看護師のみなさま、今日もお疲れ様です。
ここには、明日の患者さんの安楽ため、そして私達の看護に向けての言葉があります。
・安楽のために、他の看護師がどんなことをしているのか・安楽とはそもそも現場ではどんなことなのか
・安楽のために、自分だけではなく他の頑張る看護師の声をどうぞご覧ください。
ー「すごいラクになった!」と言ってもらえたー
心不全で、両下肢の浮腫が著明な患者様が入院されました。 下肢に対する倦怠感を訴えていたので、ご本人とも相談しながらポジショニングを調整していました。かなり冷感もあったので、プランを立てて、足浴をしました。足浴をして冷感もとれ、爽快感も得たようで「すごくラクになった!」と言ってくださいました。
看護で患者様が「すごくラクになった。すっきりした」と言ってくれました。その言葉から、私は患者さんの安楽につながったのではないかと感じました。
ーケアひとつひとつが安楽になるー
私の病棟はとても忙しく、保清のケアが行き届かないことが多いですが、その日はたまたま余裕があったので、今日は患者さんを綺麗にしよう!と思いました。清拭が終わった後に、午後から足浴や手浴をしました。ちょうど看護学生も来ていたので一緒にやりました。
そうしたら普段は認知症もひどくて表情がない人が、しゃべり出したということがありました。いつも一点を見つめて、しかめっ面だけをする患者さんに 「どうでした?」「今日は疲れました?」 と声掛けをしたら、 「気持ちよかった」 と言いました。ぼそっとですが、発語がありました。
やはりこういうことも一つの安楽なのかなと感じました。 私の病棟はセデーションをとても多く使います。 「そのような方法だけが安楽ではなく、患者さんに私たちが施す ケア一つ一つが安楽に繋がるのかな」 と、ふと感じた瞬間でちょっと嬉しかったです。
ー必要なのは治療と「看護」ー
私は心臓外科病棟で勤務しています。80歳代、女性の患者で、血管外科の(右下肢のバイパス)術後の方を受け持ちました。元々閉塞性動脈硬化症でご入院されていました。足は糖尿病性壊死もありデブリもしていましたが、きれいにケア、処置されていました。大腿動脈のバイパス(人工血管)と、血栓除去もしていました。
その方が術後、敗血症になり、そこから感染性心内膜炎になってしまい、今日手術、弁膜症手術まですることになりました。手術後は、結構動けていた方でした。術後はあまり歩けなかったのですが、お元気になってもう退院も間近という時に、元々あった心房細動で血栓が(多分)飛んでしまったのと、その黴菌の…敗血症が飛んでしまったことがありました。それが原因で、ちょっと心不全気味にもなってしまいました。 その時は、呼吸が苦しくなり、体的にシビアな状況となりました。
そのため、薬剤で色々コントロールはしていたのですが、 キューキューゼーゼーハーハー言っていて、熱もあり、 苦しい状況でした。その時に体勢を整えることがとても大事でした。
ファウラー位、起坐位をとるように体勢を整えて、 ちょっと安楽な姿勢にしました。
「こういうふうだと楽ですよ」 と声掛けもしました。
安楽枕や柔らかい枕を入れて体勢を整えてあげたりもしました。こういうものを使うと呼吸が落ち着くことが多いのかなと思いました。
日々のケアとなると、清拭や洗髪と思ってしまいがちなのですが、治療の中での安楽な看護が一つ大事なのかなと思います。その時も「楽だわ」と仰ってくださいました。
その後すぐ酸素化が保てず、ICUに入ることになりました。その時は少し酷い状態でしたが、体勢を整えただけで結構楽になり、重症感がなくなりました。「ちょっと騙されたようだな」と、ICUの先生にも言われました。それくらい、体位や安楽な姿勢というのはとても大事なことなのかなと思いました。
医師が行う薬剤や酸素投与だけではなく、治療ではないですが、看護師としてもできることの一つなのかなと思った出来事でした。
ー安楽でご飯が食べられた!?ー
大腿骨の骨折の手術後でだいぶリハビリも進んでいる70歳代男性の患者様を受け持ちました。既往に胃全摘手術があり、お食事を分割で召し上がっています。
ある日、夕食の下膳に行くと全然召し上がっておられず、顔色も優れず、気分が悪そうでした。「どうも気分が悪い」と、お食事は食べられないということでした。
