靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

優弱の癖有り

北斎の『忠義水滸伝画本』の自序に,「元明の画は優弱の癖有り,本朝の画は剛気の癖有り」と言い,そこで「癖を折衷以て戯れに水滸伝を画」いている。さて,この企ては成功したのか。試みに病尉遅の孫立と母大虫の顧大嫂を見てみよう。
孫立というのは,好漢としてはいささか問題が有る人で,従兄の解珍・解宝が冤罪で囚われても,すぐに助ける気にはならない。自分の地位と立場をおもんぱかってのことである。弟・孫新の女房である顧大嫂から,極力しなくても,どうせとばっちりはくうと脅されて,やっとその気になる。顧大嫂のほうがよっぽど気っぷが良い。
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孫立だって堂々たる巨漢で,あら馬をのりこなし,鉄鞭をふるう英雄なんですよ。でも,何か欠けるところがあると考えられたのか,最初の話では中心人物の一人なのに,今の『水滸伝』では地煞星に落とされている。孫立に優弱さを加味し,顧大嫂に剛気さを添えたと見えないことも無い。
それはともかくとして,好漢の綽号の間違いには目を覆いたくなるものが有る。八臂那吒の項充を「入臂那吒」として,ご丁寧に「にうひなた」と仮名を振っている。ナタは毘沙門天の第三王子で,伝統的には三面六臂両足のようだけど,『封神演義』では八臂ということになっている。二臂分だけより強いと言うつもりですかね。
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