東京女子医科大学
心臓血管外科
主任教授

山崎健二

 循環器疾患治療は各領域において近年長足の進歩・発展を遂げ、今日ほぼ整備された感があります。 残る最大の未解決領域は、「動かなくなった心臓をどうするか」、すなわち末期重症心不全領域です。
 心臓は血液のポンプであり、これを人工的に代行する「人工心臓」の研究開発の起源は古く、歴史的にも数多くの優れた日本人研究者・臨床家によって支え築かれてきました。近年小型・高効率・長寿命の次世代型補助人工心臓が実用化され、人工心臓治療は黎明期を脱し、本格的な普及・確立へと新時代の幕が開けました。今日「腎不全患者が透析療法により社会生活を行っている」のと同様に、「心不全患者が人工心臓により社会生活を送る時代」が近未来に到来することを私は確信しています。各学間、施設間の垣根を越え、未知の新領域を共に力を合わせて開拓していく本プロジェクトに参画できますことを嬉しく思います。



東京大学
心臓外科
教授

小野 稔

 2010年12月に念願であったEVAHEARTおよびDuraHeartの製造販売承認は下り、2011年4月には保険償還が実現する見込みとなりました。Jarvik2000の審査も最終段階を迎え、HeartMateU治験の装着後観察も6ヶ月を超えました。2011年1月より、植込型補助人工心臓の施設認定および実施医の認定申請がいよいよ開始されました。当初の認定基準はやや厳しい内容となっていますが、医療アクセスの公平性から考えてただちに施設拡大が検討されるものと思われます。世界に目を向けてみると、HeartMateUが2008年5月にbridge to transplantの許可を、2010年1月にDestination therapyの許可をFDAから受けた後、現在6000例を超える植込み実績があり、最長6年以上の連続補助が行われています。今後の重症心不全治療における植込型補助人工心臓治療はbridge to transplantのみならず、destination therapyの比重が高まってくるといっても過言ではありません。
 この補助人工心臓研修コースは、わが国においても多くの施設が体外式補助人工心臓ならびに植込型補助人工心臓治療に精通できる環境を作るべく2009年2月から開始されました。これまでに5回行われ、のべ60施設以上から、のべ250人以上の心臓血管外科医、循環器内科医、看護師、臨床工学士の参加がありました。2日間にわたる研修で、6種類の植込型補助人工心臓に加え、3種類の体外式補助人工心臓の機器の概要、植込み手技、臨床成績をその道のエキスパートから学ぶことが可能です。ウェットラボにおいては、ブタの心臓を使用して実際に植込みを学ぶことができます。看護師や臨床工学技士を対象にした、モック循環回路(水回し)実習やVAD患者ケア学習会なども同時並行で実施しています。欧米で導入された新しい補助人工心臓についてもup-to-dateな情報をお伝えできるように、毎回新しい内容を盛り込むようにしています。
 この補助人工心臓研修コースが、補助人工心臓治療を志す心臓血管外科医、人工心臓管理技術認定士を目指す看護師や臨床工学技士にとって有意義な内容にできるように講師一同努力していきたいと思います。                                                                                    

ディレクターご挨拶

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