研究紹介

臨床研究

当科では積極的に臨床研究を
行っています、
ここではその一例を
紹介いたします。

研究統括

小川 純人 小川 純人

当講座は、全身を総合的、包括的に診療する老年病科としての臨床・教育体制を有することに加えて、その強みを基礎研究や臨床研究に反映させており、大学院講座分野としての老年病学と老化制御学の研究にも力を入れております。
特に、老年疾患や老年症候群の病態・成因の解明、予防・治療法の開発につながる基礎研究や臨床研究を幅広く展開しており、各研究グループが精力的に取り組んでいます。また、老年疾患や老年症候群が組織や細胞の老化に起因する点を踏まえて、老化の基礎研究をさらに進め、老化制御から成因解明や治療開発に迫る学際的研究も目指して取り組んでいます。その中では、疾患・老化モデル動物を活用したホルモンや長寿遺伝子等の作用メカニズムの解明をはじめ、オミックス情報などの網羅的解析、分野横断的なアプローチに基づく老化・代謝制御の解明なども推進してきており、精力的に研究成果を発信していきたいと考えています。
当科での研究や活動にご興味のある方は、ぜひ一度見学にお越しいただき、私たちの取り組みをご覧いただければ幸いです。

東 浩太郎 東 浩太郎

老年病科の病棟に入院している患者さん、外来に通院している患者さん、および老年病科が加わっている院内組織である骨粗鬆症センターや大腿骨骨折ボードの症例などを対象とした、臨床研究を整形外科、内分泌科などと共同で行っています。大腿骨骨折ボードにおける多職種介入、ポリファーマシー介入と予後の関連、骨粗鬆症センター症例における二次性骨粗鬆症の頻度、消化器疾患にともなう脂溶性ビタミン不足と骨粗鬆症の関連などについての臨床研究を実施および計画しています。

また、東京都健康長寿医療センター研究所の社会医学部門が主催する、地域在住高齢者を対象とした疫学研究に参加し、ビタミンK、ビタミンE、オキシトシンと認知機能、うつ症状、身体的フレイル、社会的フレイル等の関連について、研究を行っています。

矢可部 満隆 矢可部 満隆

老年病科には、多様な疾患や背景を有する患者さんが入院されます。当科では、入院患者さんを対象に、フレイル、サルコペニア、CGA(高齢者総合機能評価)、骨密度評価などを含む包括的な評価を行うとともに、血清検体の保存を進めています。
これらの臨床情報および検体情報をデータベース化し解析することで、各評価項目とバイオマーカー(性ホルモン、栄養関連指標など)との関連を明らかにすることを目指しています。

また、我々は以下のような多施設共同研究にも取り組んでおります。

J-HAC研究
HACs(hospitalization-associated complications:入院関連合併症)とは、入院を契機として生じるさまざまな合併症や心身機能の低下を指します。高齢入院患者においては、HACsが退院後の生活機能や予後に大きな影響を及ぼす可能性がありますが、これまで日本では十分なエビデンスが蓄積されていませんでした。
本研究では、入院患者さんを登録して退院3か月後の予後を追跡することで、HACsの発症状況や、HACsに関連する要因を明らかにすることを目的としています。

フレイルレジストリ
フレイルの発症には、身体的要因だけでなく、認知機能、栄養状態、社会的背景など、さまざまな要因が関与すると考えられています。一方で、フレイルに関連する要因や、その診断・介入方法については、なお多くの検討課題が残されています。
本研究では、フレイルが疑われる患者さんをデータベース(フレイルレジストリ)に登録し、長期間にわたって追跡することで、フレイルの実態や関連因子、適切な診断・介入方法の検討を進めています。

細井 達矢 細井 達矢

我々は大規模臨床データベース(Diagnosis Procedure CombinationやNational Data Base、国保データベースなど)を用いた臨床研究にも取り組んでいます。ここでは老年医学の中心的なアプローチである、高齢者総合機能評価(CGA; Comprehensive Geriatric Assessment)に関する一連の研究をご紹介します。

高齢者医療においては患者さんを全人的に評価し、個々に最適化された医療介入を検討することが求められています。CGAは身体・精神心理・社会的側面の3領域から高齢者を包括的に評価する方法であり、多職種協働における共通言語となる概念でもあります。2024年にはガイドラインも新規発刊され、全国的に注目を集める分野ですが、その実施状況やアウトカムについての大規模研究は乏しい状況でした。我々は東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学教室や自治医科大学データサイエンスセンターと共同研究を行い、入院中アウトカムとして入院中死亡率や長期入院割合の低減、リハビリテーション介入と在宅支援導入の増加と関連することを世界で初めて報告し(Hosoi, al. eClinicalMedicine ,2020)、さらにポリファーマシー是正につながる可能性を報告しました(Hosoi, al. eClinicalMedicine ,2022)。2024年には全国的なCGA施行状況と都道府県別の傾向を初めて可視化し(Hosoi, al. Geriatr Gerontol Int ,2024)、医療政策とも関連する研究となっています。

今後も多くの教室・施設と共同研究を行い、高齢者医療に関するあらゆる研究に取り組んでいく予定です。ご興味のある先生はぜひお問い合わせください。


都道府県別のCGA実施に関するObserved/Expected ratio

髙田 和典

私たちのグループでは、これまで、慢性閉塞性肺疾患 (Chronic Obstructive Pulmonary Disease : COPD) や肺炎を始めとした、高齢者に多い呼吸器疾患を中心に、様々な臨床研究を展開してきました。ここでは、その一部について、ご紹介いたします。

●高齢者糖尿病とCOPD・オーラルフレイルについて
高齢2型糖尿病患者では、フレイルやサルコペニアなどを併発しやすいことに加え、炎症病態などを背景にCOPDの併存リスクも高まることが知られています。私たちは、高齢2型糖尿病患者を対象に、COPDの規定因子として男性、低BMI、インスリン抵抗性などを報告し(Ishii M, et al. Sci Rep 2019)、また、オーラルフレイルとの関連も示しました(Ishii M, ... Takada K, et al. BMC Geriatrics 2022)。

●高齢者喘息について
高齢化に伴い、高齢喘息患者も増加している一方で、高齢喘息患者では、併存疾患や免疫老化など、様々な因子の影響を受け、非高齢者と症状の現れ方も異なり、高齢者に特化した管理・治療指針の確立が求められます。
私たちは、他医療機関との共同研究を通じて、喘息患者におけるCOPD合併の血清バイオマーカー(MMP3, IL1-RA)の同定(Takada K, et al. World Allergy Organ J 2023)、既存喘息質問票の高齢者における喘息アウトカムとの関連や重要質問項目の検証(Takada K, et al. World Allergy Organ J 2025)などを行ってきました。さらに、これらの知見も踏まえ、非高齢期から高齢期への喘息フェノタイプの移行様式、高齢喘息患者のフレイルとの関係、高齢喘息患者への簡易質問票の開発など、多くのプロジェクトを発表・実施しております。

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