馬肝を食らう
- 医論異論
- by shenquzhai
- 2009/07/01
むかし,馬肉を食べるときは,すぐ酒を飲まないと病気になる,と聞いたことがある。まあ,私は桜鍋にしろ馬刺しにしろ,酒無しなんてことはありえないから大丈夫。で,馬のレバ刺しは普通の馬刺しよりもはるかに美味いらしい。そこで,馬肝を食べなければ,馬を食べたことにならない,という言い方もあるらしい。残念ながら確かに食べたという記憶が無い。
で,最近になって『史記』扁鵲倉公列伝を読んでいたら,淳于司馬の診籍に,馬肝をたらふく食って,どうもこの人は下戸だったらしく,酒が出たのをみて,避けて,駆けて帰って,泄して,重い病気になったとある。ひょっとするとこれが,「馬を食ったら,酒を飲め」のもとではあるまいか。もっとも,そうだったら読み間違いで,淳于意は「飽食してすぐ疾走」したのが原因だと言っている。まあ,俗習の大部分はこうした誤解が出発点ですね。
と思ったけれど,でも気になってさらに調べたら,『史記』秦本紀の穆公十四年に次のような記事がありました。
で,最近になって『史記』扁鵲倉公列伝を読んでいたら,淳于司馬の診籍に,馬肝をたらふく食って,どうもこの人は下戸だったらしく,酒が出たのをみて,避けて,駆けて帰って,泄して,重い病気になったとある。ひょっとするとこれが,「馬を食ったら,酒を飲め」のもとではあるまいか。もっとも,そうだったら読み間違いで,淳于意は「飽食してすぐ疾走」したのが原因だと言っている。まあ,俗習の大部分はこうした誤解が出発点ですね。
と思ったけれど,でも気になってさらに調べたら,『史記』秦本紀の穆公十四年に次のような記事がありました。
かつて穆公は良馬を失ったが,これは岐下の野人が捕らえて食ったのであって,その人数は三百余人であった。役人が捕えて罰しようとすると,穆公は,「君子は家畜のために,人を害してはならない。わしは,良馬の肉を食って酒を飲まないと人を傷つけると聞いている」と言って,みなに酒を賜い罪を赦した。三百人の者は,秦が晋を撃つと聞いて,みな従軍を願い,穆公が危険になったのを見ると,またみな鋒をおしならべ死を争って,馬を食って赦された徳に報いたのである。勿論,秦の穆公のほうが,漢の淳于意よりずっとむかしの人です。やっぱり,なにがなんだかわからない。
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