靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

鍼を砥ぐ

『史記』に「扁鵲,乃ち弟子子陽をして鍼を厲石に砥がしめ,以て外の三陽五会を取る」とある。鍼は使用する前に先ず磨ぎなおすものだったらしい。
1968 年に河北省満城の劉勝墓から出土した西漢の金鍼には,鍼柄にそれぞれ円孔が有る。未だにその用途は明らかではない。あるいは細紐でも通して,腰からぶら下げてジャラジャラいわせていたのではないか。当今の中国人が腰から下げたおのれの管理する鍵束を誇らしげにジャラジャラいわせているのと同様に。もしそうであれば一人の医者の所持する鍼は,数本あるいは多くとも十数本であった可能性が有る。
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腰から下げていたのであれば,当然,使用する前には磨ぐ必要が有る。考えてみれば,『黄帝内経』には九鍼の形状とか用途とかの説明は有るけれど,材質は述べられていないと思う。『史記』扁鵲倉公列伝のこの記事は,「鍼」字が金偏に従うのと並んで,貴重な資料ではないか。
金属のうち,詳しく言えば何か。劉勝墓から出た鍼が金製であるのは,王様の墓だったからかも知れないが,当時も無理して金鍼をあつらえた貧乏医者はいたかも知れない。数本を磨ぎ直して使用するのであれば,あながち不可能とも言えまい。

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