筑波大学医学医療系臨床医学域 災害・地域精神医学

新型コロナウイルス感染症に関わるメンタルヘルス全国調査

この調査について


  •  現在、新型コロナウイルス感染症による不安や恐怖を抱えながら自宅での生活を強いられている人は多いことと思います。新型コロナウイルスの感染拡大による様々なメンタルヘルスの不調が海外では報告されています。また、政府が要請している外出自粛対策は、行動制限やつながりの低下によりメンタルヘルスを損なう恐れもあります。しかし現在までに新型コロナウイルス感染症の個人・集団のメンタルヘルスへの影響についての調査は我が国では行われておらず、早急に状況を把握する必要があります。

     そこで今回我々は、新型コロナウイルス感染症に関するメンタルヘルス調査を行うことにしました。

     主な質問内容は、性別や年齢、職業、地域などの基本的な項目と、新型コロナウイルス感染症に関する不安などの心理状態をお尋ねします。またコロナ差別や自粛など社会問題への考え方についてもお尋ねします。最後に皆さんが自宅で生活する上で健康を維持するためにどのような工夫をしているか、についてお尋ねします。アンケートの最後にあなたの新型コロナウイルス感染症への不安の程度を集計結果でみることができます。

     得られたデータを元にして、私たちは新型コロナウイルス感染症、外出自粛対策のメンタルヘルスへの影響、現在の社会問題への有効な対策のヒントを得たいと考えています。

     この研究は、直接の個人情報は取得しない匿名アンケート調査であり、心身の危険はないと考えます。調査票の無断複製・頒布はご遠慮ください。この研究の実施は、筑波大学医学医療系・医の倫理委員会で審査を受け、医学医療系長の許可を受けた上で行われます。研究結果は今後専門誌や学会で発表する予定です。


  •  調査は2020年9月30日をもって終了いたしました。ご協力をありがとうございました。


  • 【研究名称】新型コロナウイルスに関わるメンタルヘルス問題の総合調査研究
  • 【研究目的】新型コロナウイルスに関するメンタルヘルス問題の実態と心理的機序の解明
  • 【研究体制】研究代表者:太刀川弘和(筑波大学医学医療系教授) 研究分担者:髙橋晶(筑波大学医学医療系准教授)、根本清貴(筑波大学医学医療系准教授)、白鳥裕貴(筑波大学医学医療系講師)、田口高也(筑波大学医学医療系助教)、新井哲明(筑波大学医学医療系教授)


  •  本研究は「筑波大学新型コロナウイルス緊急対策に関する研究支援プログラム」の助成を受けています。

  • 筑波大学「知」活用プログラム

Pagetop

新型コロナウイルス感染症に関わるメンタルヘルスに関するアンケート調査
最終結果の公表

  • 2020年12月31日

  •  当研究室では、2020年8月4日から2020年9月30日まで「新型コロナウイルス感染症に関わるメンタルヘルスに関するアンケート調査」を行いました。現在進行形で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、皆さまと得られた知見を共有し、今後の取り組みに生かせればと考えております。回答にご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました。

  • <研究の名称>
     新型コロナウイルスに関わるメンタルヘルス問題の総合調査研究

  • <研究の目的>
     新型コロナウイルス感染症に関わるメンタルヘルス問題の実態と心理的機序の解明

  • <研究の方法>
     オンラインアンケートツールSurveyMonkeyを利用し、2020年8月4日からアンケート調査を実施しています。調査では、性別や年齢、職業、住居地といった基本的な項目に加えて、新型コロナウイルス感染症に関連したストレスや恐怖に関わる質問や尺度、感染拡大の期間における各種経験の有無、新型コロナウイルス感染症に対する意識や対応をお尋ねしています。対象者は限定されておらず、匿名かつ何回でも実施することができる形式となっています。

  • <結果のポイント>
    • 8割の人が新型コロナウイルスにストレスを感じており、約半数の人が恐怖や不快感を有していました。
    • うつ・不安、PTSD症状とも、従来の災害と同程度、またはそれ以上に高かったことも分かりました。
    • 差別につながるような意見は多くの人が否定する一方で、5分の1から3分の1程度の人は「どちらともいえない」という認識でいました。
    • 「自粛するか」と「外出するか」ということについて、多くの人は葛藤状態にあることが分かりました。

  • <詳しい結果と考察>
    –属性–
     2020年8月4日から2020年9月30日までの期間に、研究に関する説明に同意し、調査に参加された方は7,250人でした。それぞれの設問に関して、有効な回答の内訳をお示しします。
     性別は女性が多く、年代は10代から60代以上にかけて幅広い分布を示しました。また、多様な業種の方に参加していただきました。居住地に関しては大都市圏の方が主でした。

