井上脉状診〜人迎気口診と六部定位診の融合

経絡治療を旗揚げした井上恵理を父に持った雅文は当然のように経絡治療を実践していくが、次第に六部定位診に限界を感じるようになった。

 

六部定位診では五蔵の虚実は判断出来ても外傷・内傷の別がわからない、脉状が何を指すのかわからない、兪募穴の使い方も判断出来ないなどの壁があったのである。

 

井上は古典読解と臨床実践を両輪に模索を続け、遂に「人迎気口診」を復活、再構築した。さらに、従来行われていた六部定位診と組み合わせて、井上脉状診ともいうべきものを組み立てた。

 

ここでは井上脉状診の背景、成立の経緯、基本理論などを紹介する。

古典の中に記載があり、日本でも実践されていた形跡のある人迎気口診であるが、既に臨床の現場では途絶えていた。人迎気口診の概略と井上の奮闘の一端を紹介する。1.古典・歴史の中の人迎気口診古典の中では3世紀半ばの『脉経』に最初の記載があり、人迎気口の位置を「関前一分」と示している。宋の『三因極一病證方論』になってはじめて人迎が外傷を、気口が内傷を示すということが記載され、祖脉と病因との関係などが述べられ...

井上は独自のスタンプまでつくり、毎日の臨床で出会う脉を記録していった。膨大なデータにより脉と症状とのつながりを見つけ、病証に結びつけていった。以下に井上が使用した座標軸とそこに表される陰陽虚実を紹介する。(※以下、図は医道の日本社『脉から見える世界』より改変)●基本の座標軸〜それぞれの象限で要素によって線の位置が移動する(青線は平脉を表す)●陽実の脉の要素は「浮・実・数」であり、座標軸にその線を書...

井上脉状診の治療では手足の要穴、兪募穴それぞれに違う手技を施します。刺入は基本的に送り込みです。「経に従う・逆らう」という、いわゆる迎随の補瀉は行いません。1.五要穴の手技開闔の補瀉 : 補法では鍼穴を閉じ、瀉法は鍼穴を閉じません。2.兪募穴の手技兪募穴には2つの方法を組み合わせて補瀉の手技とします。いずれも患者さんが感じたら鍼を抜きます。①徐疾の補瀉:・補法は鍼をゆっくり刺入して素早く抜きます。...