鍼の手技

井上脉状診の治療では手足の要穴、兪募穴それぞれに違う手技を施します。

 

刺入は基本的に送り込みです。

 

「経に従う・逆らう」という、いわゆる迎随の補瀉は行いません。

 

1.五要穴の手技

 

開闔の補瀉 : 補法では鍼穴を閉じ、瀉法は鍼穴を閉じません。

 

2.兪募穴の手技

 

兪募穴には2つの方法を組み合わせて補瀉の手技とします。
いずれも患者さんが感じたら鍼を抜きます。

 

 

①徐疾の補瀉:
・補法は鍼をゆっくり刺入して素早く抜きます。
・瀉法は鍼を素早く刺入してゆっくり抜きます。

 

 

②呼吸の補瀉:
・補法は息を吐くときに鍼を刺入し、息を吸うときに抜きます。
・瀉法は息を吸うときに鍼を刺入し、息を吐くときに抜きます。

散鍼

井上恵理に始まる散鍼は、風邪、五十肩、膝痛と適用範囲が広く、本治法に勝るとも劣らない効果をもたらします。

 

刺手は腕をしならせて振り下ろすような動きで肩からの力を鍼に伝え、押手はツボや凝りを探すと同時に患者さんの皮膚の温度や触感、汗などの変化を捉えます。

 

皮膚が熱いところ、すべすべしているところは速く、皮膚が冷たいところ、ざらざらしているところはひとつひとつゆっくりと行います。

 

変化があったらすぐにやめてやり過ぎないのが大事なポイントです。

 

知熱灸・点灸(透熱灸)

お灸も本治法の一環で行います。使う艾は上質なものをというのが井上雅文の教えでした。

 

知熱灸では、患者さんが熱さを感じたら取っていきます。
兪募穴は病証毎に決まった経穴に、肩背や対処療法では硬結部や腫れなどの部位に施します。

小児鍼

主に五疳に対して行います。

 

井上恵理は「小児は五蔵がまだ調和されていない~、五疳は五蔵の虚であり精神と肉体のアンバランスの状態である」と言っていました。

 

疾患別に、

 

精神神経疾患(夜泣き、癲癇、痙攣、チック、疳の虫):肝虚
消化器疾患:脾虚
呼吸器疾患:肺虚
泌尿器疾患(夜尿症):腎虚 

 

と、捉えます。

 

施術は鍼で刺さずに、皮膚鍼といって鍼を親指と中指で押さえて鍼尖を示指の腹で皮膚を撫でるように行います。
経絡の流れに沿って撫でると補法、逆らって撫でると瀉法となります。

 

鍼の持ち方 鍼尖が示指の先より出てはいけません 図1

 

子供は大人と違って施術による変化が激しいので、必ず左手でおさえて変化をよく診るようにします。
皮膚がザラザラしている、冷たい、温かい、ツルツルしている、湿っぽいを左手で感じながら、それが変化したらすぐにやめることが大切です。
余計にやると失敗します。

 

接触鍼

 

詳しくは『脉から見える世界』参照