  • result01

  • result02

  • result03

  • result04

  • result04

  • Pagetop

  • –新型コロナウイルスに関連したストレスの程度–
  •  新型コロナウイルスに関連したストレスの程度は、「とても感じた」「少し感じた」を合わせると8割に達しました。多くの方がこの新型コロナウイルス感染症の流行に伴いストレスを感じていることが分かります。また、「とても感じた」「少し感じた」を合わせた割合を性別で比較すると、女性は85%、男性は71%となりました。女性の方がストレスを感じていることが分かります。また、年齢別に比較したところ、高齢になるほど、ストレスを感じている割合が高いことが分かりました。
     実際のストレス経験として、「自分や家族に感染の危険があった」ことを挙げる方が多かった他、「自粛に伴い仕事や学校に支障をきたした」方も多くいました。一方、自粛に伴い「自分の生活を見直すことができた」「ゆっくり休むことができた」といったポジティブな変化を経験している方も多くいました。

  • result05

  • result06

  • result06

  • result06

  • Pagetop

  • –新型コロナウイルス(COVID-19)恐怖尺度(FCV)の結果–
  •  FCVは7つの質問項目からなる尺度であり、それぞれ、「全くあてはまらない」から「とてもあてはまる」まで5つの回答選択肢の中からあてはまる番号に〇をつけます。各質問の点数は〇をつけた番号で、最小1点、最大5点となり、合計点の範囲は7~35点となります。合計点が高いほど、新型コロナウイルスへの恐怖が強いことを示します。
     それぞれの設問に対する回答の割合を示すとともに、合計点の分布もお示しします。感情そのものに関連した問いでは、「とてもあてはまる」「あてはまる」が4分の1から2分の1程度を占めていますが、「手汗をかく」「眠れない」「動悸がする」といった身体に現れる症状にまで言及した問いでは、「とてもあてはまる」「あてはまる」はごく一部にとどまりました。
     合計点をみると、最低点から最高点まで幅広い分布がみられましたが、最頻値は15点でした。合計点を男女に分けて比較したところ、女性の最頻値が17点、男性の最頻値が15点となりました。女性の方が新型コロナウイルスへの恐怖を強く感じていることが分かります。

  • result07

  • result08

  • result08

  • Pagetop

  • –うつ病・不安症の程度(K6)–
  •  次に、K6の結果を示します。K6はうつ病・不安障害などの精神疾患のスクリーニングを目的として開発され、心理的ストレスを含み何らかの精神的な問題の程度を表す指標として広く利用されているものです。6つの質問項目からなり、「全くない」から「いつも」まで5つの回答選択肢の中からあてはまる番号に〇をつけます。各質問の点数は〇を付けた番号で、最小0点、最大4点となり、合計の範囲は0~24点となります。合計点が、5点以上は軽いうつ、13点以上は気分障害の疑いありと判断されます。
     今回の結果からは、新型コロナウイルスにより約60%の人がストレスをかかえ、そのうち約20%の人は強いストレスによる気分障害を伴っている可能性があることが分かります。

  • result09

  • Pagetop
  • –全般性不安障害の程度(GAD-7)–
  •  次に、GAD-7の結果を示します。GAD-7は全般性不安障害のスクリーニング検査として作成されたものです。7つの質問項目からなり、「全くない」から「ほとんど毎日」までそれぞれ4つの回答選択肢の中からあてはまる番号に〇をつけます。各質問の点数は〇をつけた番号で、最小0点、最大3点となり、合計点の範囲は0~21点となります。合計点が、10点以上であれば全般性不安障害が疑われます。
     今回の調査では、10点以上が6割に達しました。多くの人が新型コロナウイルスに対して不安を抱えていることが分かります。また、15点以上の人が23%という結果でした。5人に1人は新型コロナウイルスに対して強い不安を抱えていることが分かります。

    ©kumiko.muramatsu「GAD-7日本語版 2018版」
    無断転載・複写・複製・電子化、転送化を禁じます
    出典: 村松公美子 新潟青陵大学大学院臨床心理学研究,第7号, p35-39, 2014.

