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谷川研究室

谷川研究室

  • リーダー
    谷川 道洋
メンバー
研究指導者 1名
大学院修了後 1名
大学院生 2名(内1名は育休中)
研究助手 1名
(2020年5月現在)

研究内容

基礎研究

私たちの研究グループでは「ゲノム安定性制御機構と婦人科悪性腫瘍(特に卵巣癌・子宮体癌・子宮肉腫)」「がんゲノム医療基盤研究」を中心的な課題として研究を行っています。

1.ゲノム安定性制御機構と婦人科悪性腫瘍 (DNA損傷修復における転写・スプライシング因子の機能解析)

紫外線・放射線・活性酸素等の外的・内的要因で一つの細胞は一日当たり最大50万回のDNA損傷が生じます。DNA損傷が蓄積すると複製や転写の過程でエラーが頻発し、細胞死、遺伝子変異や発がんが誘導されます。細胞内ではDNA損傷からゲノムを守る様々なシステム(DNA損傷修復機構)が備わっており、一部の婦人科悪性腫瘍では、DNA損傷修復機構の一種である相同組換え修復経路やミスマッチ修復経路に異常を来していることが知られています。既に臨床の現場では、それらを標的とする分子標的治療(PARP阻害剤)が導入されています。

我々の研究室では、婦人科領域で、特に卵巣癌において重要な治療標的である相同組換え修復機構に重点を置いて基礎研究をすすめています。DNA損傷は細胞の生存維持に極めて重大な影響を与え、その修復はゲノム情報維持のみでなく、細胞の生存にも極めて重要です。定常状態で細胞は生存、またそのコピー作成のため転写・複製を精妙に行っておりますが、細胞に致死的なDNA損傷が生じた場合は転写・複製等に関連する因子がDNA損傷修復機構の一員として機能することが報告されてきています。本研究室では、網羅的ゲノム解析で同定された新規の候補因子である転写因子・複製因子・スプライシング因子に着目し、DNA損傷修復機構・相同組換え修復機構における機能解析・治療マーカーへの応用を模索しています。

  • 放射線照射によるDNA二本鎖切断部位へのBRCA1の集積

    放射線照射によるDNA二本鎖切断部位へのBRCA1の集積

  • 合成致死(Synthetic Lethality)についての説明

     

  • レーザー照射により誘導されるDNA損傷部位に転写因子の集積が観察される

    レーザー照射により誘導されるDNA損傷部位に転写因子の集積が観察される

2.がんゲノム医療基盤研究(バリアントのがん原性に関する解析)

本課題では、遺伝性家族性腫瘍の診療やがんゲノム医療で遭遇する体細胞系列・生殖細胞系列のバリアントの機能解析を行うことで、そのがん原性・薬剤感受性を評価する試みをしている。国立がん研究センター研究所とも人的交流にて共同研究を進めており、がん化能及び薬剤感受性のハイスループット解析を行っている。

  • ハイスループットfocus formation assay

    ハイスループットfocus formation assay

臨床研究内容

臨床的課題としては、「遺伝性家族性腫瘍」「婦人科悪性腫瘍におけるがんゲノム医療の実装化」「腫瘍ヘルスケア」の3つを大きなテーマとして臨床を行っています。

1.遺伝性家族性腫瘍

当グループでは大学院時代から腫瘍遺伝外来で遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーと共に遺伝カウンセリング当の診療にあたります。婦人科領域では、遺伝性乳がん卵巣がん症候群、Lynch症候群の患者さんを診療することが多く、当グループでは大学院時代からこうした専門性の高い診療に従事することで、遺伝専門医の資格取得も目指します。

2.婦人科悪性腫瘍におけるがんゲノム医療の実装化

本研究室では東京大学で独自に開発したがん遺伝子パネル検査Todai OncoPanel(TOP)の実装化を目的に多数の症例で解析を行い、臨床の現場にフィードバックを行っています。500遺伝子近いDNA/RNAパネルからなる国内最大規模のパネル検査であるTOPの性能開発、またゲノム医療の大きな課題である治験開発や検査で得られたバリアントのがん原性・治療感受性の評価に関する研究を行っています。本研究では国立がん研究センター研究所と共同で研究を行っています。

3.腫瘍ヘルスケア

腫瘍ヘルスケアに関して、婦人科悪性腫瘍の治療(卵巣摘出・化学療法・放射線療法)の影響で早発閉経をした患者さんに対する専門外来「腫瘍ヘルスケア外来」(毎週水曜日午後)を担当しています。早期の閉経による、更年期症状や性生活への影響、将来的な種々の健康リスクに対して、エビデンスに基づく適切な治療介入を行い、人生の質を高める支援に積極的に取り組んでいます。また新しい治療法の構築を目指した臨床的研究にも力を入れています。

最後に

婦人科悪性腫瘍の研究は、これまでに分子細胞生物学により様々な重要知見が明らかにされてきました。こうしいた知見は、「がんゲノム医療」として大きな収穫を得ようとしています。本研究室のメンバーは「DNA損傷修復・相同組換え修復」「BRCA1機能解析」という極めてベーシックな研究領域から、「がんゲノム医療」「遺伝性・家族性腫瘍」「腫瘍ヘルスケア」という幅広い診療現場において精力的に活動・発表を行っています。国立がん研究センター中央病院婦人科や研究所との臨床面・研究面の双方で積極的人的交流も行い、基礎的リサーチマインドをもった多様性のある産婦人科医・婦人科腫瘍医の育成に努めています。

東大病院の見学を随時募集しています。
研修希望者向けに、病院の施設や研究室、使用する機材などをご覧いただくことができます。研修に関する質問や相談などにも、個別に対応いたします。
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