオーダーが、自分が手術室に入って2,3分のところで、15時50分に発注となっているので、その間ということで、45分くらいと思います。
弁護: 手術室を出た時間は
証人: 血圧があがり、少ししてからなので、16時40分か、そのくらいかと思います。
弁護: 総合すると、院長が手術室にいた時間は1時間ですね。手術室内ではどこにいましたか
証人: 手術室に入ってすぐのドアのところ、麻酔医のすぐ後ろにいた。
弁護: 院長の視点からみて、術野はみえましたか?
証人: 見えないけれど、顔の所は、口にチューブが入って..術創の中は見えないが、上は見えている状態です。
弁護: 子宮表面は見えましたか
証人: 見えません
弁護: 手術室に2回目に入ったのは、何時でしたか、質問を変えます。再び手術室に入った時は患者さんはどうでしたか?
証人: 一旦退室して、2回目に手術室に入ったのは、18時35分くらいでした。そのときは心臓マッサージをやっていました。麻酔科医、外科医がいたが、交代でやっていました。
弁護: ということは、院長は胎盤を娩出している様子は見ていないですね、子宮も。
証人: 全く見ていません。
弁護: 事故調査委員会の時、クーパーを使って剥離する(してはいけない)ことに驚いたということでしたが、事故調査委員会の時に、院長は産婦人科の知識を持っていましたか?
証人: まったく持っていません。
検察: 異議あり、主旨が不明瞭です。
弁護: 院長は、クーパーの剥離の危険性について、専門医として判断しているわけではありませんね。
証人: そうです。専門家から出てきたので、そうかと思ったまでです。
弁護: 手術室の体制は、産科専門医、前立ちの外科、麻酔科、看護師など、本件の手術スタッフ体制は、一般的に十分でしたか
証人: 十分だと思います。事故後人数が増えましたが。
弁護: Y看護師が入り、術野の確保の補助をしていたのはご存じでしたか
証人: 知っています。その他ナース1名、看護師長も入っていました。看護師、麻酔科医、医師で、計9名入っていた。
弁護: 院長が手術室に入ったとき、K医師は圧迫止血をしていましたが、そのときの方法を覚えていますか
証人: 双手圧迫です。そのときにわかったか、ですか?
弁護: その方法を具体的に口で説明をしてください。
証人: 両手をお腹の中に入れていました。
弁護: 帝王切開の切開創の長さはどうでしたか
証人: 分かりませんが。
弁護: K医師の代わりに、別の人が圧迫止血が可能でしたか
証人: 無理です
弁護: 応援医師の要請は、麻酔医単独で可能でしたか
証人: もちろんです。麻酔医が必要だと思ったら、K医師が断っても、彼が呼んでも良いと思う。
弁護: では、H医師の同意があれば、それだけで応援を呼ぶことは可能だったのですね
証人: 執刀医と麻酔医、お互いの了解のもとにやることだと思います。
(おそらく、質問と答えがかみ合っていない。弁護士は、麻酔科に術者の応援要請する権利があるかを聞いており、証人は、それぞれの領域に関しての応援という感じで、麻酔科が麻酔・外回り業務の応援を呼ぶことについて可能であると答えている。)
弁護: K医師の人柄についてはどうですか
証人: 大変まじめな人柄
弁護: K医師は、患者さんの死に際して、どのような態度でしたか
証人: 大変落胆し、虚脱状態でありました。
弁護: 大野病院は、平成11年に産科不在になり休診、平成15年1月に産婦人科を再開し、患者は外来、入院ともに増えた。平成16年4月に加藤医師が着任。帝王切開の数は平成15年が22件、平成16年が41件となっています。K医師の着任により、患者数が増加したと考えるのですね。
検察: 異議。主尋問の内容から外れる。
裁判長: 棄却します
弁護: K医師の勤務状態についてお尋ねします。K医師の休みの割合は、どのくらいの割合で休んでいたのか。
証人: 月1日。産科は24時間体制でないといけないから、応援の医師が来ないと休めないため、1日だったと思う。
弁護: 産科の体制についてお尋ねします、助産師が10名、スタッフはそれだけですね。平均13-14名のスタッフがいると思いますが、通常の産婦人科に比べてどうですか
証人: 助産師9名と非常勤(臨時?)助産師が1名。充実していると考えます。
弁護: 入院患者はどのくらいですか
証人: 13人から15人です。
弁護: 麻酔科については、常勤でしたか
証人: 常勤であります。当院のような規模146床の病院で麻酔科が常勤でいるところは珍しいと思っております。
弁護: 大野病院は平成15年に改築していますが、その時の費用はどのくらいだったのですか
証人: 約70億円です
弁護: 事故後の事情聴取について、午後10時30分から院長室で行われたとのことですが、他に出席者はいませんでしたか
証人: 看護師長、事務長、事務主管、K医師、麻酔科医、私(院長)でした。
弁護: K医師から、患者さんに対する、ムンテラやインフォームドコンセントの話は出ましたか
証人: 出ました。
弁護: どのような話でしたか
証人: 輸血の可能性、出血の可能性、子宮全摘をする可能性があることは説明したと言っていました。
弁護: 癒着の部位については、どう話していましたか
証人: 子宮の後壁の部分がメインと話していました。
弁護: クーパーの使用についての話で、院長はクーパーの使用に違和感がありましたか
