靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

偽医者

むかし,酒席で鍼灸師に向いた性格が話題になったとき,冗談めかして,でも実はかなり本気で,「偽医者になる氣慨と能力」と言ったことが有ります。で,今夕の地方新聞に,韓国の百三歳の「無免許医師」の話が載っています。東京では六月の上旬にすでに,どこかの新聞に載ったかも知れない。
「私は,懲役を受けるようなことをしていない。国家は,法律で医師免許を得たものだけから,治療を受けろというが,それなら,国家が患者の生命に責任を負ってくれるのか。私の願いは,安心して病気の治療をさせてほしいということ。」初めは生後二カ月の時に背中におったヤケドを,治してくれた母方の祖父から,背中の病気の治療法を教わったけれど,「治療法は,誰にも言ってはいけない」と口止めされた。十七、八歳ころから薬草に興味を持ち,自分で口にしたり,犬に食べさせたりしながら効能を調べた。また父の生前から交際の有った道士に可愛がられ,山に入りともに修行をし,薬草を教わった。さらに独自の修行を積み,三十年以上前から韓方医としての活動を始め,医師免許はなかったが,癌や持病に大きな効果が有った。息子さんは(ちゃんと免許を得た)韓方医となっているけれど,まだ薬の調剤方法などは教えてない。「薬は,患者の状態などを見て判断するもので,一律的に定めることができない。患者を治す調剤方法は,心から心に伝えるものだ。まだそれを伝えるだけの人物に出会っていない。」
なんだかどこかで聞いたことが有るような気がしませんか。
「医師免許が無いのに医療行為をしたとして訴え,執行猶予ながら有罪判決を下す」と,「秦の太医令の李醯は,自ら伎の扁鵲に如かざるを知り,人をしてこれを刺殺せしむ」と。同種の嫉妬のような気がします。

私自身には,残念ながら偽医者になれるような性格も能力は有りません。

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