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先輩の声

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老年病科を選んだきっかけとこれまでの歩み

医学生時代、救急外来で高齢患者が繰り返し同様の病態で搬送される場面を多く経験し、高齢者診療の難しさと課題の大きさを強く意識するようになりました。若年者と比較して、高齢者は身体機能や生活背景、併存疾患の多様性が極めて大きく、画一的な対応が困難である点に特徴があります。

初期研修は千葉県の救急病院で行い、脳卒中や心筋梗塞、重症肺炎といった急性期疾患に数多く携わりました。その中で、高齢者では重症化して初めて治療方針の判断を迫られる場面が多く、また一度治療のタイミングを逸すると機能回復が難しいケースが少なくないことを実感しました。こうした経験から、急性期対応にとどまらず、より早期から介入し全人的に診療する老年医学に強い関心を持つようになりました。

その後、老年医学サマーセミナーへの参加を契機に、フレイルやサルコペニア、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)といった概念を体系的に学び直し、老年病科への入局を決意しました。また、初期研修中に循環器疾患における緊急性判断の重要性を数多く経験したことから、サブスペシャリティとして循環器内科を選択しました。

専門研修では東京大学医学部附属病院老年病科で高齢者診療の研鑽を積んだ後、東京都健康長寿医療センター循環器内科にて虚血性心疾患、大動脈弁狭窄症、心不全など高齢者に多い疾患の診療に従事しました。その過程で、認知症、起立性低血圧、低栄養、フレイルといった老年症候群が治療方針や予後に大きく影響することを改めて実感し、老年医学的視点の重要性を再認識しました。

大学院では、クローン性造血をはじめとする老化関連病態の機序解明に取り組んできました。現在は個体老化やサルコペニア・骨格筋を軸とした老化・代謝制御機構の研究を進めています。また、multimorbidityやpolypharmacyといった高齢者診療における臨床的課題に対する研究にも取り組み、基礎と臨床を横断する形で老年医学の理解を深めてきました。

今後は、老化制御を軸とした基礎研究をさらに深化させるとともに、性差や予防医学の視点を取り入れた臨床研究へと展開し、個々の患者背景に応じた医療の最適化に寄与したいと考えています。

すでに超高齢社会にある本邦において、多様化・複雑化する高齢者医療の課題に対し、多くの先生方とともに取り組んでいければと考えています。

宮脇 正次

老年病科での後期研修を
振り返って

私はJCHO東京新宿メディカルセンターで初期研修を行い、卒後3年目から老年病科に入局しました。現在とは研修制度が異なりますが、3年目は同院で引き続き腎臓内科研修を選択し、4年目から東大病院老年病科病棟での勤務を開始しました。もともと内科系を志望していましたが、初期研修のローテーションを通じて、どの診療科でも高齢の患者さんが多いことを実感し、高齢者医療を総合的に学びたいという思いから入局を決めました。

老年病科での研修では、内科専門医取得に必要な症例数を十分に確保しながら、高齢者診療の最前線で学ぶことができます。特に、高齢者は複数の疾患を抱えていることが多く、臓器別のアプローチだけでなく、全身を総合的に診る力が求められます。高齢者医療の幅広い知識と実践的なスキルを養えたのは、当科での研修ならではの大きな収穫でした。

当科には研究に熱心な先生方が多く、日々の診療の中で生じた疑問を教授回診やカンファレンスを通じて深掘りできる文化が根付いています。疑問点をそのままにせず、学びを深める環境が整っていることが非常に魅力的でした。このような経験を通じて、日常診療の中から研究テーマを見つけ、発展させる力も身についたと感じています。後期研修中であっても国内外の学会で発表する機会があり、国際的な視野を広げることができたのも貴重な経験でした。

臨床面では、高齢者総合機能評価(CGA)を実施することで、患者さんの生活背景や社会的要因にも目を向ける視点を養うことができました。これにより、病気の治療にとどまらず、患者さんがどのように生活しているのか、どのようなサポートが必要なのかを考える姿勢が身についたと実感しています。また、老年病専門医の取得はもちろんのこと、希望すれば臓器別専門医の取得も目指すことができるため、将来のキャリアプランに応じた柔軟な選択が可能です。こうした多様なニーズに応えられる点も、老年病科での研修の大きな利点だと思います。

老年病科での研修にご興味をお持ちの方は、ぜひ一度見学にいらしてください。最前線の高齢者医療を実際に体験し、当科の魅力を肌で感じていただければと思います。

細井 達矢

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