証人: そのときには全然感じませんでした。
弁護: 整形外科で、クーパーを用いてはがすことはあるのですか
証人: 通常の手技です。ただし整形外科ではクーパーは太いので、それより先が細いメイヨー型とか、メッツェンというような、先の細身になっているものを使うことはあります。(以下メイヨーの説明・・)
弁護: 先が細いというのは、クーパーより鋭利だということですか
証人: 鋭利というのは・・・先が細いというだけで、どれも鋭利ではない
弁護: クーパーよりメイヨーが先が細いということですね。
弁護: 胎盤の剥離により出血が止まるという仕組みについて、K医師より説明はありましたか
証人: K医師より説明された記憶はありません、明確な記憶がありません。(知識としては知っているという含みがあるような言い方)
弁護: 手書きのメモは、22時30分の説明の際に書いた物でしょうか
証人: そうです、おそらく、22時30分のときに書き取ったものです
弁護: メモには、胎盤を剥離すると子宮が収縮して止血されるということが書いてありますが
証人: そうだとすれば、そのように聞いたと思います。明白な記憶は12月20日の院内検討会の時です
弁護: 警察への届け出については、誰からどのようなタイミングで話しがでましたか
証人: 事務長から、何時かわかりませんが、警察への届け出はどうしましょうと話がありました。過誤があったかどうかわからないので、K医師、麻酔医に訊いてみないと、と答えました。
弁護: その話し合いで届け出る話は出ましたか
証人: 警察に届け出るかですか? 22時30分から、過失があるかないか話し合いでしました。
弁護: 弁護:当日22:30からの事情聴取時には、過誤がなかったという結論だったのですね
証人: はい。
弁護: 警察に届け出ると言う話は
証人: 出なかっただろうと思う。私がその話し合いをしている間に、うちの事務長が電話で、医療事故について県の病院グループ参事に話しました。その電話で私も話しをして、医療過誤ではないから、警察に届け出る必要はないと思うけど、と言いました。
弁護: それは院長室での話が終わった後ですか
証人: 話し合いが終わる頃に、事務長が電話がつながっていると言ってきました。
弁護: 第45号証の大野病院安全管理マニュアルの60頁、第9条の5に、届出は、病院長が届け出るとなっていましたね。院長が判断困難なら県立病院課長に相談する、となっていますね。
証人: はい。
弁護: 課長に相談されたのですか
証人: マニュアルを作ったときとは変わっていて、病院課長から病院グループ参事に変わっています。
弁護: マニュアルで、相談する相手だったということですね
証人: はい
弁護: 病院グループ参事はどのように言っていましたか
証人: そうですか、ということでした。事故について今後問題になるでしょうね、と伝えました。
弁護: 問題というのはどういうことですか
証人: 内容としてそのようなニュアンスのことを話しましたが、刑事事件のことを念頭においていませんで、民事の賠償の話の事を考えていました。届出は私がする必要はないということになりました。
弁護: 電話の時間は何時頃でしたか
証人: 深夜の12時頃でした
弁護: そんなに遅い時間に電話をしてつながるのは、不自然ではないですか
証人: 発生時から連絡を取り合っていて、22時30分からの話し合いの最後のほうで電話がつながっているというので、話したのです。
弁護: 県参事は待っていたのですか
証人: 違うと思います(不正確)。
弁護: 死体検案から24時間以内にどんなことをしましたか
証人: 翌朝、保健所に電話をしました。それから12月17日が金曜日だったので、12月20日(月曜)に院内で検討会をやりました。
弁護: 出席者は誰ですか
証人: 院長、副院長2名、内科部長、外科部長、K医師、麻酔医、事務部長、事務主管、看護部長、手術室師長、産婦人科のある2階病棟の病棟師長です。
弁護: 会議はどんなものでしたか
証人: K医師より、まず、院内事故報告書に基づいて、K医師より報告がありました。次に麻酔記録に基づいて、麻酔医より報告しました。
弁護: この報告書の下段に、「警察への届け出」という欄のなし、にマルがついているが、
証人: 報告書は、17日22時30分からの会議をふまえて、届出無しにマルがついている。報告書は、18日の日付で作成しました。
弁護: 胎盤の付着部分についての報告はどうでしたか
証人: 後壁部
弁護: 出血の様子、術前の出血の見通しについてはどう書かれていますか
証人: 普通の帝王切開では輸血は用意しないが、前回帝王切開の前置胎盤?であったので、標準の5単位を用意した、自分では大野病院で以前に一例経験があるとの報告がありました。
弁護: 剥離の方法についての説明がありましたか
証人: 胎盤剥離の方法は、上から始めて下方にいくほど難しくなってきた。クーパーで剥離したと報告されました。
弁護: 出席者の中から、誤ったとの声はなかったのですか
証人: なかったです。
弁護2: 院長が手術室に入った時間ですが、どういう状況の時ですか
証人: 全身麻酔、挿管の状態でした。
弁護2: 入った時刻は。輸血オーダーの時間を15:50と言ったが、15:43とか、他の時刻にもオーダーが出ているが?