  • result09

  • Pagetop
  • –心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状評価(IES-R)–
  •  次にIES-Rの結果を示します。IES-Rは、PTSDの症状評価尺度として使用され、22の質問項目があります。それぞれ、「全くなし」から「非常に」まで、5つの回答選択肢の中からあてはまる番号に〇をつけます。各質問の点数は〇をつけた番号で、最小0点、最大4点となり、合計点の範囲は0~88点となります。合計点が25点以上でPTSDの疑いがあると評価されます。
     今回の調査では、0点の人が最も多くなりましたが、25点以上が21%という結果でした。

  • result09

  • Pagetop
  • –新型コロナウイルスに関連する考え–
  •  新型コロナウイルスに関連して、いくつかの項目について、全くそう思わない(0)から、とてもそう思う(100)の間で回答していただきました。その結果について示します。
     「感染した人は自業自得だ」という質問に、多くの人は全くそう思わないと回答していましたが、1割程度、どちらともいえないと回答している人もみられました。
     また、「感染があった施設の職員は皆感染している」という質問と、「感染者の家族は皆感染している」という質問に、多くの人が全くそう思わないと回答していました。しかし、どちらともいえないと答える人は、前者で500人程度であったのに対して、後者で800人程度という結果になりました。このことから、職場よりも家庭の方が、感染が広がりやすいと考える人が多いと分かります。
     「感染予防のために皆外出は自粛するべきだ」という質問には、多くの人がどちらともいえないと回答していました。全くそう思わないと答える人も一部みられましたが、とてもそう思うと答える人はほとんどいませんでした。しかし、「自粛といっても自分の行動は自由であるべきだ」という質問には、どちらとも言えないと答える人と全くそう思わないと答える人に分かれました。この2つに質問に対する回答から、自分自身の自粛中の外出行動について、特に強い戸惑いが見られました。

  • result09

  • result09

  • result09

  • result09

  • result09

  • result09

  • result09

  • Pagetop
  • –自粛期間中に有効だった生活上の対処法–
  •  自粛期間中に有効だった生活上の対処法として、十分な睡眠や生活リズムの維持のみならず、「自宅でできる活動を楽しむ」といったポジティブな試みをされていた方が多くいらっしゃいました。また、「新型コロナウイルスに関する正しい情報をとりいれる」という回答を選択された方も多かったことは重要な知見です。「新型コロナウイルス感染症に対する正しい知識を得ること」は、感染の対策にも、メンタルヘルスの向上にも寄与する可能性があるのではないでしょうか。性別ごとでの比較も行いましたが、大きな差はみられませんでした。
     その他のご意見としては、生活習慣の改善、ペットの飼育、「物事に寛容になる」といった捉え方の工夫、宗教的な祈り、専門家への相談、勉強や筋トレなどの自己投資、やれていなかった家事の実行、ガーデニングや森林浴、サイクリングやドライブなど、多彩な対処法が挙げられました。

  • result09

  • Pagetop
  • <まとめ>
     8割の人が新型コロナウイルスにストレスを感じており、女性や、高齢になるにつれてストレスが高まっていました。感染拡大期間中の経験としては、感染する危険と自粛による生活の変化を経験している人の割合が多く見られました。
     新型コロナウイルスに、約半数の人が恐怖や不快感を有していましたが、それによって身体の症状まで表れている人は少数でした。また、女性の方が男性に比べてより恐怖を感じていました。うつ・不安、PTSD症状とも、従来の災害と同程度、またはそれ以上に高かったことも分かりました。
     差別につながるような意見は多くの人が否定する一方で、5分の1から3分の1程度の人は「どちらともいえない」という認識でいました。したがって、これが差別の要因となる偏見につながらないようにするには、一概に「差別・偏見はいけない」と訴えるのではなく、感染者や感染者の家族、感染施設の職員に対する報道の配慮が求められると考えられました。
     また、「自粛するか」と「外出するか」ということについて、多くの人は葛藤状態にあることが分かりました。調査実施時期の8~9月はGoToトラベルの最中であり、社会的に望ましい規範が明確でなかったことを反映していると考えられます。このように考え方が混乱していたために、人々の感染拡大下における行動が一致しなかったと考えられます。
     最後に、自粛期間中に有効だった生活上の対処法は、自宅でできる活動を楽しみ、十分な睡眠をとり、新型コロナウイルスに関する正しい情報を取り入れる、という順に多く見られました。感染リスクに気を付けながら、現在の生活状況を前向きに捉えることが重要だと考えられました。

     なお、本研究の妥当性については、インターネット調査であるため対象集団のバイアスがかかっています。特に心理尺度を用いた状態の評価は、慎重に捉えた方がよいかもしれません。
     今後この調査の詳細な分析については、順次論文や学会発表等で公表してまいります。

    <謝辞>
     この調査にご協力いただいた全国のみなさまに深く感謝申し上げます。また、この調査は筑波大学「知」活用プログラムの一環で行われました。

    • <研究実施者>
    • 報告書作成:松山藍利、翠川晴彦、髙橋あすみ、田口高也
    • 調査・分析:小川貴史、白鳥裕貴、螺良美波、佐藤優、西村 響、宇田川惇、高橋晶
    • 研究代表者:太刀川弘和

  • Pagetop