令和6年能登半島地震、ならびに羽田航空機事故に関するこころのケアについて
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年始から能登半島沖の地震、津波、翌日には羽田航空の衝突事故、と立て続けに災害危機が生じ、被災者の方にはお見舞いを、ご遺族には心からの弔意を申し上げます。今回のような複合災害や災害の頻発は、被災者はもちろんのこと、その情報に接する多くの一般の方のこころにも大きな問題が生じることと思います。災害・地域精神医学講座では、このような状況で苦しんでいる被災者の方、報道に接する一般の方、および支援者の方に、こころのケアについて災害直後に知っていただきたいことをこの文書にまとめました。災害メンタルヘルス対策の一助になれば幸いです。
引用元(筑波大学 医学医療系 災害・地域精神医学講座)を明示していただければ、ご自由に再配布・転載していただいて結構です。
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<被災者の方へ>
1. 気持ちをリラックスさせる
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このような災害では、被災直後から不安、不眠、興奮が出現します。これはこころが危機を感じ、すぐ逃げられるようにおこる正常反応ですが、過度な不安、不眠が続くと体に悪影響が生じますので、安全な場所に避難した後は、深呼吸法(3秒鼻で息をすい、7秒ゆっくり息を吐く)や音楽を聴くなどしてリラックスするようにしましょう。
2. 頭を整理する
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家族の安否や家の片付け、避難先の衣食住の手配など、被災直後にはやるべきことが一気に多数発生します。これらを同時に行おうとすると、頭が混乱し、不安が高まります。やるべきことに優先順位をつけ、できることを少なくし、先延ばしできることは延ばし、考えすぎには注意しましょう。
3. 適切な行動をとる
4. コミュニケーションをとる
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つらい気持ちを整理するには、親しい人とできるだけコミュニケーションをとり、話をしたり聞いてあげたりして気持ちを共有し、ねぎらいあうことがとても重要です。お子さんは不安を抱えやすいため、傍にいて安心させてあげるようにしましょう。こころやからだの不調がある時は、がまんせずに相談機関や医療支援者に相談しましょう。
<報道に接した一般の方へ>
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直接被災にあったり事故の経験をしたりしていたりしなくても、衝撃的な内容の報道を視聴することによるストレス(惨事ストレス)が生じることがあります。このようなストレスが心身の不調につながらないよう、以下のことに注意しましょう。
1. 繰り返し、長時間、ながら視聴は避ける
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事件報道・映像・写真などの繰り返しの視聴、長時間の視聴、何かしながらの視聴は不安に直結し、PTSDの原因になることが知られています。特に映像は不安の中枢に直接影響を与えますので避けましょう。ニュースなどは最小限の視聴がよいでしょう。
2. 情報の内容・出所に注意する
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災害直後は、多くの人が不安になるために、大量のデマや噂がインターネット等で発信され、この情報がさらに人々を不安にする悪循環が生じます。衝撃的な内容の報道は情報源を確認し、政府機関など信頼できる出所から入手するようにしましょう。
3. メンタルヘルス不調なら報道の視聴は避ける
4. 前向きな情報は取り入れる
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苦労しつつ頑張っている被災者のお話や応援メッセージなどは、逆にこころを前向きにし、気持ちを整理する力を持っています。そのような情報は積極的に取り入れましょう。
<支援者の方へ>
1. 無理をしない
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多くの救援者・⽀援者の皆様、⽇々の活動、本当にお疲れさまです。皆様の働きによって多くの⼈が救われています。被災しながら支援されている方は、被災者であり、また支援者でもあることで、二重のストレスがかかることもあるでしょう。また業務に際して市民の方から心無い言葉をあびる場合もあるかもしれません。業務にあたっては、こまめに休息をとり、決して無理をしないでください。
2. 組織で護る
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苦労話を共有できる仲間とコミュニケーションをとり、互いをねぎらい、不安に陥らないように留意しましょう。精神的につらさを感じたら、上司や信頼できる⼈に相談しましょう。⽀援者の所属機関の所属⻑におかれましては、⽀援活動の内容とリスクに⼗分気を配って職員を守っていただきますようご配慮をお願いいたします。