アダム・スミス

(あだむ・すみす Smith, Adam)

If there is any society among robbers and murderers, they must at least ... abstain from robbing and murdering one another. Beneficence, therefore, is less essential to the existence of society than justice. Society may subsist, though not in the most comfortable state, without beneficence; but the prevalence of injustice must utterly destroy it.

---Adam Smith

スミスの思想において「功利性」は何を意味するかと単純な質問を 尋ねられたら、わたしはこう答えるだろう。 「デヴィッド・ヒュームという意味だ」と。

---Frederick Rosen


スコットランドの思想家(1723-90)。 1752年から1764年まで、グラスゴー大学の道徳哲学の教授。 同大学で、1730年代後半にハチソンの授業を受ける。 ヒュームの友人。

倫理学の領域では、1759年に『道徳感情論』 (The Theory of Moral Sentiments)を出版し好評を博した (死ぬまでに第5版まで出版され、死後まもなく第6版が出た)。 道徳判断における感情の役割を強調するハチソン、 ヒュームの大きな影響とともに、 自己支配を強調するストア派の強い影響も受けている。 彼の倫理学説の中心にあるのは共感理論であり、 道徳判断の基礎は、他人の感情(怒り、悲しみなど)の共感にあるとする。 (これに対して、ヒュームは他人の快苦を共感すると主張した) 有名な「公平な観察者」(impartial spectator)という考えは、 自分の行為に関する道徳判断を説明するのに用いられた。

他方、経済学の領域では、 1776年に出版された『国富論』 (The Wealth of Nations) において自由放任主義を唱え、 古典派経済学の祖として崇められた。

ちなみに、スミスの時代の「道徳哲学moral philosophy」 とは倫理学と法学を中心とした 人文社会科学一般のことであり (すなわち、自然を対象とする自然哲学natural philosophyに対して、 人間と社会を対象とする哲学のこと)、 経済学は法学の一部として位置づけられていた。

なお、「アダム・スミス問題」 の項も参照せよ。

08/25/99; 03/Feb/2000追記; 05/Apr/2003追記


参考文献


上の引用は以下の著作から。


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Mon May 31 02:28:18 JST 2004