様子を見ていたのですが、消灯前に嘔吐をされて、いまいち調子が悪い、吐き気がとれないということで、吐き気止めを使用しました。少し経ってから様子をみても、本人的には気分は優れない。本人はその吐き気の原因は、「おなかを冷やしちゃったから、そのせいでおなかが痛くなり食べられないのかな」と仰っていました。聴診でも、腸の蠕動は確かに弱い。「げっぷも出る、苦しい」と仰っていました。
吐き気止めも使えるものは使い、とりあえず夕食は無理に食べさせないようにはして様子を見ていました。吐き気止めは、経過を見ても、あまり効く感じがしませんでした。
ふとその時に、「じゃあ温罨法してみようかな」と思いました。早速、温枕(湯たんぽ)を作って、渡しに行きました。本人は「あ、これいいね」 と言って、早速お腹にあて、「ちょっとやってみる」 と言うのでお渡しして、その場を離れました。少し経って、 様子を見に伺ったら、「なんかだいぶよくなって気持ちがいい」 「これなら大丈夫そう」って言って休まれました。朝方には吐き気も落ち着きました。
朝の検温の時に 「あれはすごく良かったよ」って言ってくださり、 「あー良かった」ととても素直に思えました。 その後今朝の食事も、夕食時には食べられなかったのが食べられるようになりました。
「あ~もしかしたら、あの温枕・・・、ご本人にとってはとても心地いいものだったのかな」ということを実感しました。
ー「私も死ぬんだったらここで、お願いね 奥さまよりー
印象に残るターミナルの患者さんがいます。
奥さんが熱心な方で毎日毎日来てくれていました。
この患者さんはずーっと酒飲みで、好きなことばっかりしてきたから 、「看護師さん、こういうときに具合悪くなっちゃうんだよね」という話をずっとされていました
ほんとうにあと数日…ここ1日2日、数時間かなというときに、 「(ご主人のベッドサイドにいるのは)すごくお辛いと思いますが、奥様が居てくれることでご主人さんは安心されます。ですので、できるだけご主人のそばに居てあげてください。」と奥様にお願いしたことがあります。
「あの、なにかやってあげたいことってありますか?」
「お部屋とかもできれば、ご主人さんが安心できるような絵とか、 好きだったお花など飾ってもらっても大丈夫ですよ。個室なので」という話をさせていただきました。奥様は「ほんとにね、ずーっとお酒を飲んで、お酒・ビールが大好きな人だったんです。だから、あの、今はもう口はきけないけれど、つい1週間前も、『酒持ってこい』って、『ビール飲みたい』って言ってました。飲ませられないですか?」とお話されました。
確かに基本は病院で、アルコールなど無理なのですが、師長や主治医とも相談しました。飲めるような状態ではないのです。でも、ガガガーッと泡の立ったビールを吸い飲みというのも・・・と思い、小さいコップに泡をもって、口に含ませてもらって、すぐサクションするという形になりました。飲ませてあげたというか、その行為自体はほとんど飲んでいないと思うのですが、奥さんと医療職と相談して、そういう行為をとれたということに、奥さんはとても感謝していました。
その後ご主人は24時間以内に亡くなったのですが、奥さんから、「ほんとによくしてもらった。私も死ぬんだったら、ここで死にたいから、お願いね」と言われました。
もしかしたら病院の決まりや規則からすればダメなことかもしれないのですが、患者さんの意識もあまりなかったので、奥さんや家族の思いをくんだ看護というように考えれば、それはベストだったのではないかなと思いました。 奥さんの心の中にも残ったと思います。
最期に何かをしてあげられた、この人の好きなことをしてお別れできたという奥さんの思いをくんだ看護となり、奥さんもきちんとお別れできたのではないかと思いました。
安楽なケアを短期的なものと長期的なものと考えた場合、検査や手術などを受けた患者さんへのケアが、短期的な安楽なケアだと思います。長期的な安楽なケアは、入退院を繰り返して、ターミナルなどで入院期間が長くなってきた患者さんへのケアが思いうかびます。患者さん自身だけでなく、患者さん自身と家族を含めた環境全体を考えて、その患者さんがこうでありたい、よりその人らしい環境に近づけるというケアが、患者さんへの長期的な安楽につながると思います。