証人: 他の記録から、15時50分だとしていますが、15:43のK医師が血小板をオーダーした声をきいていませんので
弁護2: なぜ手術室から退室したのですか
証人: 出血性ショックの状態が長く続くと大変だと思ったが、間に合ってほっとして退出しました。
弁護2: ほっとしたのは生命の危機を脱したと認識したからですね
証人: 輸血が始まると、血圧が比較的120台にすっと上昇して、危険が回避されたと思いました。まだ体が活発に反応できるのだと思い、血流が正常になったのだと思いました。
弁護2: 助かると理解したのですね
証人: そうです
弁護: 手術中の体制の中で、手術全体の指揮権は誰にありますか
証人: 手術全体については産婦人科医で、手術での全身管理は麻酔医です。麻酔科医は時として手術を止めることもできる。
弁護: 手術全体の麻酔科医の役割はいかがですか
検察: それは先生が・・・
弁護: 麻酔医は、患者さんの全身管理を行うのですね
証人: はい。
弁護: 全身管理とはどのようなことですか
証人: 血圧、脈拍数、出血量、輸液、輸血などです。
弁護: 本件では、出血コントロール、出血を止めることは重要であったと考えられます。
証人: 出血が続けば全身状態に影響するので出血を止めることが先決。質問の意味がよくわからない。
弁護: 出血状態を見つつ、全身状態を管理する。だから、麻酔科医は手術をとめることができる。全身管理のために中断させることがあるということでしたね
証人: そうです。
弁護: 大野病院の機能に、初期被爆対応機関と説明がありましたが、
証人: 当院は、福島原発地域にあり、放射能事故の時に最初の初期対応機関です。
弁護: 初期被爆とはどういうことですか
証人: 被爆の程度によって初期対応をします。衣類や傷に付着した放射性物質を取り除く処置を行います。入院が必要なところは、大学病院、千葉の放医研に送ることになっております
弁護: 手術時の大野病院の対応は、外回りの看護師の役割はどういったものですか
証人: 薬品の準備をしたり、麻酔の補助をしたり、外回りの仕事で出血量のカウントもあります。吸引も大事です。
弁護: オペ責とは、どういう役割ですか
証人: 時系列に従って記録する係です
弁護: 出血のカウントがもれることがありますか
証人: はい
検察: 主尋問を逸脱している
裁判長: 質問を変えてください。
弁護: 本件の夜、事情をきかれたり、院内でも記録を整理されたり、麻酔チャートを確認したりしましたね。
証人: はい。
弁護: 出血量、数字など内容が正しいか確認したことはありますか
証人: 記載内容が正しいかと言うことについてはありません
検察2: 院長の専門は整形外科ですが、剥離の器具についてお尋ねします。整形外科で用手剥離をおこないますか
証人: ほとんどありませんが、整形外科でもする場合があります。脂肪剥離は安全性が高いので、腹膜脂肪腫では、綿球で静かに剥離することがありますが、用手剥離はしません。用手剥離はおおざっぱで危ないと思ったりします。
検察2: 院内検討会では被告からも話しを訊きましたね。医療過誤があるのではないかという発言はありませんでしたか
証人: 全くなかったです。
検察2 別組織の事故調査委員会の設置の経緯はご存じですか
証人: 知っています。12月20日の院内検討会では、産科専門医が一人しかいなかった。患者さんが亡くなっている重大な結果をみて、亡くなった原因をきちんと調査する必要があり、二度とおこらないような検討を行う必要があるので、ぜひつくってほしいと思い、県に依頼しました。当院には産科専門医が1名しかいないので、産婦人科専門医による調査委員会を作って欲しいとお願いしましたが、メンバーは県が選んだので、私は関与していません。
検察2: 院内検討会での医療過誤がなかったとの結論で終わるものではなかったのですか
証人: 患者さんが一人亡くなっているわけだから、専門家の意見を聞きたいと思いました。
検察2: 一般的な手術としては十分な体制でしたか
証人: わかりません
検察2: このような場合にどの程度スタッフが必要か知識はありましたか
証人: ありません。
