創薬標的としての遊離脂肪酸受容体 : 循環器疾患とメタボリックシンドローム

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創薬標的としての遊離脂肪酸受容体 : 循環器疾患とメタボリックシンドローム
市村 敦彦 ,原 貴史,木村 郁夫,平澤 明,辻本 豪三
京都大学大学院 薬学研究科 薬理ゲノミクス

心疾患や脳血管疾患等に代表される循環器疾患は動脈
硬化が最大の要因であると考えられている.また,高血
圧・高脂血症・糖尿病・肥満等の疾患は動脈硬化の危険
因子であり,上記の症状が複合する状態はメタボリック
シンドロームと呼ばれ,動脈硬化の進行を促進する.こ
のため,メタボリックシンドロームの予防や治療は,循
環器疾患の発症を防ぐうえで現在の医療の最大のテーマ
の一つとなっている.
メタボリックシンドロームの最大の要因は食生活にあ
ると考えられている.近年,食生活の欧米化が進み,炭
水化物の摂取量が減る一方で,動物性食品等の脂質が過
剰に摂取されるようになった.その結果,余剰エネル
ギーが蓄積し,肥満,高脂血症,糖尿病といった生活習
慣病を発症する原因となっている.この食事由来の脂質
より得られる特定の脂肪酸は,生体内において重要なエ
ネルギー源として利用される.一方で,近年,遊離脂肪
酸を天然リガンドとする新たな一群のG蛋白共役型受容
体(GPCR)ファミリーの発見により,脂肪酸が単なる
エネルギー源としてだけではなく,シグナル伝達物質と
して働くことが明らかになった1-5.これら受容体は脂
肪酸がリガンドであることから,生活習慣病(その内で
も特に糖脂質代謝疾患)の新たな創薬・治療標的として
注目されている.本総説では,これら脂肪酸受容体の内,
特にGPR40とGPR120についての最新の知見と,メタボ
リックシンドローム治療への応用の可能性を踏まえて紹
介する.

創薬標的としての遊離脂肪酸受容体: 循環器疾患とメタボリックシンドローム

日本心脈管作動物質学会機関誌「血管」34巻4号

京都大学ゲノム創薬科学分野

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