検察2: 先ほど弁護側の尋問で出てきましたが、胎盤を剥離することで止血されるという説明を聞いたのですね。
証人: 明確な記憶がありませんが、メモにあったのなら、そういう話が出たのだと思います。少なくとも12月20日の事故検討会で話しに出て、止血のためだろうという話をしています。17日については話が出てもおかしくないですが、明確な記憶がないので、そう申し上げている。
検察2: 12月17日の説明を受けたとき、メモをつけていましたか
証人: はい。自分のための目的でその都度とっていました。
検察2: 12月17日のメモについて、福島地検の事情聴取の際に説明していますね
証人: 私が提出しました
検察2: メモを見れば、12月17日にきいたことについて、ある程度のことを話せますか
証人: できます。
検察2: 記憶喚起のため供述調書に添付されたメモを示したいと思います
弁護: 異議あり、供述調書のメモは同意していません。
検察: 示すだけです
裁判長: 棄却します。
検察2: このメモに見覚えがありますか
証人: これは私の字ですし、私のものです。
検察2: これは証人が12月17日に説明をきいた内容をメモしたものですね。内容をみてわかりますか
証人: その通り私が書いたものですから。
検察2: 弁護人が先ほど述べたような、子宮収縮のために剥離したという記載が見当たらないですが、確認できますか
証人: ここには書いてないです。私のメモにはありません。
検察2: 執刀医、麻酔医以外が応援を要請することは異例ですね。なのになぜ証人はそうしたのですか
証人: 5000mLの出血は大変なことだからです。
検察2: K医師の、大丈夫だという答えをきいて院長はどう思いましたか
証人: 本当に大丈夫なのかなと思いました。
検察2: 証人は産婦人科専門医の事故調査委員会を要請されたということですが、麻酔科医の調査は要請していませんでしたか
証人: ・・・。
検察2: そういう必要があるとの話は
証人: 私からはしていません。あの、そのことについて、追加発言しても良いですか。
検察2: どうぞ
証人: 事故調査委員の中で、麻酔チャートをもとに、知識がある人に訊きに行っております。調査委員会の報告書はそれも加味した報告書になっています。
弁護3: 主尋問への反対尋問で忘れたことで、教科書的の確認がしたいのですが
検察3: その点の尋問はやめましょう。質問の意味が不明だし、最終尋問に出たことでもないし。
裁判長: では、許可しません。確認ですが、先ほどのメモは証拠として扱って良いですね
弁護: メモは証拠になるものではない。口頭で述べていることを証拠として不同意のものにつけるのは、口頭で述べているものが残るので十分です。メモは不同意です。
検察: メモの記載が証人は確認できない。弁護側はメモの信用性があるとなっているが、検察はメモにないことを明かにした。なので、メモを含んで裁判所が判断すれば良いので、添付が相当です。
裁判長: 裁判所は確認されなかったという認識ですので、調書と一体でも証拠にはなりませんが、一体という形で扱うので良いのでは。
弁護: すいません、再度、添付されているのは何日のメモですか
検察: 資料1です。
弁護: メモが色々あって、これは調書ではなくて、いくつかのメモがあり、「質問した日」「記載がある日」別なメモについてですから、質問を撤回します。
裁判: そういう御意見でメモに基づいた質問を撤回するのなら、添付も意義があります。
弁護: 今のやりとりは調書にも記載があります。メモにもとづいた検察の質問があったので、添付そのものを不同意とします。
裁判長: 異議は棄却します。メモを添付はしますよ
弁護: どの範囲ですか
検察: 資料1と2です。
弁護: どういう理由で添付するのですか
裁判長: 証言内容の信憑性のためです。
裁判官2: 12月20日の院内の検討会は誰がどういう理由で開くと決めたのですか
証人: 医療安全管理マニュアルの、責任があるので、私(院長)の一存で、安全管理のための名目で開きました。
裁判官2: マニュアルのために、院長の判断で開いたということで良いですか
証人: はい
裁判長: これで終わりです。次回は5月25日午前10時からです。
【閉廷16:45】